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奮戦記

【05.01.30】NHK番組「政治介入」で問われているものは何か

写真 NHK番組への「政治介入」問題については、さまざまま議論があります。
 ――「公正中立にやれと言って何が悪いのか」とか、あれは「NHKと『朝日新聞』のケンカだ」などというのはその例です。

 しかし私は、問題の焦点はそこにあるのではないと考えています。

 いったい、何をもって「介入」というのか、具体的にはどのようなことがおこなわれたのか。……私は、この点を28日の予算委員会でただしました。

 まず、前提として確認しておななければならないのは、放送法第3条に、「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定められていることです。

 これは、日本国憲法第21条第1項の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」という規定、これを放送の分野で具体化したものと言えます。

 これは、当然、政府も議員もきちんと守るべきものです。こ点を私が確認すると、小泉総理も当然ながら認めました。

●放送番組編成の自律性・自主性を確立するとはどういうことか

 放送は、「周波数の割り当て」を受け、「無線局の認可」を受けなければなりません。だから、もともと国家の介入を受けやすい性格を持っています。

 とりわけ、NHKの場合は人事と予算について、国会の承認を得なければならないという特殊な事情があります。介入を受けやすいからこそ、放送法をしっかりと守り、番組編成の自律性・自主性を確立することが大切なのです。

 なお、第三条の二には、こう規定されています。

 一、公安及び善良な風俗を害しないこと。
 二、政治的に公平であること。
 三、報道は事実をまげないですること。
 四、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 これは、「放送事業者」が放送番組の編集に当たって、みずから自主的に守るべきことが書かれているのです。
 この規定があるからといって、外部のものが事前に放送内容をチェックし、「公平に」と言って圧力をかけることを正当化できるものではありません。

●放送内容の情報ををどこから事前に入手したのか

 中川昭一議員は、2001年1月30日に放送されたNHKの特集番組(「ETV2001〜問われる戦時性暴力」)の内容について、「事前に知っていた」と言われていますが、いつ、どのような形で知ったのでしょうか。

 1月18日の「朝日新聞」によると、中川氏は「同じような問題意識を持っている我々の仲間が知らせてくれた」と答えています。

 私は、質問で「我々の仲間」とはだれかと聞きました。それは、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の仲間だと認めました。

 その番組の内容について、中川氏がどのような感想を持ったのでしょうか。

 中川氏は「九段会館で昭和天皇を糾弾する裁判を弁護人もつけずにやったと。実際に、それを見にいった人の話も間接的にではありますが、聞いておりますから、これはちょっと公正・公平ではないのではないかという印象を持ちました」と述べています。

●「議員の会」が、事前にNHKに話をしたことを認めている

 今年1月19日に、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が出した「見解」は、こう書いています。
 ――「当会議員数名は(2001年)2月9日におこなわれた党総務部会において、出席した海老沢NHK会長にこの番組の内容につき強い抗議の意思表明を行った」。

 これは、「議員の会」が、「この番組が公正ではない」という意識を持っていたことをみずから示すものです。

 中川氏は「公共放送であるNHKにおいてですね、不偏不党を大前提にしなければならないときに、どうもこういう放送を流すということであれば、これはよく放送法の趣旨を考えて下さい」と言ったと発言しています。

●NHKが「議員の会のメンバーだから説明に言った」と述べている

写真 重大なのは、中川議員が「私が当時会長を務めていた(若手議員の会の)議員達も、事前に(NHKに)会っていろんなことを言っている」とのべていることです。

 つまり、同じような“問題意識”をもっているメンバーが、事前にその内容を把握し「公平でない」という見解をNHKに伝えていたということです。

 これは、外部のもの(若手議員の会)が事前にNHKの放送内容をチェックし、偏っているという問題意識をもって、「公平に」と言いながら圧力をかけたことになるではありませんか。

 NHK側は、それを聞いていたから必死になって説明にまわったのではないでしょうか。だからこそ、1月19日の記者会見で、NHK側は、安倍氏、中川氏などに説明に行った理由について、「若手議員の会の幹部だから」と説明しているのです。

 中川大臣は、放送後の2月2日にNHK幹部と会ったと言います。しかし、「若手議員の会」の当時の事務局長である安倍晋三議員、副幹事長の古屋圭司議員、平沢勝栄議員などは、放送前に会ったことを認めています。

 中川氏は、「朝日新聞」の取材に対して「放送の前だったか後だったかについては定かではないということは、何回も申し上げました」と言っています。

 これは、放送前に会った可能性もゼロではないということを示しています。たまたま、2月2日の記録だけが残っていたというだけの話です。だからといって、事前に会った可能性は否閧ナきないのです。

 じっさい、「通行証」がある場合には、議員会館の受付には記録が残らない仕組みになっているのです。

 「議員の会」の他のメンバーは放送前に会ったことを認めているのです。それなのに、当時会長であった中川氏だけが放送後だというのは、どう考えても不自然ではないでしょうか。

●特定の立場から「公平でない」と言うこと自体が圧力になる

写真 以上の事実を踏まえると、次の構図が浮かび上がってきます。

 第1は、事前に「議員の会」のメンバーも、安倍氏も中川氏も、この番組を問題視していた。

 第2に、「議員の会」のメンバーが、事前にNHKの幹部に会って、「公平でない」と意見を言っていた。

 第3に、これにたいしてNHK側は、安倍氏や中川氏に、「このようにバランスのとれたものにしました」と報告していた。

 第4に、それでも議員の会のメンバーが納得しなかった。だからこそ、面会した後1月29日から30日にかけて大幅な改ざんをおこなった。

 はっきりしているのは、安倍晋三氏の場合です。
 当時、安倍氏は「若手議員の会」の事務局長でした。放送前の2001年の1月29日に、NHKの放送総局長らが安倍氏に面会して番組の説明をしています。

 安倍氏は、ホームページでこう書いています。――「明確に偏った内容であることがわかり、私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した」。

 「議員の会」の事務局長で、かつ官房副長官という政府の中枢にいた安倍氏が、番組が「明確に偏った内容」だと判断し、その立場から「公正中立に」と言えば、番組内容への政治介入になることはハッキリしているのではないでしょうか。

 じっさい、その直後に、NHKに戻った総局長が指示して、番組の内容が2度にわたって大幅に修正・改ざんされたのです。

●いちばん肝心の「当事者の証言」が放送直前にカットされた

写真 では、どこが変更されたでしょうか。

 1月29日には、

 ――(1)「女性国際戦犯法廷」が、日本軍による強姦や慰安婦制度が「人道に対する罪」を構成すると認定し、日本国と昭和天皇に責任があるとした部分を全面的にカットした。

 ――(2)スタジオの出演者であるカルフォルニア大学の米山リサ準教授の話を数カ所でカットした。

 ――(3)「女性国際戦犯法廷」に反対の立場をとる日本大学の秦郁彦教授のインタビューを大幅に追加しました。

 1月30日に全面的にカッとされたのは、
 ――(1)中国人被害者の紹介と証言。
 ――(2)東チモールの慰安所の紹介と、元慰安婦の証言。
 ――(3)自らが体験した慰安所や強姦についての元日本軍兵士の証言。

 NHKが「バランスのとれた番組になっている」と安倍氏などに説明に行ったあとでNHKに戻り、これだけの大幅な改変をおこなったのです。

 結果として、44分の番組が40分にカットされました。これは、どうみても「政治介入」があったとしか考えられないではありませんか。



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