金融(銀行・保険・証券) (金融消費者保護, 偽造・盗難キャッシュカード問題)
2005年07月19日 第162回 通常国会 財務金融委員会 【318】 - 質問
偽造・盗難キャッシュカード犯罪の被害補償を金融機関に義務づける預貯金者保護法(与党提出)賛成多数で可決
偽造・盗難キャッシュカード犯罪の被害補償を、金融機関に義務づける預貯金者保護法(与党提出)が、2005年7月19日の財務金融委員会で、賛成多数で可決しました。
佐々木議員は、盗難通帳による窓口での預金払戻し被害などが補償の対象とならず、被害実態に十分に応えるものではないが、原則、カード被害について金融機関の負担とする制度を法制化したことは重要な前進であると評価し、本法案に賛成しました。
なお、民主党が提出した「無権限預貯金等取引からの預貯金等の保護等に関する法律案」についても、不正な預貯金引き出し犯罪においてすべての預貯金者を保護する内容であると評価して、佐々木議員は賛成しましたが、自民党・公明党の反対により廃案となりました。
佐々木議員は、「本人と違う権限のない第三者に銀行等が預貯金を誤って払う、つまり過誤払いというのは絶対にあってはならない。本人確認をきちんとするというのが当然であって、それをせずに第三者に不正に支払った場合、やはり銀行に第一義的な責任がある、預金者に重大な過失がない限り預金者が保護されるべきだ」と、この犯罪対策における基本的性格を指摘。
この5年間の被害実態では、偽造カードの場合は516件で12億9300万円、盗難通帳の場合は4140件、103億900万円と、盗難通帳などの被害が圧倒的に多いことを紹介し、その対策というものがやはり求められなければならないと主張しました。
また、佐々木議員は、法案に預貯金に対する信頼を確保し、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の安定に資することを目的とすると書かれていることを取り上げ、「通帳も含めた盗難の被害、盗難印鑑などを対象としなければ預貯金者の保護に資することにならないのではないか」と与党議員を追及しました。
与党法案提出者である自民党の江崎洋一議員は、「次の段階としてこの盗難通帳問題など早急に対応していきたい」と答えました。
このような委員会質疑を受け、「速やかにその防止策及び預貯金者保護のあり方を検討し必要な措置を講ずる」とする附帯決議が全会派一致で採択されました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
今の議論に引き続き、与党側の提案者と民主党の提案者、それぞれまず確認をしておきたいと思います。
本人と違う権限のない第三者に銀行等が預貯金を誤って払う、つまり過誤払いというのは絶対にあってはならないと思うんですね。本人確認をきちんとするというのが当然であって、それをせずに第三者に不正に支払った場合、やはり銀行に第一義的な責任がある、預金者に重大な過失がない限り預金者が保護されるべきだと思いますが、与党提案者、民主党提案者、それぞれお答えをいただきたい。
○佐藤(茂)議員 与党提案者を代表して、佐々木委員にお答え申し上げます。
御指摘のとおり、権限のない者に預金が支払われることは、いろいろなケースがあると思いますが、一般論としてはあってはならないと考えております。そのようなことがないよう、安全性の高い、世界に冠たるATMシステムの構築を金融機関に促すことを目指すというのがこの法律案を提案した一つの趣旨であります。
しかし、仮にそのようなことがありました場合に、だれがその責任を負うのかということを考えなければなりません。それに関しては、金融機関の責任が重い場合や、金融機関、預金者双方の事情を考慮する場合など、さまざまな考慮要素があると思われますが、基本的には、本人以外の者に払い戻しをしてしまったような脆弱な支払いのシステムを提供しながらその安全性向上のための投資を怠ってきたという点で、金融機関側の責任はかなり大きいものと考えております。
本法律案は、このような問題意識から立案し、提案したものであります。
○中塚議員 お答えをいたします。
過誤払い、無権限取引ということを申し上げるわけでありますが、第一義的には、やはりそれは銀行がちゃんと本人の確認をするのは当たり前のことだと思うわけなんです。私どもは、そもそもこの法律をつくるときに、物事の考え方という点において、預けたものがちゃんと預かってもらえるというのは、実はこれは預金者の当然の権利だというふうに思うわけです。
先ほど与党の提案者の方から銀行も被害者であるという御答弁がございまして、確かにそれは財物を窃取されたわけですから銀行も窃盗の被害者ということなんだと思いますが、ただ、問題は、銀行も被害者、預金者も被害者、では、かわいそうだから預金者を助けてあげようという考え方ではなくて、そもそも預金者には自分の預けたものをちゃんと保管してもらえるという権利がある、かつ、銀行には預かったものをちゃんと預かる義務がある。そういうふうに考えまして、この私どもの民主党の案を提案させていただきました。
○佐々木(憲)委員 偽造カードだけではなくて、盗まれたカード、盗まれた通帳、印鑑を用いて不正な引き出しを行うというのが大変数が多いと思うんですが、具体的な数字を金融庁に確認をしたいと思います。
偽造カードと盗難通帳による被害実態について、全銀協でも調査をしていると思いますが、この五年間の盗難通帳による払い出し被害の件数と金額、それから偽造キャッシュカードによる引き出しの件数と金額、それぞれ述べていただきたいと思います。
○大藤政府参考人(金融庁総務企画局審議官) お答えいたします。
最近五年間の盗難通帳と偽造キャッシュカードによる被害の実態についての御質問でございます。
まず、盗難通帳による払い出しにつきましては、全国銀行協会が傘下金融機関に対して実施しているアンケートによれば、銀行における盗難通帳による払い出しの件数及び金額は、平成12年度は1,118件で21億7,800万円、平成13年度は786件で16億5,800万円、平成14年度は1,294件で41億6,500万円、平成15年度は674件で19億5,800万円、平成16年度は268件で3億5,000万円となっておりまして、平成12年度から16年度までの5年間の合計では、4,140件、103億900万円になっております。
次に、偽造キャッシュカードによる引き出しにつきましては、同じく全国銀行協会が傘下金融機関に対して実施しているアンケートによりますと、銀行における偽造キャッシュカードによる引き出しの件数及び金額は、平成12年度は被害の発生がありませんでしたが、平成13年度は1件で1,900万円、平成14年度は4件で1,600万円、平成15年度は100件で2億9,000万円、平成16年度は411件で9億6,800万円となっておりまして、平成12年度から16年度までの5年間の合計では、516件、12億9,300万円となっております。
○佐々木(憲)委員 今数字を確認しまして、ここでも非常にはっきりしているのは、偽造カードの場合は516件で12億9,300万円、盗難通帳の場合は4,140件、103億900万円。ですから、盗難通帳あるいは盗難の印鑑、それに基づく被害というものが圧倒的に多いんですよ、圧倒的に多いんです。したがって、その対策というものがやはり求められなければならない。
もちろん、件数の趨勢というのは、通帳の方は少し減ってきているということはあるでしょう、あるいは偽造カードが急増したということもあるでしょう。いずれにしましても、総数でいいますと、被害の総額でいいますと、盗難の通帳の被害が圧倒的に多いんです。それをどうするかということを考えないといけないわけでございます。
2003年の9月16日、全銀協は盗難通帳による払い出し等の対策を打ち出したわけでありますが、努力したとされているにもかかわらず、今でも被害はなくなっておりません。偽造カードだけではなく、盗まれたカード、盗まれた通帳、印鑑を用いた不正な引き出しの場合も、当然、預金者の無過失の立証というのは非常に困難であります。そのため、事実上、金融機関は免責され、被害者が泣き寝入りしているという事例が後を絶ちません。
過誤払い被害という点では、偽造カードも盗難通帳もその間に差異はございません。盗難通帳も含めて被害を救済するという法的措置が必要だと思うんですけれども、これも与党提案者と民主党提案者それぞれにお聞きをしたいと思います。
○松島議員 佐々木委員おっしゃいますとおり、そして先ほど泉委員もおっしゃいましたように、盗難通帳による、対面で、銀行員が相対しながら不正な取引、引き出しをやってしまうということは、確かに非常に大きな問題だと思います。そしてまた、これは、今後これに対する対応策という法律を必ずつくっていくべき問題ではないかとも考えます。
ただ、今、現時点におきまして、私どもがつくった法律というのは、最近ふえております、銀行のATM、機械のシステムというものに問題があってこういう犯罪が起こっている、被害が起こっている、そこに着目して、この点を集中的に法律に体系にしたものでございまして、この対人、対面取引というものは、また別個にもちろん対処していかなければいけない、今後大きな課題として残る問題だと考えております。
○城井議員 お答え申し上げます。
確かに、偽造カードも盗難通帳も違いはないというふうに考えます。実際に、偽造であろうと盗難であろうと、そして通帳であろうがカードであろうが、それにつけ加えてATMであろうが対面の取引であろうが、問題の本質はすべて同じだというふうに考えます。それは、すなわち、銀行が確実な本人確認を行っているかどうか、この一点が問題であるというふうに考えています。
先ほど御紹介ありました、大きな被害が出ております盗難通帳、そして印鑑による過誤払いでも、銀行がもう少し注意を払うだけでも簡単に被害を防げたケースは多いというふうに聞いてもおります。中には住所や生年月日が間違って記入されていたのを銀行員が親切に書き直させた、先ほど御指摘があった例であります、この例もうそのような本当の話でございます。対面取引での本人確認は決して難しいことではないというふうにも思っています。何か不自然だと思えば身分証明書を確認すればいいということでございますので、簡単だというふうに思います。巨額を投じて新たなシステムをつくる必要もないというふうにも思います。
繰り返しますけれども、多くの銀行はそういう努力を全くしてこなかった、これまでの民法の478条に安住をしてきたという点は厳しく指摘をせざるを得ません。このように、ある意味で表面的な問題ということにこだわってしまっては、この問題の本質を見誤ると思っています。問題の本質は銀行が確実に本人確認を行う、この一点であるということを最後に改めて申し添えたいと思います。
○佐々木(憲)委員 提案者の江崎議員は、4月13日のこの財務金融委員会でこういうふうに述べておられます。「基本的には、預金者の立場、預金者本意の立場でこれらへの対応策が必要だ」というふうに述べました。きょうの提案された法案の目的を見ますと、「これらのカード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護を図り、あわせて預貯金に対する信頼を確保し、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の安定に資することを目的とする。」こう書かれているわけであります。
つまり、預貯金者の保護は現在不十分であり、過誤払いの被害者が無力であるから、預貯金者の立場で保護のルールをつくろうというのが提案された基本的な考え方だというふうに理解はできます。しかし、今議論のありましたように、通帳も含めた盗難の被害、盗難印鑑、こういうものまで対象にしないと、預貯金者の保護に資するということにはならないのではないか。
先ほどの松島議員の答弁では、今後何らかの法的対応が必要だというふうにおっしゃいました。必ずつくるべきだともおっしゃいました。それならば、これはこの部分をやはりつけ加えてより預金者保護に資するものにする、これは当然の対応策だと思いますが、そういう気持ちがあるのか、あるいはないのか、この点を明確にお答えをいただきたいと思います。
○江崎(洋)議員 現段階において、この国会において成立をさせるという目的においては、この盗難通帳の案件については検討課題とさせていただきたいと思っております。したがって、今早急に対応する盗難・偽造カード、これを対象とさせていただきまして、次の段階としてこの盗難通帳、先ほど松島議員からお答え申し上げましたとおり、印影による文書の認証という問題、これはいわゆる銀行取引における通帳と印鑑という関係以上の広がりがあるわけでございますので、関係行政機関とも相談しながらここは早急に対応していきたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 これはもう少し具体的に詰めていく必要があると思います。先ほども与野党協議ということを提案されましたので、これは預金者の立場にしっかり立って、預金者を守るという姿勢でぜひ対応していただきたいと思います。
次に、与党提案者に続いてお聞きしますけれども、現在、預貯金者が自分の無過失を立証しなければ損失は補てんされないということになっておりまして、与党提案のこの法案では過失の立証責任は金融機関にあるというふうにされております。この点は一定の評価を我々はしております。偽造カードに限るということでありますが、立証責任を銀行に課した理由、この考え方、説明をしていただきたいと思います。
○江崎(洋)議員 先ほど佐々木委員もおっしゃられましたとおり、預金者に帰責事由を求めるというのは非常に困難であるということは私ども認識しているということでございます。その結果として、預金者の方は損失補てんを受けられずに泣き寝入りをされているという現状がございます。
情報量あるいは人的資源ということに関しましても、個人と組織ということを考えますと、圧倒的に力関係はやはり銀行の方が強いと考えざるを得ません。そういった観点を含めて、私どもは銀行に立証責任を求めたということでございます。
また、そもそも論としまして、今、銀行が脆弱なシステムを私ども預金者に提供してしまっているということについては大変重い責任である、一日も早く安全性の高いシステムに確立し直してもらうということも同時に求めているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 現実にこれまでもたくさんの被害者が生まれまして、預貯金者が泣いているわけです。これまでの被害、これまでの被害者をどう救うかというのも大変重要な課題であります。
つまり、法律をつくったら、法律をつくって以後の被害は救うけれどもそれ以前はどうしてもできないんだ、こういうことが通常往々にしてあるわけですけれども、この点について、与党提案者、民主党提案者それぞれ、過去の、つまりこれまでに発生した被害者、これはカードだけじゃありません、預貯金の通帳の被害も含めましてどう対応されるのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
○江崎(洋)議員 法律施行前の行為に今法律について及ぼすということが難しいことにつきましては、法律にお詳しい佐々木先生も十分御存じだと存じますが、しかしながら、私どもの法律に関しましては、附則第2条といたしまして、「この法律の趣旨に照らし、最大限の配慮が行われるものとする。」ということで、過去にさかのぼって拘束はできません、しかしながら、この法律自身で最大限の配慮が行われて、私どもといたしましては、できるだけ多くの預金者が救われることをあくまで期待しているわけでございます。金融機関の対応を今後も注意深く見守っていきたいと考えております。
○中塚議員 まず、私ども、この法律案を提出したのは3月の25日なんですね。要は、年度末、昨年度末に提出をした。とにかく早く対策をとらなきゃいかぬということをかねてより主張していた。やっと与党の皆さんも案をお出しになったので、こうやって両案並べて審議ができるということになったわけなんですが、本当にこれ以上不幸な方をふやさないようにする、大切なことだと思います。
あとは、加えて、先ほど佐々木先生の質疑の中でもございましたけれども、盗難通帳、盗難印鑑の方も含めて、これだけたくさんの被害が発生をして、現実に困っていらっしゃる方が多い。もちろん、不利益遡及はしないという大原則があるようではありますけれども、ただ、国会がまさに国権の最高機関であるということが日本国憲法の中にもしっかりと書いてある、私どもは国民の代表としてこうやって案を提出し議論をしているということなんですが、この法律案が成立をした暁には、ぜひとも過去の例につきましても、国権の最高機関たる国会が、国民の代表である国会議員がこういう案をつくったんだという事実を銀行にもあるいは裁判所にも重く受けとめていただきたい、このように考えております。
○佐々木(憲)委員 預金者を守るという点については、今後の被害者、想定される被害者も当然守らなきゃならぬけれども、現実に被害を受けた方々がいらっしゃるわけで、そういう方々を全面的に救済するということが必要だという点を改めてここで強調しまして、時間が参りましたので終わります。