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その他 (大企業減税, 規制緩和, 「成長戦略」, 国家戦略特区)

2013年11月08日 第185回 臨時国会 本会議 【751】 - 質問

国家戦略特区法案が審議入り「格差拡大と経済低迷もたらす」

 2013年11月8日、政府指定の特定地域内で医療、農業などの規制緩和や優遇税制を実施し、大企業を支援する「国家戦略特区法案」が、衆院本会議で審議入りしました。
 法案は安倍政権の「成長戦略」の柱の一つ。質問に立った佐々木憲昭議員は「いっそう深刻な格差と経済の低迷をもたらす」と主張しました。

 佐々木議員は法案の三つの問題点をあげました。一つ目は、司令塔として設置する「戦略特区諮問会議」についてです。法定組織として強力な権限を持ち、首相が任命した民間有識者も構成員となることから、佐々木議員は「企業利益に直結する規制緩和をトップダウンで進める体制づくりだ」「ブレーキの無い『規制緩和暴走機関』になる」と指摘しました。
 二つ目は、政府が募集した規制緩和提案への242団体・197件の応募のほとんどが企業側からで、加えて内容の一部が非公開とされていることです。佐々木議員は「全ての情報を公開すべきだ」と迫りました。
 三つ目に佐々木議員は、特区で実行される規制緩和などによって環境破壊や労働条件の悪化、医療被害などの影響を受ける可能性のある住民の意見を反映する筋道が法案にはないと指摘。「悪影響を受ける国民の声を無視し、被害を放置することになる」と批判しました。

 佐々木議員は、これまでの規制緩和が非正規雇用の拡大や過労死などの深刻な社会問題を引き起こしたと強調。「この法案で規制緩和が進めば、格差と貧困を加速する」と述べました。
 安倍晋三総理大臣は、企業収益増加が雇用や賃金上昇につながるとする破たんずみの理論を展開し、「企業にとって成長の起爆剤となる世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出する」と述べ、大企業優遇を推進する姿勢を際立たせました。

議事録

○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、国家戦略特別区域法案について質問いたします。(拍手)
 安倍内閣は、日本再興のために法案を出したと言いますが、その内容は、特定区域を指定し、トップダウン方式で、大企業のための規制緩和と優遇税制を実施するものであります。
 なぜこのような法案を提出したのか。
 アベノミクス特区をつくるべきだと提唱した産業競争力会議委員の竹中平蔵氏は、こう述べています。岩盤規制を打破していかなければ、特に雇用分野は、残念ながら全く前進が見られないと、労働者保護法制をやり玉に上げました。
 なぜそんなことを言うのか。竹中氏は、人材派遣会社の取締役会長だからではないでしょうか。人材派遣ビジネスで利益を上げる上で邪魔な労働法制を、意のままに変えたいからであります。意図が見え見えではありませんか。自分の企業の利益に直結する規制緩和さえ進めば、それによって被害が広がろうがどうなろうがお構いなしという姿勢であります。到底容認できるものではありません。
 具体的に伺います。
 第一は、戦略特区諮問会議についてであります。
 この特区諮問会議は、経済財政諮問会議と同等の強い権限を持つ会議であり、その構成メンバーは、総理が指名し、半分は民間有識者とされています。その民間有識者は、企業側の利益代表であります。これは、企業利益に直結する規制緩和をトップダウンで進める体制づくりではありませんか。
 関係閣僚は、どのような位置づけなのでしょうか。臨時に呼ばれて意見を言うだけではないでしょうか。
 規制緩和を進めることを多数の議員によって決められたら、ブレーキのない、規制緩和暴走機関にならざるを得ないではありませんか。
 第二は、規制緩和の内容を誰が提案するのかということであります。
 既に、規制緩和について、事前の提案募集に242団体から197件の応募があったと言われますが、そのほとんどは企業側からの提案ではありませんか。それに基づいて、都市再生・まちづくり、雇用、医療など、六分野の規制緩和を進めようとしているのであります。
 重大なのは、内容の一部が非公開とされ、国民に隠されていることであります。なぜ隠すのでしょうか。提案した企業だけがぼろもうけを上げるという事実を知られたくないから、隠すのではありませんか。全ての情報を国民に公開すべきではありませんか。
 第三は、悪影響を受ける人々の問題であります。
 戦略特区で実行されるプロジェクトや規制緩和によって、環境破壊、労働条件の悪化、医療被害、他事業者の経営悪化など、影響を受ける可能性のある住民の意見はどう扱われるのでしょうか。意見を反映する道筋はあるのでしょうか。法案のどこを読んでも見当たらないのではありませんか。これでは、悪影響を受ける国民の声を無視し、被害を放置することになりませんか。
 最後に、この法律では、総理の言う失われた20年間は、克服できるどころか、一層深刻な格差と、経済の低迷をもたらすことになりはしないかという点であります。
 これまでの規制緩和によって、90年代からこれまでに、非正規労働者が881万人から2043万人にふえ、正規労働者の平均年収は、446万円から377万円へと減少しました。また、長時間過密労働と過労死という深刻な社会問題を引き起こしたのであります。
 その一方で、大企業が、多国籍企業化して世界で利益を上げながら、内部留保額を史上空前の270兆円に積み上げ、国内経済を空洞化させているのであります。
 この法案によって規制緩和が進めば、格差と貧困を一層加速することになるのではありませんか。明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 佐々木憲昭議員にお答えをいたします。
 雇用分野の規制改革についてお尋ねがありました。
 本法案における雇用分野の規制改革は、新規開業直後の企業及びグローバル企業等が、優秀な人材を確保し、従業員が意欲と能力を発揮できる環境を整備するために行うものです。
 これにより、企業にとっては、成長の起爆剤となる、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出するとともに、若者、女性を含め、頑張る人たちの雇用の拡大を目指して取り組んでまいります。
 検討の過程での各委員の御発言の意図について、臆測でコメントすることは適切でないと考えております。
 国家戦略特区諮問会議の民間有識者の選定についてお尋ねがありました。
 本法案においては、国家戦略特別区域諮問会議の民間議員は、経済社会の構造改革の推進による産業の国際競争力の強化または国際的な経済活動の拠点の形成に関しすぐれた識見を有する者のうちから、私が任命することにしております。
 仮に、議員が直接の利害関係を有すると考えられる議題が上がる場合には、当該議員が審議に参加しないようにできる仕組みとしたいと思います。
 このように、会議の運営については、中立性、公平性を担保するため、万全の対策を講じてまいります。
 国家戦略特区諮問会議の関係閣僚の位置づけについてお尋ねがありました。
 国家戦略特区諮問会議に特定の規制に関係する議案が上がる場合には、当該規制の所管大臣を臨時に議員として参加させることができることとしております。
 また、区域計画の認定に当たっては、関係大臣の同意を得なければならないとしております。
 いずれにせよ、政府としては、関係大臣の意見を十分に尊重しながら、政府一体となって国家戦略特区を強力に進めてまいりたいと考えております。
 国家戦略特区諮問会議の役割についてお尋ねがありました。
 国家戦略特区諮問会議の役割は、例えば、具体的な事業を記載している区域計画の認定について言えば、内閣総理大臣の求めに応じて審議を行い、意見を述べることです。最終的に区域計画は内閣総理大臣の認定により定められますが、その際に関係大臣の同意を得ることを必要としています。
 以上のことから、御指摘のようなことは当たらないと考えます。
 規制改革の提案主体についてお尋ねがありました。
 国家戦略特区に関する提案募集に応募のあった242の団体のうち、地方公共団体が61団体を占めるなど、企業以外からも多数の提案をいただいております。
 提案の公開についてお尋ねがありました。
 企業からの提案につきましては、営業上の秘密等を理由に非公開の希望がない限り、公開しております。
 政府としては、最大限の情報公開に努めています。
 住民の意見の反映や悪影響の可能性についてお尋ねがありました。
 国家戦略特区会議には、必ず関係地方公共団体の長が構成員となり、具体的事業を記載した区域計画の作成に当たっては、関係地方公共団体の長の同意を必要としています。したがって、関係地方公共団体の長が、住民の声を十分に勘案して判断されるものと考えます。
 また、区域計画については、認定までの段階において、関係大臣の同意を必要としており、悪影響がないように事業を実施してまいります。
 大企業と労働者の格差についてのお尋ねがありました。
 私は、企業と労働者を、対立するものと位置づけておりません。これまでの賃金や投資の低迷は、長引くデフレによるところが大きいと考えています。
 私の成長戦略の目指すところは、企業の競争力強化や投資の拡大を図り、それによる企業収益の増加を、頑張る人たちの雇用の拡大や収入増加につなげることであります。この法案は、まさに、この好循環をつくり出す起爆剤になるものです。
 あわせて、企業収益の増加がいち早く雇用の拡大や賃金の上昇につながるように、政労使などの場を通じて、共通認識を醸成しているところであります。
 以上であります。(拍手)

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