2011年07月26日 第177回 通常国会 財務金融委員会 【623】 - 質問
子ども手当見直し問題 支援・節約にならないと批判
2011年7月26日、財務金融委員会が開かれ、佐々木憲昭議員が質問しました。
佐々木議員は、民主党が自民・公明との協議で、「子ども手当」を見直そうとしている問題について、子育て支援にも予算の節約にもならないと、ただしました。
佐々木議員は、子ども手当について、日本共産党は保育所の増説など現物給付とともに一定の現金給付は必要だとの立場から賛成し、9月までの延長にも賛成したと述べました。
そのうえで、所得制限を導入することは、社会全体で子育てを応援する理念を否定するものだと指摘しました。
五十嵐文彦財務副大臣は、「民主党の子ども手当は、控除から手当へという制度をつくる考え方を背景にしている」と答えました。
佐々木議員は、所得制限を導入するための所得の把握には膨大な手間と費用がかかると指摘しました。
小林正夫厚生労働政務官は、所得制限による予算削減額が100億円に過ぎないのに、システム改修費用は100億円弱にのぼることを認めました。
佐々木議員は、人件費を加えると支出の方が大きくなる。こんな意味のないことはやめるべきだと強調しました。
また、3党が検討している子ども手当の減額についても、子ども手当を導入するとき、子育て世帯への増税を合わせて実施したため、支給を減らせば負担増になってしまうと指摘しました。
小林政務官は「夫婦と子ども一人の場合、年収500〜800万円の世帯では手取りが減少する」と認めました。
佐々木議員は、年少扶養控除の廃止によって所得税が増え、それが保育料の引き上げにも連動する事実に対し何ら対策がとられていないことをあげ、「差し引き負担増だけがかぶさってくる。民主党は何のために政権交代をしたのか。自民・公明との協議で、根本がどこかに行ってしまったのではないか」と厳しく批判しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
今も激しいやりとりがありましたけれども、公債特例法案を通すかどうかをめぐって歳出面の見直しというのが問題になっており、民主党、自民党、公明党、この三党で協議が行われております。我々は報道で知るのみでございまして、一体何が行われているのか、何が問題なのか、この点は国会の中で明確に説明をしていただきたいと常に思っております。
きょうは、その中心であります子ども手当について、どういう議論が行われ、何が問題なのか、これを説明していただきたいと思っております。
そこで、野田大臣にお聞きしますけれども、基本的なことですけれども、民主党と自民、公明の間の基本的な対立点。マニフェストの目玉であります子ども手当を維持したいというのが民主党だと思うんですが、自民党と公明党は、児童手当に戻すべきだ、こう主張している。本質的にはそういう対立なのか。ここを確認しておきたいと思います。
○野田財務大臣 きょう、厚労大臣政務官が来ていらっしゃいますので、詳しくは、むしろそちらから御説明いただけるかと思いますが、私が承知している範囲ですと、子ども手当の10月以降の制度について、7月11日から実務者の協議が始まり、先週末、我が党の城島議員から新たな案が提示をされたと承知をしています。協議では、主に、支給額、所得制限、手当の名称などについて論点になっているというふうに聞いています。
○佐々木(憲)委員 具体的な議論の中身はそうでしょう。しかし、その考え方の基本を、どういう対立があるのかということを聞いているわけです。
○小林厚生労働大臣政務官 今大臣が答弁した、大きく言いますと、支給額、所得制限、手当の名称などについて論点となっていると聞いております。
支給額などについてもそれぞれ御主張がありますので、ここで一概に、こういうところが相違点があるということをちょっとまとめ切れておりませんので、支給額、所得制限、手当の名称などについて論点がある、こういうことだけ御報告をしておきます。
○佐々木(憲)委員 私は、そういうことが議論になる理由、背景にどういう考え方があるのかというのを聞いているわけですよ。
副大臣、何か。
○五十嵐財務副大臣 民主党の子ども手当は、控除から手当へという考え方、それから、全世代型の社会保障制度をつくりたいという考え方を後ろに持っておりまして、その考え方を認めるかどうかということが一つの違いかなと思います。
○佐々木(憲)委員 大分、私の質問に少し答弁が近づいてきたんですけれども、もうちょっと具体的に、子ども手当と児童手当の本質的な違い、これをお答えいただきたいと思います。
○小林厚生労働大臣政務官 子ども手当は、次代の社会を担う子供一人一人の育ちを社会全体で応援する観点から支給するものでございます。
一方で、児童手当は、次代の社会を担う児童の健全育成とともに、家庭における生活の安定に寄与することも目的としております。このため、所得制限があるなど子ども手当と異なる面もある、こういう状況でございます。
しかしながら、子ども手当と児童手当は、子供の育ちを支援するという面では共通する面があるほか、いずれの制度も家庭に対する現金給付施策であります。また、児童手当のこれまでの蓄積を基礎としながら子ども手当制度を構築してきた、こういう背景もございます。
○佐々木(憲)委員 今、本質的な違いと共通性について説明がありました。
違いは、一人一人の子供を社会全体で育てるというのが子ども手当の理念であり、児童手当というのは、家庭の生活の安定、そういう意味では所得制限があって、いわば低所得者の子供さんを支える家庭に対する支援、そういう性格を持っている、こういうことがわかりました。
さて、今回議論になっておりますのは、所得制限をかけるのかかけないのか、あるいは、かけるとしたらどの程度なのか、これが議論になっているというふうに見受けられます。そこで、所得制限はかけるべきではないというのが与党の考えで、かけるべきだ、これが自民、公明の考えだ、簡単に言うとそういう理解でよろしいでしょうか。
○小林厚生労働大臣政務官 これは、今まさに政党間で協議中で、そういうお話も他党から出ている、このように承知をしております。
○佐々木(憲)委員 そういう二つの考え方が出ているということであります。
ここで我が党の考え方を述べさせていただきますと、私どもは、子供の育成の環境をしっかり整える、つまり、保育所の増設など現物給付をきちんと行うということをずっと主張してまいりました。つまり、それが土台になる部分ですね。その上で現金給付を行う。こういうのが両方相まって車の両輪として役割を発揮する、そういうものだというふうに思ってまいりました。
したがって、民主党の提案をしております、政府の提案しております子ども手当については、そういう立場から昨年については賛成をいたしました。そして、ことし、9月までの延長についても賛成をしました。我々の考えとしては、これを恒常的にこの水準で固定化するといいますか、将来これでいくべきだと思っております。
ところが、民主党は、この三党協議で所得制限について受け入れた、つまり、社会全体で子育てを応援する、そういう理念からいうと、先ほどの説明ですと、所得制限を入れるというのはその理念に反すると思うんですが、いかがでしょうか。
○小林厚生労働大臣政務官 そのことも踏まえて、現在政党間で協議中、このように承知をしております。
○佐々木(憲)委員 いや、踏まえてというんじゃなくて、所得制限を入れると。つまり、先ほど言いましたように、児童手当の特徴は所得制限を入れることですよね。そして、子ども手当の特徴は、社会全体で一人一人の子供をすべて育てていく、こういう考え方ですから、所得制限を入れるというのは子ども手当の考えにはないわけであります。
したがって、所得制限を入れるというのは、子ども手当の理念を否定することになるんじゃないかということなんです。
○小林厚生労働大臣政務官 今回の提案は、所得制限超の者について減額されるけれども、手当は支給されることになることから、社会全体で子供一人一人の育ちを支援するという理念に反するという御指摘は当たらないものと考えております。
○佐々木(憲)委員 つまり、今回、所得制限を入れたけれども、しかし、一定水準以上に対しても給付を行うのだから、全体に給付をすることに変わりがない。したがって、子ども手当の理念は維持されている、これが民主党の立場だということなんですね。
そうすると、最初、1800万円、これは7月15日の提案と聞いております。19日になりますと1200万円、22日になると1千万円と、何かバナナのたたき売りみたいにどんどん下がっていって、こういう話になっているわけです。
そこで、この年収1800万円、1200万円、1千万円で区切ると、それぞれ何%の世帯がこの対象から外れるのか、数字を教えていただきたい。
○小林厚生労働大臣政務官 それぞれの所得制限額ごとの支給率については、賃金構造基本統計調査、この調査における20から49歳までの被用者の所得分布をもとに、一定の仮定を置いて粗く推計した、こういうことでございます。
その結果、年収1200万円の支給率は約96%。次に、手取り1千万円については収入を1300万円強と試算しており、その場合の支給率は約97から98%。そして、所得1800万円についてですけれども、所得を1800万円以上で区分するデータがないことから支給率は算定できない、こういう状況です。
しかし、データがある所得1500万円の場合を見てみると、支給率が99%を超える、こういうことになりますので、1800万円ということになれば、少なくとも99%は超えるもの、このように判断をしております。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、1千万円ということになりますと、4%が対象にならない。しかし、4%に対しても9千円の支給を行うんだ、こういう発想ですね。
そうすると、幾ら予算として削減されるのか。数字はどうなりますか。
○小林厚生労働大臣政務官 今回の民主党案の総支給額は、城島議員の資料にもあるとおり、約2・3兆円と試算をしております。これに基づけば、今回の提案において、所得制限超の方に対して減額して支給することによる節約額は、約100億円となると判断をしております。
○佐々木(憲)委員 そうすると、その100億円を節約する、そのためには所得制限を、つまり、所得の把握をして所得制限をしなければなりませんね。それは、膨大な手間と費用がかかるんだと思うんですが、費用は幾らぐらいかかるんでしょうか。
○小林厚生労働大臣政務官 子ども手当に所得制限を設ける場合に、市町村においてシステムの改修が必要となるとともに、所得の判定、所得制限を超える者への棄却通知の発出、転出者への所得証明書の発行などの事務が復活するなどの負担が生じることになります。このため、つなぎ法の期限が終わる9月まで時間もないことから、与野党間で速やかに論議が進むことを期待しているということでございます。
そして、地方の事務コストを含めた具体的なコストの総額についてですけれども、これは把握ができませんけれども、システム改修について言えば、子ども手当創設時にかかった改修費が約100億円であり、これよりも少ない額になるものと考えております。
○佐々木(憲)委員 システムの改修費だけで100億円、節約するのが100億円。何のためにやっているんですか。こんな意味のない、しかも、費用の方がかかるんじゃないんですか。何でこれで、予算が削減されて、ほかの予算に回せるというふうになるんでしょうか。
今のはシステムだけですね。人件費はどうなるんですか。
○小林厚生労働大臣政務官 それぞれの市町村との関係もございますので、人件費そのものなどについて、具体的に把握はできておりません。
先ほどのシステムについてですけれども、100億円かかるというお話じゃなくて、100億円以下で、そういう額になる、こう考えているということでとらえていただければありがたいと思います。
○佐々木(憲)委員 100億円以下にしても、ほかに人件費その他、私は相当費用がかかると思いますね。したがって、歳出の方がふえるんじゃありませんか、全体として見ますと。
こんな所得制限をやって、しかもごくわずかな節約しかできない、費用は膨大なものになる。だから、私はこんなことはやめた方がいいと思いますよ。子ども手当を継続する、これでいいじゃないですか。そういうようなきちっとした対応をしないと、何かずるずる協議をしているうちに、何をやっているのかわけがわからない、費用ばかりふえる、これは意味がないと思うんですね。
それから、三党協議で子ども手当の支給額が減らされるというふうになりますと、差し引き負担がふえる。つまり、手当を受け取る側が一定の増税になっていますよね、年少扶養控除をやめるとかいろいろありますから。そうなりますと、もともと子ども手当を導入するときに、増税とあわせて実施して、ぎりぎりだったわけです。一定金額の手当がなければ負担増になるので、ぎりぎりのところで、場合によっては飛び出るところがある。
今検討している案では、どの収入階層が幾らの負担になるんでしょうか。
○小林厚生労働大臣政務官 7月22日の城島議員の提案に基づけば、所得制限以下の世帯については、3歳未満は1・5万円、3歳から小学生の第一子、第二子は1万円、3歳から小学生の第三子は1・5万円、中学生は1万円が支給され、所得制限超の世帯に対しては9千円の手当が支給されることになり、すべての世帯で、児童手当制度の場合と比べて手当額は増額することになります。
一方で、扶養控除の見直しにより、所得税、住民税が増税となることから、所得制限を超える世帯や、児童手当を受給していた世帯のうち、例えば夫婦でお子さんが一人の世帯の場合に、年収500万から800万円程度の御家庭では、実質的に手取り額が減少することになります。
○佐々木(憲)委員 ともかく、こういう形で子ども手当をやめる方向にどんどん近づいていけばいくほど、増税だけがかぶさってくるわけですよ。だから、我々は最初から、その増税部分はやめなさい、給付だけでしっかり支えるべきだ、こういう主張をしているわけですけれども、今、三党協議の中でそれが何かおかしな方向に行って、結局、負担がふえる、そういう家庭が生まれる、9千円支給すると言うけれども。しかし、全体の支給額が減れば、1万3千円から今度はもっと減っていく。こういうふうになっていきますと、増税だけがかぶさってくる。何でそれが子育て支援になるんですか、こういうことになってしまうわけです。
それからもう一点は、地方の保育料の引き上げに連動するということがあるんです。
控除をやめますと、増税になりますね。地方自治体が住民税のそれを基準にしますので、どうしても保育料が上がる。それに対しては何らかの対応をするんだ、こういう答弁をこの当委員会でやっておられましたが、どういう対応をされたんでしょうか。
○小林厚生労働大臣政務官 厚労省の関係でいえば、保育料など利用者負担等の算定に当たって所得税の税額等を活用している制度については、昨年10月、税制調査会のもとの控除廃止の影響に係るPT、ここで、できる限り影響を生じさせない方針が示されたところでございます。
この方針に基づき、各制度ごとに検討を進めることになっておって、引き続き具体的方法の検討を進めて、各制度の実施主体である自治体等と十分に協議しながら適切に対応してまいりたい、このように進めております。
○佐々木(憲)委員 今、三党で協議をしている中身は、結局は、民主党が政権交代のときに掲げたマニフェストを、これを全部放棄しなさい、自民党の言うとおりにしなさい、こういうことを言われて、ずるずるずるずるとそちらに近づいているわけですよ。何のために政権交代をしたのかという根本がどこかに行ってしまっている。(拍手)
民主党の中から拍手が起こったというのは珍しいことでありますけれども、こういう状況を本当によく考える必要がありますよ。公債特例というのはもちろん大事だと思いますけれども、一体何を目指してあなた方は政権をとったのか、原理をもう一度思い起こす必要がありますし、我々は、国民のためになることを放棄して、国民のためにならないことをどんどんやるということについては、厳しく批判をしていかなければならぬ、これからもそういう立場でやりたいと思っております。
以上です。