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金融(銀行・保険・証券), その他 (郵政民営化)

2005年07月01日 第162回 通常国会 郵政民営化特別委員会≪参考人質疑≫ 【314】 - 質問

郵政民営化特委 郵産労やエコノミストら 参考人質疑

 7月1日郵政民営化特別委員会で、佐々木憲昭議員は郵政民営化について参考人に質問しました。参考人として、前田晃伸(全国銀行協会会長)、紺谷典子(エコノミスト)、松原聡(東洋大学経済学部教授)、山崎清(郵政産業労働組合執行委員長)が招致されました。

 郵政産業労働組合中央執行委員長の山崎清参考人は、郵便局員として38年間、配達を担ってきた経験を踏まえて発言。
 新潟中越地震の被災地では、民間の宅配業者がサービスを停止するなか、避難した住民一人ひとりに配達してきたことを紹介し、「民間に出来ないサービスを提供してきた郵便局ネットワークをぼろぼろにする法案は断じて認められない」と強調しました。
 エコノミストの紺谷典子参考人は、小泉「改革」は「十分な説明と情報開示がされないなかで、国民をますます不安に突き落としている」と厳しく批判。
 「いま必要なことは、そもそも論に立ち返って、どんな公的郵便サービスが求められるのかということを考えることだ。はじめに民営化ありきのやり方は間違っている」。「すべて民でよいというなら政府はいらない」ときびしく批判しました。

議事録

【参考人の意見開陳部分と佐々木憲昭議員の質問部分】
○二階委員長 引き続き、内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに山崎拓君外二名提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便局株式会社法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する各修正案を一括して議題といたします。
 本日は、各案及び各修正案審査のため、参考人として、全国銀行協会会長前田晃伸君、エコノミスト紺谷典子君、東洋大学経済学部教授松原聡君、郵政産業労働組合中央執行委員長山崎清君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、各案及び各修正案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、前田参考人、紺谷参考人、松原参考人、山崎参考人の順で、それぞれ15分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、まず前田参考人にお願いいたします。
○前田参考人(全国銀行協会会長) 全国銀行協会会長を務めております、みずほフィナンシャルグループの社長の前田でございます。
 本日は、本委員会にお招きいただき、意見を申し述べる機会を設けていただきましたこと、ありがとうございます。
 それでは、郵政民営化関連法案につきまして、全国銀行協会の意見を述べさせていただきます。
 まず、郵便貯金事業に関する基本認識と民営化の意義について、私どもの考えを申し述べさせていただきます。
 郵便貯金事業につきましては、1875年、明治8年、イギリスを範に産業振興の資金調達などを目的とした国営事業として創業され、民間金融機関の発達が十分でなかった時期において、国民に簡易で確実な少額貯蓄手段を提供してまいりました。さらに、こうして集めた資金を財政投融資制度を通じて社会資本の整備や企業などへの資金供給に活用するなど、これまで一定の役割を果たしてきたことは事実だと思います。
 しかしながら、郵便貯金事業の目的は簡易で確実な少額貯蓄手段の提供であるにもかかわらず、戦後から高度成長期を経て、郵便貯金の預入限度額は、1972年には100万円から150万円、翌年、1973年には300万円、1988年には500万円、1990年には700万円、そして1991年には現在の1000万円まで引き上げられております。
 このように、我が国の郵便貯金は、預入限度額の引き上げを繰り返してきた結果、郵便貯金残高は、1970年には10兆円未満であったにもかかわらず、1985年には100兆円を突破、1995年には200兆円を突破し、現在では約210兆円、個人預貯金の約30%を占めるなど、制度本来の目的を大きく逸脱して量的に肥大化をいたしております。
 経済が成熟期を迎えて久しい我が国におきましては、市場を通じた資金配分の重要性が高まってきており、財政投融資のあり方の見直しが求められるようになってまいりました。このため、2001年4月には財政投融資改革が実施に移され、その原資となってきた郵便貯金についても資金運用部への全額預託義務が廃止され、財政投融資の原資を集めるという民間金融機関にはない郵便貯金事業の特別な役割課題は終了したものと認識しております。
 しかし、現実には、郵便貯金はなお210兆円と私どもみずほ銀行の約4倍の数字を持っており、諸外国に例を見ない規模を有しております。例えば、イギリスでは、イギリス最大の民間銀行でありますHSBCの預金残高約60兆円に対して郵便貯金残高は約12兆円、ドイツでは、ドイツ銀行の預金残高約40兆円に対して郵便貯金残高は約5兆円、フランスでは、BNPパリバ銀行の預金残高約35兆円に対して郵便貯金残高は約23兆円など、諸外国を見ても、郵便貯金が大手の銀行よりも多額の預金残高を有するといった状況にある国はどこにもございません。アメリカでは、既に1966年に郵便貯金は廃止されております。
 一方、2003年4月の郵政公社化された後の郵政事業におきましても、郵便貯金への無償の政府保証、納税義務の免除などの官業ゆえの特典は残されたままで、競争条件において民間金融機関よりも有利な状況が続いております。
 我が国のように巨額の資金を市場原理のらち外に置いている国はほかになく、このことが我が国の金融・資本市場における公正な価格形成をゆがめるとともに、効率的な資金配分を阻害していることは御高承のとおりであります。
 政府は、昨年9月に閣議決定された郵政民営化の基本方針において、一つは、公的部門に流れていた資金を民間部門に流す、いわゆる資金の流れの改革、もう一つは、いわゆる見えない国民負担の最小化を民営化の目的として掲げておりますが、ただいま申し上げました私どもの認識のもと、政府のこうした考え方については全く同感であります。
 民営化により巨額の郵貯資金が金融市場に開放されれば、それぞれの経済主体に市場原理に基づく資金配分がなされるとともに、新規参入や適正な競争を通じた金融サービスの革新が図られ、結果として国民の利便性が向上するといった効果が見込まれます。また、納税義務の免除や預金保険料負担の免除などの官業ゆえの特典がなくなれば、国民にとっての実質的なコスト負担が解消されることにもなります。全銀協の試算によりますと、こうした潜在的な国民負担は、最近10年間の累計で6兆円を超えております。
 次に、以上申し上げましたような民営化の目的を実現する観点から、制度設計に当たって私どもが特に重要と考える点、具体的には、最終的な民営化に至る移行期間のあり方について、二点申し述べさせていただきます。
 第一は、規模の問題でございます。
 政府は、小さな政府の実現を目指し、官から民へ、国から地方への方針に基づき、各分野で構造改革を推進されております。現在郵貯が行っている業務については、かなりの部分を民間金融機関で代替することが可能でありますので、少なくとも政府の関与が残る期間中は、民間にできることは民間にゆだねるとの構造改革の大原則にのっとり、郵貯事業の規模も縮小されていくべきものと考えております。
 なお、完全な民営化が実現した後の郵貯銀行の経営を考えた場合にも、200兆円を超える巨額の資金について、運用、調達のリスクをきちんと管理しつつ、運用利回りを確保していくことは容易なことではないと思います。銀行経営に携わってきた経験から申し上げますと、郵貯銀行が新しいビジネスモデルを構築していくプロセスにおいて、ビジネスモデルとして適正に成り立ち得る規模までその大きさを縮小するという経営判断は、経済合理的であると考えます。
 第二には、郵貯銀行の業務範囲の問題でございます。
 政府は、移行期間において段階的に業務範囲を拡大する方針であると認識しておりますが、政府出資に伴う暗黙の政府保証が残る期間中に経営の自由度が先行して拡大されることになれば、実質的な官業の一段の肥大化を招き、問題を一層深刻化させかねないと考えております。
 したがいまして、全国銀行協会といたしましては、従来より、政府の関与が残る期間中は業務範囲の拡大に一定の制限を設けるとともに、それを監視していく仕組みを確保することが必要であると提言などで申し上げてきたところであります。
 また、郵貯、簡保は、約150兆円に上る大量の国債を保有しております。したがいまして、仮に、民営化に当たって国債市場への適切な配慮がなされなければ、需給悪化による急激な金利上昇を招き、財政再建や景気回復にも悪影響を及ぼす懸念もございます。
 さて、今回の法案を拝見いたしますと、民間金融機関との公正な競争を確保する観点から、2007年4月の民営化の当初から、政府保証の廃止、納税義務、預金保険機構への加入などの義務を負うとともに、適切なリスク遮断を行う観点から、新旧勘定の分離、四分社化と持ち株会社による郵貯銀行及び郵便保険会社株式の完全処分が規定されており、この点については望ましい方向にあると考えております。
 しかしながら、やや繰り返しになりますが、最終的な民営化に至る移行期間において段階的に業務範囲を拡大することとされている点につきましては、仮に、公正な競争条件が確保されないまま、経営の自由度が先行して拡大されることになれば、実質的な官業の一段の肥大化を招き、問題を一層深刻化させかねないとの懸念を持っております。
 特に、郵便貯金銀行の貸出業務への参入につきましては、あくまで民間にできることは民間にゆだねるとの構造改革の大原則にのっとって判断されるべきものと考えます。デフレが続く中、中小企業の借入金圧縮が続いているため、貸出残高は依然として減少が続いております。かかる状況のもとで郵便貯金銀行が新たに貸出業務に参入するには、相当の工夫と努力が必要になると思います。
 その点、法案では、移行期間中の業務拡大に当たっては、民営化の進捗状況に応じ、民営化委員会の意見を聞いて適切に判断することとされております。私どもは、民営化委員会のこうしたチェック機能は極めて重要であると考えており、今後の運営に当たっては、中立的な第三者の意見に加えて、民間企業との共存に向けて、民間金融機関の意見も十分反映されるよう御配慮をいただきたいと考えております。
 最後になりますが、これまでの議論などを拝聴いたしておりますと、最終的な民営化に至る過程で、新しいビジネスモデルの策定やシステムの開発など、民間銀行になるための課題が多々あることと思います。私どもは、公正で自由な競争が促進されることは歓迎すべきことと考えており、かかる観点から、完全民営化までの10年間という極めて長い移行期間に民間企業としていかにソフトランディングするかということは極めて重要であり、注視し続けることが大切だと思います。
 極めて長い移行期間を経た上で、当初の民営化の目的に沿った形で完全民営化がされた後は、同じ民間銀行の立場として、よりよい形で競い合いながら、お互いに切磋琢磨することは、利用者への金融サービス向上と我が国金融市場の健全な発展に大いに資するものと考えております。
 簡単でございますが、以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)
○二階委員長 ありがとうございました。
 次に、紺谷参考人にお願いいたします。
○紺谷参考人(エコノミスト) 経済を専門としております紺谷と申します。よろしくお願いいたします。
 郵便局の民営化には反対でございます。
 だんだんにマスコミからの取材も、政局の移り変わりとともに質問が変わっていくんですね。基本方針についてどうお考えですか、法案についてどうお考えですか、修正についてはどういう御意見ですか。だんだんだんだん土俵が引きずられていきまして、そもそも論が忘れられてしまうんですね。ですけれども、私は常にそもそも論に立ち返るべきであるというふうに思っております。何となれば、改革というものはすべて国民のため、国のためでなければならないからでございます。権力者の個人的な好みで変わっていいとは私は思っていないんですね。
 そもそもから考えますと、郵便局の民営化の目的というのがくるくるくるくる変わっている。それは不思議だなと思うんですね。当初はたしか財投改革とおっしゃっていたはずですね。しかし、素人が考えてもわかることですけれども、財投改革、特殊法人が非効率だ、不透明だとおっしゃるんでしたらば、特殊法人をなぜ直接改革なさらないんですか。その方がよっぽど効率的で正しいやり方だと思うんですね。効率化が必要だとおっしゃりながら最も非効率な方法をとられようとしているのが、私には理解できません。
 さらに、財投改革するに当たって入り口論というのをおっしゃっていましたね。入り口を正すんだ、出口の資金の使い方がでたらめなんだから入り口を閉ざしてやるとおっしゃいまして、これは非常に乱暴な、論理も何もあったものじゃない議論なんでございますけれども、百歩譲って、入り口を閉ざすということが何らかの効果があったといたしましても、小泉総理がおっしゃっていたことは全く論理的ではありません。何となれば、入り口はもう一つあるからです。年金の積立金ですね。そちらに関しては一言もおっしゃらない。民営化はおっしゃらない。これまでも年金の問題がさんざんに言われてきたにもかかわらず、年金の民営化については言及なさらない。それは矛盾じゃないですか。片側の入り口はほうっておいたまんま、なぜ郵便局の民営化ばっかりおっしゃるのか。
 しかも、その理由が変わるということは、何らかの理由から民営化をどうしてもやりたい、理由も何もないから、ともかく民営化を実行したいんだというようにしか国民の目からは見えないんです。
 次いで、小さな政府だとか税収をふやすんだとかさまざまな御議論がありましたけれども、ここに銀行協会の会長の前田さんおいでですけれども、反対意見かなと思ったら賛成意見みたいに聞こえてしまったんですけれども、民業圧迫とおっしゃっていたにもかかわらず、巨大な銀行、巨大な保険会社をつくるということは民業の圧迫じゃないんでしょうか。農村で一生懸命商売しているよろず屋を圧迫するような郵便局のコンビニは民業圧迫じゃないんでしょうか。
 そもそも民間のコンビニが、この競争激化の中で、店を出せるところはどこでも出そうというようなコンビニ業界の動きがある中で、民間が幾らコンビニを出してもペイしないと思って出さない地域に官業をしてきた郵便局がコンビニを始めて成功するとはとても思えません。まして、コンビニがカフェレストランとか、それから旅行会社みたいなことを始めたりとか、そういうことを始めたからといって、村が活性化され、町が活性化され、都会に出ていった若者たちが帰ってくるから地域の活性化だと。ほとんど夢物語としか思えないですね。
 そういうことから考えますと、改革というのは一体何なんだろうかと思うわけです。どうすれば国民生活はよくなるのか、どうすれば国はよくなるのかという、その原点から今の現状を見まして、現状ここに問題ありということでなくてはいけないんじゃないんですか。郵便局の今どこに問題があるというんでしょうか。
 郵便局は、そもそも公的なニーズがあって始まったものです。経済が移り、国の情勢が変わることによってニーズが変わるということはあり得ます。だとしたら、これまで郵便局が担ってきた役割はもう失われたのかどうかということをまず議論すべきではないでしょうか。金融ビッグバンと必要もないような不良債権たたきによって、銀行はどんどんリストラを迫られて、銀行だけでもう店舗は2000以上でしたか、減っていると思います。農協まで入れればもっともっと減っているんではないかと思うんです。
 そういう中で、さらに郵便局までなくしてしまうような、そういうやり方が本当に国民生活のためになるのかどうか。高齢化を控えて大変だと、政府税調は増税案までこの時期に打ち出そうとなさっておりながら、そういう高齢化社会で、地方のお年寄りが年金を引き落とす場所がなくなるというようなことをほっておいてよろしいんでしょうか。
 そもそも、財投資金の原資となっていたわけですけれども、財投というのは、たとえいろいろ問題があったとしても、全部やめるべきものなのかどうか、それを考えるべきなんじゃないですか。その公的需要はどうなったのか、それを最初に議論していただいて、一つ一つの特殊法人なり財投機関なりを、きちんとその役割を見詰める。その役割が失われたんだったらばそこはやめる。これまでの役割の中で必要なものは残す。さらに新しいニーズが生じていないかどうか、公的に何をサービスすべきかということを御議論いただかなくてはならないんじゃないでしょうか。そうであるにもかかわらず、そういうことを一切やっていない。
 そもそも、郵貯、簡保の資金の350兆は肥大であるとよくおっしゃるんですけれども、何をもって肥大とおっしゃるのか、私にはさっぱりわかりません。公的機関である郵便局なんですから、公的資金ニーズから比べて肥大であるかどうかという御議論があってしかるべきであるにもかかわらず、銀行の四メガと比べても大きいとか、大手の保険会社と比べても大きいとか、そんな御議論ばかりなんです。
 そもそも、郵便局というのは公的機関として存在しているんだという肝心なところをお忘れではないでしょうか。ですから、肥大かどうかということは、国の資金需要がどうなのかという点と比べて、余分に集まり過ぎているかどうかという観点しかあり得ないと私は思うんです。もしそれで肥大であったというんでしたらば、金利を下げればよろしいだけだと思っています。もし足りなかったら、金利を上げればいいんです。
 竹中大臣は、民活化するんだ、郵便局の資金を民活化するんだとおっしゃっているんですけれども、そもそも、国民は強制されて郵便局にお金を持っていっているわけではないんですね。やはり銀行は不安だとか、銀行が悪いんではなくて、政府が必要以上に金融不安をあおったからです。せっかく統合して安定したと言われていた四メガまでもつぶすと、わざわざ外国に行って発言なさって、国民の金融不安をかき立てたんじゃないですか。
 小泉政権以前にも不良債権はどんどん減っていたわけですよ。それなのに、あのあこぎなと言ったら、前田さん、ごめんなさい、銀行が残そうとしていた不良債権まで処理しろ、処理しろと迫ったわけじゃないですか。そのために日本経済に数々穴をあけていったということでありまして、激増させたものを少し減らしてきたからといって何の手柄にもならないというふうに私は思っております。
 そういう金融不安のある中で、保証されるのは同じ1000万円とはいえども、だけれども国が頼りというふうに国民が思ったということ自体を政府は反省すべきです。なぜ国民が350兆も公的機関に資金を預けたのかということを金融大臣は反省すべきです。そういう反省がないままに、あたかも郵便局に罪があるかのようにおっしゃるわけですね。だけれども、違うじゃないですか。
 そもそも、財投に問題があるというのはもう国民周知の事実でございますけれども、その財投をいいかげんに運営してきたのは総務省なんですか、郵政省だったんですか。違いますね。財務省です。財務省の理財局が資金運用部という勘定にすべてを引き取って、それで特殊法人に資金を分配してきたんです。その見張り方が国会が甘かったという問題はあろうかと思います。
 しかし、聞くところによりますと、さまざまな特殊法人に、認可法人も含めてかもしれないですけれども、各省庁が予算をもらいに行くと、予算はつけてやろう、ついでに人材も派遣してあげるよと言いまして、財務とか経理に財務省から天下りが行く、他省庁の特殊法人にまで財務省から天下りが行くという現実があるわけです。道路公団で何年か前に天下り役人が汚職というような大きな事件がございましたけれども、だれだって建設省だと思うじゃないですか。ところが、大蔵省だったんですね。そういう、予算だけではなくて、財投資金まで自由に分配して、それをもって御自分たちの権限を拡大してきた、天下り先をふやしてきたという現実があるわけです。
 まずは、財投が非常に非効率だ、不透明だとおっしゃるんでしたらば、そこで何が行われてきたのか、だれがどういう意思決定をして、だれにどんな責任があるのかということを明確にしていただかなければ、財投改革にさえならないというふうに私は思っております。
 さらに、財投資金がある程度必要だということになったときに、今だって、国債は幾らになったとまるで自慢のように政府はおっしゃっているわけですけれども、しかし、国債を郵貯のお金、簡保のお金でたくさん持っていたりするわけですね。そういう公的資金の資金調達をどうするかという視点も重要だと思うんです。
 私、日本証券経済研究所に勤めておりまして、証券市場育成に微力ながら一生懸命頑張ってきたつもりなんですけれども、残念ながら、日本では、証券というのは好まれないんですね。そういう中で、国債だって、ほかの国に比べたら、国民が、個人が持つ割合は非常に低いわけです。まだ60年前の、戦後、国債が紙になってしまったという記憶を残している方もおいでであれば、目の前のバブル破裂で証券は懲り懲りだ、しかも財務省が、金利が上がる金利が上がるというふうにあおっているわけじゃないですか。景気対策なんかやって国債を発行すると、国債の信頼が失われて、いつ金利が上がるかもしれない、裏返せば、いつ国債が暴落するかもしれない、そうやってあおられている中で、だれが国債なんか持とうというふうに思うでしょうか。
 そういう中で、郵便貯金というのは、私は、ある意味で第二国債だと思っているんです。証券を好まない、債券を好まない、株式を好まない日本人の中にあって、出し入れ自由な貯金という形態をとった国債だというふうに考えることができると思うんです。国債よりもある意味では出し入れ自由という便宜がついている分だけ割安の金利で資金調達できる、そういう国の公的資金調達の手段であるということを忘れてはならないと思うんです。国家がどれだけの公的資金を必要としているかということがあるとしたら、どういう資金調達方法が一番低利であるか、コストが低いかという観点も忘れてはいけないというふうに思うわけでございます。
 ですから、郵便局に関しましても、効率化を標榜なさる、改革を標榜なさる小泉政権であるならば、今現在ある2万4700の郵便局をもっと活用するということをお考えいただいてもいいと思うんです。せっかくある財産を解体してばらばらにして、価値をなくすようなことを考えるのが国民にとってプラス、本当の効率化とは私は思わないんです。
 私は、実はこういう提言をずっと何年も前からさせていただいておりまして、郵便局は利用の仕方があると。どういうことかというと、例えばボランティア貯金をやってほしい。今、郵便局がおやりになっているボランティア貯金というのは金利の一部を寄附するというものなんですけれども、そうではなくて、現実のボランティアを献血手帳のように積んでいくというものなんです。そうすると、何ができるかというと、エコマネー、地域マネーの全国ネットを張ることができるんです。そうすることによって、都会に出ていった息子や娘が御近所でボランティアした分を、その貯金をおろしてふるさとで年老いた両親が御近所の若者から世話を受けることができる、そういうネットワークとして郵便局を使えるわけでございます。
 さらには、もっと実質的に、ボランティアの窓口ということもできると思うんです。例えば、三国でオイル事件があった、それから阪神大震災、中越地震とか、その前には、鳥取西部地震もあったりしたわけですけれども、全国からボランティアが集まるんですね。どこへ行ったらいいのかわからない、どこへ行ったらば寝る場所があるのか、どこへ行ったらば御飯がもらえるのかということがわからないんですね。
 一部のマスコミは、そんなもの、手伝いに来たんだから自弁しろとおっしゃったんですけれども、なかなかそれは難しいわけでございまして、郵便局に行けば、どこそこのおうちが民泊させてくれますよ、どこそこでおふろに入れますよとか、そういうことを教えてもらえるというような、本当の意味でのボランティアの拠点というふうにすることもできると思うんですね。
 時間になってしまったので、とりあえずやめさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○二階委員長 ありがとうございました。
 次に、松原参考人にお願いいたします。
○松原参考人(東洋大学経済学部教授) 東洋大学の松原でございます。
 私の間に紺谷さんぐらいの拍手があるとうれしいんですけれども。
 そもそもの話から私もさせていただきますが、民営化は必要だとまず最初に申し上げたい。
 それは、今の日本郵政公社という形態を考えていただきたいんですが、日本の場合には、かつて三公社というのがございました。配付資料にちょっとまとめましたけれども、専売公社は大蔵省の専売局から、国鉄は運輸省から、それから電電公社は電気通信省からそれぞれ50年以上前に公社になったわけであります。
 そこで、まず、その旧三公社がいずれも国営ではなかったです。国営じゃないために公社にしたわけであります。さらに、職員の身分も国家公務員ではなかったわけであります。その旧三公社でもだめなんだ、効率性と企業性を同時追求といったってだめだったんだ。だから、85年から87年にかけて旧三公社が、JT、それからJR、NTTと民営化されたわけです。
 その経験を踏まえますと、私のような経済政策を勉強してきた人間からすると、今回の日本郵政公社というのは、50年前、半世紀以上前の公社よりももっと、端的に言うと、たちが悪い、質が悪いものでありまして、国営である。何のために国家行政組織の外に出したのか。働く人の身分が国家公務員である。そこで、本来の公企業の役割であるはずの公共性と企業性の両立というのはとても果たすことはできない。
 ですから、そもそも論で言うと、今の国営の公社のままでいいんだ、それを改革していけば済むんだということに対しては、その根本からしておかしいんだ、私はこのように認識しているわけであります。
 それから、分社化の問題についてお話しいたします。
 分社化というのがなぜ必要かというと、これは道路公団と違いまして、郵政三事業はいずれも民間と競合しています。民間と競合するということは、基本的にはイコールフッティングが実現されなければならない。
 その際に、民間に、信書、郵便、銀行業、それから保険業、これを同時に経営していいという法律がないわけであります。逆に、法律によって、それぞれの業法によって兼営は禁止されているわけですね。その中で郵政三事業が一体で経営している、それぞれが民業に対して圧迫している、この事実はやはり重大だと思っているわけでありまして、そうなると、民営化は必要であるし、かつ事業分割をまず行うことがどうしても不可欠だ、私はそのように考えているわけであります。
 問題は、そのような国営、三事業一体、それから国家公務員だということが事業展開にどのような悪影響を与えるか、ここであります。
 国家公務員だという身分、そのことによって郵政三事業それ自体の事業展開が大きく制約されていることは言うまでもないと思います。例えば、民間の宅配便は引っ越しをやっておりますが、さすがに国家公務員が引っ越しをやるわけにはいかないわけです。
 全国約2万5000の郵便局というものが、国営だから安心だという面が強調されていますけれども、実は、国営で国家公務員がやっているからこそそのネットワークが生かし切れていないんだ、ほかのことがやれるのにやれないんだ、こういうことであります。
 例えば、先ほど紺谷参考人が、ボランティア的な窓口を郵便局がやってもいいじゃないか、こういうお話がございました。しかし、御承知のように、国家公務員には服務規程がございます。私自身も、郵政三事業を何とか公的な形で生かせないかといろいろな議論をしてきたときに、例えば郵便配達の途中で道路の損壊箇所を見つけて報告するとか、それから福祉サービスとかいろいろなサービスがございましたけれども、それがすべて基本的には国家公務員の服務規程とのバトルになってしまって、本来やるべきサービスができていない。(発言する者あり)いや、これは、国家公務員が本来の仕事をやるべきものとして国からその仕事を任されているわけでありまして、いろいろな仕事をやろうというときに、民営的な方向での仕事をやるときにももちろん制約があるわけです。
 先ほど申し上げたように、引っ越しはできない、国家公務員が引っ越し屋をやるのはおかしい。それから、種々のボランティアサービスとかそのような福祉的なサービスをやるときにも、本来やるべき業務の時間を割いてやるという形になるときに、やはりすべてそのことが問題になるわけであります。
 そのような意味で、私は、現行の三事業一体で国家公務員が担うということをまず変えるということが基本的に大事だ、このように思っているわけであります。
 それから、次に触れなければいけないのが金融の問題であります。
 我が国では304、50兆円のお金が郵貯、簡保を通して集められておりまして、その使い道が、2001年4月に財投改革は確かにございましたけれども、結果的には、財投改革の結果、強制預託が減っただけでありまして、その分を新たに設けられました財投債で補完されていることは御承知のとおりだと思います。
 よく一般的に、2001年4月で強制預託がなくなったんだから、もう郵貯、簡保は自由に運用しているとおっしゃる方がおりますけれども、そうではなくて、やはり従来と同じように、特殊法人、独立行政法人等にお金を流す仕組みをどうしてもつくらなければいけなかった。そのためにできたのが財投債でありますから、現状、2001年4月の財投改革を経た後も、依然として340兆円のお金が官、パブリックの方に流れていることは、これは間違いないわけです。それで、そのお金をまた民間の方に戻していかなければならない、こういうことであります。
 それが国営の公社のままでは無理なのは、それは国が結果的に保証する形になっておりますから、これは現在の法律等で明記されておりますけれども、リスクがあるところに関しては運用できない仕組みになっているわけであります。ですから、国営の公社であって、国がその郵貯資金、簡保資金を保証している限りは、その流れて行く先は国債であり、財投債であり、地方債、そういうことを通して、国、地方、財投機関である特殊法人、独立行政法人に流れていかざるを得ないわけであります。
 そのお金の流れをやはり民間に振り向けていく必要がある、私はこのように考えておりまして、では、どのような形にしたら民間に移っていくかというと、これは最終的に、郵貯、簡保に対する政府のコントロールを外すしかない、このように思っております。
 政府のコントロールを外すということはどういうことかというと、2007年4月段階での民営化では不十分です。2007年4月の民営化は、国が出資した持ち株会社の下に郵貯、簡保が入っているわけでありますから、その段階では政府の意思がきく。ですから、2007年4月段階は、私は、郵貯、簡保は一種の政府系金融機関のような立場であって、そのままであれば、今までどおりに、政府が、国債を買ってほしい、あるいは手持ち国債を売らないでほしいと言ったときには売れなくなってしまう。そうであると、結果的に、2007年4月の改革でも、340兆円のお金が依然として民から集めて官に流れ続けるというその流れは変わらない、こういうことであります。
 そうなりますと、最終的にその340兆円のお金を民間に流すためには、郵貯、簡保の完全民営化が不可欠である。
 今の法律では、修正案の後も、2017年3月までにすべての株を売却する。それから、それまで銀行業法それから保険業法等の特例として与えられていた地位も完全売却とともに終わる。ということは、2017年3月までに郵貯と簡保は完全な民間銀行になる、こういうことであります。その点が今回の修正案でも担保されている点は私は評価したい、このように思っているわけであります。
 それからもう一つ、触れなければいけないのは、郵貯、簡保の規模の問題であります。
 例えば、民主党の案を見ますと、郵貯、簡保の規模を現行の経営形態のままで減らしていく、こういうような話が出ております。それから……(発言する者あり)そのような考えを聞いております。それから……(発言する者あり)
○二階委員長 御静粛に願います。
○松原参考人(東洋大学経済学部教授) それから、郵貯、簡保の規模を減らすという案に対しては私はおかしいと思っておりまして、どうやったら郵貯、簡保が減るかといいますと、それは1000万の規模を減らせばいい、こういう話になっているわけです。そうすると、事実上、地方の郵便局しか金融機関を持たない人たちにとっては、1000万の今まで預金をする権利が500万になり300万になってしまう。それは、結局、ネットワークを生かす、維持するということでなくて、地方の利便性を減らすことにもつながると私は考えているわけであります。
 ですから、郵貯、簡保の規模を減らしていって現行のままでいいというよりは、私は、その規模が結果的に減るかどうかはマーケットの問題でありますけれども、対等な競争条件を持って民営化していく、ひいては完全民営化していくということが一番適切ではないか、このように思っているわけであります。
 それから、今回の修正案に関しまして、先ほど申しましたように、2017年の3月の末で全株を売却して、その段階で、郵貯、簡保に関する特例の、銀行業法それから保険業法の規定を変える。ですから、2017年3月31日の段階で郵貯と簡保は完全な民間銀行それから民間の保険会社、生保になる、こういうことであります。
 しかし、今回の修正案で、その完全売却の後にもう一度株の購入が認められる、こういうことになってまいりました。この点に関しましては、私は若干の問題が残ると思っておりまして、要するに、2017年3月末の段階で、郵貯と簡保はまさにみずほ銀行等と全く並ぶ民間の金融機関になるわけですから、その中の特定の郵貯銀行と郵便保険会社の株を、政府が株を持つ持ち株会社が買うということは不自然だ、このように思っているわけでありますし、それから、これは今から12年先の話でありまして、恐らくそのような時期にはそんなとんでもないことを、持ち株会社がもう一度買い戻すといったようなことを許さないような国会の勢力とか世論が私は形成されていると確信しているわけであります。
 それでもう一つ、やはりここで問題点を申し上げたいのは、私は、2017年で郵貯、簡保を完全民営化するというところを含めまして、基本的な方向性としては、今回国会に提出されている法案に関しまして支持する立場でありますが、幾つか問題点を最後に指摘させていただきたいと思います。
 一つは、郵便局を全国でネットワークとして維持する、そのこと自体は、2003年10月、経済財政諮問会議で諮られました当初の五原則の中で明記されているわけでありまして、そのこと自体は私は重要だと思っておりますが、しかし問題だと思いますのは、現在の郵便局を特定局制度という非常に高コストの体質のまま維持するということであれば、それは筋違いだろう。
 現在の郵便局は、御承知のように特定局と民間に業務委託型の簡易局がございまして、簡易局の方は低コストなわけであります。しかし、特定局と簡易局の間でどのような業務の差があるかと申しますと、それは内容証明の受け付けぐらいであります。そうであれば、郵便局を維持するという議論と、今の特定局みたいな形での郵便局をそのまま維持するという議論は、私は別だと思っておりまして、郵便局の数を結果的に維持するということと、その中の高コスト構造を変えて維持するということとの間には相当距離があって、現在の法案の中にはそのことが明確に示されていない点が不満であります。
 それからもう一点、信書の問題でありまして、信書便法は、民間も信書を配達していいということで国会で決まった法律でありますが、現実には全国配達の民間事業者が入れない状態であります。そのような信書便法は、当然、私は民営化と同時に、民営化というのは公社が郵便事業会社に変わる、株式会社に変わるわけですから、より対等な競争条件がつくられなければいけないのに、残念ながら、信書便法の高い参入障壁を変えるような法律改正の視点が今回の法案の中に出ていない点、これが私としては不満な点として残るということであります。
 以上であります。どうもありがとうございました。(拍手)
○二階委員長 ありがとうございました。
 なお、この際、委員各位には、参考人の陳述に際しては、できるだけ御静粛にお願いいたします。
 なお、参考人の皆様には、他の参考人の意見陳述に対し、御批判等は御遠慮願いたく存じます。
 次に、山崎参考人にお願いいたします。
○山崎参考人(郵政産業労働組合中央執行委員長) 郵政産業労働組合、郵産労委員長の山崎清でございます。よろしくお願いします。
 私は、現役の郵便屋さんで、郵便配達をしております。きょうは、年休をとってこの場所に来ております。労働組合を代表して、郵政民営化法案に対して反対の立場で意見を申し上げたいと思います。
 私は、高校を卒業すると同時に、郵政省の試験に合格して郵便局の職員になり、以来、郵便配達の仕事を38年間行ってきました。地域の皆さんと日々顔を合わせながら仕事をしております。
 この間、新潟の地震、中越地震で地域住民が避難を余儀なくされた際に、民間の宅配業者がサービスを停止する中で、郵便局が避難した住民の一人一人に郵便を配達してきました。そうした郵便配達ができるのは、私たちの仕事が地域と密接に結びついた仕事だと思うからであります。
 郵便配達だけではありません。郵便貯金や簡易保険も同じです。このことが典型的に示されたのは、阪神・淡路大震災のときです。震災で家がぺちゃんこになり、通帳や印鑑が持ち出せない、あるいは焼けてしまい身分を証明するものが何もないという方が大勢いらっしゃいました。そういう方々がみんな郵便局に駆けつけてこられました。このとき実施されたのが、通帳や印鑑や身分証明するものがなくても、だれか保証人を立てれば現金20万円に限りお支払いを行うという非常払い措置です。地域の皆さんと顔がつながっているからこそできた措置だと考えています。
 郵便局を利用していてよかった、郵便局でないとこんなにすぐお金を出してくれないよねとの声が寄せられました。神戸のど真ん中で震災2日目から、神戸中央郵便局は、ATMを何時間か稼働させ、窓口をあけて住民の生活を守ってきたのです。
 神戸市内には大きな銀行もたくさんありますが、市内のビルはあちこち崩れたり倒壊したりしていました。郵便局も半壊したり全壊したりしています。店舗数の少ない銀行は、近くの支店が崩れているともうほとんど利用できません。郵便局は、近くのどこかの郵便局が利用できました。被災者が仮設住宅に移られても、どこへ行っても郵便局は利用できました。
 私たちの組合員も、この震災の中で、みずから被災しながら、避難先の遠い町から出勤をして仕事をしていましたが、できるだけのことをして役立ちたいという気持ちだったと話していました。私たちは公務員なんだな、そういう自覚と誇りを持ちました。
 私たちが行っている事業の基本的性格は、独立採算で、みずからの事業収入で自分たちの給料を初めとする費用を賄うものですが、公共の事業です。その特徴は、最近はユニバーサルサービスという言葉で表現される機会がふえていますが、すべての国民に公平に郵便や貯金、保険という生活に不可欠なサービスを行うことです。
 そのことは、私たちの事業の目的を示した郵便法、郵便貯金法、簡易保険法に書かれています。例えば、郵便貯金法は、その第一条で「郵便貯金を簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする。」としています。今回の郵政民営化は、民間にできることは民間にと言われておりますが、最初に述べた震災など災害時への対応を初め、法律に書かれている国民にあまねく公平に利用されるようにサービスを提供するということは、民間にはできません。これは、国会でも、事実で明らかにされていると思います。
 例えば、過疎地を含めて、全国どこに住んでいても、郵便、貯金、保険のサービスを受けられる郵便局があります。ところが、銀行の店舗がない市町村は550に上ると言われています。そして、民間の銀行だけでなく、農協も含めて、金融機関の店舗はこの6年間で7601も減らしていると言われています。
 郵便局のATMは、お年寄りや障害者にも使いやすいように工夫がされ、すべてのATMが視覚障害者に対応した仕様になっているのに対して、銀行のATMでは、そうした対応をしているATMは13%にすぎないというふうに私ども伺っています。郵便貯金は、もちろん口座維持手数料も取っておりません。
 貯金や保険サービスは、もちろん民間でもやっています。しかし、日本のどこに住んでいても、貯金の額が少なくても、障害があっても、差別なく公平に受けられる貯金サービスを提供し、職業による差別なく加入できる保険を提供しているのは、郵便貯金と簡易保険です。こうした公的金融サービスを行っている機関がなく、すべてを民間に任せている先進国の中では、金融口座を持てない国民が数百万人も存在しており、社会問題になっています。これが現実だと思います。
 民間にできることは民間にというのは、国民をだましていると私は考えています。事実に基づかない、いわばそうしたお題目で郵便貯金法や簡易保険法を廃止して、三事業をばらばらにして、これまで三事業一体で成り立たせていた郵便局ネットワークをずたずたにし、差別なく公平に行われていたサービスをぼろぼろにしていく民営化法案は、断じて認められません。
 私たちは、このことを国民に伝えるために、ことし2月下旬から4月15日まで、全国47都道府県キャラバン宣伝を行いました。私も、職場の仲間の協力で、年休をとって、四国4県と東北3県、東海2県、東京、合わせて10都県を回ってまいりました。
 四国では、高知県の室戸地方を回っていたとき、郵政民営化反対の宣伝に会えてよかった、テレビや新聞はみんな民営化賛成だ、あなたたち、もっと早く来なきゃいけないよと家から飛び出してきて訴えた主婦の方。徳島のある市議会議長と懇談したとき、その議長さんは、小泉さんの郵政民営化は一体だれのための何のための郵政民営化かさっぱりわからない、結局、国民の資産をハゲタカファンドに売り渡すものだと言っていました。鹿児島県のある議会の議長さんは、政治的立場が違うけれども、気持ちは皆さんと同じだ、頑張ってくれと激励されました。青森県の十和田市では、あんたら、東京さ帰って国会議員の皆さんに郵政民営化反対だと訴えてくれ、こう言ってきた御老人。そして三沢市では、御婦人が、キャラバンに会えてよかった、郵政民営化は絶対だめだ、つぶしてくれと訴えられました。
 地方に行けば行くほど、郵便局への信頼と郵政民営化に対する怒りが強い、このことを実感いたしました。
 キャラバンではビラを配り、署名もとりましたが、郵便局というと、どこの地方、地域でもビラの受け取りも非常によく、署名もよく集まり、キャラバン隊が驚くほどの反応を示しました。47都道府県議会、そしてほとんどすべての市町村議会で、郵政民営化に反対、あるいは懸念や不安を表明する意見書が採択されています。私たちは、全国キャラバンを通じて、地域住民の声がまさにこの意見書に反映しているということを実感しています。こうした声を無視して郵政民営化を行うことは、日本の民主主義を破壊するものと言わなければならないというふうに考えます。
 最後に、働く現場から見た郵政公社の実態について述べさせていただきます。
 国会の審議で、公社の経営が成功しているかのような議論が行われていますが、強い違和感を持っています。公社になって、これまで1万7000人の人員削減、リストラが行われてまいりました。現場の実態に見合わないリストラで、公社になってから大きなサービス低下が進行しています。
 これは総務省の資料にもあらわれています。ことしの予算委員会に提出された、普通郵便局に寄せられた市民からの苦情件数という省の資料では、郵政事業庁であった02年度、誤配達の苦情が全国で23万4820件だったものが、郵政公社になった03年度には26万5809件と13%増加し、不着や遅延も含めた全体の苦情数も41万3431件から43万7765件へと6%増加しています。
 しかも、こうしたサービスも労働者の犠牲で辛うじて成り立っているというのが実情です。犯罪である不払い労働、いわゆるサービス残業で支えられているのです。
 郵政公社が昨年10月から12月に行ったサービス残業調査では、わずか3カ月の期間、しかも当局ににらまれながらの自主申告で、5万7000人、32億円のサービス残業の実態が明らかになりました。もちろん10月から突然サービス残業が始まったわけでもなく、申告できなかったサービス残業を含めれば、年間通して軽く100億円を超すサービス残業が行われていることは明らかです。そうした法律違反の不払い労働で郵便局のサービスは支えられているのです。
 それだけではありません。そうした数字にあらわれない過酷な労働で、次々と労働者が在職死亡、私たちは過労死だというふうに思っています。この間、公社が鳴り物入りで推進しているトヨタ方式、JPS方式の全国モデル局の越谷郵便局では、36歳の職員が在職死し、遺族がサービス残業と公務災害の訴えを行いました。10時間、四夜連続の夜間勤務を含む過酷な深夜勤務、私たちはフカヤキンと呼んでいますけれども、この導入で、東京中央郵便局では、その勤務に従事していた労働者が導入1年で2人も在職死しています。自殺する労働者も少なくありません。公社となった15年度にも38人が自殺しています。
 不払い労働でサービスを支え、過労死や自殺まで追い込んでいる。その背景には、大事故を起こしたJR西で問題となった日勤教育まがいのことも郵便局で横行しています。
 また、東北の岩手県のある郵便局では、営業ノルマを達成するために、空き箱ゆうパックといって、自宅に中身の入っていないゆうパックを送ることが行われています。青森県のある局でも、450円支払わせて、ゆうパックのラベルのバーコードを入力して、品物は何も渡さない、それで一個と換算をする、こうしたことで職員が自腹を切らされ、悩み苦しんでいます。
 こうした労働現場の無法状態は、民間と既にイコールフッティングとなっています。公社でも民間でも、労働者の基本的権利は守られなければならないと考えます。
 私たちは、国民とともに、郵政民営化には反対すると同時に、公社の労働条件を改善し、公社のサービスが改善するようにこれからも努力をするものです。このことを申し上げ、労働組合を代表しての意見とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)
○二階委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。



○松岡委員長代理 次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。
 まず、全銀協前田会長にお伺いいたします。
 大手銀行よりも残高が多額の巨大な郵貯銀行というのが生まれる。貸し出しはこれからだということなんですけれども、今度の民営化法及び修正案では一体的経営というのが可能になりますので、これは単に一銀行が生まれるだけではない、巨大ないわば全体の一体的なコンツェルンが生まれるわけであります。そういういわば大変大きな競争相手が一民間経営として発生する。それが新たに銀行業界に参入をしてくるわけであります。
 これは、銀行業界にとってはやはり大変な脅威ではないのかと思うんですが、プラスなのか、つまり、銀行の経営にとってこういう事態はプラスなのかマイナスなのか、率直な感想をお聞かせいただきたいと思うんです。
○前田参考人(全国銀行協会会長) 一言で申し上げるのは大変難しいんですが、日本全体で考えますと、私は、プラスになると思います。
○佐々木(憲)委員 全体で考えるとプラスだと。個々の銀行にとってはどうかというのがありまして、イコールフッティングという話があります。今回の法案を見ますと、あるいは修正もそうなんですが、国がバックにありまして、持ち株会社、3分の1を国が持つわけです。そのもとに実質子会社というのが、巨大な銀行が生まれるわけですね。
 こういう状況の中で、銀行業界は、それぞれの銀行と競争が始まるわけですが、こういう状況をイコールフッティングだというふうにお思いでしょうか。
○前田参考人(全国銀行協会会長) 先ほど申し上げましたとおり、政府の暗黙の保証が残るような状態であれば、イコールではないと思います。そういう意味では、2007年の時点で完全にイコールになったということではないと思います。経過期間を含めて、その期間にイコールになるような形で小さくしながらソフトランディングしていただきたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 移行期間が終わって民営化が完了した後も、いわば先ほど言ったような事態が続くんです。そういう状況ですので、これはイコールフッティングかどうかと。それは直らないと私は思っているんです。実際に法の仕組みはそうなっているんです。そういう状況をイコールフッティングだとお思いかどうか。
○前田参考人(全国銀行協会会長) 我々は、イコールにぜひしていただきたいということで、イコールになるまでずっとイコールにしていただきたいと申し上げるしかございません。イコールでない状態で競争しろと言われると、大変困ります。
○佐々木(憲)委員 イコールフッティングには実際ならぬわけであります。
 次に、山崎参考人にお伺いいたします。
 先ほどのお話で、38年間郵便の配達をされてこられた。本当に職員としての誇りを感じました。
 そこで、配達をされている際に、いろいろな場面に行き合うと思うんですけれども、一番充実感を覚えるといいますか、どんな状況か、例えば具体的な事例をもし挙げられるとすれば、その辺も含めてお聞かせをいただきたいと思います。
○山崎参考人(郵政産業労働組合中央執行委員長) 一番痛切に感じますのは、受験票だとかそれから合格の通知が来たときですね。私も、速達だとか、直接配達していますので、よく見ると、受験票なんかに部屋番号だとか住所が正確に記載されていないものが結構あるんです。それら、私は長く勤めていますので、結構詳しいことまで、子供時代から知っていますので、そういう住所が正確に記載されていないものを配達しますと、どうもありがとうございますということを言われますし、それから、やはり合格祝いを持っていったときに、小さいときから知っているお子さん、おめでとうございます、本当にうれしそうに、郵便屋さんありがとう、そのとき、本当にやっていてよかったなというふうに感じますね。そういうときですね。
○佐々木(憲)委員 本当にそうだと思うんですね。
 地域のお年寄りの方々も、郵便の配達さんが来ることを期待しているといいますか、来てくれると大変うれしいという声も我々は聞いておりますので、本当に社会生活を支えていく、そういう意味でユニバーサルサービスの一環を非常に担っているというふうに思うんですね。
 それで、今回の民営化でそれが一体どうなるのかということでありますが、先ほど、全国をキャラバンで回られたということなんですが、反応は、いろいろな反応があったかと思います。議会、自治体、反対が多いというふうにおっしゃいましたけれども、そういう実態をちょっとお聞かせいただきたい。例えば、ぜひ民営化してほしいという声が本当にあったのかどうかも含めて、お願いしたいと思います。
○山崎参考人(郵政産業労働組合中央執行委員長) 陳述で申し上げましたように、私は10都県行ってまいりました。
 直接県庁やそれから係の方に会ってお話ししたのが、岩手県だとか秋田県だとか、それから高知県だとか徳島県等でお会いしてまいりましたけれども、率直に言って、高知県では、山間が多い、山国の中で郵便局がなくなったらお年寄りは本当に困る、ライフラインにとってどうなるのか心配だ、ですから、郵政民営化には県議会でも反対の決議を上げていると言っていました。ぜひ頑張ってくださいと。それから岩手県でも青森県でも、県庁の総務部長さんとお会いしましたけれども、赤字局が多いという中で、本当に守られるのか、郵便局がなくならないのか心配だ、だから郵政民営化には賛成はできない、反対だという意見が多いでした。
 それから、私どもの組合員がそれぞれ、20自治体ですか、歩いていますけれども、ほとんどの県が、やはり郵政民営化に賛成だというふうにおっしゃるところはありません。慎重に議論してもらいたい、やはり反対をしていかなきゃいけないというのが率直なところじゃないかなというふうに思っています。
○佐々木(憲)委員 本当に全国の地域の皆さんの声というものは、今のお話の中にもその中身がよく伝わってまいります。
 それで、労働者の現場の実態ですけれども、先ほどかなり深刻なお話がありまして、自殺者が出るとか過労死がふえているという話がありまして、私はこれは大変なことだというふうに思いました。当然これは、公社の今の状況のもとでも正さなければならない改革の対象だというふうに思います。
 それで、民営化に対して現場の労働者の皆さんがどういう不安を実際に感じておられるのか。特に、例えば、会社が分かれると自分はどうなるんだろう、こういうものもあるんじゃないかと思うんですけれども、その辺も含めまして、率直な感じをお聞かせいただきたいと思います。
○山崎参考人(郵政産業労働組合中央執行委員長) 先ほども人員の切り分けのときに質問がありましてお話ししましたけれども、今やはり、本当にどうなるのかということが全く見えない、将来がわからないということに対する不安、そして、現場の中で仕事がどんどんきつくなってくる、毎年毎年人が減らされ、非常勤と言われるゆうメイトの方々が大量に職場に入ってくる、そして、苦情が仕事では多くなってくるという中で、本当にこれでいいのかというのがいっぱい出てきています。そして、病気しても休めない、けがしてもなかなか休めない、そういうので体がぼろぼろになっている。昼休み、本当にみんな寝なければ体がもたない、毎日2時間、3時間残業をやらなければ仕事が終わらない、そういう状況が続いて、本当にこれでいいのかという不安や不満が大きく広がっているというのが私は今の全国的な職場の状況じゃないかなというふうに思います。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 今のお話を伺っても、生田さんのもとで公社がうまくいっている、利益が上がっているというふうに盛んに言われるんですけれども、これは、やはり現場の労働者の実態というのは相当深刻で、そういう犠牲があるから黒字になっているわけで、そういう意味では、もっと労働条件の改善をしっかりやらなければいけないというふうに思います。
 それで、次に紺谷参考人にお伺いをいたします。
 小泉さんは、民にできることは民にということで言っていますけれども、民にできないことを公がやっているというふうに紺谷さんはおっしゃっているわけでありますが、民営化を推進するこの論理が、小泉さんの言い方がくるくる変わるというふうにおっしゃいました。
 そうすると、何のための民営化か、本当の目的があるんじゃないかというふうに先ほどおっしゃいましたよね。その本当の目的というものは一体何なのか。何のための民営化なのか。私は、民営化によってさまざまなマイナスが起こるということは本当にそのとおりで、我々はそれは反対です。しかし、そういうものを押してまであえて民営化しなきゃならぬのだ、初めに民営化ありきなんだ、理由は後からついてくるとは、そこまで言いませんけれども、しかし、そういうような推進の仕方ですよ。だから、どこかにこれは目的があるんじゃないかと思わざるを得ない。
 率直なところ、どのように目的というものを感じておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
○紺谷参考人(エコノミスト) 私は、郵便局の民営化に本当の目的が隠されているとは思っていないんです。道路公団の民営化にはあったな、三位一体の改革にもあったなというふうに思っておりますけれども、郵政民営化の目的は民営化です。民営化すること自体が自己目的化しているということでありまして、理由は何かは小泉さんにお聞きくださいませ。私はお答えできません。幾ら考えてもわかりません。こんなことやらなきゃいいのになと思うばかりでございます。
○佐々木(憲)委員 民営化自体が自己目的化しているという感じを持っておられるというのはよく……(紺谷参考人「感じではなくて確信を持っている」と呼ぶ)確信を持っているということであります。
 私は、この民営化をすることによって、いわば国民の財産である例えば郵便貯金あるいは簡保の資産、運用のノウハウがないわけですから、35兆円、それを運用しなさいといきなり言われても、そう簡単にできないわけであります。
 そうなると、当然それは、内外の投資顧問会社あるいは日米の金融資本が、いやいや、これはもう我々の方でやってあげましょう。ところが、これはリスクをとる運用であります。小泉さんはリスクをとるんだと言いました。リスクをとるとは、もうかるときはもうかるけれども、失敗したら大変な穴があいて経営そのものが危うくなる、そういうものだと思うんです。
 ですから、民営化というのはそういう危険性を伴うものであり、かつ、日米のそういう金融資本が食い物にする条件をつくってしまうことになるというふうに思うんですが、紺谷さん、いかがですか。
○紺谷参考人(エコノミスト) リスクをとるということでいいますと、国民はもう十分にリスクをとらされている、職を失い、町が寂れというさまざまな形で国民はリスクを負っていると思うんですね。
 それから、リスクマネーに移行していくのが大事というお話があるんですけれども、あたかも日本で十分にリスクマネーがないかのような御議論があるんですね。しかし、金融機関を通してリスクを負担してきたからこそ、日本はこれまで成長してこれたんです。経済のリスクというのはだれかが負うんですよね。個人が直接負う必要は全くないんです。
 日本人は、ほかの国の方たちよりも、先進国よりも、直接投資で自分が株を持ったり債券を持ったりではなくて、元本保証という形で、銀行にお金を預けるという形で持ってきたんですね。銀行が資金をプールしてリスクもプールするということで、国全体としてはリスクが小さくなっているということもあり得るわけなんです。リスクというのは、分散投資によって小さくすることができますから、個人で買える株式というのは銘柄数が限られますね、ETFを買うなら別でございますけれども。
 そういう意味で、金融機関を通してリスクを負担するという形でこれまでやってきたのでありまして、無理やり国民に、個人に、家計にリスクを負担させる理由は、竹中さんは何にも説明なさっていないということでございます。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。終わります。

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