鈴木議員逮捕許諾請求・“口利きで政治献金”もわいろ=自民金権政治に衝撃
東京地検特捜部は17日、ついに「疑惑のデパート」といわれる鈴木宗男衆院議員の逮捕状を請求しました。事件で問われるものは、「やまりん」からのわいろ500万円を受け取ったあっせん収賄容疑を超えて、鈴木氏に代表される自民党の“利権”政治そのものです。「口利きと政治献金」。2つの角度から衝撃度を見ると…。
“誰でもやっている”
「こんなこと誰でもやっていること。これで逮捕されたらほとんどの自民党の先生は手が後ろに回っちゃうよ」官房長官秘書官を経験した自民党のベテラン秘書は吐き捨てるようにいいます。
鈴木氏の逮捕状請求の容疑は、あっせん収賄容疑。国会議員がその影響力を使って公務員に職務上の不正行為をさせ、見返りにわいろを受けたら罪になるというものです。職務権限の有無は関係なし。
「いわゆる“口利き”ですよ。業者から『この仕事何とかならないか』と頼まれれば、役所に電話ぐらいしますよ。無理な頼みでもそれぐらいはやってる」と前出のベテラン秘書は話します。
自民党議員による公共工事をめぐる“口利き”は、これまでもたびたび、問題になってきました。今国会でも、加藤紘一元自民党幹事長の元事務所代表が山形県内の建設会社から“口利き料”を受けとっていたことが取り上げられました。
届け出ても「わいろ」
この「わいろ」も政治献金として届け出れば合法的な政治資金になる―。これが鈴木議員や他の自民党政治家の手法でした。
鈴木議員は、今回のやまりんからのわいろについても99年の衆院予算委員会で、堂々と弁護していました。
「政治資金規正法にもとづいて適正に処理している」「私はすべからく全部オープンにしている」。16日の東京地検特捜部の事情聴取にたいしても同じ趣旨の発言をしています。
実際に、鈴木議員は、「やまりん」からのワイロ500万円のうち、400万円を資金管理団体「21世紀政策研究会」への寄付として処理し、政治資金収支報告書に記載。事件発覚後には返却したとしていました。それが、捜査では通用しなかったのです。
「政治献金と呼んでも、職務行為の対価であれば、わいろにほかならない」。これが、田代富士男元公明党参院議員の「砂利船汚職」事件(88年)や、藤波孝生議員のリクルート事件(89年)での確定判決の論理でした。
企業献金にどっぷり
リクルート事件で東京高裁は「請託があり、提供された利益がその内容と対価関係にあったといえるかどうか」という視点でわいろを認定しました。
あっせん収賄では、職務行為ではなく、不正な請託への対価であれば罪になります。
鈴木氏に公共工事で“口利き”を依頼したことのある建設会社元幹部は証言します。
「鈴木さんの秘書のところにお礼を持っていったら、『こんなことをされては困る』といわれ、献金で出すように指示された。1社では出せない額なので、関連会社に分散したり、パーティー券を買ったりしたことを覚えている」
企業献金は、もともと企業の利益のために出されるもの。そうでなければ、会社に損害を与える背任行為です。
自民党と自民党政治家がどっぷり浸っている企業献金そのものに、わいろではないかという根本的な問いがつきつけられています。
先のベテラン秘書はいいます。「鈴木氏はいい悪いを別にして極めて自民党的な人間だ。今回の問題は鈴木氏1人が問われているというより、自民流の“口利き”政治が根本から問われている」