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財政(予算・公共事業), 金融(銀行・保険・証券) (郵政民営化)

2005年10月12日 第163回 特別国会 財務金融委員会 【326】 - 質問

郵政民営化 資金の流れは「官から民へ」は流れない 佐々木議員の質問で明らかに

 2005年10月12日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は郵政民営化による「官から民への資金の流れ」について質問しました。

 小泉総理は「官から民へ」をスローガンに掲げ、「郵政民営化を行えば資金の流れが官から民へ変わり経済が活性化する」と言ってきました。
 佐々木議員は、政府の統計をもとに主な資金の流れの資料を示しました。
 まず、資金の流れが「官から民へ」本当に変わるのか検証するため、現状がどのような資金の流れになっているか確認。
 この10年の間に、民間銀行の貸し出しは減り、その資金は国債・地方債に大きく流れています。その理由は、内需が冷え込み民間企業の資金需要が停滞してきた反面、国と地方の借金=財政赤字が大きくなったからです。2003年は、「民」から「官」へ、650兆円もの資金が流れています。

 続いて、佐々木議員は、2003年度の流れがどのような姿に変わるのか質問。
 財務省の見通しによると、国債の発行は2005年には538兆円だったものが、2017年には892兆に膨れ上がります。
 また、6月1日の経済財政諮問会議に、慶応大学の跡田直澄教授と内閣府経済社会総合研究所の高橋洋一氏が出した資料によると、「民」から「官」へ、950兆円もの資金が流れることになります。
 佐々木議員は、国の借金が増える事で「結果的には民から官への資金の流れがより一層大きくなる」と指摘。「これが実際の姿ではないか」と質問。
 谷垣財務大臣は「大量の国債を発行しなきゃならない時代というのは相当長期にわたって続かざるを得ない」「そういう趨勢は続くと思います」と認めました。
 郵政民営化によって「資金が民間に流れて経済を活性化させることができる」というが、まったく逆の流れになる事が明らかになりました。

 佐々木議員は、「資金の流れを変えるというなら、家計消費を暖めて国内需要を拡大し、企業活動を活性化して資金需要を増やすこと、そして、無駄遣いにメスを入れて国債の増発をおさえ財政再建に道を拓くことだ。こうしてこそ、資金が『民間』に流れていく」と主張して、質問を終わりました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 小泉内閣は、官から民へというのをスローガンに掲げまして、郵政民営化を行えば資金の流れが官から民へ変わり経済が活性化する、こう繰り返してこられました。例えば、小泉総理は通常国会の施政方針演説で、「郵便局を通じて国民から集めた350兆円もの膨大な資金を公的部門から民間部門に流し、効率的に使われるような仕組みをつくる」べきだ、このように述べましたし、また、今度の選挙でも、自民党の重点政策の中でも同様の主張をしておられます。
 まず確認をしておきたいんですけれども、こういう主張をされたということは確認できますか。
○谷垣 財務大臣 今、小泉総理の御主張ですよね、私もそういう主張をされていたと理解しております。本人ではございませんので直接のあれではございませんが、私はそう理解しております。
○佐々木(憲)委員 これは自民党の政策でもありますから、同じだと思います。
 そこで、きょうは、この日本の資金の流れが官から民へ本当に変わるのかという点を検証したいと思います。
 まず、現状はどのような資金の流れになっているか、伊藤大臣にお聞きしますけれども、資金の流れを見る場合、一番量が多いのは当然民間銀行からの資金の流れでありますが、例えば、国内銀行ベースの貸出残高、10年前の1995年3月末からことし2005年3月末までの間、金額で幾ら伸びているか、そして、同じ期間に、国内銀行の国債、地方債の保有残高、これはこの10年でどうなっているか、数字を示していただきたいと思います。
○伊藤 金融担当大臣 二つの観点から御質問がございましたが、ちょっと質問をひっくり返しまして、まず国債や地方債の方からお答えをさせていただきたいと思いますが、国内銀行の過去10年間における国債及び地方債の保有残高の推移を見ますと、日本銀行の統計によりますれば、主要行におきましては、平成7年3月末は国債約16.2兆円、地方債約4.1兆円、平成17年3月末は国債約74.2兆円、地方債約1.4兆円になります。地銀では、平成7年3月末は国債約9.8兆円、地方債約4.1兆円、平成17年3月末は国債約22.1兆円、地方債約6.7兆円。第二地銀では、平成7年3月末は国債約2.8兆円、地方債約1.8兆円、平成17年3月末は国債約5.7兆円、そして地方債約0.8兆円となっております。
 次に、融資残高の推移でありますけれども、これも日本銀行の統計によりますと、貸出残高合計につきまして、主要行につきましては、平成7年3月末は約294.2兆円、平成17年3月末は約224.4兆円になります。地銀は、平成7年3月末は約131兆円、平成17年3月末は約137.2兆円。第二地銀は、平成7年3月末は約52.7兆円、平成17年3月末は約40.3兆円になります。
 企業規模別の貸出残高について申し上げますと、大企業向けは、平成7年3月末は約101.6兆円、平成17年3月末は約75.7兆円。中堅・中小企業向けにつきましては、平成7年3月末は約310.4兆円、平成17年3月末は193.9兆円になります。
○佐々木(憲)委員 細かな数字の御紹介をいただきまして、ありがとうございます。
 私が聞きたかったのは、この総枠を聞きたかったわけでございまして、皆さんにお配りしているこの資料を見ていただければわかると思うんですが、最近10年間の貸出残高の推移を見てみましても、貸出残高の総計は、506.1兆円あったのが396兆円と、110兆円程度縮小している。その反面、国債、地方債の保有残高、これが37.6兆円から110兆円程度と、73兆円程度ふえているわけです。
 ですから、簡単に言いますと、民間銀行の貸し出しは減って、その資金がどこに流れているかというと、これは国債とか地方債、こういうところに大きく流れているということになるわけでございます。この1枚目の資料が貸出残高の推移でありまして、2枚目の資料2が国債、地方債の保有残高であります。棒グラフを見ていただければその推移というのは大変簡単にわかるわけです。
 特に重要だと思うのは、この10年間で国債、地方債の保有残高が2.9倍、約3倍になっている。これは大変大きなことでありまして、要するに、現在までの資金の流れというのは、まさに民から官に流れているということであります。
 そこで、これを含んで、全体の日本の資金の流れというのはどうなっているか。これは資料3枚目を見ていただければわかりますけれども、ここに図があります。これは政府の統計をもとに主な資金の流れを示したもので、この資料のもとは、6月1日の経済財政諮問会議に慶応大学の跡田教授と内閣府経済社会総合研究所の高橋氏が提出をした資料でございます。現在、このように、この黒いところがいわば民から官に資金が流れている、こういう図であります。つまり、民から官に総計では650兆円が流れているわけであります。この大枠、これは確認できますね。現状です。
○谷垣 財務大臣 今、2003年度の方をおっしゃったわけですね。私、細かなところまで、ちょっと数字が頭にあれですが、大体こういうことだろうと私も思っております。
○佐々木(憲)委員 これは経済財政諮問会議に出された数字ですので、谷垣大臣も御承知の……。資料の中に入っていると思うんですが。
 それで、資金の流れというふうにいいますと、これは何が決定的にその流れを決めるかということになるわけです。これは大きく言って資金需要があるかどうかというのが基本であって、その上に金利差とかいろいろありますけれども、これまで数字を確認したように、内需がこれまで冷え込んできたわけです。したがって、民間企業の資金需要は低迷していた。その反面、国と地方の借金、財政赤字が大きくなった。だから、金融機関の資金が民に流れず、国、地方など官に流れてきた。これはだれが考えても、このことは明らかであります。
 そこでお聞きをしたいのは、それでは、郵政民営化で資金の流れが官から民に変わるというわけでありますが、2003年度のこの数字、この大きな流れ、これがどのような姿に変わるのか。650兆もの資金が逆流して官から民に行くのか、一体どういう形になるのか、この基本のところを答弁していただきたい。
○谷垣 財務大臣 委員の資料の中に2003年のがございまして、それから2017年というのもございます。先取りしちゃいけませんが、ございまして、これはいろいろな仮定を置いた数字でございますから、実は私が作成したものではありませんので、私が肯定的な答弁をする限りではないのですが、一つの傾向は示しているのかなと思っております。
 こういう資金が民から官へ流れているという御指摘でございましたが、私も、確かに現在のところ、このところそういう趨勢があって、それはバブルがはじけて以降何度も景気対策を打ってきたというようなこととか、それから、バブル崩壊後の低迷期に民間需要が低迷したというようなことで、民間から政府へという資金の流れが定着してきてしまったという傾向があったと思います。
 それを変えていかなきゃならないというのが構造改革の目的とするところでございますが、郵政民営化すると変わるのかという御質問でございますが、一つは、郵政のお金というのは私どもの財投に、特に平成13年度までは郵貯は全額預託をしていただいた、それをいろいろなことに政策的に使ってきたということがございますから、これは民から官へ流す大きな仕組みであった。それは平成13年度からこの関係を断ち切って財投の改革を推し進めてきたということが一つございますし、その出口の郵政事業を変えていくということによって、これが民間へ流れる大きなきっかけになると思います。
 しかし、それと同時に、私どもの立場からいたしますと、これは多分委員の問題意識と同じところがあるんじゃないかと思いますが、資金の流れを変化させていく上では、やはり民間部門の活性化というのを図らなきゃいけないと思います。私どもは、まずそれは構造改革をやって、民間セクターが動きやすいように、行動しやすいようにしていくということが基本ではないかと思っておりますが、まずそういうこともやらなきゃいけない。
 それと同時に、私どもの今の財政は、たくさん公債を発行して、資金の最大の取り手が公的部門であるというような体質になっておりますから、この財政構造改革をきちっと進めていきまして、国が最大の資金の取り手であるというような構造を転換していく必要がある。この郵政改革に伴う資金の流れの変化と、こういう民間を活性化したり政府が資金の最大の取り手であるという構造を変えていくということが、いわば車の両輪となって資金の流れが変わっていくということではないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 いろいろなことをおっしゃいましたけれども、本当に資金の流れが変わるのか。これは、大きな日本の資金全体の流れというのは、私は、基本的には変わらないし、むしろ官への流れが強まるのではないかと。
 なぜかといいますと、これは国債の発行の見通しなんですよ、2005年、2012年、2017年、この3年、紹介しますと、これは政府の見通しでありますが、538兆から753兆になり、さらに892兆と、こういうふうにどんどん膨れ上がっていくわけです。したがって、それも含めて考えますと、この資料の4のところにその数字が出ております、棒グラフを見ますと、どんどんどんどん右上がりになってふえている。これが決定的なんですよ。官に資金を流していく一番の力になるのが、いわば国の借金がふえるということなんです。
 その結果、2017年に、資料五を見ていただきたいんですけれども、この資料5で明らかなように、国に流れていく、あるいは地方自治体、つまり官に流れていく金額というのは、合わせて、大きく言いますと950兆円になるわけです。つまり、650兆円の流れが950兆円というふうに、民から官の流れが太くなってしまう。これが現状なんです。
 先ほど谷垣大臣は財投改革の問題も触れられました。これは民営化する前に、既に財投の全額預託義務というものは郵貯に課さないということで、2001年以降それが変わっているわけです。ですから、民営化するかしないかの前にそういう形でもう変わっているわけですね。
 しかも、民営化したら、その部分でどの程度の変化が起こるか。これを見ますと、私が出した図を見ていただければわかりますように、2003年は350兆、これが官に流れているのが330兆なんです。94%流れている。2017年を見ますと、210兆円に縮小する。これが国に流れているのが160兆です。つまり、76%が官に流れるわけです。民営化後も約8割近くが官に流れるというのが、今度の資金の流れの将来見通しなんです。これは、経済財政諮問会議に出された資料をもとにして数字を出すと、このような図になるわけであります。
 ですから、谷垣大臣、官から民へ資金の流れを変えると言いますが、結果的には民から官への資金の流れがより一層大きくなる、これが実際の姿なんじゃないでしょうか。
○谷垣 財務大臣 いろいろな前提があると思いますが、今委員が議論をされたいろいろな数字、国債がこれからどうなっていくかという見通しでございますが、多分、資料は私どもがつくっております後年度試算を引いておられるのだと思います。ただ、後年度試算の性格は、一定の前提を置きまして、ややその特質を強調して申し上げますと、財政構造改革の努力を払わないとこうなっていくという姿を描いたものでありますから、必ずしも今おっしゃった数字どおりになっていくかどうかというのは、それを前提に議論をされると、ちょっと違うところがあるだろうというふうに私は思います。
 それから、もう一つ申し上げたいことは、確かに、委員のおっしゃるように、まだ当分長期にわたって返していくわけですから、借換債等も発行しなければなりませんし、大量の国債を発行しなきゃならない時代というのは相当長期にわたって続かざるを得ない。これはプライマリーバランスを回復しようとしまいと、やはりそういう趨勢は続くと思いますから、私は、それは法的にその引き受けを迫るわけじゃなくて、自由な判断で引き受けていただくにしても、現在の民間金融機関がそうでありますように、ある程度の国債は結果としてお引き受けいただかざるを得ない情勢もしばらく続くとは思います。
 ただ、そうではありますが、委員のおっしゃるように、では、手をこまねいて見ておって、委員もそういうことをおっしゃっているんだと思います、手をこまねいて見ておって、民間への資金の流れが出ていくわけではありません。そのために官へ流してきた大きな装置である郵政事業も改革をしていく、そして財投改革も進めてきた、その上で内需を振興したり、国の公債をたくさん発行して資金の最大の取り手である体質を改めていく、こういう総合的な努力をしなければならないのではないかと私は思っております。
○佐々木(憲)委員 私が出した数字はすべて、政府が出した数字をもとにして見通しを立てるとこうなるということを言っているわけです。谷垣大臣は、この数字はそれほど確かな数字ではないとおっしゃいました。自分が出した数字ですから……(谷垣国務大臣「そうじゃないですよ」と呼ぶ)まあ、それはいいでしょう。
 それで、民営化したら資金が民間に流れて経済が活性化するんだよと。これは民営化先にありきの議論であって、私はそれはそうではないと思うんです。つまり、民営化しても、それ自体としては効果はほとんどない。結果として資金需要がふえるかどうかですよ。
 問題は、今の構造改革によって資金需要がふえるのか。我々は谷垣さんとは違う見解を持っております。つまり、家計消費がどんどんふえていく状況をつくっていくと。こういう状況で初めて売り上げが伸び、企業の活動も活性化していく、そういう形につながっていくわけであって、今やっていることは、家計消費を冷え込ませる、水をかけるようなことばかりやって、それが構造改革だ、こう言われますが、結果的に資金需要は伸びない。したがって、民から官への流れは変わらないと。
 それから、もう一つは、財政の問題でいいますと、やはりむだ遣いを削る。それから、税収については、利益の上がっている法人ですとかあるいは高額所得者にその税をきちっと払ってもらう。こういうふうに変えていって、初めて大きな資金の流れが変わっていくんだと思います。その点が、根本的に考え方が私は違うと思う。ただ、私が出した数字は否定されなかった。
 それから、最後に、新たに問題が出てくるのは、郵政公社は、資金の運用というのが基本的には国債またはそれに準ずるものということで、信用リスクをとるような運用はできないわけですよ。ということは、結局は、国の財政をそういう形で支えてきたわけです、郵政公社が支えてきたわけです。それを民営化するということになりますと、国債を最終的に引き受けていた公的な部門がなくなって、そのマイナスをどう考えるかという問題が次に出てくるわけです。
 今後、民間の資金需要が伸びる、あるいは資金が大量にアメリカに還流する、そういうような事態になるかもしれない。この場合には大量に発行される国債が果たして市中で消化されるかどうか、こういう問題が出てくる。金利の急上昇、財政負担の増大……
○小野 委員長 佐々木憲昭君に申し上げます。
 申し合わせの時間になりましたので、簡単にお願いいたします。
○佐々木(憲)委員 時間ですね。わかりました。
 以上で終わりますけれども、こういう問題点があるということを私は指摘をして、単純に何か民営化したら資金が官から民に流れるというのは、政府の数字を使って計算をしてもそうはならないということを申し上げたかったわけでございます。
 以上で終わります。

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