鈴木議員秘書逮捕=ムネオハウス不正入札の構図・鈴木事務所を舞台に裏協議
東京地検が30日、鈴木宗男議員の公設秘書、宮野明容疑者ら7人を逮捕した容疑は、日本共産党がいち早く国会で追及してきた「ムネオハウス」(国後島の「友好の家」)建設工事入札をめぐるものでした。この問題をたどっていくと、疑惑の本丸は、まさに鈴木議員本人であることが浮かびあがってきます。
<献金業者の受注へ“仕掛け”>
1999年7月に問題の工事を受注したのは、北海道根室管内の企業、渡辺建設工業と犬飼工務店のJV(共同企業体)でした。
両社あわせて鈴木議員にたいし、約870万円(パーティー券ふくむ)を献金しています。
鈴木議員と宮野秘書は、両社が受注できるような仕掛けをつくっていました。
ひとつは鈴木議員本人の介入です。
鈴木議員は、内閣官房副長官在任中の99年5月27日、外務省欧亜局関係者と面談し、工事の入札参加資格を「根室管内」に本社があるBランクの企業に限定するよう強く要求しました。
この結果、入札資格を持ったのは事実上、渡辺建設工業1社となりました。
この介入の異常さは外務省調査報告書も以下のように指摘せざるをえませんでした。
「鈴木議員は、本案件の入札参加資格決定に深く関与していた。一国会議員(当時内閣官房副長官)が自己の影響力を行使して、その変更を求める等細部にわたり、入札参加資格決定過程における関与が行われたことは異常であり、社会通念上あってはならないことである」
<逮捕者らが集まり謀議>
鈴木議員が介入する裏側で進行していたのが、北海道釧路市にある鈴木事務所を舞台にした裏協議でした。
事件で逮捕された人物の多くがこの謀議に参加しています。
発注者が入札を公告する9日も前の同年6月3日、釧路市内の鈴木事務所に、同工事のコンサルタントである「日本工営」(東京・千代田区)と日本工営から依頼された「日揮」(横浜市)、工事を受注した渡辺建設工業、犬飼工務店、鈴木議員秘書の宮野容疑者が集まりました。
ここで、コンサルタントとして予定価格の積算に深くかかわっていた日本工営が、工期や工事内容などの入札情報を渡辺建設工業、犬飼工務店にもらし、工事について協議しました。これに宮野容疑者もかかわっていたのです。今回の逮捕容疑である入札価格の漏えいは、この6月3日の会議が出発点。実際に、入札前の7月上旬、日本工営の担当者が日揮社員を経由し、渡辺建設工業に予定価格を伝えました。
<入札は茶番、随意契約に>
同年7月7日の実際の入札はまさに茶番劇でした。
鈴木議員による事前のしぼりこみで、入札には渡辺建設工業・犬飼工務店JVのみが参加しました。入札前に予定価格を知っていた両社JVは、意図的に予定価格を上回る価格を書いて応札しました。
通常、入札は予定価格以下で応札しなければ成立せず、再入札となります。
問題の入札では、3回の応札額(1)4億3000万円、(2)4億2300万円、(3)4億2000万円がいずれも予定価格(3億9700万円)を上回っていたため入札は成立しませんでした。しかし「支援委員会」は再入札することなく、両社JVと随意契約交渉に入りました。
競争相手のない入札で、支援委員会側は事実上両社のいいなり状態だったのです。
随意契約交渉でも両社は数度、予定価格を超える価格を提示。最終的には、当初、4隻必要だった用船も3隻ですむように工事条件を変更して約1500万円を浮かし、さらに予定価格に本来必要ない消費税約2000万円を付け加え、4億1685万円で、7月14日に契約しました。
ムネオハウス建設の原資は税金です。鈴木議員・秘書と業者は癒着して入札をゆがめたわけで、今後、鈴木議員本人への追及がますます重要になっています。