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奮戦記

【14.01.12】「円滑な労働移動」が雇用を増やす?

 雇用について、「円滑な労働移動」が可能になったら「新たな雇用を創出」できるという議論があります。そのために、労働法制をいっそう緩和すべきだという考え方が、政府部内で検討されています。

 それは、おもに規制改革会議や産業競争力会議のなかで議論されていますが、そこには労働者の代表は、誰ひとり参加していません。
 政府と財界の代表が参加して「自由に労働者を解雇できるようにしたい」という議論を行っているのです。

 たとえば民間議員のひとりである武田薬品工業の社長は、第4回産業競争力会議で「正規雇用者の雇用が流動化すれば、待機失業者が減り、若年労働者の雇用も増加する」とのべ、そのために「再就職支援金、最終的な金銭解決を含め、解雇の手続きを労働契約法で明確に規定する」と提案しています。
 さらに、第7回産業競争力会議では「労働移動型のルールに転換すべき」とのべ「労働移動を円滑に、円満に行うため……金銭的な解決」を提案しています(「議事要旨」3頁)。

 しかし「自由に解雇」できるようにしたら、どうして「雇用が生まれる」のか、まったく理屈が通りません。解雇したら失業が増えるだけではないでしょうか。
 このことについては、すでに実態を踏まえ国際的な研究も行われており、証明済みの問題なのです。

 ILO労働問題研究所長のレイモンド・トレス氏は、『ユーロ圏における仕事の危機:動向と政策対応 2012』のなかで、解雇規制緩和で雇用が増えるというのは、科学的裏付けがないと述べています。
 ユーロ圏には17か国ありますが、「17か国中、13か国が2008〜2009年の間に、しばしば解雇規制を緩和する方向で、労働市場の柔軟化改革を実施した」。「しかし、これらの政策は雇用創出の効果を生じないまま、解雇を増やすことにつながるだろう」(国会図書館提供資料の調査結果報告より抜粋2013/11/05付)と述べています。
 また、レイモン・トレスILO研究所所長も、『世界労働レポート2012(全和訳)』のなかで、こう述べています。
 「規制緩和政策に関しては、本報告書の発見によれば、短期的には……成長や雇用を押しあげることに失敗するだろう。まさしく、労働市場改革の雇用効果は景気循環に大きく依存する。不況に直面している場合、規制を緩和すると、雇用創出を後押しすることなく解雇の増加につながるだろう」(序章、6ページより抜粋)。

 労働者を解雇しやすくしたら雇用が増えるなどという議論は、まったく成り立たないことは明らかです。  

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