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「日本工営」たどっていくと…ムネオハウス ケニアODAに“登場”=ODAめぐり政・官と癒着

2002年3月8日・「しんぶん赤旗」報道

 鈴木宗男自民党議員の入札介入疑惑が指摘される国後島の「ムネオ・ハウス」とアフリカ・ケニアの政府開発援助(ODA)事業。2つの事業にコンサルタントとしてかかわっていた会社が「日本工営」(本社・東京都千代田区)です。日本工営といえば、日本のODAの出発点からかかわった企業。この会社を調べてみると、ODAをめぐる癒着の構造が浮かび上がってきます。

<鈴木疑惑に顔出す>

 日本工営は、「ムネオ・ハウス」建設工事で、設計などコンサルタント業務を受注しました。

 しかし、同社はコンサルタント業務にとどまらず、入札の公告より前に、工事の下請けにはいる日揮や、工事の元請けになる渡辺建設工業や犬飼工務店と鈴木事務所で接触した疑惑が出ています。

 予定価格を知りうる立場のコンサルタント業者が、受注をねらう建設会社と裏で通じ、予定価格などの情報をもらすのは法律違反。政治家の事務所で業者の紹介を受けること自体が異常です。

 他方、鈴木議員の関与が指摘されるケニアのソンドゥ・ミリウ水力発電所計画では、日本工営がコンサルタント業務で18億円の契約を受注していました。

 こうした問題に顔を出す日本工営は、政官界との癒着がこれまでも指摘されてきました。

<自民党と深いつながり>

 日本工営が設立されたのは、終戦直後の1946年。日本で初めてのコンサルタント会社でした。創設者は久保田豊氏。

 『ODA援助の現実』(岩波新書)の著者、鷲見一夫新潟大学教授によれば、久保田氏は戦前から関東軍や当時満州国産業部次長の岸信介元首相らと結びつき、朝鮮、満州、インドネシアなどで大規模ダムを建設していた人物でした。

 戦後の会社設立後もビルマ、ラオス、ベトナムなどを回り、ダム建設地を調査。その結果、ビルマ政府にバルーチャン・ダムの建設計画書を提出します。

 建設費用は190億円。久保田氏は、その資金をビルマ政府が日本から受け取る戦時賠償金でまかなうことを考え、日本、ビルマ両政府の交渉をとりもちます。

 決定はなかなかくだされないため、久保田氏は吉田首相(当時)に「直訴」。その結果、同首相の「鶴の一声」で同ダムは賠償案件に含まれることになりました。

 久保田氏は吉田首相だけでなく、歴代首相となる岸信介、池田勇人ら自民党幹部とも深い関係をもっていました。

 鷲見教授は「日本の援助はコンサルタント会社、商社などが開発途上国に持ち込んだプロジェクトを賠償資金で日本企業が建設するという形で始まった。この原型を作り上げたのが久保田氏だった。賠償案件の決定には政治家との密接なつながりが背景にある。その影響は今日にも及んでいる」と指摘します。

 久保田氏が大きな力を持ったのは政界との関係だけではありません。

 ベトナムのダムニ・ダム建設をめぐる疑惑で、久保田氏は参院外務委員会(1959年)に参考人として招致されています。

 この中で、一民間人にすぎない久保田氏にたいし、1953年12月に外務大臣から外務調査員に発令され、18回にわたって公用旅券が交付されるという、外務省から異例な待遇を受けていたことが明らかにされています。

 連綿として続いてきた日本工営と政界、官界との密接なつながり。人事でもそれは表れています。

 同社の現在の会長、西村巧氏は元北海道開発庁事務次官、取締役の辻本有一氏は元日本道路公団OB。元会長の黒田晃氏も元北海道開発庁事務次官で、このほかにも、外務省、林野庁、農水省OBが取締役、監査役などに就任していました。

 また、日本工営はこの10年間をとっても、千葉県、石川県、九州の自治体、愛知県が発注する公共事業で談合を繰り返していたとして、公正取引委員会から排除勧告や課徴金、立ち入り検査を受けています。

<利権全体の解明を>

 先の鷲見教授はいいます。

 「ODAをめぐる疑惑は鈴木議員だけではない。アジア、中国などのODA利権はすでに他の自民党有力者が押さえ、鈴木議員は、すきまだったロシアとアフリカを押さえようとした。それだけに鈴木議員のシッポ切りでこの問題を終わらせることはできない。事は、外交機密費と同じように外務省の体質、そして日本工営はじめ企業と政府、政治家とのつながりそのものにかかわっている問題だ。ODA利権の全体像を明らかにすることが求められている」

(「日本工営」とは=大規模プロジェクトの調査・設計・監理などをおこなう建設コンサルタントでは業界トップ(資本金74億円)。1600人の従業員を抱え、全国各地で事業所・営業所を展開。海外事務所はインドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、ネパール、ケニア、スリランカ、ミャンマー、ペルー、ラオスの10カ所に。アジアからアフリカにまで及ぶ同社の海外受注高は、約165億円。このうち、途上国のインフラ整備など、日本政府のODA事業によるものは94%もあります。)

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