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金融(銀行・保険・証券), その他 (郵政民営化)

2005年06月06日 第162回 通常国会 郵政民営化特別委員会 【304】 - 質問

郵貯事業 公社なら黒字1300億円 民営化なら赤字600億円 佐々木議員に政府が認める

 2005年6月6日郵政民営化特別委員会で、佐々木憲昭議員は郵政民営化による将来の経営見通しについて質問しました。

 6月3日の質疑のなかで、小泉総理は「郵政公社はこのままでいくと立ち行かなくなる。早い時期に民営化すべき」だ。「民営化しても利益を出せるような会社として、国民の要望にこたえるような形にぜひともしていきたい」と述べています。
 佐々木議員は、「では、郵便貯金業務では公社をつづけるよりも民営化した方が利益がでる、ということなのか」と質問。竹中郵政民営化担当大臣は「いろいろなビジネスの可能性が広がる。そうしたことでしっかりっとした持続可能な経営基盤をつくっていける」と答えました。
 そこで、佐々木議員は、「金融環境が悪化したとき、骨格経営試算における郵便貯金銀行の2016年度の利益試算はどうなるか」と質問。
 竹中大臣は、「マイナス600億円になる」と答えました。
 政府が試算した骨格経営試算に基づいて、「赤字になる」と初めて認めたのです。
 この巨額の赤字は、郵便局で金融サービスを保障するためにつくられた地域貢献基金120億円の5倍の赤字になります。
 さらに、佐々木議員は、「郵政公社が続いた場合、郵便貯金はの2016年度の収益はどうなるか」と質問。
 これにたいして、竹中大臣は「1383億円の黒字になる」と答えました。
 民営化した郵便貯金銀行とは違って、公社の場合は預金保険料を払わなくてもよく、郵便局会社への手数料への消費税も払わなくてすみます。
 したがって、郵政公社の郵便貯金事業は、民営化された郵便貯金銀行よりもコストが1983億円少ないので、1383億円の黒字になるのです。
 この利益の半分が国庫納付金(正確には4年ごと)として納めたとしても、公社の方が利益が出るということが明らかになりました。
 竹中大臣はこれについて、「民営化会社になって新規の事業で利益が出る可能性がある」「公社は税金も、預金保険料も払っていない」と弁明しました。
 佐々木議員は、「新規事業といっても人材もノウハウもないところから始まる事業で簡単に利益を見込めるものではない」「赤字になれば法人税も国に入らない」と指摘。公社のままなら利益の半分を国庫納付金として納めた後でも692億円の利益が残ることをあげて、竹中担当相の弁明をつきくずしました。
 さらに佐々木議員は、「(郵政事業を)銀行とアメリカの投資銀行の食い物にするために、わざわざ民営化して経営困難におとしいれるものだ。国民のサービスは向上どころか、ずたずたにしていくという結論しか、あなたたちの骨格経営試算からはでてこない」と厳しく批判しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 郵政事業を民営化することが果たして必要なのか、私は、経営の将来見通しという観点からただしたいと思います。
 まず、公社総裁にお聞きしますけれども、公社のままでは今後10年、20年で行き詰まるという考えなのか、それとも、公社でも十分発展が可能と考えているのか。まず、その点をお聞かせいただきたい。
○生田参考人(日本郵政公社総裁) お答えいたします。
 今、公社経営をお預かりしておりましてやっていることは、3事業、おのおの大きな問題を抱えているんですね。例えば郵便なら、毎年収入が減るというようなことを抱えているんですが、公社法のフレームワーク、枠内で、プラス社会的規範といいますか、多少でも新しいことをしようと思いますと、民業圧迫という合唱がすぐ起こるんですけれども、本当のところは競争排除という内容の方が多いんですけれども、なかなか新しいビジネスモデルもとれないということで、限界があります。ただし、限界までの幅でまだまだ改善すべきことがたくさんあるものですから、今その法的な枠組みと社会的な規範の、天井につかない範囲で一生懸命努力して業績を改善している、こういう過程であります。
 だけれども、その幅というのは余り広くないんですね。例えば、郵便でいえば、海外との取引、投資等が行えないとか、国内でも相対取引が行えないというようなことで、大変先行きが苦しい。それから貯金の、郵貯の場合は、特に運用の面におきまして、なかなか民間の金融機関のような運用はできない仕組みになっておりますので、どうしても対資産利益率が悪い。簡保の場合は、持っている商品というものが貯蓄性が多いものですから、なかなか第3セクターに本格的にはできないので先細りになるというふうなことで、5年、10年でだめになるのかという御質問に対しては、これはやりようで経営というものはある程度はできると思いますが、民営化して、少なくともビジネスモデル、民営化しなくてもいいんですよ、ビジネスモデルを大きく開放していただいて経営の自由度を増していただければ、よりよく健全になり得るということであります。
○佐々木(憲)委員 そもそも民営化しなくてもできるということで公社はスタートしたはずであります。
 6月3日の当委員会の質疑の中で、小泉総理はこう述べています。郵政公社はこのままでいくと立ち行かなくなる、早い時期に民営化すべきだ、民営化しても利益を出せるような会社として国民の要望にこたえるような形にぜひともしていきたい。
 竹中大臣にお聞きしますが、ということは、郵政事業は、公社を続けるよりも民営化した方が利益が出るということでしょうか。
○竹中郵政民営化担当大臣 私どもが考えておりますのは、公社であるがゆえの、つまり国の機関であるがゆえの幾つかの制約がある。その制約を外して経営の自由度を拡大していただいて、もちろんそのときに民間とのイコールフッティングは大事でありますけれども、その自由度を持っていただくことによって、いろいろなビジネスの可能性が広がる。そうしたことをしていただくことによって、今総裁、先細りというお言葉も使われましたけれども、そういうものを克服してしっかりとした持続可能な経営基盤をつくっていっていただける、そのように考えているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 私が聞いたのは、民営化した方が利益が出るのかと聞いたわけですけれども。
 具体的に聞きましょう。竹中大臣は、5月31日の当委員会の答弁でこう言っているんですね。「長短のスプレッドが今1.3%ぐらいで今の収益を生んでいるというふうに承知をしております。過去の平均が1%ぐらいでございました。この1.3%の長短スプレッドが仮に1%になったと仮定しますと、実はそれだけでほとんど公社の収支がとんとん、今は利益を出しておりますけれども、とんとんになってしまう。そういうやはり厳しい金融環境の中にあるというふうに認識しなければいけないと思います。」竹中大臣は、公社の郵貯事業の収益は、長短スプレッド1%という厳しい金融環境になれば収支がとんとんになると言ったわけですね。
 そこで、改めて聞きたいんですが、民営化された郵貯銀行の場合には、この公社よりも利益が確実に出ると言えるんでしょうか。
○竹中郵政民営化担当大臣 先ほど申し上げたことと重なるかもしれませんが、例えば、スプレッドが今縮小した場合という例を御紹介くださいましたが、そうした場合には、資産の運用の範囲を広げることができる。これは、公社の場合は安全資産に限定されるわけですけれども、信用リスクを、ビジネスに進出してしっかりとしたスプレッドを稼ぐという可能性が広がるわけでございますから、これはもちろん経営をしっかりしていただくということが大前提でありますけれども、そういった問題に対処して、新たな利益機会をつくっていくことができる。同様に、今、金融の例ですけれども、金融以外についても幾つかの可能性がある。そういう可能性について、私たちは、骨格経営試算を補強する収益の試算として御提示をしているところであります。
○佐々木(憲)委員 新規事業でもうけが出る可能性があると。しかし、新規事業でもうけが出ない可能性もあるわけです。
 新規事業というのは、これからゼロから出発していろいろなことをやっていかなければならぬ。しかし、それはやってみなければわからない世界の話ですから。今おっしゃった、竹中大臣、骨格経営試算、これでまず比較すべきだと思います。
 民営化された郵貯銀行、それと公社の収益を比較してみたいと思うんですが、まず確かめたいのは、長短スプレッドが1%の場合、骨格経営試算における郵便貯金銀行の2016年の利益試算、これはどうなっていますか。
○竹中郵政民営化担当大臣 骨格経営試算ですから、新規のことをやらない、そういう場合でよろしいわけですね。(佐々木(憲)委員「はい」と呼ぶ)
 これにつきましては、税引き前の当期利益が、2016年度でございますけれども、2015年度のプラス200億円から2016年度にマイナス600億円になるということでございます。
○佐々木(憲)委員 赤字になるんじゃありませんか。しかも、巨額の赤字ですね。金融サービスを郵便局で保証するためにつくられた地域貢献基金からの投入額は120億円、その5倍の赤字が出る。
 では、郵政公社が続いた場合についてお聞きをしたい。2016年度の収益は、スプレッド1%の場合、公社が続いた場合はどうなりますか。
○竹中郵政民営化担当大臣 公社が続いた場合は、民営化される場合に比べまして、これは、租税を払わない、そして預金保険料を払わないということになりますから、その租税が上乗せされ、そして預金保険料が上乗せされた形になりますので、単純にそれを計算いたしますと、1383億円という数字が出てまいります。
 ただし、この1383億円は、民営化の場合だったら払っていた租税848億円、預金保険料1135億円を払わない場合ということでありますので、その分の利益が上乗せされて出ているということになるわけでございます。
○佐々木(憲)委員 つまり、民営化された場合には600億円の赤字になる、民営化されずに公社のまま続いた場合には1383億円の黒字になる。それは、民営化したら、預金保険料を払うあるいは消費税を払う、余分な負担がかかるわけですよ。だから赤字になるんですよ。だから、結局、公社の場合、この利益の半分が国庫納付金になったとしても、公社の方が利益が多いんです。どう試算しても公社の方が利益が多くて、経営が安定するんじゃありませんか。民営化した場合には赤字になる、公社の場合は黒字になる、これが骨格経営試算の結果じゃありませんか。
 どうなんですか、これは。今まで言っていることと全然逆の結果が出るんじゃありませんか。
○竹中郵政民営化担当大臣 それは、税金を払わなければその分恵まれた状況になりますから、それは、とりもなおさず、公社の形態では民間企業の場合に比べてイコールフッティングが確保されていないということをそのまま佐々木委員はおっしゃっておられるわけです。そういう計算をしますと、これは、むしろその分民間に比べてそれだけ公社は恵まれているということを意味してしまうのだと思います。
 現実に何が起こり得るかといいますと、民営化することによりまして、さらに新しい、新規のビジネスが可能になるわけでありますから、その可能性については、私たちはかなりしっかりと幾つかの可能性を示しております。そういうものが、つまり、公社から民営化されて、それで何もしなければこうなるということとは、これはやはり意味が違うわけでございます。
○佐々木(憲)委員 それは勝手な言い方で、これから新しい事業をやるという場合は、新しい投資が必要です、あるいはノウハウが必要です、人材が必要です、今何もないんですから。それをやろうというときには、当然初期投資に膨大な費用がかかる。しかも、税金は払わなきゃならぬ、預金保険料も払わなきゃならぬ。赤字になるのは当たり前じゃないですか。新規事業をやったって赤字ですよ、これは。
 だから、結局、一番ベースになるところを今比較して聞いているわけです、一番ベースになるところを。公社のままですと、納付金を納付しても692億円の黒字です。郵貯銀行は、600億円の赤字、法人税も払えない。こんな状況になるんじゃありませんか。
 竹中大臣は、きょうの午前中の答弁で、骨格経営試算というのは経営が成り立ち得るかどうかを示すために出した。結果的に、郵貯銀行は成り立たない、2016年には600億円の赤字になります。はっきりと自分で成り立たないということを証明しているんじゃありませんか。
 600億円の赤字が出る。結局、何でそんな赤字にして、成り立たないような民営化をやるんですか。新規事業で利益を出すといっても、成功する保証は全然ない。失敗すれば、ベースが赤字なんだから、ますます傷が広がって、例えば郵便局会社に手数料を払うといっても、その手数料を払えない、削減する。郵便局はどうなりますか。ばたばたつぶれる。ユニバーサルサービスどころじゃありませんよ。銀行とアメリカの投資銀行、投資会社の食い物になる。まあ、いわばハゲタカの食い物にするためにわざわざ民営化して経営困難に陥れて、国民のサービスなんというのは、向上どころじゃない、全部ずたずたにしてめちゃくちゃにするということ。あなた方の骨格経営試算の中からそういう結論しか出てこないじゃないですか。
 何のための民営化かということは、今、竹中さんの答弁そのものをつなげただけでももう明確なんですよ。破綻は明白だ。そんなやり方で民営化するというのは絶対に反対。公社のままで改革を進める、これが最も正しいやり方だということを強調して、きょうの質問は終わりたいと思います。

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