コンゴ臨時代理大使問題=鈴木氏がIDカード発給を妨害
外務省報告書では、駐日コンゴ臨時代理大使のIDカード(外交官身分証明票)発給をめぐるトラブルで、自民党の鈴木宗男議員が、2000年8月に新任のヌグウェイ・ヌダンボ臨時代理大使について、「臨時代理大使として適当とは思わない。(前任の)ヌガンバニ氏でいいのではないか」などと発言、「ヌグウェイ氏の資質に疑問を呈し」たことが判明しました。
これまで鈴木議員秘書のムルアカ氏の介入・妨害は明らかになっていましたが、鈴木氏本人の介入が判明したのは初めて。
外交関係に関するウィーン条約では、外交官の任命にあたっては、受け入れ国の同意は必要ないとされており、報告書も「派遣国からの通告があった以上、IDカードを発給すべき」としています。
一国会議員がそれに圧力をかけて国際法までねじまげ、一国の主権に介入していたことは重大です。
<人事めぐる問題に>
鈴木氏の介入の舞台となったのは、コンゴ(旧ザイール)の政変にともなう在京コンゴ大使館の人事をめぐる問題です。2000年6月にヌガンバニ・ミゼレ氏に代わり、新たに任命されたヌグウェイ氏の外交官IDカードの発給申請書が出されましたが、ムルアカ氏の妨害などがあり、通常一週間程度で済むID発給はされませんでした。
鈴木氏はこの過程の同年8月、外務省の中近東アフリカ局参事官と同席した際、先の介入発言を行ったもの。その後も同省がヌグウェイ氏へのIDカード発給方針を固め、アフリカ第一課長が鈴木氏に同方針を伝えると、鈴木氏は「右翼団体や野党議員、マスコミに働きかけて同議員(鈴木氏)の誹謗(ひぼう)、中傷を行うような人物(ヌグウェイ氏)を臨時代理大使として受け入れることは適当ではないと強く反応」しました。
<本国は重ねて要請>
この結果、外務省は同氏の人事を白紙に戻すようコンゴ政府と交渉することにし、中近東アフリカ局審議官をコンゴに派遣。同審議官は、同氏が「好ましからぬ人物との関係が取り沙汰(ざた)されている」などとのべ、ヌグウェイ氏の臨時代理大使任命を「再検討するのであれば一つの案」などと提案しました。
しかし、コンゴ政府は重ねて同氏を臨時代理大使として認めるよう要請。帰国した審議官の報告に対しても鈴木議員は、ヌグウェイ氏の言動を強く非難。結局、IDカードは発給されないまま、同氏は本国から任を解かれました。
鈴木氏の私設秘書のムルアカ氏もこの問題で外務省に働きかける際、「鈴木議員の政治的介入を求める旨」のヌガンバニ氏の「陳情書の写し」を持参するなど、その立場を最大限利用しました。
また、ムルアカ氏がコンゴの外交旅券を所持していた事実を外務省が知っていたことも明らかになりました。
<対ケニア円借款問題=関与なしと従来説明繰り返す>
外務省が四日発表したケニアへの円借款によるソンドゥ・ミリウ水力発電計画に関する調査報告書は、「計画への特定議員の関与はなかった」と結論付けました。
しかし、同計画の二期工事は、ケニアの債務や環境問題などがネックになったため、通常行われる二国間の交換公文や契約の締結がないまま、工事の入札、発注がされる異例の事業です。受注企業からは多額の献金が鈴木氏に渡っています。
報告書によると、鈴木氏は、官房副長官として99年8月、ケニアを訪問。「自分(鈴木氏)が帰国次第、関係省庁に連絡・指示を行ない、本件プロジェクトへの円借款供与への迅速な検討を進める」と約束しました。
これをうけ、同年9月27日、ケニアへの円借款を実施する事前通報が行われました。この通報を行うことを指示する本省発の電報は、鈴木官房副長官の秘書官にも、事前に回覧されていました。
交換公文が締結されていないのに入札が行われたことについては「事前通報がなされたことを受けて、ケニアは自らの責任において入札手続を開始した」と従来の政府の説明を繰り返しました。
鈴木氏からの指示があったかについても、当時の関係者は「なかった」「聞いていない」と否定したといいます。