税制(庶民増税・徴税), 医療・介護・年金 (消費税, 大企業減税, 社会保障・税一体改革)
2012年05月11日 第180回 通常国会 本会議 【678】 - 質問
公約違反、逆進性、経済破壊 消費税増税を撤回せよ
野田内閣が社会保障改悪とセットで狙う消費税増税法案が、2012年5月11日、衆院本会議で審議入りしました。
野田佳彦総理大臣は「何としても今国会で実現したい」と改めて執念を見せました。
代表質問に立った佐々木憲昭議員は「これ以上の消費税増税に耐えられない」というのが国民の声であり、これに逆らい「ただただ法案成立にまい進することは政府のすべきことではない」と述べ、法案の撤回を求めました。
佐々木議員は、民主党が2009年の総選挙公約に消費税増税を一切書かず、「4年間上げない」と言っていたことをあげ、「国民に対する裏切り行為だ」と批判しました。
佐々木議員は「消費税は最悪の欠陥税制だ」と強調。「生活費に課税しない」という税制の原則に反して低所得者ほど負担率が重くなる「逆進性」をもっており、政府は何の対策も示せないと批判しました。
中小企業が価格に転嫁できない問題も何も解決していないことをあげ、「安心どころか不安はつのる一方だ」と述べました。
佐々木議員は、消費税増税と年金削減や保険料引き上げを合わせると年間20兆円もの負担増になり、「日本経済を重大な危機に突き落とす」と指摘。
野田総理が野党時代、消費税5%への増税などで日本経済が「惨たんたる状況」に陥ったと認めていたことをあげ、同じ過ちを繰り返すのかと追及しました。
野田総理はどの問題でも「検討する」と述べるだけで、具体的対策を示せませんでした。その一方で、「与野党ともに逃げられない課題」と繰り返すばかりでした。
佐々木議員は、日本の大企業の実際の法人税負担率が表面税率の40%より低い33%程度にすぎず、12〜13%の負担率の大企業もあることに言及。
無駄遣いを一掃し、富裕層・大企業に応分の負担を求めれば、「消費税に頼らなくても、社会保障拡充と財政再建への道は開かれる」と強調しました。
議事録
○佐々木憲昭君 日本共産党を代表し、消費税増税法案について質問します。(拍手)
野田総理が政治生命をかけると言って打ち出した消費税増税に、多くの国民が反対しております。長引く景気低迷や雇用不安、所得の減少などで生活苦が広がり、これ以上の消費税増税に耐えられないという声が庶民の切実な声であります。
以下、具体的にお聞きします。
第一は、選挙公約との関係です。
2009年の総選挙で民主党が掲げたマニフェスト、政権構想五原則、五策及びマニフェスト政策各論55項目、これらのどこを探しても、消費税を引き上げるという公約もありませんし、消費税増税法案を提出するという方針もありませんでした。そればかりか、民主党は、選挙期間中、消費税は4年間引き上げないと繰り返し発言していたのであります。ところが、民主党が政権について1年以上経過してから、突然、消費税増税法案を提案すると言い始めたのであります。
生活第一の公約を投げ捨て、法案の成立を図ろうとするのは、明らかに国民に対する裏切り行為ではありませんか。答弁を求めます。
連立を組んでいる国民新党はどうか。マニフェストに、消費税は上げないとはっきり書いていたのであります。ところが、自見大臣は、消費税増税法案の閣議決定に署名し、公約を破りました。
国民にどう説明するのか、答弁を求めます。
第二は、消費税はもともと最悪の欠陥税制だという点であります。
その一つは、逆進性の問題です。
消費税は、原則として全ての消費に課税され、食料品などにも例外なく課税されます。そのため、低所得ほど負担率が高くなる不公平な税制であります。これは、生活費に課税しないという税制の原則を真っ向から否定する税制だと言わなければなりません。
野田内閣は、逆進性対策として、給付つき税額控除や軽減税率の導入を検討しているようですが、1年以上検討しても何も決めることができないのは、逆進性を克服する有効な手段が見当たらないことを示しているのではありませんか。
仮にこれらの対策を実行するにも、大規模な財源が必要となります。それはどこから捻出するんでしょうか。その財源を確保するため、さらに消費税率を引き上げるのでしょうか。お答えください。
二つ目は、消費税が転嫁できないという問題です。
消費税は、最終消費者に負担を求めていますが、事業者に納税義務が課されております。そのため、転嫁できなければ、事業者がみずから身銭を切って負担せざるを得ません。
政府が依頼して行った中小企業団体のアンケート調査では、売り上げの低い中小企業ほど消費税を転嫁できない実態を浮き彫りにしております。売上高3千万以下で、7割以上の事業者が、消費税の転嫁が困難になると回答しているんです。初めのうちは貯蓄を取り崩して消費税を納税するけれども、その資金がなくなれば消費税を滞納せざるを得ず、最後には廃業に追い込まれる、これが実態であります。
消費税導入当時も、独禁法などのガイドラインや監視体制の強化に取り組むと言われました。しかし、何も解決しておりません。
野田総理は、安心して消費税を払っていただく仕組みをつくると言いますが、安心どころか、不安は募る一方であります。実際に、国民の所得と消費は低下し、消費税を転嫁できない事業者はますますふえ続けているではありませんか。
その影響は、地方の公共交通機関にも及んでおります。国土交通省の資料によれば、消費税増税分を料金に上乗せすれば、乗り合いバスやタクシーなどで乗客が減少し、経営に重大な影響があるとの調査結果が出ているのであります。
地域でただ一つの足となっている公共交通機関が廃止に追い込まれるなら、地域社会が存続の危機に直面するのであります。一体、どうするつもりでしょうか。
第三に、消費税の大増税が日本経済を重大な危機に突き落とすという問題です。
消費税10%への大増税で、新たな国民負担が13兆円を超えます。その上、政府は、老齢年金、障害者年金の給付削減などを皮切りに、年金の支給開始を68歳、70歳に先延ばしすることも検討しております。また、医療費の窓口負担をふやしたり、保育への公的責任を放棄する新システムを導入するなど、社会保障のあらゆる分野で、高齢者にも、現役世代にも、子供にも、負担増と給付削減という連続改悪のオンパレードであります。
消費税増税と年金削減などを含めると年間16兆円、さらに、既に決められた制度改悪による年金、医療などの保険料引き上げによる負担増を合わせると、年間、実に20兆円もの大負担増になるのであります。冷え込んだ家計からこれだけ大規模に購買力を奪うのですから、1997年の9兆円負担増と比べても、はるかに大きな衝撃を国民生活と日本経済に及ぼすことは明らかではありませんか。
政府は、消費の落ち込みは一時的ですぐに回復すると言いますけれども、しかし、増税と負担増によって所得と消費を恒常的に奪う事実を、なぜ無視するのでしょうか。民間の研究機関も、駆け込み需要と反動減だけではなく、恒常的な所得の減少を見るべきだと指摘しているのであります。
消費が冷え込めば、税収全体も落ち込みます。97年に消費税率が5%に引き上げられたときに、景気の冷え込みによって、法人税収や所得税収が大きく落ち込みました。国と地方の税収総額は、1996年の90兆円から、2010年の76兆円へと、14兆円も減ったのであります。
野田総理、あなたは、2005年2月の衆議院財務金融委員会でこう述べました。「一挙に増税路線に政府がシフトした後の惨たんたる日本の経済の状況を私も肌をもって感じた」と。そう言いながら、なぜ同じ過ちを繰り返すのでしょうか。
消費税増税が引き起こす問題は、枚挙にいとまがありません。これらの問題を放置し、対策もとらず、ただただ増税法案成立に邁進する。こんなことは、政府のすべきことではありません。法案は直ちに撤回すべきであります。
その一方で、野田内閣は、法人税を、国、地方合わせて1兆4千億円も減税するというのであります。今、中小企業の7割が赤字ですから、その法人税減税の大部分は大企業向けとなります。しかし、大企業に減税しても、内部留保がふえるだけで、内需拡大につながらないことは明らかです。
日本共産党は、社会保障充実と財政危機打開の提言を発表しました。無駄遣いを聖域なく一掃する、その上で富裕層と大企業に応分の負担を求める、これこそが問題解決への道であります。
政府も財界も、日本の法人税率は高いと言いますけれども、大企業の実際の法人税負担率は、表面税率40%を大幅に下回っており、上位300社の平均をとっても33%程度にすぎません。中には、わずか12%、13%という低い負担率の大企業もあるのであります。それは、大企業にしか使えない優遇税制の仕組みがあるからであります。この際、研究開発減税や連結納税制度など、大企業向けの優遇税制を見直すべきであります。
政治の姿勢を変えれば、消費税に頼らなくても、社会保障拡充と財政再建への道は開かれるのであります。このことを強く強調して、質問を終わります。(拍手)
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 共産党佐々木憲昭議員の御質問にお答えをいたします。
まず、選挙公約と消費税についてのお尋ねがございました。
民主党は、総選挙の際に、今回の任期中に消費税引き上げはしない、税率引き上げを実施する際には国民に信を問いますと主張しました。今般の提案が、この約束自体に反するものではないとしても、待ったなしの改革の必要性について、国民の皆様の御理解を十分にいただいていない点については大いに反省し、今後乗り越えるべく全力を挙げたいと思います。
社会保障の機能強化やその財源の確保、欧州の金融危機などを鑑みるとき、社会保障と税の一体改革は、与野党ともに、もはや逃げられない課題であります。国民の皆様にも十分に説明を尽くし、理解を得る中で、法案の成立を何としても今国会において実現したいと考えております。
そして、内閣の使命、やるべきことをなし遂げた後には、しかるべき適切な時期に、民主党の政策判断の是非について民意を問いたいと考えております。
次に、低所得者対策についてのお尋ねがございました。
所得の低い方々への対応については、給付つき税額控除等の施策を導入、その実現までの間の簡素な給付措置の実施という方針を決定しております。
その具体的な内容は、今回の改革に盛り込まれた他の社会保障施策などを踏まえ検討していく必要があることから、今後、与野党の協議を踏まえ決定していくこととしております。
これらの措置に要する財源については、施策の内容の具体化を行う過程で、財政運営戦略等を踏まえ検討してまいります。
次は、中小企業の転嫁対策、公共交通への影響についてのお尋ねがございました。
中小企業の方々の転嫁対策については、先月、内閣に検討本部を設置したところであり、今後、事業者の方々の意見を把握した上で課題の整理等を行い、消費税率の8%への引き上げ時に先立って、速やかに総合的な対策を講ずることとしております。
与党のワーキングチームが実施した業界団体からのヒアリングにおいては、例えば、消費税は転嫁を通じ最終的に消費者に負担していただく税であることを国民に理解していただくよう強く発信すべき、中小事業者が大規模事業者の優越的地位の濫用を告発することは困難であることを踏まえ、実効性のある転嫁の仕組みや執行体制の強化を検討すべきといった意見があったと聞いており、今後、与党のワーキングチームとも緊密に連携しつつ、事業者の方々の実態を踏まえた方策について検討を進めてまいります。
公共交通への影響については、価格転嫁についてどのような問題があるのかなど、交通事業者の実態を十分に把握し、関係行政機関で緊密な連携をとりつつ、徹底した対策を講じてまいります。
社会保障と税の一体改革による負担増の経済や家計への影響についてのお尋ねがございました。
人口構造の急速な高齢化、社会経済状況の変化、欧州の政府債務問題に見られるグローバルな市場の動向を踏まえれば、社会保障の充実、安定化を図ることは、先送りできない課題であります。また、一体改革により、社会保障の安定財源を確保し、財政健全化を進めることは、将来への不安を取り除き、人々が安心して消費や経済活動を行う基礎を築くものと考えております。
さらに、今回の改革において、消費税収は、現行分の地方消費税を除いて全額を社会保障財源化し、国民に還元するとともに、低所得者への年金加算や保険料の軽減など、きめ細かな低所得者対策を実施していくこととしています。
加えて、デフレ脱却や経済活性化に向けた取り組みは重要であると考えており、これらと一体改革は同時に進めていくこととしています。
なお、1997年の景気後退については、同年7月のアジア通貨危機、11月の金融システムの不安定化という他の要因によるものも大きいと考えております。
法案を撤回すべきではないかというお尋ねがございました。
消費税率の引き上げに伴う、いわゆる逆進性対策や転嫁対策など御指摘の課題については、先ほどお答えしたとおり、さまざまな取り組みを行うこととしており、問題を放置しているとの御批判は当たらないものと考えております。
先ほど申し上げたとおり、一体改革は先送りすることのできない与野党共通の課題であり、責任ある政権党のなすべきことは、法案を撤回することではなく、この困難な課題から逃げることなく、改革を実現すべく法案の成立を図ることであります。
残余の質問については、関係大臣が答弁をいたします。(拍手)
○金融担当大臣(自見庄三郎君) 共産党の佐々木憲昭議員からの御質問にお答えをさせていただきます。
国民新党のマニフェストと消費税との関係いかに、こういう御質問でございました。
さきの3月30日の閣議において消費税法等の改正法案等に署名をいたしましたが、これは、3月29日に開催されました我が国民新党の議員総会において、所属議員八人のうち六人が参加をしたわけでございますが、出席者六人全員の賛成をもって可決されたものでございまして、国民新党の当時副代表として、その決定を踏まえたものでございます。
国民新党では、党結党の精神である、一丁目一番地である郵政民営化の見直しについて、政権を担う連立与党の一員として、最後まで責任を持って取り組んでいくことがより重要であるというふうに判断をしたわけでございます。
今回御審議をしていただく法案では、消費税率を、国、地方合わせて、2014年4月には8%、2015年10月には10%に引き上げる内容となっており、当該選挙において負託された政権担当期間中においては、これは御存じのように2009年9月から2013年8月でございますが、税率の引き上げは行わないものでありまして、したがって、消費税を引き上げないとした国民新党のマニフェストには違反をしていないというふうに考えております。
以上でございます。(拍手)