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その他 (同意人事)

2012年08月01日 第180回 通常国会 議院運営委員会≪聴聞会≫ 【689】 - 質問

聴聞会で原子力規制委員長候補が原発推進姿勢

 2012年8月1日、衆参議院運営委員会は、野田内閣が原子力規制委員会の委員長候補として国会に示した田中俊一・元原子力委員会委員長代理から所信を聴取し、質疑をおこないました。
 日本共産党からは、衆議院議院運営委員会で、佐々木憲昭議員が質疑にたち、原子力政策のあり方や「核燃料サイクル」について田中氏の姿勢をただしました。

 田中氏は今回の事故を「反省している」といいながら、原子力は人類が「コントロールできる」と明言しました。
 そのうえで「今後、より安全な原子炉の研究開発に力を注いでいってもらいたい」と原子力エネルギーに、これからも依存する姿勢を示しました。
 さらに、2030年における原子力エネルギーの比率について、政府がゼロから25%の案を示していることにたいする見解や「核燃料サイクル」、「原発輸出」など、原子力政策のあり方に関する質問については、「原子力規制委員会が判断することではない」「個人的意見は申し上げるべきではない」と答えませんでした。
 原発の40年運転制限については、「40年超の原発は厳格にチェックし、要件を満たさなければ運転させないという姿勢で臨むべきだ」と述べる一方、「一律にだめだということではなくて、新しい安全規制、基準に合致できることを確認したうえで判断する」とのべ、運転延長の可能性にも言及しました。
 田中氏は、「(年間)100ミリシーベルトは健康に大きな影響がない」として、政府が決めた20ミリシーベルトの避難基準を帰還基準とし、住民に20ミリシーベルト近い放射線量を浴びる暮らしを強いてきたことについて、「私の判断ではなく、原爆追跡調査やICRP(国際放射線防護委員会)のデータを示したものだ」と弁明しました。
 大飯原発再稼働については「技術的な点で精査が不十分だった可能性がある。活断層の影響があれば当然止めていただくことになる」と述べました。

議事録

【参考人の意見聴取部分と佐々木議員の質問部分】
○小平委員長 まず、議事の順序について申し上げます。
 最初に、田中参考人に所信をお述べいただき、その後、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
 それでは、田中参考人、お願いいたします。
○田中参考人(原子力規制委員会委員長候補者(一般財団法人高度情報科学技術研究機構顧問)) 田中でございます。どうぞよろしくお願いします。
 このたび、私が原子力規制委員会委員長をお引き受けする決心をしたのは、東京電力福島原子力発電所事故以来、福島の多くの方々と触れ合う中で、皆さんの現状と苦悩に直面したからです。
 福島の皆さんが1日でも早く安心して生活できる環境を回復することが大事であると信じ、昨年来、除染の現場などで微力を尽くしてまいりました。原子力にかかわってきた個人として、なぜこのような事故を起こしてしまったのかという思いと、福島の皆さんに申しわけないという思いが、いつも交錯してまいりました。
 そうした中で、このたび、原子力規制委員会委員長の打診をいただきました。正直なところ、大変悩みました。しかし、福島の皆さんの顔を思い出し、国民が納得できる原子力安全規制に取り組むことは日本のためである、立地地域のため、そこで暮らす人々のために身を投げ出すべきではないかという思いに至りました。そして、決心をした次第であります。
 私は、旧日本原子力研究所において、放射線物理や放射線遮蔽の研究に長く携わってまいりました。東海研究所では、副所長、所長として、研究、経営の立場から、多種多様な原子力施設の建設、運転管理、人材の育成など、安全確保にかかわる業務を指導してまいりました。
 この難局にあって、新たに発足する原子力規制委員会が果たすべき役割は極めて大きいと承知しております。
 国民の健康と財産を守り、環境への影響を防ぐという使命を実現するために、まず、国会事故調査委員会や政府事故調査委員会等の御指摘をもとに、科学的、技術的見地から、安全規制や指針を徹底して見直す必要があります。その上で、事業者には安全規制や指針に基づく要件の実施を厳格に求め、要件が達成できない場合には原子力発電所の運転は認めないこととすべきと思います。
 例えば、40年運転制限制です。
 40年運転制限制は、古い原子力発電所の安全性を確保するために必要な制度だと思います。法律の趣旨を考えても、40年を超えた原発は、厳格にチェックし、要件を満たさなければ運転させないという姿勢で臨むべきです。
 また、原子力発電所の再稼働については、去る4月6日に提示された再起動に当たっての安全性に関する判断基準も含め、原子力規制委員会で慎重に確認、評価を行う必要があると考えております。
 具体的には、海溝型地震による津波や地震、活断層の評価、あるいは、事故調の報告でも御指摘がありました技術的な点について、その精査が不十分だった可能性があると考えています。例えば、新たな調査の結果、活断層による影響があるとの判断になれば、運転の停止を求めるべきと考えます。
 このように規制の厳格化に取り組むためには、規制組織そのものの改革も不可欠です。特に、人材の確保、育成、安全文化の徹底などは、みずからが強いリーダーシップを持って取り組むべき課題であると考えております。
 私は、原子力規制委員会の委員長を拝命した場合には、ほかの四名の委員と協力し、原子力規制委員会設置法にのっとり、独立性と透明性の確保を基本として、国内外から信頼の得られる原子力の安全規制の実施に最善を尽くしてまいる所存であります。
 どうもありがとうございました。
○小平委員長 ありがとうございました。
 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。
 理事会申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席をお願いいたします。
    ―――――――――――――
○小平委員長 これより田中参考人の所信に対する質疑を行います。
 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。
【中略】
○小平委員長 次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 できるだけ重複を避けて御質問したいと思います。
 一点目は、事故の原因の究明についてであります。
 福島第一原発の過酷事故は、放射性物質の放出が続いておりますし、いまだ収束していないと思います。したがって、建屋内、炉心の調査、これがまだできない。そういうもとで、事故原因そのものは未解明であります。今後、事故原因の究明をどのように進めていくおつもりか、お聞かせをいただきたい。
 次に、これまでの原子力推進体制をどう反省するかという点です。
 これまでの御質問にありましたように、原発を推進する中枢の部分におられたわけであります。電力のとりことなったと国会事故調が指摘をしたことについては、既に質疑者が指摘をしておりますが、政官業、学界等で安全神話がつくられた、その理由をどのように見ておられるか。それから、何を反省されているか。
 それから、先ほど、事業者とのつき合いは余りないというふうにおっしゃいました。田中さんは、東電から、あるいは事業者から、報酬を受けたことはありますか。また、あるとしたら、幾らでしょうか。
 次は、日本の原発の今後のあり方でありますが、原発輸出についてどのようにお考えでしょうか。国内で原因究明も明確ではないのに、原発の輸出は私は認められないと思っておりますが、どのようにお考えでしょうか。
 それから、先ほど、原発再稼働について、安全かどうかを厳しく判断するとおっしゃいましたが、その場合の安全基準というのをどのように考えておられるか、お示しをいただきたい。
 核燃料サイクルの破綻は明白でありまして、「もんじゅ」の廃炉、六ケ所村の再処理工場の中止、この点についてどのようにお考えでしょうか。
 最後に、低線量被曝についてでありますが、田中さんは、原子力損害賠償紛争審査委員として働いてこられました。委員として、自主的避難者への賠償に最後まで反対したというふうに言われておりますが、それはなぜでしょうか。
 それから、低線量被曝リスクについて、先ほども紹介がありましたように、100ミリシーベルトというのは健康に大きな影響がないというふうにおっしゃいました、これは原子力委員会の議事録、昨年8月23日ですが。この点について、今もそのようなお考えなのでしょうか。
 以上、お聞きしたいと思います。
○田中参考人 まず、事故原因の究明でございますが、今の状況は、一般論で言いますと、完全に収束した状態でないということは確かであります。
 今後、解体し、あそこをきちっと整理していく上では、いろいろなリスクを伴いますので、それについては、安全規制当局としましては、その際の事故がないようにする、さらなる事故が起こらないようにする。
 特に、今後大事なことは、あそこで2千人から3千人の方が毎日働いておりますので、その方たちの被曝を防ぐという点も大変大事だと思っていますので、そういった点も含めまして、きちっと、実際の解体計画とか幾つか出ておりますけれども、それについては精査させていただきたいと思います。
 それから、事故調査をどうするかということですが、これについては、実際に中が見られるようにだんだんなってきましたら、できるだけ早急に、それをきちっと調査して、そこから教訓を学び取らないといけないというふうに思いますので、それは、やっていきたいというふうに思っています。
 どういうやり方をするのが適当かは、今後皆さんと御相談させていただきたいと思います。
 それから、安全神話はなぜつくられたかということなんですが、これは以前、昨年、朝日新聞の「耕論」にもお書きしましたけれども、安全神話というのは、結局、原子力に対する非常に強い反対意見とか地元の了解を得ることの難しい中、できたんじゃないかというようなことを私は書いたように思います、無理にそういうことを言ったんではないかと。やはり、そこに無理があったと私は思います。
 ですから、そのことについては、今後はそういったことをないようにする。特に、規制庁というのはそういうことにとらわれてはいけませんから、そこについては、安全神話があるようでしたら規制庁の場合は不要になりますので、安全神話ということは規制庁にとっては禁句に近いというふうに思っています。
 それから、報酬については、いただいたことはありません。事業者からの報酬というのはありません。
 昨年、あちこちで除染についての講演を頼まれたときに、幾つか財団からいただいた、数万円いただいたことがございます。それは大体、非常にうれしいことに、私、年金生活者ですので、福島へ行っていろいろなお手伝いをするときの資金に使わせていただきました。
 それから、原発の輸出計画ですけれども、これについては、私個人の意見をここで申し上げるのは適当ではなくて、今後、国全体としてどうあるべきか、あるいは世界、国際的な中で、多分、政策的に判断されていくべきものと思います。
 それから、再稼働については、先ほどもちょっと申し上げましたとおりであります。きちっと厳しく安全指針とか規制を見直していきたいというふうに思います。
 燃料サイクルが破綻しているという御指摘ですが、これについても、ここで、規制委員長になるかもしれない立場としては、それをそうだこうだということは、個人的意見は申し上げるべきではないと思います。
 ただし、再処理工場にしろ、「もんじゅ」にしろ、非常に重要な、重い原子力施設です、安全上も。ですから、そういったものの稼働に伴う安全の問題については、これはまた軽水炉と全く違う側面がございますので、そういう点で、きちっと見させていただくということは、お約束したいと思います。
 それから、自主避難についてですが、これも、賠償審査会での、私、発言したという事実はありますけれども、なぜかということにつきまして少し御説明したいと思います。
 現在、福島県だけで大体200万人弱ですけれども、住民の方が、いわゆる現存被曝状況、1ミリシーベルトから20ミリシーベルトの範囲と言われているところに住んでおります。その中に、大部分の人はそこに住んでおられます。一部の方は、自主的避難しております。ですから、自主避難している人だけをもし補償した場合には、残りの人たちの気持ちがおさまらない。これは、私も実際に福島に行っていろいろな方にお聞きしました。やはり、補償するなら全員やってほしい、同じようにやってほしいと。
 ということになりますと、そういう議論ではなかったものですから、自主避難については、指針というのはこれは半ば義務みたいなあれで、ここに書かれたことは最低補償をするんだという趣旨ですから、そういうことになりますので、自主避難の方でどうしても賠償をお求めになるのであれば、賠償紛争センターとかそういうところを通して請求をしていただくということについては、私は合意しました。
 そのことについては、何ら、それをどうこう言ったことはありませんので、そういったことで御理解いただければと思います。
 以上です。(佐々木(憲)委員「100ミリシーベルトについて」と呼ぶ)
 100ミリシーベルトについては、私の判断ではなくて、100ミリシーベルト以下では、国連科学委員会等からのデータで、一応、有為な影響は出ていないと言われています。そういう資料を御提出しました、これは客観的なデータとして。私自身が、100ミリシーベルト以上で影響があって、以下で影響がないと言うほど専門家ではございませんので。
 地元でもいろいろ御説明しているんですが、私自身の判断は、健康管理、健康影響については、余り自分自身の判断としては御説明しないようにしているんです。客観的データとしてこういうことがあります、原爆調査の追跡調査でこうなっています、国連科学委員会のデータはこうなっています、ICRPはそれに基づいてこんな考え方をしていますと、そういう説明をさせていただいています。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。

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