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金融(銀行・保険・証券) (証券取引所)

2005年04月27日 第162回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【301】 - 質問

証券取引所の上場について 佐々木議員 参考人質問

 2005年4月27日、財務金融委員会で、日本証券業協会・越田弘志会長、東京証券取引所・鶴島琢夫社長、日本公認会計士協会・藤沼亜起会長、東大大学院法学研究科・神田秀樹教授を参考人として招致し、証券取引に関する件について質疑が行われました。
 佐々木憲昭議員は、証券取引所の上場の問題や大阪証券取引所で起こった情報漏洩問題について質問しました。
 佐々木議員が「アメリカのニューヨーク証券取引所が株式会社化及び上場をなぜしてこなかったのか」と質問したのに対し、神田秀樹東京大学大学院教授は、「取引所の果たすべき役割、性格と(株式会社形態が)相いれない所があるのではないか、株式会社形態になることを認めることは長所よりも(今言った)短所の方が大きいのではないか、という危惧があったからだと思う」と答えました。
 また、今年3月16日に起こった大阪証券取引所の情報漏洩問題で、佐々木議員が「市場の公平公正を基本においた運営を必要とする証券取引所が逆に市場をゆがめたことであり、このようなことが起こらない体制が必要」と指摘。
 鶴島琢夫東京証券取引所社長は、「大変重要な指摘であり、その点は今後とも我々十分頭に置きながら対応する」と述べました。
 越田弘志日本証券業協会会長は「情報管理を徹底し、適切な情報開示を推し進めている取引所で、もしそのような事態があったとすれば、非常に遺憾なことだ」と述べました。

議事録

【参考人の意見開陳部分と佐々木憲昭議員の質問部分】
○金田委員長 証券取引に関する件について調査を進めます。
 本日は、参考人として、日本証券業協会会長越田弘志君、株式会社東京証券取引所代表取締役社長鶴島琢夫君、日本公認会計士協会会長藤沼亜起君、東京大学大学院法学政治学研究科教授神田秀樹君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、越田参考人、鶴島参考人、藤沼参考人、神田参考人の順序で、お一人10分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 それでは、越田参考人、よろしくお願いいたします。
○越田参考人(日本証券業協会会長) 日本証券業協会の会長を務めております越田でございます。よろしくお願いいたします。
 常日ごろ、諸先生方には、証券市場、証券界に対して御理解、御支援をいただき、この場をかりまして厚く御礼申し上げます。
 株式市場は、一昨年の4月に日経平均株価が7,607円をつけ、バブル崩壊後の最安値をつけましたが、その後の日本経済、企業業績の回復、不良債権問題の処理による金融不安の回避などにより、その後の株価は上昇に転じております。最近は、アメリカの株式市場の下落や中国でのストにより外国人投資家の買いが減少し、相場は弱含みにありますものの、数年前の悲観的な状況からは抜け出し、景気の改善に支えられつつ、長期的には強気の見通しが多いように思われます。
 この間、国を挙げて、日本経済の再生に向けて、法令改正を含めさまざまな政策に取り組んでいただきました。特に、一昨年、昨年の証券税制の改正において、貯蓄から投資への政策を推進するため、株式売買益等に対する10%の軽減税率を初め種々の措置を講じていただきましたが、これらの措置は、諸先生方の多大なる御理解、御支援のたまものであり、この場をおかりして、重ねて御礼を申し上げます。
 私ども証券市場に携わる者といたしましては、かねてより、証券市場の活性化に心がけておりますが、この活性化は、証券市場に多様な投資家の参加があってこそ実現するものであります。そして、証券市場に多くの投資家に参加していただくためには、市場の透明性、公正性は欠かせないものであると認識しておりますが、残念なことに、企業買収と公開買い付けに伴う市場ルールのあり方や上場企業の継続開示の不備が問題となり、証券市場の透明性、公正性が改めて問われる事態が発生いたしました。
 企業買収という行為については、それ自体問題があるわけではなく、不公正、不適当な行為として実行されるところに問題があると考えます。本来ならTOBで行うべき取引が立ち会い外取引により行われ、一般株主が事情を知らないまま、取引にも参加する機会のない形で進められたことは、制度の趣旨から見て問題ではないかと考えます。
 また、投資家が株式投資を行う場合、発行会社の状況が適切に開示されていることが原則であり、発行会社に大きな影響を及ぼす親会社があれば、当該親会社の状況が開示されていない場合、投資家は目に見えない部分で常にリスクを負ってしまうことになります。申し上げるまでもなく、市場の透明性、公正性の確保は、発行会社の正しい開示が前提であります。
 これらの問題につきまして、今般の証券取引法改正により、公開買い付け、TOB規制の適用範囲の見直し、そして上場会社の親会社に対する情報開示の義務づけ、継続開示に対する課徴金制度の導入について速やかに御対応いただけることは、まことに時宜を得たものと存じております。
 さらに、日本語による要約等の添付を前提とした外国会社等の英文開示を認めていただくことにつきましても、我が国証券市場の国際化、競争力の向上の観点から重要であると存じます。
 最後に、私ども証券界といたしましても、さらなる証券市場の活性化に取り組むとともに、今般の証券取引法の改正が証券市場の信頼向上につながるよう努めてまいりたいと存じますので、諸先生方におかれましても、引き続き御支援を賜りますようお願い申し上げます。私の冒頭陳述といたします。
 以上です。(拍手)
○金田委員長 越田参考人、ありがとうございました。
 次に、鶴島参考人、よろしくお願いいたします。
○鶴島参考人(株式会社東京証券取引所代表取締役社長) 東京証券取引所の鶴島でございます。
 本日は、当委員会におきまして意見を述べる機会を与えていただきまして、厚く御礼を申し上げます。
 御高承のとおり、証券市場は企業の長期資金調達の場であり、また国民の資産運用の場でございまして、それを通じ、国民経済の円滑な発展に寄与するという役割を担うものでございます。
 こうした証券市場が本来の機能を果たすためには、市場に対する信頼性を確保することが必要不可欠であると考えておりますが、そうした中で、昨年来、株式市場のあり方、あるいは市場での取引のあり方といった点でさまざまな事象が発生し、改めて市場の信頼性が問われていると認識をいたしております。
 昨年、市場で大きな注目を集めました西武鉄道の件などにつきましては、私どもも非常に重要な課題をちょうだいしたと受けとめ、上場制度の見直しを中心に、幾つかの施策を講じることで対応をさせていただきました。
 簡単に紹介をさせていただきますと、まず、上場会社が遵守すべき基本理念といたしまして、東証の適時開示規則の中に、上場有価証券の発行者は投資者への適時適切な会社情報の開示が健全な証券市場の根幹をなすものであるということを十分に認識し、常に投資者の視点に立った、迅速、正確かつ公平な会社情報の開示を徹底するなど、誠実な業務遂行に努めなければならないということを明定いたしました。
 また、投資者への適時適切な情報開示につきまして真摯な姿勢で臨む旨を述べた宣誓書を上場会社に提出していただきますとともに、上場会社が有価証券報告書等を提出した場合、私どもに有価証券報告書等の記載内容の適正性に関する確認書を提出していただき、それぞれ東証ホームページを通じて一般の閲覧に供することといたしました。
 さらに、ことしに入りましてからは、ニッポン放送株式をめぐり、企業のMアンドAや敵対的買収防衛策につきまして、株式市場の制度がそれにどのように対処をするのかという点が課題となっております。
 この件につきましては、商法の改正を含めまして、これから各方面でまだ議論が進むものと考えておりますが、私どもでは、去る4月21日に、上場会社各位に対しまして、「敵対的買収防衛策の導入に際しての投資者保護上の留意事項について」と題しまして要請を行っておりますので、その内容につきまして簡単に御説明をさせていただきたいと存じます。
 留意事項の内容は、大きく四点ございます。
 第一に、株主、投資者に対して十分な適時開示が行われるということであります。
 第二点目は、防衛策の発動、解除及び維持の条件が不透明でないことであります。
 三点目は、買収者以外の株主、投資者に不測の損害を与える要因を含むものでないことでございます。
 この点につきまして一言つけ加えさせていただきますと、例えば、買収者があらわれたことを行使の条件とする新株予約権を利用した防衛策、これはライツプランあるいはポイズンピルと呼ばれておりますけれども、こうした防衛策のうち、新株予約権を防衛策導入時点の株主等に割り当てておくといったスキームでは、防衛策が実際に発動されますと、新株予約権を保有していない株主、すなわち割り当て日の後に株主になった者は、買収者以外の株主であっても、保有している株式の価値が大きく希釈化をされ、著しい損失をこうむる可能性がございます。このように、買収者以外の株主、投資者に不測の損害を与える要因を含む防衛策の導入は、市場の混乱を招くものでありまして、投資者保護上適当でないと考えている次第でございます。
 四点目は、株主の意思表示が機能しない防衛策でないことであります。
 株主の意思に基づいて取締役が解任された場合においてもなお解除することができない防衛策、いわゆるデッドハンド型の防衛策と申しますが、このような防衛策が講じられておりますと、買収者の提案が株主総会で支持された場合でさえも買収が実現しないこととなりまして、議決権行使による株主の意思表示が機能しないということになるわけであります。このような防衛策を導入している会社が発行する上場株券は、他の一般の上場株券と比較をいたしまして重要な権利が十分に備わっていないものと言えるわけでありまして、証券市場において投資者に提供する上場物件としての適格性に欠けるというふうに考えられます。したがいまして、こうした状況を生じさせる防衛策の導入は、原則として投資者保護上適当でないと考えているところであります。
 この留意事項に掲げました考え方は、5月に公表をされる見込みの、経済産業省、法務省による企業価値防衛指針の内容や関係各方面の議論を踏まえて、将来の制度化を視野に入れておりますことから、この留意事項に沿わない内容の防衛策を導入した会社が仮にあった場合には、制度化後にスキームの見直しをお願いすることも考えられるわけでございます。そのため、上場会社各社には、明確でない場合にはあらかじめ私どもに御相談をいただくよう御案内を申し上げているところであります。
 次に、まとめといたしまして、最近の市場における投資環境につきまして、私どもが感じておりますところを簡単に述べさせていただきたいと存じます。
 取引所市場を中立公正に運営していく立場にある私どもといたしましては、各企業の個別具体的な戦略や行動につきましてはコメントをする立場ではございませんが、一般論として申し上げますれば、上場会社がさまざまな戦略を検討したり行動を起こしたりする際には、株主や投資者の視点に立って考えていただくことが必要となりますし、この戦略や行動に対する評価は基本的にはマーケットによって評価されるものであると考えております。
 また、上場株式の売買は、証券取引法を初めとするルールに基づいてだれでも自由に行えることでありますし、上場会社の企業活動も、商法を初めとするルールに基づいて自由に行えることが原則であると考えます。
 しかし、多くの投資者が集まります市場におきましては、その市場に参加する、あるいはその市場を利用するための前提があると考えております。それは、当たり前のことではありますが、株主や投資者の視点に立った行動をしていただくということではないかと考えております。売買をする場合もそうですし、上場会社がさまざまな企業行動をとられるときもそうであります。みずからの行動が株主の利益になるか、投資者にとって公平であるか、その行動に透明性があるか、こういうことだと思います。そうした基本的考え方に立って市場を利用するというのが、市場利用者に求められる資格要件ではないかと考えているところであります。
 そこで、こういった視点で市場を利用いただいたかということが最初にございます。また、私どもといたしましても、そういう市場利用の前提めいたものを御理解いただき、守っていただくための一層の努力が必要であり、そのための具体的対応も図らなければならないと考えているところでございます。
 それから現在の市場は、いわゆる金融ビッグバン以降導入されてきたさまざまな制度が、導入当初の趣旨とは異なる使われ方をしてきているということも感じております。本来の趣旨と異なる使われ方のすべてが問題ということではございませんが、よかれと思って導入した制度が、市場の信頼性を脅かしたり投資者にとっての透明性に欠けるということになれば、やはり市場の健全性という視点からはどうかという感覚もございますし、さまざまな制度本来の趣旨を十分に酌み取っていただく必要も感じているところでございます。
 ニッポン放送株式をめぐる一連の出来事は、社会的にも注目を集め、私どもが開設する市場がどのように利用されるのかという点も含めた、ルールと上場会社や投資者の経済活動の自由との関係につきまして、非常に幅広い関係者の方々に関心を持っていただく契機になったのではないかとも思います。もちろん私どもにとりましても、一連の出来事を通じて、さまざまな点から問題が提起されたものと受けとめております。
 提起された問題の中心は、やはり公開買い付け制度や敵対的買収に対する課題になるかと存じますが、会社支配権をめぐる問題以外にも、関連する課題といたしまして、株式分割や転換社債を使った資金調達などにつきましても、その制度本来の趣旨や市場のあり方との関係について指摘がなされているものと認識をしております。
 こうした問題提起を受けまして、私ども東証では幾つかの対応策を講じたところであります。一例を挙げますと、株式分割が、投資単位の引き下げを通じて、個人投資者層の市場参加を促す有効な手段であることを十分に認識した上で、極端に大幅な分割の場合は株価の急激な変動を招く事例が見受けられることから、上場会社へ向けて、この3月に「大幅な株式分割の実施に際してのお願い」と題する要請をした次第でございます。
 また、ToSTNeTを利用した、公開買い付け規制の趣旨に反するような取引への対応といたしましては、公開買い付け規制に係る改正証取法が施行されるまでの間に、公開買い付け制度の趣旨に照らして問題とされるような取引が行われないよう、ToSTNeT取引の受託については十分に注意していただくように市場参加者に対し要請を行ったところでございます。
 私どもといたしましては、今後とも、市場運営者として、投資者が安心して参加できる投資環境を提供できるよう、一層の努力を払ってまいる所存でございますが、当委員会及び委員の諸先生方におかれましても、今後とも証券市場の発展に御高配を賜りますようお願いを申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 鶴島参考人、ありがとうございました。
 次に、藤沼参考人、よろしくお願いいたします。
○藤沼参考人(日本公認会計士協会会長) 公認会計士協会の藤沼でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、参考人として意見を述べる機会が与えられましたことに対して、まことに感謝しております。私は、日本の消費者社会からという問題が、やはり銀行から証券へという流れをつくらなくてはいけないというふうに信じております。そういう面で、強固な信頼できる資本市場をつくるということは非常に大事なことであるというふうに私は思っております。
 特に、これは一部の分野の人だけが改善の努力をすればいいということではなくて、すべての資本市場の参加者、すなわち企業、それを監査する我々公認会計士、また基準の設定をする会計基準の委員会、あるいは監査基準、そういうような基準設定主体、あるいは証券アナリスト、格付機関、証券取引所、そういうようなすべての資本市場の参加者がきちっとした努力をすることが大事なのではないかというふうに思っております。
 公認会計士については、財務情報について、その適正性について信頼性を付与するという仕事でございますので、私どもはこの責任を重く受けとめ、きちっとした仕事をしていきたいというふうに思っております。
 きょうは証券取引に関する件ということで、法改正について、それとディスクロージャー制度の向上に向けての公認会計士協会の取り組みの問題、それと公認会計士協会の自主規制活動の充実策について御説明をさせていただきます。
 まず第一の、法改正についてでございますけれども、今回の法改正のポイントは、継続開示会社への課徴金の導入という修正案を含めて、四点あります。公認会計士協会としては、ディスクロージャー制度の改善に資する継続開示会社への課徴金制度の導入については、有価証券報告書の作成責任を有する企業にその適正開示を促すという観点から、賛成いたします。
 第二の、親会社等状況報告書制度については、自己責任でリスクを引き受ける投資家の投資判断情報の充実の観点からも必要であると考えております。
 第三に、外国会社等の英文による継続開示については、資本取引の国際化、グローバル化の観点から、時代にマッチしたものだと思っております。
 最後に、公開買い付け制度の見直しにつきましては、証券取引所における競争売買の方法以外の方法による取引ルールを明確化するという観点から、賛成しております。
 次に、ディスクロージャー制度の向上に向けての公認会計士協会の対応策についてでございます。
 今回、参考人として説明するせっかくの機会が与えられましたので、昨年秋に発覚いたしました西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載問題やIT関連業界の会計不祥事件等に関しまして、自主規制団体として、協会の対応状況を説明させていただきます。
 昨年末から協会が取り組んできた対応を集約したものとして、ことし3月に会長通牒「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けて(監査人の厳正な対応等について)」を発出し、今後同様な問題が再発することのないように、会員に強く注意を喚起いたしました。
 第一に、有価証券報告書等の不実記載への対応でございます。
 金融庁は、昨年11月、有価証券報告書の虚偽記載問題を契機に公開会社約4,500社に自主点検を指示いたしましたが、協会は、訂正報告書の訂正内容等について独自に集計、分析いたしました。その結果、約14%強の会社で、名義株等に関する訂正のほか、多くは単純な掲載ミスでありましたが、そういうような訂正が発見されました。
 財務諸表を省く有価証券報告書の不実記載も、有価証券報告書の作成者である会社の責任であります。これらの不実記載は証券市場の不信感につながる可能性がありますので、監査人に対して、財務諸表以外の記載事項についても会社を指導するように注意を促しております。
 第二に、監査の品質管理レビューへの対応でございます。
 金融庁から公表されましたディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応において、個人会計士が行う監査の品質管理や、長期間監査を継続している監査人の独立性に重点を置いた品質管理レビューの実施が求められております。
 また、ことし2月9日には、協会は公認会計士・監査審査会から、品質管理レビューの向上に向けての提言を受け取っております。
 公認会計士協会は、レビュー体制の強化や監査事務所の品質管理の改善のために真摯な努力を行っております。そのために、レビュー体制を充実することから、レビュー員を10名から20名に増員するとともに、ことしの3月には全国ベースで約5回の研修会を開催して、品質管理レビューの強化を会員に教育いたしました。
 あと、第三番目に、東京証券取引所との共同プロジェクトに関する件です。
 昨年11月に東京証券取引所と公認会計士協会で共同プロジェクトを立ち上げ、対応策を検討しております。検討課題としては、東証と協会との横断的ホットラインの創設等前向きな案を取り上げ、今後とも検討作業を続けていく予定にしております。
 最後に、情報サービス産業の会計不祥事の対応です。
 これは、昨年情報産業の会計不祥事が多発したことから、昨年12月にPTを結成し、本年3月にPT報告を公表いたしました。特に、情報産業が、ソフトウエアの取引等、無形資産、資産の実在性、収益の認識等の確認が極めて困難であるという特質を有しておりますことから、その辺の問題に取り組んだ注意喚起を会員に行っております。
 また、商社的取引、スルー取引、Uターン取引、クロス処理取引等、異常に入り組んだ売上計上基準で会計が行われておりますので、これは、企業会計基準委員会に収益認識基準の検討をお願いして、早急に検討されるということを聞いております。
 最後に、公認会計士協会の自主規制活動の充実についての取り組みでございますが、現在、JICPA、公認会計士協会の運営について、自主規制機能の充実と透明性の確保という観点から、総合的に検討しております。
 具体的には、品質管理レビュー体制の強化、各会員の監査の品質管理を強化するための体制を強化しております。あと、会員処分の公明性や透明性確保のために、綱紀事案処理体制の見直し、継続的専門教育、これはCPEと言っておりますが、その充実、あと、中小会計事務所の監査の充実のための支援策を検討するための常設委員会の設置等にも取り組んでおります。
 我が協会は、昨今の監査に対する社会の批判を真摯に受けとめ、自主規制機能を発揮し、監査の信頼性向上に精力的に取り組む所存でございます。
 以上でございます。(拍手)
○金田委員長 藤沼参考人、ありがとうございました。
 次に、神田参考人、よろしくお願いいたします。
○神田参考人(東京大学大学院法学政治学研究科教授) 東京大学の神田と申します。
 本日は、本委員会におきまして意見を述べさせていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。さっそく私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 お手元に一枚紙を配付させていただきましたが、私からは、投資サービス法の制定の必要性ということと、企業買収に関するインフラ整備ということの二つについて、お話をさせていただきます。
 まず、一番目の投資サービス法の制定についてでございます。
 本日、私は、投資サービス法という名前を使うことにいたしまして、金融サービス法という名前を使わないことにいたしますが、それには次のような二つの理由があります。
 すなわち、第一に、伝統的な銀行取引分野と保険取引分野についてはそれなりに業者ルールが整備されていますが、これらを除いた金融分野につきましては、これを投資サービス分野と呼びますけれども、横断的な業者ルールが不在でありまして、かつ、昨今のIT技術もあり、その不在の部分で多様な投資商品が続出してきています。したがって、そのような伝統的な銀行取引と保険取引を除く分野について、投資サービス法という投資家保護のための横断的な業者ルールの整備が急がれるということであります。
 第二に、投資サービス分野につきましては、市場の番人とでもいうべき強力な市場監視体制が必要でありまして、これを日本版SECなどと呼んだりいたしますが、これは伝統的な銀行取引や保険取引ではなくて、それらを除いた資本市場取引、すなわち投資サービス分野に必要なことであるからであります。
 そこで、(1)の投資サービス法の必要性についてであります。
 日本の金融資本市場は、伝統的な間接金融から直接金融へその軸足を移すべきことの重要性が叫ばれて久しいわけです。直接金融といいましても、個人の投資家と資金調達者との間には、年金ですとか投資信託ですとかそういった機関投資家が中に入る形も多いので、これを市場型間接金融と呼ぶ人もいます。近年は、企業再生ファンドからラーメンファンド、ワインファンドといったものに至るまで、次々とこのタイプの新しい金融の仕組みが登場し、将来はさらに一層多様な仕組みが日本に続々と登場することが予想されます。
 このような多様な投資商品の登場は、金融イノベーションを促進し資本市場を活性化するものでもありまして、いわゆる貯蓄から投資へという流れを後押しするものとして、歓迎すべきことです。また、多様な投資商品の登場は、投資家にとっても歓迎すべきことであります。それは、投資の対象が広がり、投資の選択肢が広がるからであります。
 しかし、このような投資商品が多様化すると必ず登場いたしますのが、投資家、特に個人投資家を欺くような詐欺的な販売、勧誘であります。したがって、投資商品の多様化を進めていくためには、制度的な基本インフラとしての投資家保護法制の整備が欠かせません。
 金融ビッグバンにもかかわらず、販売業者などを規律する業者ルールは、関係する業法も縦割りのままでありまして、横断的な法制が不在のままの状態です。
 現在の制度のもとで、資本市場の基本法と言われております証券取引法は、有価証券を対象としてディスクロージャー制度や業者ルールなどを定めていますが、そこでの有価証券概念は狭く定義されたままであります。平成四年の改正等で、それ以来、有価証券概念は少しずつ拡大されてはきておりますが、新しい動きには対応し切れておりませんで、最近の再生ファンドやラーメンファンドなどはそのほとんどが対象外となっています。
 このような現在の証券取引法は、次々と新しい投資商品が登場する結果として、その守備範囲が狭くなっていまして、図で申しますとすき間の部分が拡大しているということなんですけれども、こうした証券取引法の適用範囲の減少傾向が続いているわけであります。
 このような横断的な投資家保護法制が不備という状態では、投資商品によってはですが、業者を監督する官庁も不在で、被害をこうむった投資家は自分で損害賠償請求訴訟を起こすくらいしかないという投資商品が今後続々登場しかねないという状態にありまして、そのような資本市場が国民の信頼を得られるはずがなく、日本の資本市場の将来の発展は望めません。
 そこで、次に、投資サービス法の方向感でありますけれども、昨年6月の証券取引法改正では、組合形態の投資ファンドの持ち分を証券取引法の適用対象とするなど、その方向は正しい方向を向いていると思います。また、昨年12月に成立いたしました金融先物取引法改正では、外為証拠金取引について、新しい投資家保護法制を導入しました。しかし、これらの改正は、これまでの法体系を大きく変えないでの緊急的な措置と理解すべきでありまして、近い将来には投資サービス法を構築することが急務であります。
 個々の投資商品ごとに現在の証券取引法や金融先物取引法の適用範囲を広げていくというやり方では限界があります。第一に、こういうやり方ですと、新しい商品が登場するたびごとに後から法改正をして対応するという後追いになってしまいます。第二に、現在の証券取引法は、伝統的な株や債券を念頭に置いておりますので、若干硬直的な構造になっています。
 したがいまして、現在の証券取引法を思い切って改組し、法律の名前も、この際、投資サービス法などと改称いたしまして、その中身のルールも柔軟化して、各種の投資商品あるいはその仕組みに応じた柔軟な規制構造をつくり上げる一方で、投資家への業者による投資商品の販売、勧誘につきましては横断的なルールを整備することがぜひとも必要であります。その目的は、資本市場分野における投資家保護ですけれども、同時に、金融イノベーションの促進を通じた日本の資本市場の活性化にあることを忘れてはならないと思います。
 そして三つ目に、市場の番人も必要ということでありまして、日本の資本市場は、市場の番人として知られるアメリカのSECのような強力な、日本版SECと呼ぶことができるような体制を樹立することが必要と思います。
 昨年の改正でも、一定の市場ルールに違反した者に課徴金を科す制度を新設するなど新しい取り組みが含まれており、また、昨日この衆議院で可決いただきました改正法案では、流通市場における虚偽開示の場合に課徴金制度を導入いただきましたことは大変重要なことでございます。今後は、資本市場への国民の信頼を確保するためにも、十分な予算と人員を擁した市場監視機能とその体制を強化するということが日本にとって不可欠の課題だと思います。
 以上をまとめますと、資本市場は特に自由度が高い市場であり、そうでなければ発展しません。しかし、自由と引きかえに、市場を悪用し投資家を欺く業者が後を絶ちません。したがいまして、資本市場を横断する業者ルールである投資サービス法を整備するとともに、市場の番人となる、日本版SECと呼ぶことができるような市場監視体制を樹立することが急務であると思います。
 次に、簡単に、二つ目の、企業買収についてのインフラ整備について申し上げます。
 最近のニッポン放送をめぐる裁判等は、日本でも企業買収本格化時代を一気に迎えたという感じを強く与え、そして、日本で企業買収本格化時代における法や裁判所の役割は何かということを考えさせるいい例になりました。企業価値とは何か、取締役会にはどういう権限があるのか、株主の利益とは何か、また上場会社はだれのものかといった問い、そして企業買収や買収防衛策について、いろいろと考えさせる論点を提供しました。
 この分野は、法律という観点から見ますと、商法、会社法、証券取引法、税制など、関連する制度も多岐にわたっています。また、これらについての先進諸外国の制度はばらばらに異なっていまして、難しい分野であります。しかし、考え方は単純でありまして、諸外国の制度とも、達成しようとしている目標は共通です。
 この分野は、日本ではまだまだ経験不足です。今は何か必要以上に慌てているような感じがいたします。敵対的買収、対象となる経営陣が賛同していない買収ですけれども、イコール悪というわけではありません。買収にはよい買収と悪い買収があります。よい、悪いとは社会から見てという意味でありまして、区別の基準になるのは企業価値あるいは会社の価値であります。つまり、企業価値を高める買収はよい買収で、実現されるべきでありまして、企業価値を損なう買収は悪い買収ですので、実現されるべきではないということであります。
 したがって、防衛策についていいますと、悪い買収はとめるべきですが、よい買収はとめるべきではありません。そのように作動するような防衛策が合理的な防衛策であるということになります。日本は、そのための経験と知恵を重ねていく必要があります。
 世界のお金の流れ方は、ここ10年くらいの間に急変しました。買収ファンドと呼ばれる仕組みが多数登場し、世界の金融市場において、企業買収のために巨額のお金がすぐ集まるようになりました。その結果、買収しようとする者は、自分に資金がなくてもすぐにお金を調達できるようになっているのが現状です。したがって、企業買収はいとも簡単になったわけです。つまり、今日では、上場会社であればどんな会社も瞬時のうちに買収の対象となり、その資金も集まるという現実があるということを直視すべきです。その上で、悪い買収はとめ、よい買収であれば実現させるという姿勢を持つことが重要です。その手段として、防衛策などが工夫されるべきであります。
 証券取引法による株式公開買い付け、TOB制度につきましては、昨日可決いただきました証取法改正でも、ToSTNeT等による立ち会い外取引についての重要な改正が含まれています。支配権争いが生じた場合に、一方が証券取引法に基づく公正な公開買い付け手続をしているのに、他方は立ち会い外取引で株式を買い集められるというのでは、市場で判断する株主や投資家にゆがみをもたらし、公平とは言えません。今回の改正はこの点を是正する緊急改正です。
 しかし、これ以外にも、企業買収についてのルールの整備を検討する必要があるように思います。例えば、現在の制度のもとでは、公開買い付けが開始した場合に、公開買い付け期間中に対象となる会社は株式分割ができます。そういうことが起きても、公開買い付けをしている者は公開買い付けの条件は変えられないと言われています。そういう状態では、公開買い付けをする者に致命的に不利であります。これは公開買い付けをする者にとっての不平等の是正という課題です。
 また、そのほかにも、公開買い付け者の情報開示の強化ですとか、アメリカのように公開買い付けについての開示、大量保有報告書等に不実開示があったような場合には対象会社からの公開買い付け差しとめ訴訟を認めるといった制度も検討に値するように思います。
 なお、この点に関連して、行政が投資家にかわって差しとめをするという現在の証券取引法192条という条文がありますが、法律の制定以来、一度も使われていないというのも問題だと思います。一昨年12月の金融審議会での提言にもかかわらず、この制度の改善が実現しないままであることは大変残念であります。
 なお、公開買い付け制度以外にも、大幅な株式分割を繰り返し、その間に株式を買い上げることで株価をつり上げるとか、資本市場において許されるべきではないようなやり方が日本では横行していると言ってもよい状況にあります。先ほどもお話がありましたが、東京証券取引所が、こうしたいわば資本市場のおきてに反するような取引をしないようにと、その自粛を上場会社に要請したことは、当然の措置であります。
 以上を要しますに、証券取引法の公開買い付け制度や、より広く、企業買収に関するルールのあり方につきましては、今後も引き続き本委員会において積極的な御検討を深めていただければ大変ありがたいと思います。
 以上で私の意見の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 神田参考人、ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。(中略)



○金田委員長 時間が押しておりますけれども、もう少しおつき合いいただきたいと思います。
 次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。最後の質問者ですので、どうかよろしくお願いいたします。
 まず、証券業協会の越田参考人にお伺いします。
 先ほどの意見陳述で、市場の透明性、公正性が確保されることが重要である、私もそのとおりだと思います。そこで、取引の場を提供する証券取引所の問題についてお聞きをしたい。
 5年前に証券取引所を株式会社にすることを可能とする法改正が行われまして、その後、東京証券取引所、大阪証券取引所も株式会社になりました。その上で上場したのは大阪証券取引所であります。証券取引の場を提供する取引所が、自分の市場に自分を上場するということはいろいろな問題が発生すると私は思いますが、この点、どのようにごらんになっているのか、まず御意見を伺いたいと思います。
○越田参考人(日本証券業協会会長) 証券市場の上場に関しましては、最近ではニューヨーク証券取引所も上場の意向であるということが伝えられております。ヨーロッパの証券取引所も上場しております。そういった観点から、コンピューター投資その他上場の必要性は片やあるということは十分理解できるかと思います。
 今仰せのとおり、自主規制との関係においてでありますが、証券取引所自身が開設している市場に最も近い場所にいるわけでありますから、必要かつ十分な市場監視活動を行い、証券取引所における取引の公正性、透明性を確保していただくなど、市場運営が適切にかつ円滑に行われるような自主規制機能を発揮していただくのが望ましい。上場に当たってもこの点は十分勘案していただきたい、このように考えております。
○佐々木(憲)委員 神田教授にお伺いします。
 一つは、今お話ありましたように、ヨーロッパなどでは取引所が既に上場されている。その場合、どのようなルールのもとで規制が行われているのか、御承知でしたら教えていただきたい。
 それからもう一つは、アメリカのニューヨーク証券取引所の場合、上場するという意向は伝えられていながら、なかなか、上場をすぐはせずに見送られているわけです。最近は、電子取引所との統合をめぐりましていろいろな議論があって、上場との関連でも議論されているようであります。このニューヨーク証券取引所の上場していない理由、何を危惧して上場していないのか、その点もぜひ教えていただければと思います。
○神田参考人(東京大学大学院法学政治学研究科教授) 御質問ありがとうございます。
 ヨーロッパの方ですけれども、証券取引所自体が株式会社形態になって、かつ、その株式は自分のところに上場するという制度につきましては、当然のことですけれども、一般には監督当局が承認をする。取引所の公益性その他が損なわれるおそれがないかどうかということをチェックする意味で、厳重な意味での承認制をとっています。それから、言うまでもありませんけれども、上場した後も証券取引所は必要な監督を受けますので、そういう意味においてはほかの一般の上場会社とは全然違うということが言えようかと思います。
 アメリカがどうかということにお答えするためには、一歩戻って、証券取引所が株式会社形態になることがなぜ今求められているのかということが一番重要だと思います。アメリカでは、長らく議論した結果、株式会社形態になること自体にストップをかけてきたという歴史があるからです。
 なぜ証券取引所が従来の会員組織から株式会社形態になってもいいとするか、これは、なる義務はありませんで、なりたくないところは会員組織でもいいので、株式会社形態になってもよろしいということなんですけれども、そういう制度改正をしたかについては、人によって意見は分かれますけれども、抽象的に言えば長所と短所、株式会社形態、会員形態それぞれ一長一短であって、当事者の選択にゆだねていいのではないか。とりわけ株式会社形態に移行することによって、より長所が発揮できるような、そういう取引所があるのではないかというのが株式会社形態への移行を認める議論です。
 株式会社形態の長所というのは、ちょっと時間がありませんので簡単に申し上げますと、意思決定の迅速、資金調達の多様性、そしていわゆるガバナンス、この三つにあると言われていますけれども、そういう意味で、私の理解では、東京証券取引所も大阪証券取引所も株式会社形態に移行されたんだと思います。もしそれが長所だということになれば、その資金調達の多様性を生かすためには自分の株も上場して公開する方がいいわけですね。
 したがいまして、ロジックだけを申し上げますと、株式会社形態になった理由のうちの資金調達というところを強調するのであれば、株を上場して資金調達の道を開いた方がいいわけですし、そうではなくて、ほかの長所というのでしょうか、意思決定の迅速あるいはガバナンスというふうに私申し上げましたけれども、これらの長所は別に上場までしなくても株式会社形態であれば達成できるわけですから、そちらを強調すれば上場までしなくていいということになります。
 アメリカは、その一歩手前で株式会社形態になること自体にストップをかけてきたわけですけれども、その理由は、私が理解するところによりますと、そもそも株式会社形態になった場合の長所と短所を比較しますと、先ほどから言葉が出ています公益性というのでしょうか、取引所の果たすべき役割、性格と相入れないところがあるのではないか、したがって、株式会社形態になることを認めることは長所よりも短所の方が大きいのではないか、そういう危惧があったからだと思います。そのほかにも政治的な理由等もありますけれども、おおむねそういうことだと思います。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
 東京証券取引所の鶴島参考人にお伺いをいたします。
 一般の株式会社と違いまして、証券取引所というのは、上場企業の内部情報に触れる機会というのが比較的多いと思うんですね。それから、上場を目指す企業の内部情報を上場前につかむということも可能になる。そういう意味で、証券取引所というのは特殊な株式会社だというふうに思うんです。
 東京証券取引所の場合は、取締役10人のうち5人が社外取締役で、大手企業のトップも就任されております。その場合、情報をより早くキャッチして、それをインサイダー取引に使い得る、そういう危険性というものもあると思うので、それを防止する手だてというものを一体どのように考えて、どのような措置をとっておられるのか、これをお聞かせいただきたい。
○鶴島参考人(株式会社東京証券取引所代表取締役社長) お答えいたします。
 まず初めに、御指摘のように、私どもの業務の性格上、ガバナンスの問題については大変慎重に考える必要があるということで、私ども、取締役会、今現在確かに社外が5、社内が5ということですが、枠組みとしては社外6、社内5、しかも、取締役会の下に指名・報酬委員会というのをつくっておりまして、この指名・報酬委員会も社内が2、社外が4ということで、透明性、公正性を確保していく、こういう枠組みで現在運用をしております。
 おっしゃられるように、この社外の6のうち、構成は、出身母体を見ますと、上場会社出身者が2、証券会社出身者が2、学識経験者、学者の方が1、そしてアナリストといいますか、あるいは機関投資家といいますか、この方が1、こういう構成になっております。おっしゃられるように、東証の業務がゆがめられないように、その構成につきましてもバランスをとった形で、一方に偏らないという形で配慮をしたつもりでございます。
 それから、今御懸念の、情報が早く入るではないかということについては、あらかじめ社外取締役の方にも、情報の窃用といいますかそういったものは行わないという確約をとって、そうしたことを防止しているということでございます。
 ただ、付言させていただきますと、御懸念のように上場会社あるいは証券会社出身の方がおられますので、できるだけ代表権を持ったような方は、同じ出身母体の方でも今後利益相反ということを、外から見てもそうした疑念を持たれないように配慮をして、改選時にはそういう配慮をしながら行ってまいりたい、こう考えております。
○佐々木(憲)委員 株式会社になること自体にいろいろな問題もありますし、それから株式市場そのものにみずから上場するということになりますとさらに複雑な問題が発生するわけでありまして、例えば証券取引所の株、自身の株を買い占めるというようなケースも出てくる。
 現に、大阪証券取引所が上場した結果、村上ファンド、最近有名になりましたが、これが10%株を買い占めたということで、それをもとに6月の株主総会で村上世彰氏を社外取締役に迎えなさい、こういう提案をする、これに対して大証の側はそれを拒否したと言われていますけれども、さらに対抗策が出るのではないか。
 あるいは、きょうの日経新聞などを見ますと、村上氏はこう言っているんです。「合理的な戦略もなしに内部留保を積み上げていることを一番に問題視している。大証は内部留保を審議する諮問委員会を作るという。求められれば委員になる」というような発言をされている。それで、公益性の強い取引所に一般企業と同じように利益還元を求めることには異論もあるがという質問に対して、村上氏は「そもそも取引所の上場には反対だ。」みずから株を買い占めながらこうおっしゃっているわけです。「資金調達や投資計画もないのに上場すれば、取引所の公平性が損なわれる恐れがある。大証が非上場化するのなら賛成。」というような発言もされている。
 非常にさまざまな問題点が出てくるわけであります。こういうことに対応する手だてというものも大事だろうと思うんですが、東京証券取引所は、上場はこれからだと、されるのかされないのかというのはわかりませんけれども、こういう事態を想定して、あるいはニューヨーク証券取引所の実態もよく見て、やはり取引所としての公益性あるいは公明正大な取引が行われる機能の発揮といいますか、そういう点をより自覚してやらないと、いろいろな問題が、マイナス面が起こってくるんではないかと思いますので、その点のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○鶴島参考人(株式会社東京証券取引所代表取締役社長) 御指摘の点は十分に心しなければならない問題だというふうに思っております。そして、業務の中立性、公正性をきちんと守っていくためには、やはりガバナンスにおいて、間違いのない、信頼性の持てるガバナンスをきちんとつくり上げる。先ほども申し上げましたように、現在もそういう目的意識を持ちながら現在のガバナンス体制というのをつくっております。この辺は、今後とも、十分心してまいらなければならないと思っております。
 それから、仮に上場したとした場合は、今御指摘のように、だれでも株式を取得することができる、こういうことになりますので、どういう方が株主として登場してくるか、これはわからないところがございます。法律的には50%以上は持てない、それから20%以上持とうとすれば認可が必要だ、こういう枠組みになっておりますが、その範囲内でもいろいろなことも予想されます。したがって、私どもは、基本的にはこの取引所の性格、特性、こういったものをよく理解していただける幅広い個人の株主に私どもの株式を保有していただく、そしてそのことが安定的かつ公正な運営のもとになる、こういう状態をつくることが最も肝要ではないかというふうに考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 上場した場合、情報の開示という問題でいろいろな問題がまた起こってくるわけであります。
 例えば、大阪証券取引所の事例で、最近起こりましたのが、これは3月16日の午後3時5分に大阪証券取引所がみずからの業績予想を修正したものを発表しました。また、配当の予想を修正しました。その公表を3時5分に行ったんです。ところが、公表する28分も前に、配当予想の修正内容が特定の新聞のインターネットに載ってしまう、流れる。つまり、内部情報が漏えいした形になっているわけですね。その結果、大証の株価が、その情報が流れた直後に2万3千円ほど急上昇して、40万8千円の終わり値をつけた、こういうことがありました。
 ですから、市場の公平、公正ということを基本に置いた運営をしなければならない証券取引所自身が、市場を逆にゆがめてしまったということでありまして、こういうことが起こらないような体制というものがどうしても必要だろう。私は、その上場すること自体にいろいろ問題があるので、慎重にといいますかやるべきじゃないと思っておりますが、この点についての見解。
 それから、越田参考人にこの点についてどのようにお考えか、お二人に御意見を伺いたいと思います。
○鶴島参考人(株式会社東京証券取引所代表取締役社長) 御指摘はごもっともな点だと思います。十分心しなければいけないと思っております。
 具体的に、私ども、既に社内に情報管理に関する委員会というのを設けまして、社内で発生するあらゆる情報について、その情報が管理を要する情報なのか、そうでないのかというのをきちんと区分けして、この管理委員会で発表の内容、時期等についてもきちんと管理をした上でこの情報を取り扱うという体制を今つくっております。
 おっしゃられることは大変重要な御指摘でございますので、その点は今後とも我々十分頭に置きながら対応をしてまいりたいと思います。
○越田参考人(日本証券業協会会長) 事実関係はよく承知しておりませんので何とも言いがたいんですけれども、いずれにしましても、情報管理を徹底し、適切な情報開示を推し進めておられる取引所が、もしそのような事態があったとすれば非常に遺憾なことだと考えております。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

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