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金融(銀行・保険・証券)

2011年08月03日 第177回 通常国会 財務金融・経済産業連合審査会 【628】 - 質問

急激な円高の要因 投機資金の規制強化を

 2011年8月3日おこなわれた財務金融委員会・経済産業委員会連合審査会で、佐々木憲昭議員は、最近の急激な円高の要因に投機資金の動きがあることを指摘し、国際的な規制の強化を求めました。

 まず、急激な円高を口実に、輸出大企業による雇用削減や下請け単価たたきなどが進められ、国民の暮らしに深刻な影響を与えかねないと述べ、政府に対応を求めました。
 海江田万里経済産業大臣は「そうならないように対応したい」と答えました。
 その上で佐々木議員は、円高の原因について「実需をはるかに超える規模の投機資金が為替市場に流れ込んで影響を及ぼしている」と指摘しました。
 野田佳彦財務大臣は、世界の1日当たりの為替取引は5.1兆ドルで貿易総額0.04兆ドルの100倍以上に膨らんでいる事実を認めました。
 日本銀行の白川方明総裁も「ファンドなどの資本取引のウエートが高い」と述べました。
 佐々木議員は、投機に対する規制が必要と強調するとともに、米国で年内にも金融機関に識別番号を付けて取引内容の報告を義務付けるなどの規制を導入しようとしていることを紹介し、規制強化を求めました。
 自見庄三郎金融担当大臣は「投機資金の民主的コントロールは必要。国際的な(規制の)流れにしっかり参加していきたい」と答えました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 これまでの質問との重複を避けるようにして質問をしたいと思います。
 まず、海江田大臣にお聞きをしますけれども、これだけ急激な円高が進んでいきますと、輸出関連の大手企業を中心に、リストラですとかコストカットというようなことが激しく進む可能性があります。大企業としては利益が崩れるのを抑えることに役に立つかもしれないけれども、しかし、他方で、その結果、下請中小企業に対して非常に大きな負担がかかる。あるいは、雇用調整を激しく行うということになりますと、失業不安が広がる。その結果、内需の約6割近くを占める家計消費というものが冷え込んでいく。つまり、円高による大手企業の対応の行動が、結果として内需を冷やし、デフレのスパイラルを加速する、そういう要因にもなりかねない。
 したがいまして、まず緊急の対策として考えなければならないのは、過度な下請単価の買いたたきとか雇用に対する調整、こういうものに対して、そうさせないような対応ということが必要ではないか。つまり、大企業というのは、統計を見ますと、資本金10億円以上の規模で、もう既に内部留保が250兆円を超えるようなそういう状況なんですから、体力は十分にある。したがって、いきなり弱いところにしわ寄せをすることは避けるべきであるというふうに思いますが、どのようにお考えでしょうか。
○海江田経済産業大臣 佐々木委員にお答えをいたします。
 確かに大企業も、当初計画をしておりました、例えばドルのベースで採算ラインがありますから、大体80円台ぐらいでやっていますから、今回のような70円台、77円、76円ということは当然採算割れでございます。そういうケースが出てきたとき、よく海外移転ということが言われます。もちろん海外移転もございます。
 しかし、その前に、今委員が御指摘のありましたような、国内のコストをどうやって下げるかというところでは、やはりそういった下請に対するしわ寄せでありますとか、あるいは働く人たちに対するしわ寄せですとか、そういうものが来るということは十分可能性がありますので、私どもとしましても、そういうことのないようしっかりと見守っていきたい、こういう認識でおります。
○佐々木(憲)委員 見守るだけではなくて、対応をきちっとやっていただきたいというふうに思うわけであります。
 次に、各国の通貨の力を比較する場合、さまざまな方法があると思うんですが、その一つに購買力平価というものがあります。
 これはどのような特徴があるのか、内閣府の説明を求めたいと思います。
○鈴木政府参考人(内閣府大臣官房審議官) お答え申し上げます。
 購買力平価とは、それぞれの国の通貨、例えば日本円、アメリカ・ドル、それぞれの購買力が等しくなるように計算した通貨の換算比率ということであります。例えば、一商品だけ例をとりますと、同じ性能の車をアメリカで購入すると1万ドル、日本で購入すると100万円としますと、円とドルの購買力が等しくなるような換算比率は、1ドルイコール100円ということになります。
○佐々木(憲)委員 ところが、実際に、実勢レートというのは、購買力平価と離れて非常に激しく変動しているわけであります。
 今言われたように、購買力平価の比較の仕方というのは、それぞれの財貨・サービスの購買力によって通貨の価値を比較するものでありますから、投機的な動きとかあるいは国際収支の変化とか、そういう要因を除いて比較をするというわけでありまして、私は、一番のベースになる比較の方法だというふうに考えております。
 現時点で、購買力平価で見た対ドルレートというものはどのぐらいの水準でしょうか。
○鈴木政府参考人(内閣府大臣官房審議官) お答え申し上げます。
 OECDによれば、購買力平価で見た円の対ドルレートは、直近値である2010年で1ドル111円40銭となっております。
○佐々木(憲)委員 それが現在77円、76円というような状況でありますから、非常に大きく離れているわけであります。
 なぜそういう状況が引き起こされるのかということですけれども、その要因として非常に大きいのは、やはり、国際的な投機的なマネーが非常に膨らんで、瞬時に移動して為替の投機に向かう、これが要因だと思うんですね。
 その大きさを見るために数字を確認したいんですけれども、財務大臣、世界の貿易総額と為替取引の総額というのはどのぐらいの落差があるんでしょうか。
○野田財務大臣 まず、IMFの統計によりますと、2010年の世界の輸出総額は15・0兆ドルです。傾向を見ますと、毎年少しずつ上がってきて、リーマン・ショックの後で落ち込んでいますが、傾向としては少しずつ上がってきているということです。これは年間で15兆ドルです。
 一方で、もう一つはBISの統計なんですけれども、2010年4月時点での世界の為替取引総額は1日当たりで5・1兆ドル、これは6年前に比べて約2倍ということでございます。
○佐々木(憲)委員 そうすると、年にするとどのぐらいの、何倍ぐらいになるんでしょうか。
○野田財務大臣 逆の計算でいいでしょうか。
 1日でいくと、世界の輸出総額は、15兆ドルを365で割ると0・04兆です。一方で、1日当たりの為替取引総額が5・1兆ですから、約100倍でしょうか。
○佐々木(憲)委員 つまり、実需に比べると為替取引というのは百倍の規模で、これは24時間、全世界をその資金が動き回る形で為替取引が行われているということになるわけで、これは非常に大きな圧力になるわけです。円に対して円買いの流れが強まりますと、一気にだあっと世界じゅうからそういう動きが引き起こされていく。したがって、現在の急激な円高の要因として、これは非常に重大な影響を引き起こしているわけだと思っております。
 そこで、もう時間もありませんから、日銀総裁にお聞きします。
 為替相場を実際に動かしている主体は何か。一般的に、過剰資金が世界じゅう動き回るというのはわかりますけれども、これを実際に、特定の目標を、ターゲットを決めて、そこに買いをしかける、ドルを売る、こういうようなことを行っているものですね。報道によりますといろいろありますけれども、いろいろなファンドが動いているというような話もあります。
 日銀総裁としては、どのように認識されているでしょうか。
○白川参考人(日本銀行総裁) お答えいたします。
 外国為替市場には、金融機関、ファンド、事業会社、一般の個人それから公的部門など、さまざまな取引主体がグローバルに参加しております。先ほど野田大臣の御答弁にもございましたけれども、毎日膨大な規模の為替取引が行われております。その為替取引の背後にあるもとの取引は、もちろん、財・サービスに関する輸出入もございますけれども、それ以上に、資本取引、あるいは既に行われた取引に伴う為替のリスクをヘッジする、今積極的にそのリスクをとっていくというか、今自分が抱えているリスクを消してしまうためのヘッジの取引、こうした取引が行われております。
 先生の御質問は、だれが買っているのかということでございます。
 こういうお答えになるのは大変恐縮なのでございますけれども、私自身は、金融市場の毎日の動きを、これは金融機関、証券会社それから事業会社を通じて詳細にヒアリングは行っておりますけれども、しかし、これは日本だけではなくて、世界じゅうのマーケットがございます。したがって、だれが買っているのかというふうに、なかなか特定はできません。
 ただ、先生の御質問の中で、ファンドという話がございました。これは必ずしも、ファンドというのはさまざまな意味で使われますので、要は、実需の取引だけではなくて、相場観に基づいてお金を動かす人というふうにとらえますと、今はその資本取引のウエートが高いということでございます。
○佐々木(憲)委員 報道によりますと、リーマン・ショックのような複雑な取引を引き金にして金融危機を引き起こしたような、そういう状況があります。とりわけヘッジファンドと言われるものが、一時はリーマン・ショックでその取引高が減りましたけれども、最近はまたもとに復活をした。それが非常に大きな猛威を振るっているということも言われているわけであります。
 そこで、こういう取引に対して何らかの規制が必要だ、つまり、ルールに基づく規制が必要だと思うんです。そのために、今世界じゅうの金融機関、政府が、共同の行動をとろうということで協議が行われていると思います。
 アメリカの財務省で、こういう提案があるそうですけれども、年内にも、金融機関に識別番号をつけた上で取引内容を報告する義務づけを行う、そういう規制を導入する方針で、日本やヨーロッパにも採用を打診している、こういう報道があります。これは6月中の報道でした。
 実際に、こういう動きがあるのかどうか。そして、日本政府も、私は、これに対応してきちっとしたことをやらないと、為替投機で円の乱高下というものが起こりやすくなるので、一定のルールが必要であるというふうに思います。
 証券監督者国際機構、これもデリバティブ取引について同様の規制を検討しているということも言われておりますけれども、こういう枠組みをつくる動きが実際にどういうものがあるのか、また日本政府としてどう対応するのか、自見大臣にお聞きをしたいと思います。
○自見金融担当大臣 佐々木憲昭議員にお答えをいたします。
 自由主義社会において、私は、投資というものは必要だと思っておりますけれども、やはり行き過ぎた投機というのは、これは非常に弊害もあるわけでございます。しかし、実体経済においては、やはり投資と投機というのはなかなか区別が難しいところもある、こう思いますけれども、私は、政治家として、投機資金をいかに民主的にコントロールするかということは、21世紀の人類の重要な課題だと思っております。
 そういったことに立てば、先般の金融危機後の国際的な金融規制改革の中で、金融取引の実態把握強化の重要性が認識されてきたところでございます。その流れの中で、システミックリスクの測定、監視の支援等の観点から、今先生が言われたように、金融機関などに取引主体ごとに世界共通の認識番号をつける仕組み、これはLEIと申しまして、リーガル・エンティティー・アイデンティファイヤーと言うようでございますが、についての世界的な検討が実は進められているところでございます。
 具体的には、アメリカの財務省においてLEIの導入に向けた検討が進められているほか、国際的な業界団体も具体的な提案を公表していると承知しておりまして、今先生御指摘がございましたように、証券監督者国際機構、IOSCOや、金融安定理事会、FSB等においても議論が行われているところでございます。
 当庁といたしましても、日本国としましても、LEIの目的、対象範囲、情報管理、セキュリティーの課題などに留意しつつ、国際的なそういった大きな流れがございますから、検討課題にしっかり参加をしてまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。

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