ムネオ手法・「落札のお礼は常識だ」=連載「還流マネー 税金私物化の構図」より
鈴木宗男衆院議員の事務所では、鈴木議員によせられた依頼を同議員に報告し、決裁のサインをもらいます。鈴木議員の「口利き」状況が一目りょう然。たとえば、2カ月ほど前の例…。
「…院長夫人より 息子の○○大学入学試験が近づいて参りましたが、ごあいさつにうかがった方がよろしいでしょうか」。これを受けて事務所が大学側に連絡。「○○大学総長」からは「受験番号を至急ご連絡ください」と電話で返答が。さらに、ある社長は「当社の焼却灰無害化リサイクルシステム」について、環境省廃棄物・リサイクル対策部長に働きかけるための「お口ぞえ」を依頼。秘書は判断の参考として社長名のわきに「毎年パー券(パーティー券)十枚協力」と注釈…。
鈴木議員が細かく点検
驚くのは、その項目ひとつひとつに「了」「鈴木」などとマルで囲んだサインをすること。鈴木議員本人がことこまかくチェックして、票と利権に還元していく―。
長年、鈴木事務所に出入りしてきた人物は「陳情などは必ず議員に報告される。そうしなければ秘書が怒られた」と証言します。
このムネオ手法の標的となったのが外務省、防衛施設庁など。「北方支援」事業や、国益の根本にかかわる領土問題などの外交交渉も鈴木議員が“監督”し、自分の利権に還元してきたのです。
「北方支援」事業で疑惑が取りざたされている工事を受注したのはいずれも、鈴木議員の後援会幹部や献金をしてきた「地元企業」でした。ムネオハウスは渡辺建設工業と犬飼工務店、はしけは根室造船、国後島の桟橋改修工事は島田建設など…。
鈴木議員は「利権」ではなく「地元のため」と国会で弁明しました。
そのウソは地元で聞いた声からも明らかです。道東の自民党系市議は「建設業者からよく聞く話」としてこう話しました。
「地元が要望した事業であっても、鈴木議員が予算づけをしたものであれば、受注業者はたいてい鈴木議員とかかわりのある企業になる。この事業はここにやらせろという話がついている。つまり最初から業者が決まっているヒモ付き予算というわけだ」
「指名参加で数十万円持参」
後援会に入会している苫小牧市内の業者は「後援会に入って献金するのは事業を落札するため。落札した場合のお礼も常識だ。私自身、指名参加できただけで数十万円を事務所に持参したことがある」と証言します。
後援会企業への優先発注システムと、そこから献金の形で還流するマネー。その批判が今、北海道でも噴出しています。
選挙区の釧路市をはじめ、旭川、函館、苫小牧、千歳、登別、滝川、伊達、美唄、札幌市などで鈴木議員の議員辞職を求める趣旨の決議が可決されました。今こそ、国会の対応が問われています。