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税制(庶民増税・徴税) (強権的徴税)

2005年05月17日 第162回 通常国会 財務金融委員会 【303】 - 質問

「先日付小切手を強要するな」八王子税務署の徴税事務を追及

 2005年5月17日、財務金融委員会で佐々木憲昭議員は、税務署が「先日付小切手」の提出を納税者に求めている問題について質問しました。
 八王子税務署職員が消費税等の滞納相談に訪れた業者に対し、「売掛金を差し押さえるか」、さもなくば、当座預金があるなら「先日付小切手を差し出すよう」迫っていました。先日付小切手を本人の意志に反して提出するように強要することは、してはなりません。
 村上喜堂国税庁次長は、「(納税の裏づけとして)先日付小切手の委託を強要するようなことはいたしておりません」とし、「先日付け小切手は納税者に自発的に出していただくもの」と八王子での問題を否認する答弁を繰り返しました。
 佐々木議員は、強要してはならないというのなら、「強要しないことを徹底する。また、本人が返してもらいたいといったら返すべきだ」と要求。
 村上次長は、「滞納者の方が、資金繰りが悪化して、要するに支払いができない場合には、ちゃんとその銀行から取り戻して納税者に再度お返しして、新たな納付計画に組み返すべきやっている」と答弁し、「(滞納整理において、)納税者の実情に十分配慮した事務運営を行う」ことを約束しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、財務大臣に基本的な姿勢を確認しておきたいと思います。
 さきの財務金融委員会で、私の質問に対して大臣が、税の徴収に当たっては納税者の実情に応じて、よくお話を聞いて分割納税など親切に対応することが必要だ、そういう趣旨の御答弁がありました。この点は私は大変重要だというふうに思っております。
 2001年の6月1日に、滞納整理における留意事項という国税庁の通知というものが出されておりまして、その中で、その権限の行使は滞納者の生活、事業等に重大な影響を及ぼすものであるから、滞納処分に当たっては、納税者の事情等を考慮し応接中の言動や行動には十分配慮をするというようなことが出されております。
 この点について、大臣の基本的な認識、もう一度確認をしておきたいと思います。
○谷垣財務大臣 今、佐々木委員がおっしゃいましたように、具体的な徴税に当たっては、納税者の実情等よく話をしながら進めていくということは、当然そうあるべきことだ。恐らく、指示と申しますか通達といいますか、そういうものが出ていると思いますが、そうあるべきことだと思っております。
○佐々木(憲)委員 きょうの質疑の前提として、先日付小切手というものについて確認をしておきたいと思います。
 先日付小切手というのは、実際に小切手を振り出した日よりも先の日を振出日として記載した小切手であります。振り出しのときには支払い金額がないけれども、将来のある時点以降には入金の見込みがある、そういう場合に、その日以降を振出日として記載しておいて、記載した払い出し日に支払い呈示させることをねらったものだというふうに言えると思うんです。
 しかし、小切手というものは現金の支払いにかわる機能を果たすものであって、必ず一覧払いのものとされている。これは小切手法で決められております。小切手法では、先日付であっても直ちに支払いのための呈示をすることができ、呈示の日に支払うべきものと定められております。これが先日付小切手の基本的な仕組みだと思いますが、それを確認しておきたいと思います。
○村上政府参考人(国税庁次長) 今、先日付小切手の定義についてお尋ねでございましたが、これは小切手法第28条第2項に記載がございます。お読みいたしますが、「振出ノ日附トシテ記載シタル日ヨリ前ニ支払ノ為呈示シタル小切手ハ呈示ノ日ニ於テ之ヲ支払フベキモノトス」、こう記載されております。
○佐々木(憲)委員 したがって、この小切手は約束手形とは違うものであります。先日付というのは、あってなきものでありますね、実際上は。
 だから、トラブルが続出しておりまして、ある人は、10日先に資金繰りがつきますということで、そういう理由で10日先の日付の小切手を渡した。ところが、相手が約束に反して、渡した次の日にこの小切手を銀行へ取り立てに回した。そのため、残高不足で不渡りになった。これが致命傷になって会社が倒産したという事例は、枚挙にいとまがないわけであります。
 したがって、専門家に言わせると、先日付小切手は危険なものです、不渡りの可能性があるので振り出してはだめですということを言っております。どうしても振り出さざるを得ない場合には、約束を文書で残しなさいと。なぜそうするかというと、損害賠償の請求をする際にそれが大事だから、こういうふうに言われているんです。
 わかりやすく言うとそういう性格のものだということでありますが、そういうものだということを再度確認していただけますか。
○村上政府参考人(国税庁次長) 銀行に呈示した日に現金化されるわけでありますから、そのときに銀行預金がなければ不渡りになる、そういう危険があるということは事実だと思います。
○佐々木(憲)委員 ところが、問題なのは、こういう危険な先日付小切手を税務署が納税者に強制的に提出させているという事例があります。
 これは八王子税務署の事例ですけれども、ある中小業者が国税の分割納税について税務署に相談に行った際、徴税担当の職員から、売掛金を差し押さえるか、さもなくば当座預金があるなら先日付小切手を差し出すようにと言われた。この人は、もうその小切手を切らなければあすにでも売掛金を差し押さえられると思って、小切手を渡し、この半年の間にいろいろ対策を考えたいと思いましたということで、先日付小切手を渡した。税務署に言われれば断れないわけですよ、売掛金を差し押さえられたら倒産しますから。ですから、仕方なく6枚の先日付小切手を切って委託した。しかし、額面どおりの返済は難しいということで返済を求めまして、何度か交渉した結果、ようやく徴収官の上司に当たる統括官が出てきて、謝罪し、先日付小切手を本人に返した、そして改めて返済計画について相談に応ずるということになったというわけです。
 そこでお聞きしますが、八王子税務署が謝罪したというその理由は何でしょうか。
○村上政府参考人(国税庁次長) ちょっと時間をおかりして、なぜ先日付小切手をとるかということについて御説明したいと思いますが、通常、滞納があった場合には、督促状を発付して10日以内に納付がないときは滞納整理に移行することができます。しかし、先ほど大臣からも御答弁いただきましたように、やはり納税者の実情に即した事務運営を行っておりますので、一挙に滞納整理に移行するのではなくて、いろいろ納付相談に応じているのが実情であります。分割納付とか。その場合に、納付の委託というのが国税通則法にございます。その場合の要件が、そういうので受け取れる証券が最近において確実に取り立てるべきことができ得るものと認められるときに限りその委託を受けることができるという国税通則法の規定がございます。そういうのを満たすものとして、約束手形とか先日付小切手で、かつそれが十分に支払い可能な有価証券であるということで運用させていただいておるわけです。
 なお、国税の場合は、先日付小切手でありますが、実際に支払い期日は振出日と同じにいたしております。したがって、事前に何か資金繰りが苦しくなった場合には、銀行からその小切手を取り戻しまして、納税者にお返しして、再度納付計画を立て直す、そういう形でやらせていただいているところでございます。
 なお、今、八王子税務署のお話がございましたが、本件につきましては個別の事案でございますので御説明することはちょっと困難でありますが、そういうものでございますから、少なくとも強制してそういう小切手を振り出させることはございません。
○佐々木(憲)委員 強制的にそういうものを提出させることはないと言いますが、売掛金を差し押さえるかそれとも先日付小切手を出すかということになれば、それは選択の余地はないじゃないですか。強制になるのじゃないですか。
○村上政府参考人(国税庁次長) お答えいたします。
 今御説明したのは、売掛金の差し押さえというのはあくまで差し押さえでございますから、今の先日付小切手というのは差し押さえの前段階、差し押さえまでに至らない前段階として、いわゆる納付相談の一環として行っているものでございます。したがいまして、若干、時系列的にも実際に行う行為としては違ってくるのが通常であろうと思います。
○佐々木(憲)委員 現実に行われているのは、売掛金の差し押さえをするかそれとも先日付小切手を提出するか、どちらかを選択しなさいと言っているわけです。順番の問題はいろいろ言われましたけれども、それは通常の順番と違うんですよ。要するに事実上の強制じゃないのですか。
○村上政府参考人(国税庁次長) お答えをいたします。
 滞納者の実情に即した滞納整理を行うということでありますが、滞納者によってもちろんいろいろ状況は違ってまいります。例えば現実に差し押さえしようにも差し押さえすべき財産がないといったケースももちろんございます。したがって、確かにおっしゃるとおり、必ずしも時系列的に、先にこれをやって次にこれをやるということはないかもしれませんが、いずれにしても、そういうオール・オア・ナッシングのような、今のお話のようなことではなくて、いろいろ納税者の実情を見て処理しているということであります。
○佐々木(憲)委員 実情を見て処理していないのですよ。これは事実上強制しているわけですよ。
 では、八王子税務署は何で謝罪したのですか。謝罪したわけですから、何で謝罪したのですか。
○村上政府参考人(国税庁次長) 守秘義務がございますので、個別のことについてなかなかお答えできないのでありますが、必ずしも事務運営がまずくて謝罪したのではないと聞いておりますが。
○佐々木(憲)委員 では、何のために謝罪したのですか。
○村上政府参考人(国税庁次長) その場に私がいるわけではありませんし、私が受けている報告では、そういう事務運営のミスがあったとは聞いておりません。
○佐々木(憲)委員 何のミスがあったので謝罪したのですか。
○村上政府参考人(国税庁次長) どういう会話がなされたかというのはよくわかりませんが、少なくとも事務運営上のミスがないということで、その場合の言葉遣いが若干ということもあるかもしれませんが、そういうところまではちょっと報告を受けておりませんので、正直のところわかりません。
○佐々木(憲)委員 そんな答えはだめだよ。
 現実に謝罪をした、その理由というのは、危険なそういう小切手を事実上強要した、だから謝罪したのじゃないのですか。事実上強要しているのですよ。しかも説明なしに。こういうものはこういう性格のものですから危険ですよ、そういう説明なしに、出せと、事実上そういうことをやったから謝罪したのじゃないのですか。
○村上政府参考人(国税庁次長) 大変申しわけないのですけれども、一般論でお答えせざるを得ないのですが、小切手を出していただいたときには、支払い繰りがつく、そういうお話であればその小切手を受けております。しかし、その後に資金繰りが悪化して、到底それはもう納付ができないということであれば、その小切手を銀行から取り戻して納税者にお返しをいたしております。
○佐々木(憲)委員 八王子税務署ではほかにそういう事例はありませんか。では、ほかの税務署ではありませんか。
○村上政府参考人(国税庁次長) お答えいたします。
 今申しましたように、先日付小切手をお預かりして、その後、やはり資金繰りが悪化して取り立てができないということで、銀行から取り戻してお返ししているケースはございます。ちょっと件数までは把握しておりませんが。
○佐々木(憲)委員 先日付小切手を強要して提出させた事例はないかと聞いているのです。
○村上政府参考人(国税庁次長) 先ほども申し上げましたように、先日付小切手は納税者が自発的に出していただくものだと思いますので、そういう事例は特に報告を受けておりません。
○佐々木(憲)委員 それはでたらめだよ。八王子税務署に担保や先日付小切手を委託するということを強要された例、私は5件ほど知っております。それだけではない。岐阜北税務署、神奈川県の緑税務署、全国でこういうことが発生している。国税庁が全国の税務署に、こういう先日付小切手を出すようにということを強制するように指示しているとしか思えない。そういう指示はしていないのですか。
○村上政府参考人(国税庁次長) 先ほども御説明申し上げましたように、国税通則法55条、納付の委託として受け取るべき有価証券としてそういう先日付小切手があるということは事実でありますので、そういうのも選択肢の一つとして受け取ることについては、事務運営上いたしておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 私が聞いているのはそういうことじゃないんです。納税者が自発的に先日付小切手を出しますよというのを受け取るのは、それはあり得るでしょう。しかし、選択の余地なく、売掛金を差し押さえるか、あるいはほかの理由を持ってきて、先日付小切手を出さざるを得ないようにさせている。強要してはならないと。実際に強要しているわけです。そういう事例を聞いているわけです。
 それでは、強要してはならないということは確認できますか。強要している事実があったとしたら、それは間違った事実である、そういうやり方は間違っている、それは確認できますか。
○村上政府参考人(国税庁次長) お答えいたします。
 基本的に我々、滞納整理を進めていかなきゃならないという使命を負っているものですから、その職務について懈怠するわけにいきませんが、しかし、その過程において、納税者の実情に十分配慮した事務運営をやれという指示はいたしております。
 したがって、納税者と十分相談して、一体何が一番いいのか、強権的に何でもかんでも滞納整理するということではなくてやらせていただいているつもりでありますし、今後ともその方針には変わりないところであります。
○佐々木(憲)委員 私の質問に対して答えていないんですよね。強要しないということをおっしゃいました。強要している事実があれば、それは間違ったやり方ですということでよろしいですね。
○村上政府参考人(国税庁次長) 強要という言葉の定義がよくわからないのでありますが、いろいろ納税者と相談して納付計画を出していただくわけでありますが、やはり全く何にも裏づけがないということでも困りますので、それはそれに応じて出していただけるかと。しかし、小切手を出していただくというのは、強要できるかどうかは、そもそもその方が小切手を扱っておられるかということもあるわけです、零細な事業者の場合は。したがって、強要するということについてちょっと意味がわかりませんが、そういうことを行っているつもりはございませんし、今後ともそのつもりはありません。
○佐々木(憲)委員 実際に当座預金を持っていなければ、それはできないですよ。当座預金を持っている、そういう相手に対して、先日付小切手を出しなさいと、ほぼ選択の余地なく迫っているわけです。そういう事例を聞いているんです。もしそういう事例があったら、強要してはならないと言っているわけですから、それは国税庁の方針に反したことをやっているということになる。
 それならば、国税庁は、先日付小切手を提出するように強制しないということを徹底する、それから、本人が返済に非常に困難な事態になっている、したがって一度出したけれども返してもらいたいと言ったら返す、少なくともこのことはやるべきだと思いますが、いかがですか。
○村上政府参考人(国税庁次長) お答えいたします。
 先ほども申し上げましたが、先日付小切手をいただいたときには、国税庁は受託証書を出しております。受託証書、紙ですが。その中に、振出日を引きかえ期日とする、そう明確に記載しております。ということは、事前には取り立てをしないということであります。法律上はできるわけですけれども、そういう事務運営をやっております。
 さらに、実際、1カ月後とか2カ月後になるわけでございましょうから、その間に滞納者の方の資金繰りが悪化して、要するに支払いができない場合には、ちゃんとその銀行から取り戻して納税者に再度お返しして、新たな納付計画に組みかえすべくやっているところでございます。
○佐々木(憲)委員 これは、支払い期日を先日付以降でなければ執行しないというふうにおっしゃいましたけれども、受託証書というのを出すでしょう。受託証書に何が書いてあるんですか。「直ちに徴収しなければならない事情が生じたときは、この納付の受託を取り消すことがあります。」と。だから、これは預かったって、その日以降というふうにはならないんですよ。いわば税務署の裁量で直ちにこれを徴収するんだということになれば、これは強行することになるじゃないですか。
 したがって、こういう先日付小切手というようなものを提出させること自体が問題だと私は思う。約束手形ならまた別だ。しかし、こういうものを提出させるという方針自体を私は撤回すべきだと。全国に、納税の裏づけとして先日付小切手の提供を求めるということを事実上指示しているんじゃないですか。
 お配りした資料を見ていただければわかりますけれども、例えば名古屋国税局が、14年8月2日に全管税務署長会議というものを開いた。そのときに配付した資料の中に、「先日付小切手の提供を求める。」と書いてあるんです。
 ですから、求めると書いていることは、事実上、強要するということなんだ。強要ではない自発的だと言っていながら、実際にはあちこちで強要している。絶対に強要しないということを約束してください。
○村上政府参考人(国税庁次長) お答えいたします。
 先ほども申し上げましたが、国税通則法55条の納付の委託というのは、その前段階に、「国税の納付に使用することができる証券」とございます。それは現金と同等のもの、銀行の普通の小切手、その金額は300万以下なんですが、それ以上の場合は銀行の支払い保証のあるものと書かれております。それ以外であって、確実に取り立てられる証券という記載で、その証券の中身までは法律は書いていないのでありますが、それに相当するものとして、約束手形なり先日付小切手があるわけでございますから、そういうものがある以上、そういうことを使用してもいいということを禁止することはいけないと……(佐々木(憲)委員「強要するかどうかを聞いているんです」と呼ぶ)だから、強要するような事務運営はいたしておりません。
○佐々木(憲)委員 いたしていないと言ったって、実際に被害を受けている人がたくさんいるんだから。しないと言うのなら、それを徹底すると約束してください。
○村上政府参考人(国税庁次長) 最初に大臣が御答弁されましたように、我々は、もちろん滞納整理を行わせるのは国税庁の使命でございますが、その過程において、納税者の実情に十分配慮した事務運営を行うと申し上げているとおりでありまして、今後ともその方針には変わりございません。
○佐々木(憲)委員 以上で終わります。

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