奮戦記
【15.07.22】東芝の不正会計処理に思う
今回の事件で3人の歴代社長が辞任しました。なぜ、こんな事件が発生したのでしょうか。
まず、利益を大きく見せなければならなかった理由は、何だったのでしょうか。
株主への配当増加を最優先させる「株主利益第一主義」ともいうべき傾向が、背景にあったのではないでしょうか。昨年、財界代表も入って作成し、安倍内閣が発表した「日本再興戦略」は、企業の「稼ぐ力」とROE(株主資本利益率)を強調しました。
そのため、労働者への配分よりも株主への配当や内部留保を増やすことを最優先して当たり前という風潮が、安倍内閣のもとで醸成されてきたのです。
麻生財務大臣は、記者会見で「日本の市場、東京証券取引所が信頼性を失うことになりかねず、甚だ遺憾」と語ったそうです。しかし、株主優先を唱えてきた政府にも責任の一端があると言わなければなりません。他の大企業には、このような事例はまったくないのか、しっかり調査・点検すべきです。
また、東芝の会長・副会長が政府の政策決定過程に深く関わってきたことを指摘しなければなりません。東芝の会長である土光敏夫氏が経団連会長のとき、1981年に発足した第二次臨時行政調査会(第二臨調)の会長も務めました。これは「土光臨調」と呼ばれ、国鉄分割民営化や日本電信電話公社の民営化で、労働者と国民に大きな犠牲を強いたのです。その後も、東芝の会長・副会長は、政府の会議に頻繁に顔を出してきました。
今度、東芝副会長を辞任した佐々木則夫氏は、2009年6月に社東芝社長に就任。安倍内閣発足直後の2013年1月から経済財政諮問会議の民間議員に就いています。2013年6月より東芝副会長、日本経済団体連合会副会長に就任しました。また、日本経済再生本部のもとにつくられた産業競争力会議の中心メンバーであり、その実行実現点検会合や国際展開ワーキンググループにも出席してきました。
原発の担当者として、その事業を東芝の主力事業に押し上げたキーパーソンと言われてきましたが、この原発部門で不正会計処理が発覚したのです。
東芝は、軍需産業としても大きな役割を果たしてきました。これまで、防衛省の装備品調達上位20社のなかに必ず顔を出す常連でした。2014年度は、調達額8位で467億円も受注しています。防衛省・自衛隊からの天下りも多数います。このなかで、はたして「水増し請求」はなかったのか、調査すべきです。
東芝の今回の不正会計事件は、さまざまな角度から検討しなければなりませんが、とりわけ、政官財ゆ着の視点からの厳しい追及が必要です。