2014年11月07日 第187回 臨時国会 内閣委員会 【807】 - 質問
秘密保護法で恣意的指定防げず、ヤミに包まれた資金「官房機密費」
2014年11月7日、佐々木憲昭議員は内閣委員会で、秘密保護法では、首相が恣意(しい)的な秘密指定をした場合、誰もチェックできないと追及しました。
国家安全保障会議(NSC)など内閣官房が保有する情報は内閣総理大臣が特定秘密に指定しますが、そのチェック機関である「内閣情報保全監視委員会」は首相のチェックを補佐するだけ。また、「独立公文書管理監」の任命責任者も総理自身です。
佐々木議員は、安倍晋三総理が4日の参院予算委員会で「悪意によって運用されると考えられてしまえば、答えようがない」と答弁していることを指摘。核密約のように、首相が国民にウソをつくなど「『悪意によって運用』されれば、(恣意的な秘密指定を)防ぎようがない」と追及しました。上川担当大臣は「総理が法の運用状況をしっかり国会に報告する」というだけで、まともに答弁できませんでした。
佐々木議員は総理が「後の政権によってチェックされる」と答弁していることもあげ、「秘密保護法の体系ではチェックの仕組みがないことを認めたものだ。こんなずさんな法体系である秘密保護法は廃止しかない」と強調しました。
また、佐々木議員は、ヤミに包まれた資金である「官房機密費」について、菅官房長官に質問しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
官房長官がお着きになりましたので、官房長官からお聞きしますけれども、最初に政府参考人に数字だけ確認してから始めたいと思います。
内閣官房報償費、いわゆる官房機密費についてでありますが、一昨年末に安倍内閣がスタートして、それから、発足以来、官房長官が取扱責任者となっている官房機密費、これはトータルで幾ら使ったか、そのうち今年度幾ら使ったか、月ごとの数字と合計額、これをお答えいただけますか。
○河内政府参考人(内閣官房内閣総務官) お答え申し上げます。
第二次安倍内閣が発足した平成24年12月26日から現在までの間に国庫から支出された内閣官房報償費は、約28億円でございます。このうち、内閣官房長官が取扱責任者であります内閣官房報償費につきましては、約23億6千万円でございます。
また、内閣官房長官が取扱責任者でございますこの内閣官房報償費のうち、平成26年度分につきましては、平成26年4月から10月までの間に国庫から支出された額は8億円でございます。具体的には、4月に2億円が国庫から支出され、その後、毎月1億円ずつ国庫から支出されているところでございます。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 この内閣官房機密費というのは、菅官房長官は毎月1億円使っている。相当な金額でありまして、トータルでこれは23億6千万円、今年度だけで8億円お使いになったということでございます。
この官房機密費の内訳、これはどのように分類されているんでしょうか。それから、どのように管理し、記録する仕組みになっているのか、これをお答えいただきたいと思います。
○菅官房長官 内閣官房報償費の執行に当たっては、取扱責任者である私が決定をした内閣官房報償費取扱要領に基づいて、報償費の支払い時期、支払い金額及び目的類型等を記載した記録簿を整備いたしております。
そして、報償費の目的類型については、官房長官の交代時及び毎年度作成をします内閣官房報償費の執行に当たっての基本的な方針に基づき、政策推進費、調査情報対策費、活動関係費の三つの目的類型ごとに、それぞれの目的に沿って執行をさせていただいております。
その支払いに当たっては、所定の様式の文書を作成し、その管理を行っており、全体として適正な記録が行われているところと認識をいたしております。
○佐々木(憲)委員 今、分類としては、政策推進費、それから調査情報対策費、活動費、こう三つに分けてやっておられるということですが、そのうち調査情報費と活動費は、取扱要領によりますと、官房長官が指名した事務補助者をして役務提供者等への支払いに当たらせるというもので、支払い目的、支払い相手方、金額、これが書かれて、全ての記録が残されているというふうに聞いておりますが、政策推進費、これは官房長官がみずから支出するものでありまして、支出先、支出金額、支出目的の記録、これは細大漏らさず全て残っているというふうになっているんでしょうか。
○菅国務大臣 政策推進費の支払いに当たっては、政策推進費受払簿を作成し、その管理を行っているところであり、支出先等については領収書等で確認することができます。
○佐々木(憲)委員 その領収書は全てそろっているんでしょうか。領収書のあるものもないものもあるのではないでしょうか。あるいは、支出先、支出金額、支出目的の記録は完全には残っていないということなのではないでしょうか。
○菅国務大臣 政策推進費は、施策の円滑そして効果的な推進のために、官房長官としての高度な政策判断によって、機動的に使用することが必要な経費であると考えています。
このような政策推進費の性格上、必ずしも領収書等を得ることができないこともあります。
○佐々木(憲)委員 支出については、領収書があるものもないものもある、こういうことでありました。それから、目的とか支出先についても、官房長官の頭にはあるけれども、文書には残っていないというものもあるということですね。
そうしますと、支出が目的どおり適正に行われたかどうかというのは、これは誰がどのように検証するんでしょうか。
○菅国務大臣 報償費は、国の機密保持上、その使途等を明らかにすることが適当でない性格の経費として使用されてきておりますが、取扱責任者であります官房長官、すなわち私自身の判断と責任のもとに、厳正で効果的な執行を行っているところであります。
いずれにしろ、国民の不信を招くことがないように、適正な執行に努めてまいりたいと思います。
○佐々木(憲)委員 要するに、チェック体制はないということでありますね。これは、一体どのように使ったか、適正かどうかというのは誰もわからないという話になって、非常に問題だと思うんですね。
ことし2月の当委員会で官房長官は、この透明性を確保するルールについては検討中であるというふうにおっしゃったわけでありますが、検討中というのは、今も検討中ということでよろしいですか。
○菅国務大臣 この報償費の機能の維持に最大限留意しながら、その中でどのような情報公開が可能であるかということを考えてまいりたいというふうに思います。
いずれにしろ、国民の皆さんから不信を招くことがないように、適正な執行に徹底をしてまいりたいと思います。
○佐々木(憲)委員 ところで、官房長官はあす8日、沖縄を訪問すると報道されていますが、これは事実でしょうか。
○菅国務大臣 沖縄を訪問する予定であります。
○佐々木(憲)委員 官房機密費というのは、選挙に使うこともできるんでしょうか。
○菅国務大臣 私の判断のもとで、そういう使い方はしません。
○佐々木(憲)委員 元官房副長官の鈴木宗男氏の証言によりますと、1998年の沖縄の県知事選挙で特定の候補者のために官房機密費を3億円使った、こう述べているわけでありまして、もしそれが事実だとしたら、金の力で不正な選挙をやったということになるわけでありまして、選挙をゆがめるということになる。
今、沖縄の知事選挙が行われていますけれども、官房長官はこの知事選挙には絶対に使わないということでよろしいんですね。もう一回ここを確認しておきます。
○菅国務大臣 この選挙だけでなくて、ほかの選挙にも使うことはありませんし、官房長官の政策判断のもとに、国益を担うために報償費というのは使わせていただくというのが私の考え方であります。
○佐々木(憲)委員 しかし、チェックする体制がないわけで、これは官房長官が自分でチェックされるわけでありまして、第三者的な目からチェックできないわけですから、大変私は、幾らそう言われても、そうかなというふうに思ってしまうわけですね。仕組み上、そうなっているものですからね。
この官房機密費というのは、もともと国民の税金なんですよ。ですから、それを毎月1億円使って、領収書もないのもある、何に使うかは私の判断でございます、チェックする体制がないというのでは、これは問題だと思いますね。
ですから、ルールはきっちりしてもらわないといけないし、国民から見てなるほどと。それは詳細に全てというのはなかなか、性格上無理かもしれないけれども、しかし、今のようなやり方では国民は納得しないというふうに思うんです。
次に、内閣官房には懲役10年の厳罰で守る特定秘密というのが他方あります。この問題について、次に上川大臣にお聞きします。
11月4日の参議院予算委員会で、我が党の仁比参議院議員の質問に上川大臣はこのようにお答えになったわけです。特定秘密保護法につきましては、委員御指摘のとおり、国民の皆様の間に懸念や不安があるということを踏まえまして、その運用の適正を確保するために、政令や運用基準におきまして二重、三重の仕組みを構築したところでございます、こう答弁をされたわけです。また、安倍首相は、秘密保護法の運用状況について、しっかりこれは国会に年に一度報告することになっている、こういうふうにお答えになった。
こういうふうな答弁があったということ、これは間違いありませんね。確認しておきたいと思います。
○上川国務大臣 御指摘の、11月4日に、特定秘密の指定に対して、恣意的な部分をどうチェックするかという議員からのお尋ねがございまして、私からは、二重、三重ということで例示をいたしまして、法律や運用基準で特定秘密に指定できる事項を限定したということ、そして政令で特定秘密の指定の検証、監察等を行う独立公文書管理監を設置したこと、さらに運用基準で通報制度を設けたというような形で、二重、三重の仕組みを構築した旨お答えをしたところでございます。
さらに、御指摘がございました、安倍総理からの発言ということでございますけれども、法の運用状況につきましてしっかりと国会に報告することになっている旨の御答弁がなされておりまして、国会への報告の内容につきましては、これを踏まえて、法の運用状況を見つつ検討をしていくべきものというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 そこで、具体的にお聞きしますけれども、例えば防衛大臣が指定した特定秘密を独立公文書管理監が提出を求めたということがあったとしますと、それに対して防衛大臣は、いや、これは出せないということになりますと、運用基準の疎明の手続を行うということになるわけですね。これは他の省庁でも同様なことが起こり得るわけであります。
安倍総理は、年に一度しっかり国会に報告する、こう答弁したわけですから、例えば、独立公文書管理監が提出を求めた件数が年に何件あって、その中で何件がどういう疎明によって提出を拒否されたのか、当然、その点も国会に報告されるという理解でよろしいですか。
○上川国務大臣 委員御指摘の点でございますけれども、特定秘密保護法におきましては、政府は毎年、特定秘密の指定等の状況につきまして国会に報告をする、そして公表をするということでございます。運用基準におきましてその手続を定めているということでございます。
その運用基準におきまして、独立公文書管理監は毎年一回、特定秘密の指定等の適正を確保するために、独立公文書管理監及び行政機関の長がとった措置の概要を内閣総理大臣にも報告をし、公表するということにしているところでございます。
政府から国会への報告及び独立公文書管理監の報告等をどのような内容とするべきかにつきましては、法の運用状況も見つつ検討していくべきものというふうに考えておりまして、そうした状況の中で、独立公文書管理監が行政機関の長に対して特定秘密の提供を求め、行政機関の長が理由を疎明し、その求めに応じないということがあれば、その報告や公表につきましても適切に対応してまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 今の御答弁ですと、細かい、何件あったとか、どういう疎明で提出拒否したか、こういうことの中身、どういうふうにそれを報告するかは今検討中、まだ決まっていない、こういうことなんでしょうか。
○上川国務大臣 独立公文書管理監において検証、監察等の実際の実施状況を踏まえた上で、法の運用状況を適切にお伝えするための報告の内容を具体的に検討することが適当であるというふうに考えておりまして、そのようなことでございます。
○佐々木(憲)委員 今の答弁ですと、結局まだ細目は決まっていないと。
これは、そういう点を国会に、先ほど私が言った点ぐらいは、数字ですからね、それから疎明の理由とか、こんなのは別に何も隠すようなものじゃないわけでありまして、それをまだ決まっていないというのでは、国会にしっかり報告すると総理がおっしゃっているのに、国会自身がそれをチェックできないということになるわけでありまして、非常に問題だと私は思いますね。
もう一点は、総理が指定した秘密をチェックするというこの体制でありますが、内閣保全監視委員会というのは、総理のチェック機能を補佐するものですね。独立公文書管理監の任命責任者も総理でありまして、内閣官房の保有する情報を特定秘密に指定するのも総理大臣ですね。全部総理なんですよ。
総理が指定した秘密を総理がチェックする、そうなりますと、これは、例えば総理が恣意的な秘密指定をするというような場合、あるいは政府にとって都合の悪い情報を隠そうとして秘密に指定する、そうした場合に誰もチェックできないということになるわけですね。安倍総理は答弁で、この仕事自体を根本から全く悪意によって運用されるというふうに考えられてしまえば、もうお答えしようがない、こういう答弁をされているわけです。
例えば核密約のように、総理が国民にうそをつく、あるいは、総理が自分の都合の悪いものを隠す、恣意的な指定をする、そういう悪意によって運用された場合が仮にあるとすると、防ぎようがない、こういう仕組みになっているんじゃありませんか。
○上川国務大臣 御指摘ございました、総理から法の運用状況についてしっかりと国会に報告するということでございまして、ただいまのようなことが起こらないということについてのしっかりとした適正な実施、あるいは、法律にのっとって、実際に運用基準で定められたルールにのっとって適切に報告がなされ、また、国会の方にも内閣総理大臣から報告がなされることになっております。そうしたことを通して適切に実施できるものというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 今の答弁は答弁になっておりません。自分で自分をチェックするから正しいんだというような答弁をしたって、これは何も答弁になっていないですね。
先日の参議院の方の予算委員会で、総理は、形式上は確かに私が指定するという形式になっております、政権が交代をしていく中において、後に政権によってそれは十分にチェックされると答弁しているんですね。政権交代したらチェックできると。したがって、現在の法体系、秘密保護法の体系のもとではそのチェックの仕組みがない、こういうことになるわけでありまして、これは、二重、三重の仕組みを構築したというような言葉を並べても、実態的には何のチェック体制にもなっていない。
そのことを総理自身がこういう答弁の中でお認めになっているという非常に重大な内容でありまして、この秘密保護法については、我々は、こういうものは廃止ということで、もうこういうずさんな法体系、法律はやめるべきだというふうに思っております。
以上で終わります。