鈴木議員辞職勧告決議案・本会議上程動議を否決=自公保が阻む(3月20日・衆院議院運営委員会)
日本共産党など4野党が共同提出していた鈴木宗男衆院議員(自民党を離党)に対する議員辞職勧告決議案の審議が、20日の衆院議院運営委員会で行われました。野党側は決議案を本会議に速やかに上程し、採決することを求めて動議を提出しましたが、与党3党の反対で否決されました。この結果、決議案の本会議採決は見送られることになりました。
決議案は、鈴木氏の疑惑が「外務省にとどまらず、省庁横断的な様相をおびており、国民の政治不信を一段と増大させた」として、議員を辞職して国民に陳謝し、政治的・道義的責任を明らかにするよう勧告したものです。
議運委で行われた質疑と意見表明で与党側は「決議案を提出すること自体が問題だ。国会の権威をおとしめる」(自民党)、「鈴木氏はこれまで捜査や刑事訴追を受けておらず、いまだ疑惑の段階にとどまっている。辞職勧告は時期尚早」(公明党)などと主張し、本会議上程に強く反対しました。
これに対し日本共産党の児玉健次議員は、決議案は国政に対する「国民の厳粛な信託」にそむいた自らの責任を鈴木氏が自覚し、議員辞職するよう本人に勧告するもので、「国会の政治倫理確立のための自浄作用の発露だ」と強調。決議案を採決しないことこそ国会の権威をおとしめるものだ、と速やかに上程するよう求めました。
議運委の採決後、4野党の理事・委員は記者会見し、与党の否決に厳しく抗議。鈴木氏の疑惑を徹底究明し、引き続き本会議採決を求めていく決意を表明しました。
<もっとも卑怯な責任逃れ 志位委員長が会見で批判>
日本共産党の志位和夫委員長は20日、国会内で記者会見し、与党が鈴木宗男衆院議員辞職勧告決議案の衆院本会議上程を否決したことについて「与党は、本会議で採決に付すと決議案への賛否が問われ、これを否決した場合は、国民のみなさんから厳しい批判を当然受ける。これを見込んで、ずるずると継続審議にし、廃案に持ち込もうということだから、もっとも卑怯(ひきょう)な責任逃れだ」と批判しました。
志位氏は、鈴木議員をめぐる疑惑は「北方四島」支援事業を食い物にしていた問題などに加え、日ロ領土交渉で日本政府の公式の方針とも違う裏交渉をおこない、国益を損なう方向で外交をゆがめていた新しい問題も生まれていると指摘。「これは税金を食い物にしただけでなく、国の主権も食い物にしたもので、その罪は非常に重い」と強調し、「議員の資格と両立しないことはもはや明白だ」と述べました。
与党が本会議での採決を拒否する口実に「刑事事件に発展していない」ことをあげていることについては、「刑事事件にならないことだったら、国会議員は何をやっても許されるのかと逆に問いたい」と批判し、「与党がこうしたやり方を続けるなら、鈴木議員と同罪の立場に自らを置くことになる」と強調。鈴木議員の疑惑の徹底究明とともに、新しい問題が出てくれば決議案の本会議上程動議を再び提出することも可能であり、「本会議での採決に持ち込ませるためのたたかいを引き続きやっていく」と表明しました。
<鈴木議員辞職勧告決議案への児玉議員の意見表明>
3月20日の衆院議院運営委員会で日本共産党の児玉健二議員が行った意見表明の前文は以下の通りです。
鈴木宗男議員、加藤紘一議員にかかわる疑惑が日々深まる中で、国民の怒りが大きく広がっています。「離党で幕引きは許さない、議員を辞職せよ」が圧倒的多数の国民の声です。このような状況で、疑惑の真相解明と政治的道義的責任の解明に対する国会の責任が厳しく問われています。
鈴木議員が11日、予算委員会で行った証言に関しては、「ムネオハウス」の入札参加資格をめぐる介入、コンゴ人私設秘書の身分について「民間人」と認識していた、と述べたことについて、野党4党は18日、議院証言法にもとづく偽証罪で最高検察庁に告発し、捜査を担当する東京地検特捜部がこれを受理しました。
疑惑は、外務省にとどまらず、国土交通省、防衛施設庁など省庁横断的な広がりを見せ決議案が述べている通り「国民の政治不信を一段と増大させた」ことは明らかです。一連の疑惑が鈴木議員への政治献金と深く結びついていることは重大です。日本共産党は、昨日、鈴木議員とロシアとの秘密会談記録を国民に示し、鈴木議員が国益を損なう二重外交を進めてきたことを明らかにしました。
鈴木議員は「党に迷惑をかけた」として自民党は離党しましたが、迷惑をかけられたのは国民です。本院が、鈴木宗男議員に対して「その責任を自覚して議員を辞し、国民に陳謝し、自らの政治的・道義的責任を明らかにするよう勧告する」ことは、国会として当然なすべき責務です。
日本国憲法の前文が示すように「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるもの」です。国会と国会議員が、国民の「厳粛な信託」に答えなければならないことは言をまちません。
昨日、自民党臨時役員会は、「国会決議で身分を奪おうとすることは慎重を要する」と確認しました。辞職勧告決議は、あくまで、鈴木議員が「国民の厳粛な信託」にそむいた自らの責任を自覚して、議員を辞すことを本人に勧告するものであり、国会の政治倫理確立のための自浄作用の発露です。
また、自民党は「今後明白かつ重大な違法行為が明らかになった場合は、議員辞職勧告決議案の本会議上程を行うことを可能とする」としています。そうであるなら、藤波孝生議員、中村喜四郎議員の場合はどうだったのか、このことをみれば、自民党の「確認」がその場しのぎの無責任なものであることは明らかです。
この決議案が問うているのは、鈴木議員の政治的・道義的責任であって、刑事責任ではありません。自民党の決議案に対する態度は、鈴木宗男議員に代表される自民党政治の本性に発するものであるといわなければなりません。
先ほど、自民党の委員は決議が無視された場合、院の権威が問われると述べました。本院が、議員辞職勧告決議を可決したにもかかわらずそれを無視する議員がいるとすれば、その議員の政治的・道義的退廃を示すものであって、国民の批判が強まるのは当然のことです。この決議をなさないことこそ、国会の権威をおとしめるものです。
本決議案を速やかに本会議に上程して、議員一人ひとりの意思を問うことが国会の国民に対する責務であることを述べて私の意見表明とします。
(「しんぶん赤旗」3月21日付より)