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医療・介護・年金 (年金制度)

2005年07月22日 第162回 通常国会 年金・社会保障両院合同会議 【320】 - 発言

「国民皆年金の意義は明らかだが、深刻な空洞化を招いている」佐々木議員が指摘

 2005年7月22日、年金・社会保障両院合同会議が開かれ、国民皆年金についてテーマに各党一巡の冒頭発言があり、自由討論が行われました。佐々木憲昭議員は、冒頭で発言しました。

 佐々木議員は「国民皆年金の意義は明らかだが、深刻な空洞化を招いている」と指摘し、最低保障年金制度の創設を主張しました。
 佐々木議員は、年金未納者や無年金者の増加、低額な年金など、年金をめぐる事態の根底には、「現行の国民年金制度に欠陥があるのではないか」としたうえで、自民党政府が1959年に発足させた国民年金制度の問題点を挙げました。
 社会保険方式による国民年金制度は、保険料が住民税の10倍にあたる高額なもので、受給資格が25年という内容です。首相の諮問機関である社会保障制度審議会は59年に出した答申で、「低所得者などが年金から締め出され、年金制度の本来の目的に著しく反する」と批判しています。
 佐々木議員は「今日の事態は、当時の社会保障制度審議会が懸念した通りになっている」とのべ、現行の社会保険方式による制度では低所得者、失業者、不安定雇用者は排除されると指摘。「政府の責任で、すべての国民に最低保障をおこない、それに社会保険方式を上乗せする制度に転換すべきだ」と主張しました。
 さらに、政府資料「社会保障財源の対GDP比の国際比較」を示しました。それによると、社会保障給付費にたいする公費負担の割合は、日本が5・4%で、ドイツ9・9%、フランス9・3%、イギリス13・0%に比べ半分かそれ以下。事業主負担(企業負担)も、日本は5・7%で、ドイツ11・2%、フランス14・0%、イギリス8・4%に比べ格段に低い状況です。
 佐々木議員は、「日本の社会保障の貧しさの根本原因が公費負担と企業負担の少なさにある」とのべました。

議事録

○佐々木議員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうのテーマは国民皆年金の意義についてでありますが、その前に、前回の議論に関連して一言述べておきたいと思います。
 前回、年金目的、福祉目的の消費税についてコメントをいたしました。その際、自民党内の財政改革研究会の中の議論、論点整理についても紹介し、消費税の目的税化について、私は反対の態度を表明いたしました。これに対して、自民党の津島雄二議員から、「責任者の一人として申し上げますけれども、私たちの考え方は、去年の税制改正大綱に書いてあるもの以上でも以下でもございません。」という発言がありました。
 与党の税制改正大綱には、「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する。」と書かれております。以上でも以下でもないというような発言は、議論にならないわけであります。
 この合同会議に参加している有力メンバーで構成されている研究会がその見解をマスコミに公表しているのだから、考え方をただすのは当然ではないでしょうか。初めから議論を避けようとする津島議員の態度はいかがなものか、この点を指摘しておきたいと思います。
 幸い、柳澤伯夫議員はそのような態度をとらず、問題意識について三点にわたって説明をされました。その真摯な態度については評価をしたいと思いますが、ただ、三つの問題意識はいずれも、消費税の増税を前提としてその使途をどの範囲まで広げるかというものであって、私たちとしては根本的に賛同できないということを申し添えておきたいと思います。
 次に、本題の国民皆年金の意義について発言をしたいと思います。
 憲法25条が規定する生存権の保障という点からも、高齢者の生活実態から見ても、国民皆年金の意義は明らかであります。問題は、その皆年金が実を伴っておらず、深刻な空洞化に直面していることであります。
 現在、65歳以上で受給権のない無年金者は、推計60万人もいます。2003年度会計検査報告では、60歳未満で受給資格のない将来の無年金者は、39万人に上っております。まず、この事実を直視すべきだと思います。その上、辛うじて受給できている人も、その多くは、最低生活を賄えない低い額の年金となっているわけであります。
 国民年金の平均受給額は4万6,000円にすぎません。現在、国民年金の保険料未納は約4割、20代前半では過半数が未納であります。私は前々回、厚生年金に加入できず、国民年金も払えない、もらえない、不安定雇用の若者の実態について発言をいたしましたが、このままでは、膨大な無年金、低額年金者が生み出されていくことになります。
 こうした事態の根底には、現行の国民年金制度の欠陥があるのではないでしょうか。
 総理大臣の諮問機関として、1948年、少し古いわけですが、創設されました社会保障制度審議会、終戦直後から国民皆年金の実現を求めていました。その際、最低生活を保障する部分は全額国庫負担による無拠出年金とし、保険料が払えない低所得者を年金制度から排除しないようたびたび提唱しておりました。ここに大事な原点があると思います。それは、50年勧告、53年勧告などでも明らかにされたところであります。
 ところが、自民党政府が岸内閣時代の1959年に法案を成立させました国民年金は、社会保険方式とされました。しかも、制度スタート時の保険料は、当時の住民税の10倍でありまして、加入対象者の3割が免除になるという高額なものでありました。さらに、受給資格期間は300カ月、25年とされました。四半世紀保険料を払い続けないと1円も年金がもらえないという仕組みとされたわけであります。
 社会保障制度審議会は、1959年1月の答申で、こうした形での国民皆年金のスタートを厳しく批判しております。対象者の3割近くはその納付を免除しなければならない高額の保険料、25年という長期間にわたる保険料の納付、これらにより、国民年金の必要の最も多いボーダーライン層がかえってこの制度から締め出されるおそれが多分にある、こう指摘をした上で、年金の受給資格に極めて過酷な所得条件を課すのは社会保険よりむしろ任意保険に近い考え方であり、社会保障の精神を大幅に後退せしめ、高齢者の貧困の予防という年金制度の本来の目的に著しく反したものであると述べております。このままでは国民年金が絵にかいたもちになりかねないという警鐘を鳴らしたものでありました。
 その後、国民皆年金制度は、社会保険方式に基づく国民年金をそのまま基礎年金と位置づけ、専業主婦や学生を強制加入させていくという、形だけ整える方向で進んだわけであります。
 しかし、今日の事態は、まさに46年前に社会保障制度審議会が懸念したとおりになっているのではないでしょうか。社会保険制度だけでは、低所得者、失業者、不安定雇用の人は制度から排除され、すべての国民の所得保障、皆年金とはなり得ないわけであります。解決の道は、やはり最低保障年金しかないと思うわけであります。かつての社会保障制度審議会がたびたび提唱してきたように、政府の責任ですべての国民に最低保障を行い、その上に社会保険方式で上乗せする制度に転換すべきであります。
 イギリス、ドイツ、フランスでは、低額の年金しか受け取っていない人のために、公的扶助とは別に、年金の最低額を保障する制度がつくられております。北欧諸国やカナダ、オーストラリアなどは、全額国庫負担による最低保障年金制度があります。生存権を保障するために、国の責任で年金受給者の所得の最低額を保障するのが世界の流れであります。この方向に直ちに踏み出すべきだと考えるわけであります。
 前回、柳澤議員は、「そもそも社会保障全体の経費、そこに回すべき財源が、日本経済の持っている経済力と何の関係もないということは絶対あり得ない、」と述べたわけでありますが、その限りではそのとおりであります。しかし、それがなぜ消費税増税に直結するのか、全くこれは理解に苦しむところであります。税制に限りましても、例えば、法人税、所得税の最高税率の検討さえしていないというのはどういうわけでしょうか。
 経済力との関係でいえば、例えば、第10回社会保障の在り方に関する懇談会に提出された資料、「社会保障財源の対GDP比の国際比較」が参考になります。
 それによれば、社会保障給付費に対する公費負担は、日本は5・4%にすぎません。ドイツは9・9%、フランス9・3%、イギリス13・0%、スウェーデン16・2%、日本は他の諸国の2分の1から3分の1の水準であります。アメリカの7・2%よりも少ない水準であります。
 こうした社会保障の公的支出の少なさが、貧しい年金となってあらわれているわけであります。実際、国民年金の国庫負担は、当初2分の1だったわけですが、80年代以降、基礎年金の3分の1に据え置かれております。厚生年金への20%の国庫負担も廃止され、現在、年金給付全体に対する国庫負担は12・4%にすぎません。当然ふやすべきであります。
 この国際比較を見ますと、日本は、社会保険料の被保険者負担、本人負担は他の諸国とほぼ同じ水準であります。ところが、事業主負担、企業負担は、日本5・7%に対しまして、イギリス8・4%、ドイツ11・2%、フランス14・0%、スウェーデン13・8%と、日本の企業負担がいかに低いか、明らかであります。
 日本の社会保障の貧しさの根本原因が公的負担、そして企業負担の少なさにあるということは、これらの政府の統計からも明瞭ではないでしょうか。この点を指摘しまして、発言を終わります。

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