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金融(銀行・保険・証券), その他 (金融のバリアフリー)

2005年08月02日 第162回 通常国会 財務金融委員会≪日銀報告質疑≫ 【324】 - 質問

視覚障害者が識別しやすい紙幣に 佐々木議員要求 日銀総裁「今後の工夫の余地がある」

 2005年8月2日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、視覚障害者が識別しやすい紙幣にすることについて、日銀総裁と財務省に質問しました。
 佐々木議員は、視覚障害者にも、きちんと「識別できる紙幣」にするよう求めました。
 日本銀行の福井俊彦総裁は、新旧5,000円と2,000円紙幣の長さに1ミリの差しかないことについて「1ミリの差は、小さすぎると言われればその通りだと思います。今後の工夫の余地がある点だと思います」と答えました。
 佐々木議員は、「これらの新札を発行するに当たって、視覚障害者の要望を、どの段階で聞いたのか。そのさい、どのような要望が出されたか」と質問。
 財務省の浜田理財局次長は、わかりやすい識別マークやインクの盛りの高さ、お札の大きさなどについて要望があったとのべました。
 しかし、お札の長さや幅について区別しやすいようにという意見については、対応できなかったことを事実上認めました。
 昨年11月に、新札が発行されていっそう混乱しています。新札が発行されても旧札が廃止されずに残るからです。
  現在、発行されている日本のお札は7種類。旧札とあわせて22種類のお札が使用可能(有効)となっています。
 7種類のお札を識別マークだけで判断するのは難しく、新たなバリアとなっています。
 たった1ミリ違いで、156ミリの新5千円札、155ミリの旧5千円札、154ミリの2千円札が存在しているからです。
 1ミリや2ミリでは、長さ区別できません。新5千円札を四つ折りにして、伸ばして比較すると2千円札の長さはほとんど同じになってしまうのです。
 識別マークも、よれよれになったお札では分かりません。中途失明者や糖尿病などで手の感覚が敏感でない人には判別できません。
 ヨーロッパを中心とするユーロ紙幣は、2002年1月1日に発行されました。
 ユーロにおけるバリアフリーは徹底しています。
 ユーロ紙幣では、5ユーロから100ユーロまでのお札は、縦も横も5〜7ミリずつ長さが違います。200ユーロと500ユーロは、長い方だけが違うようになっています。
 色でもハッキリ識別でき、弱視の方やお年寄りにも判別しやすいものになっています。
 佐々木議員は、今後、新札を発行する際の参考にすべきと要求しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは、少し角度を変えまして、日本銀行券、お札の問題についてただしたいと思います。
 当たり前のことですけれども、お金を正しく数えられるということは、だれでも生活する上で絶対に必要な条件であります。視覚障害者は全国で39万人おられますけれども、これらの方々にとってもそれは同じだと思います。
 まず福井総裁にお聞きをいたしますが、紙幣が視覚障害者にとってもきちんと識別できるということは大変大事なことだと思いますが、総裁の基本的な見解をお伺いしたいと思います。
○福井参考人(日本銀行総裁) 今委員から御指摘のとおり、日本銀行券というのはまさにお金そのものでございますので、国民の皆様方が安心してこれを使っていただける、そういう環境を整えていくということは日本銀行の基本的な責務だというふうに考えています。その中に目の不自由な方々がいらっしゃる、銀行券にその目の不自由な方々にも識別対応をできる限り十分備えて提供させていただくということも重要な課題であると認識をいたしております。
○佐々木(憲)委員 財務省にお聞きしますけれども、2千円札が発行されましたのは2000年の7月であります。昨年の11月からは1万円、5千円、1千円と三種類の紙幣が新たに発行されました。確かに偽造防止については高い技術を持っております。では、バリアフリーという観点からはどうかということであります。
 確認したいのは、これらの新札を発行するに当たりまして、視覚障害者の要請をどの段階でお聞きになったのか、その際、どのような要望が出されましたか、紹介をしていただきたいと思います。
○浜田政府参考人(財務省理財局次長) お答え申し上げます。
 目の不自由な方々の団体の方から、日本銀行券につきまして、お札につきまして御要望等は随時伺っておるところでございますけれども、今回の改刷に当たりましては、平成14年8月の改刷発表の直後から複数の全国組織の目の不自由な方々の団体にいろいろと御意見を伺い、御協力いただき、その識別マークの形状等を決定したところでございます。
 その際、御要望といたしましては、目の不自由な方々からは、まず識別マークについて、大きくかつ単純な形状にできないか、また、凹版印刷によるインキの盛りで区別できるわけでございますが、その盛りをもっと高くできないかという御要望、またさらには、紙幣の大きさにつきまして券種ごとにもっと差をつけてほしいとの要望が寄せられたところでございます。
○佐々木(憲)委員 今御紹介をいただきましたお札の長さあるいは幅について区別しやすいようにという意見、それから、色についてもこれまでのような区別しやすい色を踏襲してもらいたい、こういう意見もあったと思うんですが、これはどのように反映をされたのか、その点についてお聞きをしたいと思います。
○浜田政府参考人(財務省理財局次長) お答え申し上げます。
 まず、識別マークの方から申し上げさせていただきたいと思いますが、識別マークにつきまして、新1万円券につきましては大きなL字形、また5千円券につきましては大き目の八角形、1千円券は長目の横棒をそれぞれお札の左右の下の方に配置いたしまして、丸形と線形、そして縦方向と横方向ということで、券種の間に違いを持たせるようにいたしております。また、インキの盛りの高さを可能な限り確保するとともに、マーク自体にメッシュ状のざらつき、マーク自体に凹凸をつけるということを持たせてその触感を高めるなどの工夫を施しておりまして、技術的に可能な範囲で最大限対応したところでございます。
 なお、御指摘の紙幣の大きさについてでございますけれども、それぞれに若干の差をつけておるところではございますけれども、我が国の場合、諸外国と比べてATMあるいは自動販売機等銀行券を扱う機器が多数普及しておりまして、これらの機器に対する影響についても考慮する必要があるということで、大幅な寸法の変更は難しいということで、これら寸法以外の各種識別の対応措置について工夫いたしまして、券種間の識別をより容易にできるよう対応をしているところでございまして、御理解賜ればと存じます。
○佐々木(憲)委員 そのインクの盛りですとかあるいは識別マークというものは、これはなかなかわかりにくいというのが実際に使われた方々の御意見なんです。今のお話ですと、大きさは要望にはこたえられなかったというようなことでありますが。
 日銀にお聞きしますけれども、新札が発行された後、いろいろな意見が寄せられていると思いますけれども、障害者からはどのような要望があるか、お聞かせいただきたいと思います。
○岩田参考人(日本銀行副総裁) それでは、お答えいたします。
 昨年11月に新しい日本銀行券を発行した後、目の不自由な方々からも識別マークの改善及び銀行券のサイズ変更等の御要望をちょうだいいたしております。
 日本銀行といたしましては、こうした御意見を十分踏まえつつ、銀行券の使い勝手を一層向上させるにはどのような方策が考えられるのか、今後とも関係当局と検討を重ねてまいりたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 そこで、お配りした資料を見ていただきたいんですが、東京視力障害者の生活と権利を守る会、東視協では、2千円札の出回りから1年を機に、2千円札を中心にアンケート調査を行っております。これは2001年12月にまとめられたものです。その結果はそこにあるとおりでございます。
 幾つか紹介をいたしますと、識別に時間がかかる61.4%、金額を間違う51.5%、おつりなどが間違っていると思っても相手に言えない30.7%、複数回答ですけれども、領収書など他の紙片と間違う27.7%。このように紙幣の使用に当たってバリアがある。
 それから、こういう被害も出ているんです。1万円といって1千円札を渡されたと。売り上げとして受け取った中にお札と同じ大きさの白い紙が2枚入っていたと。視覚障害者同士の金銭の授受の際にもいろいろな失敗例がありまして、例えば、紙幣と勘違いして領収書を渡してしまったとか、1万円札のつもりが1千円札を渡してしまった、こういう事例がたくさん出ているわけです。
 日銀や財務省にはこういう意見は届いておりますでしょうか。
○浜田政府参考人(財務省理財局次長) お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘の団体の方の御要望につきましても私ども伺っておるところでございます。
 一点だけ補足させていただければ、先ほど申し上げませんでしたけれども、高額券、新1万円券及び5千円券にはホログラムを採用しておりまして、そのホログラムによっても触覚による判別をしやすくしたところでございます。また、5千円券と2千円券との違いにつきましても、寸法の上でも、若干ではございますけれども、5千円券のサイズを変更しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 ホログラムのお話がありましたが、これも、よれよれになったお札だとなかなかわからないというんですよ。
 昨年11月に新札が発行されたために一層混乱しておりまして、新札が発行されても旧札が廃止されずに残ります。これが新たなバリアになるということなんですね。配付した資料を見ていただきたいんですが、現在発行されている日本のお札は、表面にありますように七種類、裏面も合わせますと22種類のお札が使用可能な状況になっているわけです。非常に複雑なんですね。
 見てわかるとおり、新5千円札の長さ、これは156ミリメートルなんです。それで、旧5千円札は155ミリ、2千円札は154ミリ、それぞれたった一ミリずつしか違わないわけです。たった1ミリなんです。この1ミリや2ミリの区別では長さがわからない。
 私、ここに現物がありますけれども、これは本物のお札ですが、これも今言ったように1ミリずつの違い、幅は同じなんですね、長さがほとんど変わらないわけです。ですから、例えば何回か折りますと区別がつかなくなるわけです。識別マークも、先ほど言ったようによれよれになっちゃうとわからない。中途失明者や糖尿病などで手の感覚が敏感でない方には判別できない。
 そこで、日本点字図書館では、ここにありますように、こういうお札の識別シートというのを売っておりまして、これはなかなかいいアイデアなんですが、ここに長さの段差がありまして、これをお金と合わせて、この長さに合っていればこれは1万円だとか、5千円だとかと、こういうふうに区別をするものなんですけれども。これも、つくられた当時は、かなり前につくられたんですが、そのころは1万円、5千円、1千円のお札はきちんと5ミリ違いです。5ミリ違いますと、このシートがなくても当時お札の区別はできた。もともと日本のお札というのはバリアフリーだったんです。しかし、今は、先ほど言ったように1ミリ違いですからね、そのためにこのシートには1ミリ違いが表現できないんです。印がつけられないということで、余りにも差が小さ過ぎる。
 しかも、視覚障害者の方が買い物に行ったときに、レジの前でこれを出して、この識別シートを使って確認するというのはなかなか勇気が要るわけです。とてもできない、こう言われるわけですね。毎日使うお札だから、せめて手でさわっただけで違いがわかるものにしてほしい、こう言っているわけです。
 日銀総裁にお伺いしますけれども、こういう視覚障害者の方々の御意見についてどのような感想をお持ちになっておられるか、お聞きをしたいと思います。
○福井参考人(日本銀行総裁) 銀行券は、その性格上、大量に発行されて大量に処理しなきゃいけない、ATMその他の機械にも十分円滑にこれが流通するようにつくらなきゃいけない。一方、偽造対策も万全でなきゃいけない。一方、これをお使いになられる方々の具体的な使用勝手、特に目の不自由な方々への識別判定の便利さ、こういったさまざまな要請をできれば全部満たしながらやっていかなきゃいけないということだと思います。
 技術対応の、これは刻々と進歩しておりますけれども、それは十分取り入れながら、この三つのバランス、できれば三つとも追求するということで今後とも工夫を重ねていく以外にないと思いますが、おっしゃるとおり、大きさなんかについて1ミリの差というのは小さ過ぎるではないかと言われると、それはそのとおりかもしれないと私も思います。今後の工夫の余地がある点だというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 ATM対応あるいは自動販売機、これは今これから御紹介しますけれども、例えばヨーロッパのユーロ、これは大きな違いがわかるわけですが、そういうもので結構進んでいるわけです、対応ができているわけです。今これをお見せしますけれども、資料を見ていただければわかりますように、ヨーロッパを中心とするユーロ紙幣は2002年1月1日に発行されまして、ユーロにおけるバリアフリーは徹底しているんですね。ここにあります。これは幅と長さというのは明確に違うわけです。それから、色もこういうふうにはっきりと違うわけです。
 ユーロ紙幣は、五ユーロから百ユーロまでのお札は縦が5ミリ、横も6ミリから7ミリずつ大きさが違うんです。200ユーロと500ユーロは長い方だけが6ミリから7ミリずつ違う。これでもATMで紙幣をきちっと扱っているわけです、扱えるわけです。色でもはっきり区別できまして、弱視の方やお年寄りにも判別しやすいものになっている。しかも、偽造防止もきちんと施されているわけです。この色の違いをそこに、もう時間がありませんから一々紹介しませんけれども、例えば5ユーロはグレー、10ユーロは赤、20ユーロは青、50ユーロはオレンジ、100ユーロは緑等々、はっきりと区別がされているわけです。これは、当然、今後ともこういうものも参考にすべきだと思いますけれども、財務省の見解をお聞きしたいと思います。
○浜田政府参考人(財務省理財局次長) お答え申し上げます。
 銀行券につきましては、国民の皆さんすべてが日々の生活において使用するものでございますので、各券種間の識別が容易であることが望ましい、当然でございますので、今後とも引き続き印刷局あるいは日本銀行と相談しつつ、障害者の方々の立場も考えた、よりよい銀行券をつくるよう努めてまいりたいと考えておりますが、一点だけ技術的な問題といたしまして、私どもの把握しておるところでは、ユーロ圏でも自動販売機はもちろんございますけれども、ユーロにおきますいわゆるATMは、ほとんどが出金のみの、お金が出てくるだけのキャッシュディスペンサーであるということ、あるいは自動販売機も、仄聞する限りではお札が使える自動販売機がユーロ圏においては日本よりも非常に少ないのではないかと伺っておりまして、その辺まだ技術的な検討の余地がいろいろあろうかと思っております。
○佐々木(憲)委員 もちろん、もう時間がないから終わりますけれども、ユーロそのものを丸々まねなさいと言っているわけじゃありませんで、こういうものを参考にして、ATMも使えるような紙幣で、先ほど総裁がおっしゃったように、ATMも使える、偽造防止にも役立つ、そしてすべての視覚障害者が識別が明確にできるような、そういう紙幣を開発するというのが本来の役割だろうというふうに思います。
 2千円札については触れませんでしたけれども、障害者の方々は2千円札に対する批判が非常に強いんです。つまり、もうこれはやめてほしいと。この2千円札自身も流通がほとんどないですよね。今一生懸命……(発言する者あり)形も色も間違えるという話がありますけれども、これは2000年九州・沖縄サミットの記念紙幣として残して、発行は凍結する、このぐらいの決断をしないと国民にとってよろしくないんじゃないかと思いますが、それは意見として申し上げまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。

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