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税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券), 景気回復 (法人税, 量的緩和政策、超低金利政策)

2013年06月19日 第183回 通常国会 財務金融委員会≪日銀報告≫ 【742】 - 質問

「国民の所得増こそ必要」 アベノミクスを批判 麻生財務大臣と日銀総裁に質問

 2013年6月19日、財務金融委員会で「日本銀行報告」に対する質疑が行われました。佐々木憲昭議員は「アベノミクス」を批判し、国民の所得を増やしてこそ本格的な景気回復に向かうと強調しました。

 佐々木議員は、今年1〜3月期の設備投資は3.9%減と2四半期連続でマイナスとなったことを指摘。日本銀行が「異次元金融緩和」で資金をいくら流しても企業は設備投資をしていないと追及しました。
 黒田東彦日銀総裁は「設備投資を後押しする効果を期待している」と答弁。佐々木議員は「設備投資が増えない原因は需要不足にある」と指摘し、安倍内閣が企業の設備投資減税打ち出そうとしているが、「需要を引き上げなければ設備投資の意欲もわかない」と批判しました。
 麻生太郎財務大臣は「(企業は)薄気味悪いほど内部留保をためている。需要がないと何かするモチベーション(意欲)もわかない」と内需拡大の必要を認めながら、具体策に触れませんでした。
 佐々木議員は、内部留保の活用について「賃上げと安定した雇用拡大によって内需を活発にすることこそ、余剰資金を生かせる道だ」と強調。労働条件の改善や最低賃金の引き上げ、中小企業と大企業の公正な取引を実現することこそ政府の取るべき施策だと強調しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 安倍総理は、秋には成長戦略第二弾を打ち出したい、こうおっしゃって、この中で思い切った設備投資減税を決定したい、こういうふうに述べておられます。
 先ほどの黒田総裁の説明では、設備投資は、非製造業が底がたく推移する中、全体としても下げどまりつつある、こうお述べになりました。
 麻生大臣に、まず現状の確認をしたいと思います。
 財務省の法人企業統計で、ことし1―3月期の設備投資はどうなっているか。かなり落ち込んでいると思うんですけれども、これはどのように評価をされておられますか。
○麻生財務・金融担当大臣 1―3月でありますけれども、全産業の設備投資はマイナス3・94%の減です。その内訳として、製造業で8・3%の減、それから非製造業で1・5%の減ということになっております。
 設備投資がマイナスになっているんですが、今でもマイナスではありますけれども、昔は8・何%、6・何%ですから、マイナスではありますけれども、減り方が少なくなってきたということは言えるんだと思います。縮小はしているんだと思います。
 先行指標でいきますと、機械受注が先行指標約6カ月というのはもう御存じのとおりなので、この先行指標の分からいきますと、機械受注の場合はこう行かないで、こういうぐあいにしながら上がったり下がったりしますので、3月は大幅にマイナスになったんですが、その前の2月は大幅にプラスになったりしておりますから、そういった意味では持ち直しに向かっていることはもう間違いないなと思っております。
 その他の資料もいろいろ出てくるんですが、いま一つ、大丈夫かなという気持ちがまだ企業の中にはある、私どもの感じではそんな感じがしておりますので、もう一つ、これは7―9の数字なり4―6の数字がもう少し出てこないと何とも言えませんけれども、いずれにいたしましても、民間の設備投資が起きやすくなるような環境づくりというのは必要ではなかろうか、私もそう思っております。
○佐々木(憲)委員 黒田総裁にお聞きしたいんですが、資金が非常に潤沢にあるにもかかわらず、設備投資が前年比でマイナスとなっている理由をどのようにお考えでしょうか。
○黒田参考人(日本銀行総裁) 確かに、先ほど麻生副総理が答弁されましたように、1―3月の設備投資は、昨年来の海外経済の減速などを背景にして、製造業を中心に投資を手控える動きがあったわけでございまして、24半期連続で前年比マイナスとなっております。
 そういうことで、海外経済の要因がかなりあったと思いますが、ただ、足元では、海外経済も徐々に持ち直しに向かっておりまして、輸出それから鉱工業生産で改善の動きが続いております。それから、企業マインドにも明るさが見えてきておりますので、これも麻生副総理が言われましたように、機械受注あるいは資本財総供給というものを見ますと、設備投資関連の指標はおおむね減少に歯どめがかかって、製造業を含めても全体として下げどまりつつあるということでございます。
 現時点の状況は、長く続きましたデフレのもとでどうしても設備投資がなかなか出てこないという状況があったわけですが、状況は少しずつ改善しつつありますので、設備投資も今後プラスになってくるだろうというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 そこで、基礎的なことですけれども、企業が設備投資をしたいと思うのは、どういうことをきっかけにそういう決定をするのかということですけれども、政府の調査で、内閣府の企業行動に関するアンケート調査というのを見ますと、設備投資の決定要因として一番多いのは内外の需要動向、続いて収益水準、他社の動向、こういうものがあります。この傾向は基本的に今でも変わらないと思うんですが、いかがでしょうか。
○麻生財務・金融担当大臣 もう一個言わせていただければ、多分、設備が古くなった、したがって、耐用年数等々の考えをという点がもう一個加えられると存じますけれども、とにかく、今言われましたとおり、需要と利益が基本だと存じます。
○佐々木(憲)委員 そういう点からいいますと、1―3月期の法人企業統計で見ましても、全産業の売上高はマイナス5・8%でありまして、売り上げが減っているためなかなか設備投資を牽引するという方向には行かない、これが実態であります。要するに、潤沢な資金があっても、あるいは税金が軽くなっても、それよりも何よりも、需要がない限りは設備投資がなかなかふえていかないんだということだと思うんですね。
 それで、麻生大臣に確認ですけれども、設備投資減税ということを盛んに言われますけれども、税金が軽くなったら設備投資をやりますよ、そういうふうになるのか。先ほどの政府のアンケート調査を見ましても、税というものの要因はほとんどないわけであります。どのようにお考えですか。
○麻生財務・金融担当大臣 これは、仮に税が減税をされますと、先ほど言われましたように、いわゆる収益というものがふえるということになりますので、その意味で言われたのであれば、二番目の点に関しましては、多少なりとも効果があることははっきりしていると思います。
 また、よく法人税減税という話が比較で出てきますけれども、法人税減税というものに比べれば、いわゆる設備投資の償却をどうかする、どういう形でさわるかは別にして、設備投資の償却等々を考えるという方が、割と企業としてはそちらの方がより国内の設備投資には向かいやすい。
 もう一点は、やはり国内でこれだけ内部留保をためております企業が、いわゆる株主配当にも回さない、労働分配率も上げない、設備投資もしない、その金は何しているんですかと。いや、じっと持っているわけですよ。何のためにといったら、デフレだからですよ。僕はそう思います。デフレだったら、じっと持っておけば、物価が下がっていくんですから、金の値打ちが上がりますから。しかし、インフレになりますとそうはいかないから、その点は何とかということになれば、それはそれなりの一つの刺激にはなると思います。
 いずれにしても、佐々木先生、やはりこれは、企業は、経営者がリスクをとってやるかやらないかという判断が求められているのであって、じっとしていたままで金が少しずつふえていくなんという状況をつくっている間はなかなか難しい、私はそう思います。
○佐々木(憲)委員 最終的には、需要の動向が私は一番の基礎にあると思います。そこが伸びていかない限りは、若干の減税ですとか金融緩和とか、そういうのをやっても、それは一時的な効果しかなくて、設備の更新ぐらいは多少あるでしょうけれども、能力を増強する、そういう方向に行かないというふうに思うんです。
 次に、金融緩和の面ですけれども、ことしに入りましてマネタリーベースで幾らふえたか、数字を紹介していただけますか。
○雨宮参考人(日本銀行理事) お答え申し上げます。
 マネタリーベース、ことしに入っての増加額ということですが、今、まず最初に、直近の残高を申し上げますと、5月末時点で159兆円、伸び率は、前年比でプラス37・6%という増加率でございますが、ことしに入っての増加額ということで申し上げますと、昨年末の金額が138兆でございますので、約20兆増加したということでございます。
○佐々木(憲)委員 これだけ資金の供給が非常にふえているわけですけれども、銀行から先になかなか流れていかない、ここに問題があるわけで、設備投資の資金需要もふえていないですね、先ほど言ったように。マイナスが少し減った程度だけれども、マイナスですから。
 そういう状況を考えますと、これは、金融を緩和したら設備投資が進む、そう単純にはいっていないのではないでしょうか。総裁のお考えはいかがでしょうか。
○黒田参考人 委員御指摘のとおり、設備投資には売り上げあるいは利益などが大きく影響することはそのとおりでございますが、また他方、投資のコストという面では、資金調達コストその他が設備投資に影響するという面もあるわけでございます。
 現状を申し上げますと、御承知のように、消費は底がたく推移しておりますし、住宅投資も伸びている、それから政府投資は大幅な伸びになっている、輸出も底を打って持ち直しつつあるということでございますので、これらの需要項目を見ますと、需要自体も大分回復してきておりますので、それに加えて、日本銀行の量的・質的金融緩和によって、より設備投資をしやすくする、資金調達コストを実質的に下げていくということによって、設備投資を後押しするという効果を期待しているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 後押しするということなんですけれども、需要がふえていない状況で、設備投資がなかなかふえない。したがって、後押しをするといっても、その先に需要がないわけですから、これはなかなか押しても動かないという面があるわけで、結局、設備投資をふやす決定的な要因は、金融とか税というよりも、内外の需要動向、それから収益水準、この見通しがあるかないか、これで決めるわけです、最終的に。その認識が私は大事だと思うんです。
 民間の調査機関、例えば三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の調査でも、企業の設備投資が盛り上がらない背景には、短期的な景気サイクルの上の動きだけではなくて、もう少し根の深い原因がある、こういう指摘がありまして、それによりますと、第一に、企業が需要の見通しに慎重な姿勢を続けているという点、総人口が減少に転じ、国内需要の先細りが懸念される中で、なかなか投資に積極的になれないという点。それから、第二は、企業が海外に進出を強めておって、資金を国内投資に回すよりも海外に振り向けるということが挙げられる。この二点を指摘されています。私もこれは当たっていると思うんです。
 例えば、昨年7月の海外事業活動基本調査によりますと、投資決定のポイントで、現地の製品需要が旺盛または今後の需要が見込まれると回答した企業が73・3%。つまり、海外の設備投資を行う場合の要因は、これが圧倒的多数なんです。したがって、現在は、国内の需要がいろいろな意味で減ってきておりまして、他方、海外の需要予測から、設備投資は海外に向かっているというのが現状であります。
 こういうことを考えますと、これはやはり金融とか税というような範囲の話ではなく、もっと大きな、日本経済全体の経済政策の方向をどのように据えていくのかという、ここにかかわる大変基本的な問題になってくるわけであります。
 例えば、日経新聞のアンケート調査によりますと、円高で日本国内への工場回帰が起きるかというふうに尋ねると、回答として、起きないという回答が69%を占めております。例えば、トヨタはブラジル、インドネシアに車両工場をつくる、三菱自動車はインドネシアに新工場をつくる、ホンダは中国でハイブリッド車の現地生産を始める、こういうことがどんどん最近の新聞で報道されているわけですね。
 したがって、こういう問題を念頭に置いていかないと、設備投資減税をしても、これは投資に向かわないで、法人税減税もそうなんですが、内部留保がたまったままで動かない、この事態を打開することはできないと思うんですよ。
 ここがやはりよく考えなければならない根本問題だと思うんですが、大臣、どのような考えをお持ちでしょうか。
○麻生財務・金融担当大臣 たまりたまって470兆円ぐらい。470兆ですよ。薄気味悪いぐらいの金が内部留保でたまっておるわけです。その金が、金利もつかない金をじっと抱えっ放しでこれだけずっと大きくなってきておる状況というのは、これは基本的に、それに課税しろと言った方もおたくに近い方でいらしたんですけれども、それはちょっと、おたくの主義とやり方が違いますので、うちは自由主義経済をやっていますのでそんな簡単なことはできませんよと申し上げた記憶が2年ぐらい前にあるんですが。
 いずれにしても、このお金をじっと持っているだけではどうにもならぬので、先ほど需要と言われましたけれども、もうかるとか需要があるというのが出てこないと、何かしようというモチベーション、労働意欲が湧かぬということなんだと思っておりますので、そのためには、ニンジンをぶら下げるだけで動くかといえば、あめとむちと、いわば両方ないとなかなか動かないのではないのかなというのが最近よく言われるところでもあります。
 いずれにしても、これという手口を今、私、自分自身で持っているわけではありませんけれども、現預金等々だけで270兆、その他を入れますと400何十兆、これはちょっと、正直、国家予算の5、6倍というような金ですから、それはとてもじゃないという感じが率直な実感なので、今後とも、この点につきましては、両方検討しなきゃいかぬところだと思っております。
○佐々木(憲)委員 その点は、半分ぐらい我々も同感するところがありまして、内部留保が我々の計算では266兆円たまっているわけです。これは、リーマン・ショックがあろうが、あるいは大震災が起きようが、減ることがないんですよ。どんどんどんどんふえてきているわけです。これは極めて異常な状況で、どういうふうにこれを生きたお金として循環させていくかということが大事なんです。
 例えば、賃金の引き上げというのが一つ。これはもう非常に大事な点だと思いますけれども、なかなかベースアップまで行かないですね。ボーナスは多少上がった企業もあります。今、円安で大変だというので、中小企業はむしろボーナスが払えなくなっている面もある。そういう状況ですから、やはり最低賃金の引き上げですとか、あるいは企業の雇用の安定化のための法整備ですとか、常用雇用をふやしていく方向をどうつくっていくか。これはやはり、法律の改正も含めて、政府がやるべき課題である。
 それから、下請に対して、どんどん搾っていくような、単価を買いたたくようなやり方、こういうものも改めさせていくような対策をとっていくとか、こういうことがいろいろあると思います。
 あるいは、大企業に対して特別に優遇する税制もありますから、こういうのは、せめて中小企業並みに税金を払ってもらうというようなことですとか、いろいろな対応があると思います。
 最終需要をどうふやすか。しかも、可処分所得をどうふやすかが大事だと思うんです。
 負担がふえていくと、賃金が上がっても、出ていく方が多いですから、したがって、その負担の軽減ということを考えなきゃならない。そういうことを総体としてよく見ていかないと、これは、今は多少、気分的に少し高揚感があるから支出がふえたというようなことも一部ありますけれども、しかし、どうも賃金が上がらないので、その分来月は緊縮しようという話もある。そういう状況をよく見ていかないといけない。
 やはり、最終的には、国民の需要、家計消費がどうふえるかというところに軸足を置くというのが政治の一番の課題だと私は思うんですが、最後に大臣の見解を伺って、終わりたいと思います。
○麻生財務・金融担当大臣 おっしゃるとおり、給与が上がっても可処分所得が減ったら意味がない、当たり前の話であります。
 御存じのように、少なくとも、先ほど黒田総裁の答弁にもありましたように、いずれも今のところの指標は全てプラス、上に向いて上がってきております。
 あれだけ大きな、異次元の改革というものをすれば、いいことばかりあろうはずはないのであって、多少は、あちらこちら、いろいろなところで摩擦が起きたり何かが起きるのは当然のことだとある程度思っておかなきゃいかぬのであって、それにどう対応するかだけを考えるのであって、要は、まずはデフレーションからの脱却、これをまず優先順位の一番に置いて対応していかなきゃならぬと思いますけれども、おっしゃるように、最後のところは、本人の可処分所得の増というところが行き着く先だと思っております。
○金田委員長 時間が参りました。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。

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