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奮戦記

【14.09.09】党国会議員団リニア問題PTが、政府に工事計画を許可しないよう求める

 

 政府・国土交通省に対して、日本共産党国会議員団・リニア中央新幹線問題プロジェクトチームが、リニア中央新幹線の工事実施計画を認可しないことを求める申し入れを行いました。国土交通大臣あてに申し入れた全文は次の通りです。
……………………………………………

環境問題を置き去りにしたJR東海の工事実施計画を認可しないことを求める

 8月26日、JR東海は、リニア中央新幹線に関する環境影響評価書を一部修正した最終的な評価書(以下、「補正版」)を公表し、29日から公告・縦覧を始めた。この補正版は、環境保全について十全の取組等を求めた環境大臣意見や国土交通大臣意見を反映しているとは、到底言えないものである。

 それどころか、JR東海は10月の着工をもくろみ、補正版の公表と同時に、「中央新幹線品川・名古屋間の工事実施計画(その1)」(以下、「工事実施計画」)の認可申請を国土交通大臣に提出した。補正版の1カ月の縦覧を終えるどころか、公告・縦覧を開始もしていない段階での極めて唐突な申請だった。JR東海の拙速で傲慢(ごうまん)な態度は、国民軽視も甚だしいと言わなければならない。

 日本共産党国会議員団は、この間、リニア中央新幹線建設計画予定地の沿線地域を順次訪問し、地元住民や関係自治体などからさまざまな意見を聞くなど現場の視察調査を行っている。そこでは、かつてなく大規模で深刻な環境破壊を引き起こすこと、JR東海の住民を無視した対応が横行していることが明らかになっている。リニア新幹線建設の賛否にかかわらず、環境保全は国民共通の課題であり、未来と子どもたちへの責任であることは言うまでもない。こうした地域の実情を踏まえれば、国土交通大臣が、JR東海のリニア建設工事着工を認可することは到底許されないと考える。

 よって、以下のとおり申し入れる。 

1、リニア中央新幹線の工事実施計画は、認可すべきではない

(1)リニア中央新幹線建設による大規模で深刻な環境破壊

 環境大臣意見は、「その事業規模の大きさから、本事業の工事及び供用時に生じる環境影響を、最大限、回避、低減するとしても、なお、相当な環境負荷が生じることは否めない」「本事業の実施に伴う環境影響は枚挙に遑(いとま)がない」と指摘している。リニア中央新幹線建設は、大規模で深刻な環境破壊を引き起こすことは明らかである。関係7都県の知事からの意見が600項目にも及んだことを真剣に受け止める必要がある。

 しかし、JR東海の環境影響評価書の補正版は、こうした意見にまともに応えていない。たとえば、環境大臣意見は、多くの地下水脈を寸断することについて「地下水位の低下、河川流量の減少及び枯渇を招き、ひいては河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い」と指摘し、東海道新幹線の3倍超となる電力消費量について「これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない」と指摘しているが、これらに対してまったく不十分な対応のままである。

 また、大地震が発生した場合の地殻変動や土砂崩れによる危険性、超電導により発生する電磁波の健康への影響など納得のいく対策は何ら講じられていない。

 さらに、周辺住民の生活環境への影響について「地域住民等への丁寧な説明」(国土交通大臣意見)、「住民関与についても十全を期す」(環境大臣意見)との指摘に対しても、信頼できる対応を示しているとは言い難い。長野県が求めた地元自治体との環境保全協定の締結などの要望に対しては「ゼロ回答」である。

 たとえ、どんな事業であっても、大規模な環境破壊を起こさないことが最低限の責任である。ましてや、品川〜名古屋間の移動時間を1時間程度短縮するために、大規模な環境破壊を起こすことは、「夢のリニア」どころか、「悪夢」を子子孫孫まで残すことになる。

  (2)リニア建設工事がもつ特有の問題 

 膨大なトンネル残土、水枯れや異常出水、電磁波の周辺住民への影響など、環境への深刻な打撃は、どれも“リニア”という、これまでに経験したことのない工事に由来している。

 都市部の大深度地下、南アルプスの貫通など、東京〜名古屋間の86%が地下トンネルという、これまでの鉄道建設や道路建設でも前例のない大規模な地下工事でありながら、必然的に出る膨大な残土の処理場所・方法が、ほとんど決まっていない。この残土で、海や谷を乱暴に埋めたて、環境を破壊するようなことがあってはならない。

 トンネル工事で水脈を切れば、水枯れや異常出水が起きる。すでに山梨の実験線の周辺でリニア建設が原因とされる水枯れや異常出水が起きている。200キロを超える長大なトンネルを掘れば、各地で同様のことが起きる危険性がある。すでに、JR東海も南アルプス直下を掘り抜くトンネル工事などで、大井川の水量が毎秒2トン減ることを予測している。

 電磁波の問題も住民の不安に応える姿勢がまったくない。事業推進の側のJRがいくら「安全だ」「問題はない」と言っても、不安解消には何の役にも立たない。電力会社が、「原発は安全」だというのと同じである。人類が経験したことがない超電導により発生する電磁波を乗員・乗客や沿線住民が、長期間にわたって浴び続けた場合の健康への影響は未解明のままである。にもかかわらず電磁波の問題について、推進側から切り離した第三者の立場での科学的検討がなされていない。早急に第三者機関による科学的検討を行うべきである。

(3)地域住民への説明、住民関与、合意形成の努力が極めて不十分

 JR東海や国、自治体が、環境への悪影響に不安を持つ地域住民に対して、納得のいく説明をする責務を果たしていない。地域住民との合意形成の努力が見えない。

 駅・車両基地等の設置に伴い移転を余儀なくされる地権者には事前説明がなく、環境影響評価準備書の策定、説明時の報道等によって、はじめて対象地域に含まれることを知らされた。まさに、ある日突然、立ち退きを知らされた。地権者らが詳細説明を求めても工事着工認可前を理由に、何ら具体的内容は示されない。走行路線周辺の住民の不安に対しても、調査・説明はほとんど実施されていない。着工認可後、有無を言わせず立ち退きなどを強制することが絶対あってはならない。

2、JR東海に真摯な対応を求め、大規模な環境破壊をさせない監視・監督責任を果たすこと

 環境大臣、国土交通大臣は、JR東海の環境影響評価に対する意見を出した。ところが、JR東海は、拙速で傲慢な態度で、不十分なままの補正版の送付と同時に工事実施計画の認可を申請し、「開業時期に遅れはない」などと、27年開業を最優先させる態度に終始している。JR東海が、大臣らの出した意見を真摯(しんし)に受け止め、「十全を期す」よう対応させるのは国の責任である。「後はJRまかせ」は絶対に許されない。国は、JR東海が、国民に対して真摯に対応することを求め、自然環境・生活環境を破壊させないよう監視・監督する責任を果たすべきである。

 日本共産党は、9兆円もの巨費を投じてリニア中央新幹線を建設する必要はなく、東海道新幹線や在来線の地震・津波対策の強化こそ急務であると考える。

 環境問題を置き去りにしたままリニア建設工事着工を認可することは許されない。政府がその責任を果たすことを強く求める。

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