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税制(庶民増税・徴税), その他 (大企業減税, 連結納税制度)

2005年04月20日 第162回 通常国会 法務・財務金融・経済産業連合審査 【298】 - 質問

「企業グループの責任が問われている」連合審査で佐々木議員

 2005年4月20日、法務委員会、財務金融委員会、経済産業委員会の3つの委員会の連合審査が行われ、佐々木憲昭議員は会社法案について質問しました。
 現在、日本の企業に問われているのは、企業の社会的責任を明確にする法整備であり、その際、大企業をどうとらえるかが重要です。
 実態は、トヨタ・グループ、日立グループなど、巨大企業が親会社になり、その下に多数の子会社や関連会社を系列関係においています。また、持ち株会社のもとに多数の企業がグループを構成しています。
 まず、佐々木議員は、2002年から導入している連結納税制度によって、減収がいくらになっているかを、質問しました。
 これに対し、谷垣財務大臣は「平成15年度実績ベースで、減収額は約3400億円」と答えました。
 日本の企業法制は、グループ支配を認め、全体として連結会計、連結納税などを認めており、大企業はグループとしてまとまった行動をおこなっている存在だということを認めている事になります。
 しかし、企業グループの責任の所在が明確になっていません。最近は、コクドと西武鉄道のように、親会社と子会社、持株会社とグループ企業の不透明な関係が明らかになるなど、企業グループの責任が問われています。
 たとえば、親会社の指示によって子会社が不当労働行為をおこなっても、子会社の労働者は親会社の責任を問うことはできないという仕組みになっています。
 一方で、経営におけるグループ支配を認め経営者の自由を拡大しながら、他方で、企業責任については「親会社と子会社は別」だとされているのでは、著しくバランスを欠いています。
 欧米では、子会社に問題があれば親会社の責任を問う「会社結合法制」が、当然のルールとなっています。
 アメリカでは、エンロンやワールドコム事件を契機に、不十分ながら不正を働いた経営者への罰則強化、監査法人への監視強化、情報開示の強化などを柱とした企業改革法を成立させています。
 また、集団訴訟(クラス・アクション)やディスカバリー制度は、アメリカにおいて一般投資家が事後的に経営者の責任を追及するために有効に機能しています。
 なぜ、今回の改正でこうした制度をとらなかったのか。佐々木議員は、「そのような仕組みが日本で実現しなかったのは、経団連からの要請を受けたからではないか」と質問。
 南野法務大臣は「御懸念は当たっていない」と答えました。しかし、佐々木議員は、経団連タイムスなどを紹介し、経団連が自民党に要請している事実を示し、批判しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは、3つの委員会の連合審査ということでありますが、合わせて114名でありますけれども、まことに残念ながら、人数が少ないようでありまして、もっと真剣にやるべきだというふうに思っております。
 日本の企業に現在問われておりますのは、社会的責任を自覚することであり、それを明確にする法整備だと思っております。その場合、重要なことは、企業の存在形態をどうとらえるかということでございます。
 トヨタグループあるいは日立グループなど、巨大企業が親会社になりまして、そのもとに多数の子会社や関連会社を系列関係に置いているというのが実態だと思うんです。また、持ち株会社のもとに多数の企業がグループを構成している、これが実態だと思います。
 そこで、谷垣財務大臣にお聞きしたいと思いますが、2002年、平成14年から連結納税制度というものを導入しておりますが、その理由は、大企業がグループとして存在をしているというふうに見ているからだと思います。その見方というのは、グループとしての見方というものは財務省としてしっかり押さえているのか。そして、実態として、その結果、連結納税制度の導入によってかなり減収が起こっていると思うんですが、幾らの減収になっているのか。税収が減っているということですが、その数字、お答えいただきたいと思います。
○谷垣財務大臣 今佐々木委員がおっしゃったように、平成14年度の税制改正で連結納税制度を入れたわけですが、これは、当時、商法改正の分野では企業の柔軟な再編を可能にするようにしようという改正が行われましたし、それから会計の分野では、今おっしゃったことと関係があると思いますが、企業の一体的経営をやっていくという傾向が強まってきましたので、それに合わせた会計の改正がありまして、いわばそれと呼応するような形で連結納税制度を入れたというふうに理解をしております。
 それで、そういう一体的に経営されているという現実も視野に入れながら、企業グループを1つの課税単位として考えていくことによって、連結納税制度はそういうことを考えることによって、企業活動にとってゆがみの少ない中立的な税制ということになっているのではないかというふうにこの連結納税制度を私は理解しております。
 それで、減収という点では、グループ企業各社の所得と欠損を通算して課税する仕組みでありますので、減収がどうしても起きてくるわけですが、平成15年度実績ベースでこの導入に伴う減収額は約3400億円ということであります。
○佐々木(憲)委員 大変な規模の減税であります。
 そこで、南野法務大臣にお伺いしますが、今の財務大臣の答弁でも明らかなように、日本の企業法制というのは、グループ支配を認め、全体として一体的な経営が行われていると見て、連結会計あるいは連結納税ということを認めているわけですね。つまり、大企業というのは、そのほとんどがグループとして一体の行動が行われていると。
 南野法務大臣自身、日本の企業法制というのはやはりこのようなグループを前提として成り立つものであるというふうに考えておられるのかどうか、そこを確認したいと思います。
○南野法務大臣 すべてが前提として成り立っているかどうかということについては、そうでない場合もあるというふうに思いますが、会社に関する法制といいますのは、基本的に、独立の法人格を有する単体の会社を前提としているものでありますが、連結会計制度や、今お話がありました連結納税制度、これは一定の関係を有する幾つかの会社をグループとして取り扱うものである。
 したがいまして、このような制度が適用される限りにおきましては、企業グループが法制上の存在であるということは、これは委員御指摘のとおりであろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 そこで、企業をグループとして見た場合、責任の所在というものがどこにあるのかという点が問題になってまいります。コクドと西武鉄道のように、親会社と子会社、あるいは持ち株会社とグループ企業全体の不透明な関係というものが明らかになっているわけです。企業グループの責任というものが、その所在が問われているわけです。
 そこで、法案では、それをあいまいにしたままで、経営におけるグループ支配を認め、経営者の自由を拡大する、こういう方向がとられていると思います。他方で、企業の責任ということになりますと、いや、それは親会社、子会社は別な企業なんだから、こういうことで別扱いをされる。
 例えば、親会社の指示によって子会社が不当解雇をやる、あるいは不当労働行為を行うという場合、子会社の労働者は直接の雇用関係にないということで、親会社の責任が問えない、こういう実態になっているわけであります。
 これはやはり、一方でグループの存在を認めて事実上の減税が行われていながら、他方で、雇用関係でいうと関係ない、こういう物のとらえ方というのはバランスを欠いているんじゃないかと思いますが、南野大臣、いかがでしょうか。
○南野法務大臣 御指摘のとおり、親会社の経営者とそれから子会社の従業員は直接の雇用関係に立つものではないというふうには思いますが、現行法のもとにおきましても、親会社の取締役がその職務執行について悪意または過大な過失があった場合には、取締役は第三者に対して連帯して損害賠償責任を負うこととされている。この第三者には子会社の従業員も含まれるということでございます。
 また、子会社の労働組合に対する不当労働行為の意思を持って親会社が子会社を解散した場合には、親会社の行為を法人格の濫用と認め、子会社解散前に生じた子会社従業員に対する未払い賃金について親会社の支払い義務を認めた裁判例があるということでございますので、先生の御懸念もこの点でもあろうかと思っておりますが、このように、現行法下におきましても、子会社の従業員に関しまして親会社またはその経営者に責任を負わせる法的な枠組みはございます。御指摘のようなアンバランスがあるとは言えないというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 そういう答弁ではありますが、現実には、なかなかそれが機能していないというのが実態でありまして、その点よく実態を把握していただきたいと思います。
 次に、欧米の場合は、親会社と子会社の関係で会社結合法制というものが当然のルールでありまして、親会社の責任というものが明確になっております。今回の改正は、こういう企業結合、会社結合法制というものがとられていないわけですが、これは今後一切検討しないということなのか、それとも、今後、会社結合法制というものを視野に入れて検討していくおつもりがあるのか、その点をお聞かせいただきたい。
○南野法務大臣 我が国におきましても、最近、企業グループの形成が進展いたしております。企業グループに関する適切な規制を行うという観点から、いわゆる先生お話しになられました企業結合法制の整備の必要性を唱えられる声があるということは事実であろうかと思っております。
 しかし、企業結合法制に対する対応といいますのは、これは国際的にもその手法及び内容がさまざまであるということも聞いており、急速な規制強化や制度の創設はかえって企業活動の妨げになるのではないか、そのようなおそれもあるというふうにも思っております。
 他方、我が国におきましては、これまで、親会社の株主による子会社の会計書類等の閲覧請求、親会社の監査役による子会社の業務調査など、企業グループをめぐる問題に対応するための措置を講じてきております。また、会社法案におきましても、株式交換等によりまして完全親子会社関係を創設する場合に、代表訴訟を提起していた子会社の株主が原告適格を失わないようにする措置を講ずるということにしているというふうに聞いているところでございます。
 もっとも、グループ経営の進展に伴う利害関係者の利益の適切な保護は重要な課題であると考えておりますので、今後とも、実務における問題の状況を勘案しながら適切な方策について検討を進めていく所存であります。
○佐々木(憲)委員 検討を進めていく、いろいろなことを言いましたけれども、そういうことですね。
 それで、アメリカでは、エンロンやワールドコム事件を契機にしまして、不十分ながら、不正を働いた経営者への罰則強化、監査法人への監視の強化、情報開示の強化、こういうものが盛り込まれた企業改革法というものが成立しております。それから、集団訴訟、クラスアクション、あるいはディスカバリー制度、これはアメリカにおいて、一般投資家が経営者の責任を追及するために有効に機能している仕組みであります。
 それが日本で実現しなかった理由でありますが、これはやはり経団連などの財界団体の要請を受けてそれが盛り込まれなかったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○南野法務大臣 まず、端的に申し上げると、先生の御懸念は当たっていないんじゃないかなと思うわけでございます。
 我が国におきましても、平成9年における、株主の権利の行使に関する利益供与の罪などの罰則の強化が行われております。また、平成13年における、監査役会への半数以上の社外監査役の設置強制ということも行われております。また、平成14年における、委員会等設置会社制度の導入が行われております。これはソニーなどでございますが、そういった会社法制の改正を行ってきているというのが現状であります。また平成15年には、公認会計士等の独立性の強化も図られております。経営者に対する罰則の強化、監視体制の強化、透明性の確保に関する法制の整備、ここら辺も盛り込まれております。
 会社法案では、これらの内容がいずれも引き継がれておりますとともに、会計参与制度の創設、また、すべての株式会社に対する決算公告の義務づけなど、さらなる透明性確保の手段も講じているところでございます。
 他方、先生がお述べになりましたクラスアクションまたはディスカバリーの制度は、我が国の法制には存在しておりません。クラスアクションにつきましては、訴訟を関知しない者に対し、クラスの代表者が敗訴した場合の判決の効力をクラスの中で及ぼしていいかどうか等の問題点があり、また、ディスカバリーにつきましては、手続に費用や時間がかかり、また、嫌がらせや和解を強要するための訴訟戦術として利用されるおそれがある等の問題点がそれぞれ指摘されておりまして、我が国に導入するにつきましては慎重な検討が必要であるというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 今、問題点が多いということを盛んに指摘されましたが、そういう問題点を指摘していたのが経団連でありまして、ことしの3月29日、経団連は、自民党と政策を語る会というものが経団連会館で行われまして、そこで意見交換が行われている。
 冒頭のあいさつで奥田会長は、政党の政策評価を参考に、企業が自主的に政治寄附を行う方式を日本経団連が推進していることを説明して、自民党の各種政策への取り組みに対する理解を深めていきたいと語った。この意見交換の中で、会社法改正の促進など経済界の要望や見解を述べている。それから、消費者団体訴訟制度に関しては、濫訴防止は重要であり、企業活動が萎縮することのないよう制度の検討を進めていく考えを明らかにした。それから、会社法制については、代表訴訟制度など、経済界の要望も盛り込んだ改正が進められている。今国会での早期成立をお願いしたい。
 これは、経団連が言っているんだから。こういうふうにはっきりと経団連のホームページで紹介をされているわけですね。そういう経団連の要望を受けまして、実際に会社法制について検討を行い、何度もその要望を聞いた上で、具体的には余り時間がありませんから紹介できませんけれども、こういう今回の法改正につながっているわけであります。
 ですから、経団連の要望と関係ないと南野大臣おっしゃいましたが、南野大臣は知らないのかもしれませんが、しかし、自民党の政策の中にまさに経団連の要望そのものが入っている、それが今回の法案として出されているということは事実経過からいって明らかであり、そしてまた、アメリカでやられていて当然日本でも取り入れられなければならないものが、そういう中で取り入れられていない、いろいろな理由で取り入れられていないということが事実だという点を指摘しまして、時間が参りましたので終わります。

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