奮戦記
【07.01.02】日本経団連の「希望の国、日本」(御手洗ビジョン)に思う
元旦に発表された日本経団連の「希望の国、日本」、いわゆる「御手洗ビジョン」は、今後10年間に財界が求める日本の姿を示した戦略文書として重要です。
注目したいのは、「憲法などの変革」をも「広義のイノベーション」と位置づけ、財界本位の「日本改造」の方向を示していることです。
2010年初頭までに「憲法改正を実現」することを提起し、日米同盟を安全保障の基軸とし、「ミサイル防衛」能力の向上や2国間や多国間の共同演習の推進を求め、さらに愛国心教育まで盛り込んでいます。
さらに、消費税を2011年度までに7%に増税し、その後10%にする2段階の引き上げ方針を提言しながら、他方で、法人実効税率については現行の約40%を30%に引き下げることを求めています。
労働分野では、労働者派遣や請負労働のいっそうの規制緩和を提言し、ホワイトカラーエグゼンプション(労働時間規制の適用除外)の推進など、労働法制の根本的な転換を求めています。
このことに関連して思い出すのは、偽装請負を告発されたキヤノン会長の御手洗氏(日本経団連会長)が、「請負法制に無理がありすぎる」「これをぜひもう一度見直してほしい」と発言していたことです(昨年の10月18日に公表された経済財政諮問会議の議事録による)。
法を犯しておいて、「法律の方が悪いから変えろ」というのですから、あきれてしまいますね。それを、経団連の方針として正面から押しつけようとしているのです。
また、政府の役割を「最小限のもの」に限定し、社会保障制度を「経済の身の丈に近づけていく」として国民への負担増と給付抑制を要求しています。
さらに、アジアの成長を大企業のもうけに取り込むた、2011年までに東アジア全域におよぶEPA(経済連携協定)の締結を求めています。
月刊「経済トレンド」(1月号)で、安倍晋三総理と御手洗冨士夫経団連会長が「『美しい国』、『希望の国』の実現をめざして」という対談がおこなわれています。
それによると、御手洗氏は「『美しい国』、『希望の国』には相通ずるもの」があると述べています。
そして安倍総理は、すべてを「イノベーション」と「オープンな姿勢」を強調し、国際競争力に勝ち抜くために、「アジアの発展をいかに日本に取り込んでいくか」と述べ、そのための「税のあり方」が必要とのべています。
こんな財界ビジョンがそのまま実現されれば、巨大企業だけが多国籍企業として生き残るが、国内には荒廃した経済と国民生活の貧困化がいっそうすすむという現実ではないでしょうか。