宮野被告初公判で検察冒陳・ムネオ主導一貫=「おかげで受注できました」業者・「聞いてる。よかったな」鈴木被告
首相官邸。「おかげさまで受注できました」と感謝する業者。「聞いている。よかったな」と応じる鈴木宗男議員(当時、内閣官房副長官)。18日、鈴木被告=あっせん収賄罪で起訴=を追い込むきっかけとなった「ムネオハウス」をめぐる偽計業務妨害事件の初公判が開かれました。検察側は冒頭陳述で、問題の入札が最初から最後まで、鈴木被告と同事務所主導でおこなわれた経過をなまなましくえぐりました。
ムネオハウスの受注をねらったプラント会社の日揮は、北海道内に支店を置く大手ゼネコン関係者からこんな示唆を受けました。「北方四島の工事であれば、鈴木議員にあいさつし、鈴木議員の息のかかった道東の建設業者と組む必要がある」これが出発点でした。
1999年5月22日、日揮は、釧路市内にある鈴木事務所を訪問。同議員秘書の宮野明被告に業者の仲介を求めました。それに応じて鈴木事務所は、渡辺建設工業と犬飼工務店を決めたのです。
渡辺建設工業社長の渡辺寿一被告と犬飼工務店社長の犬飼勝被告は、受注できるようなとりはからいを鈴木議員に依頼しました。冒頭陳述は、鈴木被告が両被告から「地元業者がムネオハウスを受注できるように、入札参加資格について配慮するよう外務省に要請してほしい」と陳情されていた、という新事実を明らかにしました。
鈴木被告は、報告にきた外務省ロシア支援室長(当時)が入札参加資格として「北海道に本社を有し、北海道開発局基準でBランク以上の業者」という案を示すと、「多すぎる。根室管内に限定したらどうだ」と注文をつけました。渡辺建設工業と犬飼工務店からの事前の陳情が頭にあったのです。
支援委員会はこの条件に該当する業者は渡辺建設工業1社だけであることを知り、「鈴木議員は工事を渡辺建設工業に受注させたい意向である」と理解。その方向に明確に動きだしました。
冒頭陳述のこの一連の記述は、日本共産党の佐々木憲昭議員が国会で明らかにした外務省内部文書の内容を裏付けています。
1999年6月3日。日揮、日本工営の担当者を釧路市内の鈴木事務所に呼び出した宮野被告は、意中の2社以外の名前をあげた日揮側に鈴木被告の「威光」をふりかざします。
宮野被告は他の業者について、「いやそれはだめだ」と言下に否定。さらに「(その業者が)動いているのであれば、おれの方からも言うが、他の業者がきたら、鈴木事務所の名前をだしておけばいい」といい、入札意欲をもつ他の業者を入札から排除するなどの裏工作をおこないました。
入札から他の業者の排除に成功したのを受け、渡辺被告は入札予定価格より高い価格を示して、不調にし、大きな利益を得るよう画策します。宮野被告も了承。できレースでした。
高値落札に成功する見通しがついた渡辺、犬飼両被告は契約前の7月8日、鈴木被告を衆院第1議員会館に訪問。鈴木被告は不在だったものの、秘書に「明日、支援委員会で随意契約交渉をすることになりましたので、上京し、ごあいさつに伺いました。よろしくお伝えください」と伝言を依頼。受注に成功した同年8月には、当時官房副長官だった鈴木被告を首相官邸に訪ね、「おかげさまで国後島のプレハブ建物の工事を受注できました。ありがとうございました」などと感謝し、鈴木被告は「聞いている。よかったな」などと応じていました。