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財政(予算・公共事業), 金融(銀行・保険・証券)

2011年07月15日 第177回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【621】 - 質問

赤字国債発行のための公債特例法案など 参考人質疑

 2011年7月15日、財務金融委員会は、赤字国債発行のための公債特例法案などに関し参考人質疑を行いました。
 クレディスイス証券の市川眞一氏、一橋大学の渡辺智之教授、専修大学の野口旭教授、大和総研の鈴木文彦氏が、参考人としての意見陳述を行い質疑に入りました。

 佐々木憲昭議員は、金融緩和政策によって日銀からは大量の資金が出ているのに、その資金が金融機関や大企業にとどまり中小企業や家計に流れていない問題を質問しました。

 クレディスイス証券の市川眞一氏は「金融機関は貸し出しの対象がなく、国債を買っている。国内での設備投資が伸びるような環境を整えることが大事」と述べました。

 大和総研の鈴木文彦氏は国の国債依存にもふれ、「公共部門に資金が流れる仕組みが必要ではないか」と述べました。

 佐々木議員は「内需や家計の引き上げで、経済の好循環をつくっていくことがカギだ。そのために賃上げや雇用の拡大、社会保障の充実で国民の安心を広げることが求められる」と主張しました。

議事録

○石田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、平成23年度における公債の発行の特例に関する法律案及び経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 本日は、両案審査のため、参考人として、クレディ・スイス証券株式会社チーフ・マーケット・ストラテジスト市川眞一君、一橋大学国際・公共政策大学院教授渡辺智之君、専修大学経済学部教授野口旭君、株式会社大和総研金融・公共コンサルティング部副部長鈴木文彦君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ、またお暑い中、本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からそれぞれ15分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言いただきますようお願いをいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、まず市川参考人にお願いいたします。
○市川参考人(クレディ・スイス証券株式会社チーフ・マーケット・ストラテジスト) おはようございます。ただいま御紹介にあずかりましたクレディ・スイスの市川でございます。
 本日は、国権の最高機関たる国会でこうして見解を述べさせていただきますことを大変ありがたく思っております。よろしくお願いいたします。
 初めてこうして国会でお話をさせていただきますので、ほかの先生方がどのようなことをおっしゃるのかというのを聞いた後に、その様子を見ながらお話をしようかなと思っておりましたら、何とトップバッターを仰せつかりまして、流れを決定づける可能性がありますので、大変緊張いたしながら、お話をさせていただきたいと思います。
 私、この資料をつくっておりますので、こちらに沿って少しお話をさせていただこうかと思います。
 私は、マーケットにふだんかかわっている立場からきょうお話をさせていただくことになるかと思いますので、まず、お手元の資料の三ページ目をお開きいただきたいというふうに思います。
 今国会におきまして最重要課題の一つでありますのは、現時点においては特例国債発行法案であるということは間違いないところではないかと思っておりますが、大胆に申し上げますと、仮にこの特例国債発行法案の成立がおくれても、それをもってして、例えば一部に言われているような国債の大暴落、金利の上昇といったようなことが起こるということだとは、実は私は思っておりません。
 ここの三ページ目に、この20年ほどの日本を含むアメリカ、ドイツの金利水準をあらわしたグラフがございます。御案内のように、日本では、98年の4月3日のことですが、国際的格付機関であるムーディーズが、日本国債のアウトルック、見通しを安定的からネガティブに引き下げました。このときは実は大変なショックが起こりまして、国債市場が一時大幅に動揺するということがございました。その後、しかしながら、幾度にも及ぶ各社の格下げ、それから、その一方において国債の大量発行ということがありながらも、実は、これまで国債大暴落というのは、都度言われてまいりましたけれども、起こっていないわけであります。
 なぜ起こっていないかという背景を考えるのは実は非常に重要なことだと思っておりまして、次のページをごらんいただきます。これは、一言で言えば、不幸な均衡が起こっているということだと思います。
 次のページにありますのは、これは日銀資金循環勘定からとりました経済主要三主体、つまり政府、企業、家計の資金の過不足動向をごらんいただいたものです。
 通常のケースでは、まず、家計というのは貯蓄余剰主体でありますから、毎年毎年貯蓄という形で資金を余らせるということになるわけであります。その一方におきまして、企業というセクターは市場から資金をとる。それは株式の形であるのか社債の形であるのか銀行借り入れの形であるのか、資金を調達いたしまして、それを事業に投資することをなりわいとされているのが企業でありますから、普通は企業セクターというのは資金不足になるのが当然なわけでありまして、家計の貯蓄余剰に対して企業の資金不足がうまくバランスしたときに経済は非常に順調に成長するということが言われているわけであります。
 しかしながら、日本の場合、1999年以降、実は企業が資金余剰セクターであります。つまり、投資をせずに、むしろ借り入れを返済する、それからできるだけバランスシートを圧縮するということをやってきておりますので、当然のことながらデフレになるということでありまして、このデフレ圧力を抑止するために、実は、お金の流れの世界でいうと、政府という主体が赤字をつくって資金を年々、市場から調達をして、それによって需要をつくり出している。ここで何とか、このデフレ圧力の中で経済が辛うじてバランスをとっているというのがこれまでの日本経済の実態であります。
 ですから、この三主体の資金の需給動向というのを合計してみますと、2001年から2010年までの10年間で、企業は198兆円の資金余剰セクターです。家計は92兆円の資金余剰セクターです。合計いたしますと、約290兆円の資金余剰。これに対しまして、政府が283兆円の資金不足ということでありまして、合計をすると7兆円の資金余剰になっている。
 ですから、この構造が続く間は、例えば国が国債を発行したとしても、この構造が続いているとすれば、それによって十分に国債は消化をされるということになりますので、国債大暴落といったようなことは起こらないわけであります。
 ただ、先ほど申しましたように、これは非常に不幸な均衡でありまして、本来はやはり納税者たるべき企業及び家計が投資や消費をすることによって、それによって経済が成長していくということが望ましいわけでありまして、そういう意味からすれば、確かに国債の需給関係という点からいけば問題は足元で起こってはおりませんけれども、経済全般という点から見ると極めて不健全な状況にあるというのが日本の状態だと思っております。
 これを別の観点からごらんいただいたものが次のページにございますが、銀行の資産に占める公債、これは国債、財投債それから地方債を含めてですが、公債の保有残高をごらんいただいたものがございます。
 99年末、資産に占める公債保有残高は7・8%でございましたが、2011年5月、直近のデータを見ますと21・5%ということで、飛躍的に銀行の保有する国債がふえているという状況でございます。これが、先ほどごらんいただきましたように、家計が貯蓄をする、企業もお金を余らせる、それが銀行に滞留し、銀行は貸し出しにではなくてむしろ国債に投資をするという状況が続いているわけであります。
 次のページをごらんいただきます。
 これも銀行にとってはある種合理的なことでありまして、貸出金利が平均で1・8%、これに対して、人件費、物件費等を入れると、貸し出しをしても利ざやが0・6%しかありません。ところが、国債に投資をすれば1%。国債については、こういった人件費、物件費等が非常にコストが少ないものですから、さらに言えば、BIS規制、つまり国際決済銀行上の自己資本規制においても、貸し出しをすれば、これはリスクウエートを乗っけなきゃいけませんから、その分、当然ながら自己資本を充実させなきゃいけませんけれども、国債、ソブリンについてはリスクウエートゼロということになりますから、自己資本に与える影響がないということでありまして、銀行としても、企業部門の資金需要がないという状況の中で、自分の資産の中に国債のウエートをどんどんふやしていく、つまり消化ができているという状況になっているわけであります。
 次のページをごらんいただきます。
 これをストックベースで見てみると、ここにありますのは家計の金融資産の状況でありますけれども、よく言われることですが、日本には家計が1418兆円の貯蓄があるというふうに言われております。しかしながら、反対側に住宅ローン等308兆円の負債がございますので、ネットベースで見ると約1100兆円の金融資産がございます。これに対しまして、これは申し上げるまでもないことですが、今、現時点におきまして、国の債務が650兆円、地方の債務が200兆円、850兆円でありますから、今のところ、家計の純貯蓄とそれから国の、地方も入れた政府の債務というのは、貯蓄の方が250兆円ほど上回っているという状況にあります。
 問題は、この構造をいつまで続けられるかということなわけでありますけれども、一つの考え方としては、例えば年間37兆、40兆円という形で国債発行額を新規に積み上げてまいりますと、この250兆円に達するまでには6、7年、単純計算をすればそういうことになるわけです。
 しかしながら、仮にそうなったとしても、すぐに国債金利が上がるかどうか、これはわかりません。なぜならば、例えば海外から資金を調達できる。今、90%以上、日本国債については日本人が保有をしておりますけれども、外からどんどんお金が入ってくるんだということになれば、これは、別に家計の金融資産を食いつぶしたとしても、それだけでデフォルトするかどうか、国債利回りが急騰するかどうか、これはわかりません。わかりませんが、この不幸な均衡が続いてきている結果、だんだんと経済の不健全性が拡大をし、その中で、むしろこれまでは国内のことだけを心配していれば日本国債というものの信用を保てる状況にありましたけれども、そうでない、つまり、例えば外国人に大きな影響を受けざるを得ないような状況が来る可能性がある。それがもしかすると数年先に迫っているというのが今の日本の状況ではないかというふうに思っております。
 その意味で、やはり政策に対する信頼性というのは、これは非常に重要な面があるというふうに思っております。例えば、ここで特例国債発行法案が、仮に国会の中で御審議をいただいて、なかなかこれが決まらないということであったとしても、先ほど申しましたように、足元、構造的な問題というのがありますので、それによって国債は暴落しないんですね。むしろ、これまでも暴落してくれた方がより早く何か別のことが起こっていたのかもしれませんが、時間を稼ぐことはできるわけであります。
 しかしながら、やはり、生意気なことを申し上げれば、2009年の8月の総選挙で、国民は現与党に対して衆議院において過半数を与え、昨年の7月の参議院選挙においては野党に対して過半数を与えということでありますから、国民は与野党に対して今の政策の運営を負託いたしているわけであります。ここで、やはりこういった、特に震災が3月の11日に起こり、これに対する対応策を進めなければいけないような状況の中で、国会において、本来、特例国債を発行しなければいけないというのは、これはもう当然のことでありますから、それに対してなかなか与野党合意ができない状況という、この政治ないしは政策に対する不信感というものが、将来にわたって、より、この日本の国民金融資産の余裕がなくなってくる中で影響を与えてくる可能性があるということに、私は、本件に関する最大の懸念があるのではないかというふうに思っているところであります。
 あと、簡単に、残された時間で、財政について少し私見を述べさせていただきたいと思いますが、八ページ目をごらんいただきます。
 基幹税収をここに取り上げさせていただいております。1997年度、消費税が三パーから五パーになった後の基幹税収を見ておりますと、消費税は10兆円程度ということで、年々非常に安定した税収を得ておりますが、その一方におきまして、所得税それから法人税、これは非常に大きなぶれがございます。
 例えば法人税を見ておりますと、2006年度は14兆9千億円、これが、わずか3年後の2009年度には6兆4千億円ということでありますから、8兆6千億円もの減少をしております。
 そうした意味で、消費税が非常に安定的な財源であるということは間違いないところでありまして、これは、自民党の皆さんも先般の参議院選挙の際に消費税10%ということを挙げられましたし、加えて、今回の社会保障と税の一体改革の中で、2010年代央までに消費税を10%に引き上げるという方向が政府・与党からも示されました。これは、増税がいいとは思いませんが、ただ、社会保障費が伸びるような状況の中で、安定的に財源を獲得するという点では、私はやむを得ないことではないかというふうに思っております。むしろ遅過ぎたぐらいではないかと思っております。
 ただ、次のページをごらんいただきますが、消費税という極めて税収が安定しているものだけに焦点を当てるのではなく、この税収と名目GDPの関係というのを見ておりますと、やはり経済成長を名目ベースでしているときに税収が伸びる。つまり、法人税、所得税が伸びるということでありまして、この部分について強く光を当てていただきたいというふうに思うわけであります。
 先般の、社会保障と税の一体改革の中でも、六番目の項目の中に、デフレ脱却という項目を取り上げていただいておりました。やはり、ここできちっとデフレを脱却し、経済成長を名目的になし遂げることによって、所得税、法人税の自然増収ができてくるような、そういう状況をつくらない限り、健全な財政状況というのを望むことは極めて難しいというふうに考えるわけであります。マーケットの中でもやはり、そこが日本にできるのかどうかというところを非常に強く問う声が多いのではないかというふうに思っているところであります。
 非常に短い時間で、駆け足で御説明をさせていただきましたので、至らない点が多々あったかと思いますが、ほぼ時間と思いますので、ここで私の見解を述べさせていただくのを終了させていただきます。後ほど、御質問があれば、それに対してお答えする形で補足をさせていただければというふうに思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○石田委員長 ありがとうございました。
 次に、渡辺参考人にお願いいたします。
○渡辺参考人(一橋大学国際・公共政策大学院教授) 一橋大学の渡辺と申します。よろしくお願い申し上げます。
 実は、私も国会の参考人に呼ばれたのは初めてでございまして、ちょっと状況がよくわからないまま参りまして、ほかの参考人の方は皆さん資料を用意されているのに私だけないというので、少し心細く思っておるわけでございます。ちょっと横着ではございますが、先ほどの市川先生の後半の資料を、少し税制の話もありましたので、そこも一部参照させていただきながらお話しさせていただければと思います。どうも失礼いたします。
 今回、多分、私の役回りは、税制改正法案の方でございますね、経済社会の構造変化に対応した云々という法案について何かコメントすることかと思っておりました。それでよろしいのかどうかわかりませんが、とりあえずきょうは、まず最初に、法案の背景と申しますか大枠につきまして、私の理解しているところを簡単に述べさせていただきました後、その個々の内容につきまして若干簡単にコメントさせていただきたい、このように思っております。
 今回の法案は、いわゆる23年度税制改正法案として取りまとめられたもののうち、6月に既に成立したもの以外、形式的にはそういうことだと思うんですが、その内容が、いわゆる税制の抜本改革に関連したものが中心になっておる、そういうことでございます。
 もちろん、税制の抜本改革ということになりますと、このほかに、恐らく、先ほどもお話にもありましたけれども、不可欠なピースとして消費税の問題も当然出てくるわけでございますが、そのことは今回の法案には直接触れられていない。
 それからもう一つ、税制抜本改革を考える場合、税の範囲だけで考えていても余り意味がございませんで、経済財政全体の枠組みで考える必要があるわけでございます。その意味では、社会保障と税の一体改革ということがずっと言われておりまして、先般その成案なるものが決められたところでございますが、その中でも消費税を含む抜本改革のことが唱えられているわけでございます。
 ただ、この成案とか、これまでの議論につきまして若干コメントさせていただきますれば、例えば2015年を念頭に置いて、あるいは2010年代の半ばというようなことを念頭に置いて議論が行われているわけだと思うのでございますが、もちろん、これから数年後の問題というのは非常に重要でございまして、それに対する対応を考えなきゃならないということはもちろんでございます。
 ただ、さらにその先を見まして、これから10年、20年、30年、ますます超高齢化は進展いたしますし、恐らく人口減少も続いていくわけでございます。そういうことで、経済、あるいは特に社会保障を取り巻く環境が物すごく厳しくなるということでございまして、そのような中で税制抜本改正を考えざるを得ない、そういう状況なのかと理解しております。
 それにさらに追加いたしまして、3月の大震災の問題が起こりまして、その震災自体の税制の対応につきましては、割と素早く特例法というのが成立しているところでございますが、これからいわゆる復興財源の問題をどうするかというようなことがある。
 そういう複雑な状況のもとでの今回の税制改正案ですので、この全体の性格をどう考えるかというのは若干あいまいな点が残っておらざるを得ないというような気がしているわけでございます。
 以上が枠組みでございまして、ちょっと中身のことについてお話ししたいと思います。
 大きく分けまして、法人税関係の話とそれから所得税、相続税の関係の話をしたいと思います。
 まず、法人税につきましては、多分その心としましては、経済活性化とかあるいは国際化への対応とか、そういうような議論を念頭に置いているんだろうと思うんですが、基本的な考え方は税率の引き下げと課税ベースの拡大ということでございまして、この方向自体は、税制の勉強をしておる者といたしましても、非常に妥当な方向であろうと。この方向でもし改正が行われるということであれば、課税による企業活動のゆがみというのが多少とも軽減されるんだろうと期待されるわけでございます。
 ただ、状況はやはりもう少し厄介でございまして、税率の引き下げ自体につきましても二つの問題があると思います。
 一つは、今の日本の法人税の水準というのが国際的に見て非常に高くて、アジア諸国では大体25%ないしそれ以下、ヨーロッパ諸国は大体30%程度。アメリカは例外的に、日本と同じく結構高いのでございますが、アメリカも日本の動向を結構気にしておりまして、アメリカも2月ごろ法人税引き下げの議論をかなりしていたようでございますが、それは、23年度改正で日本の引き下げ法案が出たということが多分、多少とも影響しているようでございます。
 とりあえず、いずれにしましても、そのような状況のもとで5%ポイントの引き下げというのが十分なものかどうかということについてはかなり議論があり得るというのが一つでございます。
 もう一つは全く逆の方向でございまして、今、震災対応ということで基幹税の引き上げということが言われております。法人税が基幹税かどうかというのは議論があるかもしれませんが、一応基幹税だということにしますと、むしろこれは引き上げる方向ということになるわけでございまして、その二つをどういうぐあいに考えたらいいのか。とりあえず、では、今回提案された引き下げというのをもう少し先延ばしするとか、そういうことになるのかどうかわかりませんが、今の水準からさらに引き上げるというのは、企業の国際的な経済環境を考えて、かなりきついのではないかなと個人的には思っております。
 一方、法人税の課税ベースの拡大につきましては、幾つか細かい点はございますが、基本的に妥当な方向ではないかと思っておりますので、ここでは説明を省略させていただきます。
 次に、所得税、相続税についての改正法案の内容は、どちらかというと格差への対策みたいな、そういうトーンが出ていると思います。
 ただ、私自身は、税制のみによってどれだけ格差対策ができるかということについては若干疑問を持っております。すなわち、例えば非常に低所得の人々に対しては、やはり税制上の措置だけでは不十分で、歳出の措置を考えざるを得ない。それから、非常に高いところにつきましては、余り税率を高くすると、法人税ほどではないかもしれませんが、いろいろ、海外に移住する人もいるかもしれませんし、そうでなくても合法、非合法のいろいろな課税逃れのインセンティブはどうしても強くなってしまいますので、やはりそちらも限界がある。
 今回の所得税に関する改正項目を見ますと、給与所得控除の見直しでありますとか退職所得課税の見直し等、基本的に妥当なものだと思うんですが、それ自体でどれだけ格差対策になるのかというのはよくわからないわけでございます。本当に所得税で格差対策ということであれば、むしろ最低税率を引き上げて、それで課税最低限をはるかに下回るような人に再分配するというような、もう少し骨太のものが必要なんじゃないかなという感じが、私は個人的にしております。
 それからもう一つ、相続税でございますが、相続税については非常に大きな改正かなと。基礎控除のかなり大幅なカットというのは大きな改正なのだろうと思います。
 ただ、所得税も相続税も私はそうだと思うんですけれども、ある程度、法人税と同様、やはり課税ベースは広く税率は低くというのが基本的には望ましいと思っておりまして、相続税の税率を上の方へ上げるというのはどうなのかな、うまく機能するのかなという感じを持っております。どちらかというと、長期的にはむしろフラット化していくということも考えてもいいのではないかな、それが真の格差対策にむしろなるんじゃないか、そのように考えているわけでございます。
 主な項目は以上でございますが、もう一つ、地球温暖化対策の話があったと思います。もちろんほかにもいろいろあるんですけれども、主な項目として、地球温暖化対策のための新しい税制が提案されたと聞いております。これは、CO2排出量をもとに石炭、ガス、石油を横断的に課税しようということでございまして、初めての本格的な環境税的なものとして非常に大きな重要な提案になっているのではないか、このように思うわけでございます。
 大体、以上でございます。
 市川先生の資料を参照すると言いながら余り直接には参照できませんでしたが、心は同じでございます。名目成長率が高くならないと困るわけでございますけれども、これは短期的にはいろいろ動きがあるでしょうけれども、冒頭申しましたように、長期的に数十年というタームで考えたときに、別にインフレだけ起こったらいいというわけではありませんので、では実質ベースでどれだけ成長できるのか。人口は減少する、労働人口の比率も減少していく、そういう中で非常に厳しい状況にあるということは考えていかなきゃならない。当然、国際化の問題も考えていかなきゃならない。
 そうすると、やはり税制全般としましては、課税ベースを広く税率を低くということで安定したものにしていくとともに、社会保障を含めた全体の改革というのを考えていかなきゃならない。そのための時間的な余裕というのは余り残されていないというのが日本の今の危機的な状況なのではないかと思っております。
 以上で終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○石田委員長 ありがとうございました。
 次に、野口参考人にお願いいたします。
○野口参考人(専修大学経済学部教授) 専修大学の野口でございます。
 私も、今回初めてこういったお話をさせていただくことになりまして、ちょっと要領がわからなかったので、いろいろお聞き苦しい点があろうかと思いますけれども、どうか御容赦いただきたいと思います。
 時間が非常に少ないですので、私のお話は大体二点に絞らせていただきたいというふうに思います。一つは、今やはり一番大きな問題である復興財源の問題です。もう一つは、これも非常に大きな問題だと思いますけれども、社会保障の改革、そして消費税の増税についてであります。
 お手元に資料がございます。私のきょうのお話の内容をメモしたレジュメと、それともう一つ、浜田宏一先生とクーパーというハーバード大学の先生のお二人が書かれた「経済教室」の記事であります。
 それで、まず最初のお話ですけれども、復興財源について、これは今、どうするのか、増税というものをやるのか、あるいは国債を発行してとりあえずは賄うのかということが非常に大きな争点になっているわけですけれども、私自身の見解を述べさせていただきますと、これは結論としては、そのための増税というのは望ましくない、公債を発行して十分に時間をかけて返済すべきであるというふうに考えます。
 それはどうしてかと申しますと、まず、これまでも、例えば戦争のときには戦時国債を発行するということがどこの国でも行われてきたわけです。災害と戦争というのは、そういう意味で、一時的かつ巨額な支出をやるという点では非常に近いものがあるわけですけれども、そういうときにその世代で全部増税でやるということになると、これは大変なことになるわけですね。ですから、そういうときには当然、とりあえず公債を発行してやるというのが当たり前のことであるということを申したいと思います。
 それで、参考にお持ちした「経済教室」の方をごらんいただきたいと思いますけれども、グラフがございますね。これは日本とアメリカとイギリス、特にイギリスの第二次世界大戦の後のところを見ていただきたいんです。
 当然ながら、あれだけの戦争をやるわけですから非常にお金がかかって、それを国債あるいは公債で賄わなきゃいけない。イギリスに至っては、一時、GDP比で見て200%以上ですから、現在の我が国よりも大きな対GDP比率での公債を抱えていたというのがわかるわけです。それがだんだんと少なくなっていっているのが、低調状態というか低水準に落ちていったのが大体75年ということですから、30年ぐらいかけてやっているわけですね。
 そういうことをやらない、それを一遍に増税でやるというふうになると、これは大きな、物すごい混乱が逆に生じるということになります。
 戻っていただきますけれども、非常に教科書的な理論で課税標準化という考え方がございまして、課税をするというときに、結論とすると、なだらかにやる、でこぼこにやっちゃいけないということなんですね。というのは、課税というのは価格にゆがみをもたらしますので、そういうものは社会的な損失をもたらします。ですから、そういうものを、一時的に非常にゆがみを大きくしてしまいますとその損失というのは非常に大きくなりますので、なるべくなだらかにやっていく、税を取っていくというのが適正だというのが基本的な考え方です。
 そういうふうに考えますと、いわゆる時限増税というようなことを主張する向きもあろうかというふうに思いますけれども、例えば、3年間復興をする場合にはその3年に限って増税をするというようなことをやるというのは、非常に、一番よろしくないということになりますね。あえて社会的な損失を生み出すというようなものであるということになると思います。
 ただ、一つ倫理的な問題として、将来世代にツケを回すべきでない、そういう主張もあるわけですけれども、では、そういう問題に対してどういうふうに考えればいいのかということですけれども、私は必ずしもそれが妥当だというふうには考えません。
 それは、一つは、まずインフラ、今、瓦れきの処理にしてもインフラの整備という点では同じでありまして、そういうものは当然それを放置しておきますと将来世代も困るわけですね。つまり、そういう意味では、インフラの復旧というのは将来世代にも便益を与えるということが言えます。
 それからもう一つは、災害の損失というのは、決して今の世代が放蕩三昧で使い切ってしまったというものではないんですね。それはもう運が悪かったとしか言いようがないわけで、そういうものが100年に一度起こるということは、当然災害ですからあり得るわけです。そういうときにその世代だけに負わせるというのはむしろ不公平である、つまり各世代からいわば保険と同じように徴収すればいいということになると思います。
 ですから、100年に一度であれば100年で採算がとれるように、保険と同じような、多くの人から集めて事故に遭った人に支払うというような形で問題ないというふうに考えます。
 そういうふうに考えますと、時限増税というのは、浜田先生とクーパーのこの論文で、私は非常にわかりやすい例だというふうに思っているので紹介させていただきますけれども、そういった消費税増税というのは、「まるで災害という傷を負った子供に重荷を持たせ、将来治ったら軽くするといっているに等しい。」まさにそのとおりであるというふうに思います。
 それから次に、二番目ですけれども、復興支出、そうすると、国債をどんどん、一時的に大量に発行するということに当然なっていきます。財政支出は当然、インフラの整備を行うわけですから、拡大していきます。
 このときに、非常に大きな懸念が何かといいますと、これは、一般的には、こういった財政支出をただそれだけやりますと、必ず円高になっていきます。もう既にそういう兆候が見えているわけですね。リーマン・ショック以降ずっと、日本経済にとっては過度な円高が続いているわけですけれども、それがさらに、最近、特にドル安という要因もありまして、一層厳しくなっているということです。一時、震災の後一度だけ介入をやって、それで戻りましたけれども、その後また、それ以上に円高になっているということになります。
 ですから、こういう問題に対して、ではどういうふうに対処すればいいのかというのは、教科書的に言えば非常に簡単で、金融緩和を同時に行えばいいということですね。それで、金融緩和をやりますと通貨が安くなりますので、円高が抑制されるということになります。
 人によっては、もうゼロ金利であって量的緩和をやってもそんなに効果はないと言う人もいるんですけれども、そうではない。量的緩和をやれば自国通貨というのは安くなるということは、例えばアメリカを見れば明らかでありますね。
 最近またアメリカで、量的緩和のQE2を3、またさらに再度バーナンキが実行するのではないかという思惑もあるようですけれども、そういう思惑ですぐまたドルが安くなっているということから見てもわかるように、量的緩和をやればその国の通貨が安くなるということは明らかであります。
 問題は、日銀がそれだけ十分やっていない。ですから、そのために円高に、三重苦、四重苦のように、こういう状況で円高になってしまっているというのが、今、日本の現実です。
 そして、金融緩和が必要なもう一つの理由というのは、国債、公債を復興のために発行するということになりますと、一時的に大量発行すれば、多少金利がぶれるということも当然あり得るわけですね。それによって金利がどんどん上昇するということは、私はないと思います。先ほど、クレディ・スイスの市川さんもお話ししたことと私は同じであります。
 ですけれども、一時的には攪乱するような状況もあり得るわけで、そういうときには、当然日銀は、国債買い入れをふやす、あるいはその直接引き受けでも全く問題ないと思います。そういうことをやればいい。
 そもそも、今、日本経済というのはずっとデフレ脱却というのが至上命題であるのに、日銀の金融スタンスは非常に消極的であるというふうに私は考えておりますので、そういうことをやればいいということだと思います。
 それからもう一つ、最近、復興財源として外貨準備の利用ということが時々新聞などで出ております。私は、それはできなくはないけれども非常に注意が必要であって、それはなぜかといいますと、外貨準備というのは、当然、国債を発行して資金を調達して、それで介入をして、アメリカの国債等を買ってやるわけですけれども、それを逆に転換するという場合には、当然、今のような円高では為替差損が確定してしまうことになりますので、十分な円安になる必要があると思います。
 介入の平均のレートというのは大体一ドル115円程度だというふうに言われていますので、大体120円ぐらいないと、逆の売却、今の外貨準備の売却というのはできない。やってもいいんですけれども、大きな損失が逆に発生してしまいますので。そこまで十分に円安にする必要があるということですね。そういうふうにやるということは、私は非常に将来的には必要になってくると。
 これは、例えば、中国というのは大きな外貨準備を抱えておりますけれども、中国がそういうことをやろうとしても、それはできない。なぜかといいますと、中国は今、インフレで非常に困っているわけですね。ですから、そこで元安にするということは、さらにインフレを過熱してしまうことになります。
 ところが、日本は全く逆です。むしろデフレ脱却が必要ですから、円安、120円ぐらいというのは極めて望ましい数字、もっと円安であってもいいぐらいなんですね。ですから、そういうところでやるということは、日本経済にとってもいいし、むしろ国家の収入にもなるということで、一石二鳥であるというふうに思います。
 それから、そもそもですけれども、先ほどの市川さんのお話にありましたように、まず一番重要なことは適正な経済成長を実現するということであって、そのためにはデフレ脱却というのが絶対の条件である。ですから、そのためには一層の金融緩和がそもそも必要なんだということですね。
 これは、実は不況の損失というのは非常に大きい。今、今回のああいう大震災の損失というのは16兆8千億というふうに言われておりますけれども、リーマン・ショック以降の不況による損失の方がはるかにこれよりも大きいわけですね。ですから、それをまず放置しておくということは絶対だめであるということです。
 それともう一つは、そもそも財政悪化の最大の原因というのは実はデフレ不況であるということです。ですから、デフレをそのままにしておいて財政だけ改善するということは無理なんだということをまずお話しさせていただきたいと思います。
 それから、三番目、最後の点ですけれども、では増税が必要ないのかというと、それはもう私自身も、将来的には必ず増税は不可避になると思います。
 それはまず、御存じのように少子高齢化が進んでおりまして、社会保障支出というのはほうっておいても恒久的に増加するということになりますので、将来的な増税は不可避である。ただ、その条件、これを間違ったタイミングで間違ったやり方をすると、また大変なことになるということなんですね。
 まず一つは、いろいろな社会保障支出、年金、医療、介護というのをこのままただ今のトレンドでふやしていくということは、幾ら増税しても追いつかない。ですから、これを抑制する仕組みが必ず必要であるということ、これが一つです。
 それからもう一つは、民主党政権になってから、直接的な再分配、子ども手当その他というのが提起されているわけですけれども、増税でやるということになると、これはまさにおもしの上におもしを重ねるという形になってしまいます。ですから、もしやるんだとすれば、基本的には従来の財源の組みかえによるしかないと思います。
 しかし、ここでちょっと考えてみると、そもそも、子ども手当にしても、直接再配分、もともと、例えば貧困の解消とか少子化というものに、そういう政策目的というのがあったはずなんですね。それに本当にかなっているかということをもう一度考え直す必要があるのではないかというふうに私は思います。
 それから、いずれにしても、消費税の増税、引き上げが必要だ。そのときに幾つか留意する点がありまして、まず、一度に例えば5%引き上げるということをやると、これは非常に大きな消費の変動を生みます。これは橋本内閣のときの引き上げの失敗というふうに言っていいと私は思うんですが、それで実証されております。ですから、例えば5%引き上げるにしても、5年間で年1%ずつ引き上げるというようなやり方をすべきであるということです。
 それから次に、もう一つは、増税の時期についてですけれども、事前に、例えば2千何年からという形でやるというのは、これはそのときの経済状況をよくよく考えないと、また橋本内閣のときの二の舞になる可能性がある。つまり、そのときに本当に増税をできる時期なのかどうか。
 ですから、ここは、何年何月と決めるのではなくて、例えば名目成長率がある程度に、名目GDPがある程度になったとき、何%に達したら、そこで初めて消費税を引き上げるというような条件というのを事前に設定すべきであるというふうに思います。
 なぜこれが大事かといいますと、少なくとも今のような金融政策がまだ、ゼロ金利、量的緩和という非伝統的と言われるような異常な状態であると、金利の引き下げ余地がないわけですから、増税をやって仮に景気が悪化したときに、またなすすべがないということになってしまいます。ですから、少なくともゼロ金利の状態から脱却して、2%以上の政策金利があって、引き下げの余地があるという状態をつくってからでないと、私は、増税は無理であると。
 では、いつそれが可能になるかというと、少なくともデフレを脱却してある程度のインフレ率、できれば2%程度のインフレ率というのがあって、名目成長率が3%、4%とか、できれば4%を上回るぐらい、4%から5%ぐらいの状況になって初めてそういった増税というのが可能になるというふうに私自身は考えております。
 私のお話は、以上で終わります。(拍手)
○石田委員長 ありがとうございました。
 次に、鈴木参考人にお願いいたします。
○鈴木参考人(株式会社大和総研金融・公共コンサルティング部副部長) 大和総研金融・公共コンサルティング部の鈴木文彦と申します。
 金融・公共コンサルティング部とあるように、地方公共団体とかの問題解決をやる部署でございまして、そういった観点で、地方公共団体の財政分析の方法、特に民間で言うところのキャッシュフロー分析に力点を置いた研究をやっております。来るべき厳しい財政制約の中、合理性とか戦略性とか、そういった民間企業の手法を取り入れて、いかに必要な公共サービスを提供していくかというテーマのもと、水道事業とか地方公営企業、第三セクターにも手を広げて、そうしたところの適用について研究をしている次第でございます。
 今般の意見陳述の主題であるところのレベニュー債につきましても、そういった民間企業の手法を取り入れた問題解決の手段として、幾つか私の方で小論文を書かせていただいている次第でございますけれども、出したタイミングがよかったのか、おかげさまでいろいろな方に読んでいただきまして、幾つか問い合わせもいただいております。恐らく、そうした御縁できょうこの場に呼んでいただいたと推察申し上げる次第でありますけれども、その節に関しましては、大変光栄に存じます。
 それでは、早速、本文に沿って始めさせていただきたいと思います。
 レベニュー債ですけれども、今般の議案の問題意識に沿っていけば、一言で言えば、厳しい財政制約のもとで効率的かつ効果的な公共施設の整備を行うために資金調達をどうやってするかという資金調達の仕組みのことなんですけれども、この来るべき厳しい財政の中、どうしてそういうようなことが言えるのか、一体何なのか、そういったものがそういう問題解決に使えるのか使えないのかについて、順を追って説明させていただきたいと思います。
 まず、レベニュー債とは何かでございます。
 指定事業収益債と説明されることもございます。要するに、資金使途、使い道が特定されており、事業収益が返済財源となる地方債のことでございます。ただし、単に資金使途が特定されているということだけで定義するのはなかなか難しいです。
 なぜならばですけれども、例えば企業融資、普通の、銀行が中小企業とかに貸す融資ですけれども、それにおいては、あらかじめ資金使途というのは決まっているのが普通でございます。普通の、中小企業が銀行から資金を借りるときは、審査を受けて借りるという手続をとりますけれども、そうした場合の融資かわり金というのは資金使途があらかじめ決められているものでございます。返済財源もその企業の収益に求められます。
 この点ですけれども、第三セクターとか地方公社とかは、公的ではあるんですけれども、いわゆる会社には違いありませんので、そういったところでいくと、何ら普通の貸し出しとは変わらないわけでございます。特に目新しいものではないんじゃないかというふうに思っております。
 資金使途と返済財源が決まっているという当たり前の借り入れが、例えば、地方公共団体、今回、震災とかでいろいろインフラの復興とかをしなくちゃいけませんけれども、そうした公共施設を整備するに当たってそういう普通の基準の借り入れが適用されたときに、レベニュー債というものではないのかと思うわけでございます。
 ただ、これも、しかしがつきます。しかし、通常の地方債、現行の地方債とか公営企業債も、もともと特定財源でございまして、資金使途が決まっているものでございます。そもそも、地方債は初めから使い道が決められた特定財源でありまして、何にでも使える一般財源とは違います。さらに、公営企業債においては、原則として、借入返済も事業収益から賄うことになっております。公営企業というのはいわゆる独立採算制原則というのが働いておって、それが決められているからでございます。
 それでは何なのか。ますます、レベニュー債というのは何だかわからなくなってしまいました。単に事業目的があらかじめ決まっておって、その事業がもたらす収益を返済財源とするという定義だけでは、レベニュー債は理解できないことになります。また、実際には事業収益が返済財源になっていないという見方も一部にございます。
 要するに、レベニュー債というのは、単に使い道とその返済財源が決まっているというだけではなくて、使い道が決まっていることによってもたらす効果、すなわちその機能によって定義されるものだと私は考える次第でございます。
 そこで、レベニュー債のレベニュー債たる本質とその機能、ありていに言えばメリットについて考えてみたいと思います。
 レベニュー債のメリットとしてまず挙げられるのが、まずわかりやすいところからいきますと、オーナーシップの向上でございます。使い道がわかりますので、自分が出したお金で建てたという実感がわいて、丁寧に使うようになるといったような効果が期待できます。
 適切な例えではないとは思うんですけれども、例えばゴルフ場のクラブハウスに入ると、会員の名札がずらっと並んでおります。また、田舎の公民館とか神社をちょっと思い出してみてください。この場合は、寄附と言うより寄進と言った方がいいんでしょうけれども、いわゆるお金を出した人、スポンサーの名前が、かもいの上に名札でかかっていたり、神社の柱に書いてあったりしますけれども、ああいったイメージで参画意識というのがわくわけです。
 これを公共施設に当てはめてみますと、今度、救急病院を整備することになりましたとします。ついては、病棟を建てるためにお金を集めるので、何口か地方債を買ってくださいよというようなぐあいになります。実際は、こうした個人向けが主力になるのではなくて、地元の銀行なり金融機関が買うことになるんでしょうけれども、いわゆる地産地消みたいなイメージになるわけですが、そうすると、直接であれ間接であれ、地元住民がスポンサーになれるわけですので、勢い、当初の企画どおりに使われているかとか、医療の充実という目的は達せられているかとか、そういった住民の厳しい目が働くようになるわけです。温かい目とともに、厳しい目が働きます。
 もっとも、これだけですと、例えば、今でも市民風車債のようなミニ公募債も同じ効果をもたらすので、これも、レベニュー債の決定的な特徴ではなく、それを構成する一つにすぎないということになります。
 もう一つ、財政規律の向上でございます。これが重要なんですけれども、これの反対概念が放漫財政ということになります。
 例えば、家計で申しましても、安全な国産牛肉を食べたいとか、車は安全な高級車に乗りたいとか、教育は最高の私学に入れたいとか、そういったいろいろないいものというのはあるんですけれども、それを全部やっていったら家計が破綻してしまう。何が大事なのか、優先順位を決めるのが必要である。それの反対で、やらないと借り過ぎになってしまって、財政規律の向上というのは、そうした借り過ぎ、食べ過ぎ、飲み過ぎ、借り過ぎを防ぐという効果が期待されるわけです。
 事業目的が決めてあって、そして返済が事業収益に限定されるとなりますと、銀行とか貸し手から見た回収可能性というのは、全く事業の成否によって判断されることになります。なので、例えば地方公共団体が後先を簡単に考えて借り入れを起こしちゃったりしますと、事業計画の実現可能性とかを疑われて、金利が高くなるわけです。あるいは、借り手の借り入れがもともと多くて、危険水域にあるとします。そうしたケースでも、返済可能性に不安を持った貸し手というのは、それなりの金利を求めるようになると考えられます。
 これを、逆に地方公共団体の側から見れば、まずは金利、自分の金利が何%かというシグナルを持って、あと金融機関の態度、貸し出し態度とかを見ながら、例えば財政健全性をアピールするような努力というのをするようになります。借り入れを起こす前に事業計画というのをしっかり吟味するようになりますし、先ほど申し上げましたように、優先順位を持って、本当に必要な整備案件というのを選ぶようになります。財政を健全に保とうとすると、これは体重と同じですけれども、身の丈に合った借り入れ、財政にしようという、いわゆる恥じらいと規律というのが生まれるわけです。
 三つ目、厳しい財政制約のもとで、効率的、効果的な公共施設の整備を行うための資金調達の仕組みとしてのコンセプトでございますけれども、これは、民間のプロジェクトファイナンスの論理を単純に適用した例え話で説明しようと思います。
 例えば、民間企業が、本体の親会社の企業の財務状況が悪化して、借り入れをふやすことがもうできませんとなりました、そういう民間企業があったとします。それでも、どうしても新店舗を出したい、この新店舗は将来性が有望で、新店舗自体の、その店自体の収支を見れば返済に何ら懸念がない。そうした場合に、レベニュー債のような、この新店舗の事業目的と返済財源というのを限定した借り入れを起こせば、問題解決はできます。
 本体と新店舗をひっくるめた会社そのもので新規に借り入れをしようとすると、金利は、その財政悪化した本体企業の返済能力を反映して高くなってしまいますけれども、そこで、業績のよい新店舗に限定した「レベニュー債」、かぎ括弧つきのレベニュー債ですけれども、それによって、理論的には安い金利で借りることができる。
 これを単純に地方公共団体に例え話として挙げてみますと、将来、地方公共団体の財政が震災とかで悪化して、金利が高くなって、それでも水道管の更新とか救急病院の整備とか、そういう必要な公共施設整備があったとします。そうしたときに、例えばレベニュー債を使えば借入金利が安くなるというような話になります。
 これは何かに似ていると思うんですけれども、このほど改正されましたPFI、PFIの文脈と同じです。つまり、厳しい財政制約のもとで、効率的かつ効果的な公共施設の整備を行うための資金調達の仕組みという点ではPFIと同じ、レベニュー債はそうした仕組みでございます。
 三つ目、レベニュー債の課題でございます。
 ところが、厳しい財政制約のもとで、効果的、効率的な公共施設の整備を行うための資金調達の仕組みという意味でのレベニュー債というのは、まだ日本には出てきていないというのが私の意見でございます。
 理由は、財務状況にかかわらず、金利水準というのは地方債の方がまだ低いからです。逆に言えば、レベニュー債のような事業目的をあらかじめ決めて事業収入を返済の原資とする、すなわち事業の収益性で金利が連動するという意味での本当のレベニュー債というのを使うと、かえって金利が高くついてしまうというのが現実でございます。
 例えば、PFIとかレベニュー債の本質は、事業運営のリスクを民間に転嫁する、民間に移転するというところで、親団体、地方公共団体の財政悪化に波及しないようにする仕組みとも言いかえられるんですけれども、そうした事業リスクを、売り上げが上がったり下がったりする赤字リスクですけれども、そうしたものを民間に転嫁してもしなくても、少なくとも金利上昇圧力には働かないのが現実です。
 現状、財政状況のいかんにかかわらず、地方債を起債して入札にかけると、農協とか銀行とか、入札にかけてやるんですけれども、今は地方債は国債に限りなく近い水準で資金調達ができます。そこに財政状況のいい、悪いは関係ありません。
 財政が厳しいというのがいろいろなところに何となくコンセンサスではあるんですけれども、一方、それが金利という状態に反映されていない。
 具体的には、例えば財務省の方で、貸し手の立場から、借り手である地方公共団体の融資審査を民間企業と同じような方法で、銀行が審査するような同じ方法で損益計算書のようなものをつくってやっておるんですけれども、例えば銀行が審査するときに使うキャッシュフロー分析を使って行っているんですが、それでもやはり入札で決まってくる金利というのは国債に限りなく近いものが出てきます。表面的には、最近は、入札結果によってはそれを下回る金利で調達できるときもある。
 つまり、金利から見れば、地方公共団体、地方公営企業というのは、超の上にまたさらに超がつく優良企業とみなされてしまうわけです。
 こうした認識のギャップというのがございます。つまり、財政のいかんにかかわらず、別の論理で返済が可能だというふうに貸し手は見ているわけです。
 その別な論理というのは何か。
 よくも悪くも、レベニュー債というのはメリットがあるんですけれども、その実現を目指すということであれば、幾つかの課題がございます。
 例えば、国とか地方公共団体、外郭団体のリスク限定の仕組みと、レベニュー債の対象のみならず、地方公共団体本体のキャッシュフロー分析を行う仕組みというのが必要だと考えます。
 レベニュー債、PFIも同じですけれども、さっき申し上げましたとおり、オーナーシップの醸成と財政規律の面では非常によい仕組みだと考えております。しかし、これも財政悪化というのが金利に連動するというのがそもそも前提となっておりますので、まずは現状の親団体、地方公共団体が、レベニュー債の対象となる地方公共団体を初めそのほかの外郭団体、さらには親団体の無限保証人となっている国との関係においてリスクを限定する仕組みをつくらないと、なかなか実現は難しいと考えます。
 リスク限定というのは、ちょっとまたわかりにくいかもしれませんけれども、要するに、ここまでは助けるというか補助金を出すとかという保証をするという上限を決めて、その上限を超えた分は民間が負うというような仕組みでございます。それによって、金利水準は一般の企業よりはちょっと低くなる、それでも民間よりは低くなるとは思うんですけれども、少なくとも、キャッシュフローから見た返済能力がよい事業体はよいなりに、悪いところは悪いなりに金利がつくようにならないと、なかなかレベニュー債、PFIのような、そういった市場の調達をやるような仕組みというのは困難だと考えます。
 もう一つ、レベニュー債が生み出す返済財源、いわゆるキャッシュフローの状況によって与信するのが基本なので、対象になる公営企業を初め外郭団体とか、体育館とか文化ホールのような公共施設がありますけれども、そうしたキャッシュフローを生み出す単位でキャッシュフロー分析ができるような財務分析の仕組みをつくること、まずこれが大事です。
 もう一つ、例えば、地方公共団体において、参考資料にありますような経営状況把握とか水道事業に対する修正損益計算書というような、キャッシュフロー分析に足る財務分析の仕組みというのが既にありますので、そういったものを使うというのが一つだと思います。
 次いで、それがレベニュー債またはPFIの方法で、地方公共団体から公営企業を初め外郭団体を切り離して財政上のメリットがあるのかということをそもそも比較するために、親団体たる地方公共団体のキャッシュフロー分析もきちんと分析をして、それで外郭団体を切り離し、そこでメリットがあるのかという比較対照をつくるという仕組みが必要だと思います。
 そういったところを、まとめますけれども、レベニュー債やPFIというのがよいか悪いかはまた別にして、こうした条件、今言ったような条件というのが整わなければ、実現というか、同じことですけれども、PFIとかレベニュー債の期待されている機能というのは12分に発揮するのは難しいと考えているところでございます。
 ちょっと言葉足らずのところがありましたかもしれませんけれども、私の発言を終わらせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○石田委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
【佐々木議員質問部分】
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは、大変お忙しい中御出席をいただきまして、また、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。私が最後でございますので、どうかよろしくお願いをいたします。
 まず、市川参考人と野口参考人にお伺いをしたいと思います。
 金融の流れでありますが、資金の過不足というグラフも市川参考人から示していただきました。現在、全体として考えますと、日銀は過去最高の金融緩和政策を推進している。ゼロ金利に近い事態にあり、かつ、金融緩和も、強力な金融緩和、こういうようなことを言っているわけであります。したがって、銀行には、日銀からあり余るほどの、じゃぶじゃぶと資金が供給されているわけであります。
 問題は、その銀行から先に資金が流れないというところにあります。借り手の方は、非常に今借りたいと思っても、なかなか将来の見通しがはっきりしないので、とりわけ被災地においては計画が立てられない、そういう状況が一方である。それから、企業部門の中でも大きな会社の方は、銀行から借りなくても資金はだぶついておりまして、投資先がなかなか見つからない。内部留保は、我々の試算ですと250兆円を超える事態になっております。
 つまり、大手銀行と大手の企業には過去最高の資金のだぶつき状況がありながら、その先に流れない、そういう事態になっているわけであります。
 今そういう状況でありながら、一方では、企業はなかなか雇用が拡大できない、それから賃金は抑える、したがって消費が冷える、それから国の方は社会保障に対して大胆にふやせない、そういうような状況にあるわけです。
 私はそこを変えなければならぬというふうに思っておるわけですけれども、現在の企業部門、銀行も含めてですけれども、このような資金のだぶつき状況というもの、その原因をどのようにお考えか。それから、それをいわば好循環に変えていく場合のかぎは一体どこにあるのか。ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
○野口参考人(専修大学経済学部教授) おっしゃるとおりでありまして、今、非常に銀行、金融機関もそうですし、実は企業もキャッシュフローは潤沢にある、これは前のITバブルがはじけた後の不況の時期もそうでありました。景気が悪い状況ではどうしてもそういうふうになってしまいます。つまり、資金需要がないという状況で、結局、銀行、金融機関が幾らお金を持っても、それに対する需要がないという状態が続くという状況はそのとおりであります。
 それに対して、だからお金をこれ以上じゃぶじゃぶ出してもだめなんだということに対して私は先ほど反論いたしましたけれども、つまり、お金を出すということは、別に貸し出し経路だけではなくて、為替という経路を通じて景気拡大をもたらす。日本の場合は特に、世界各国が成長している中でシェアが小さくなっているということは、海外依存度が高くなっています。ですから、為替の影響というのはますます大きくなっています。ですから、円安が少し起きますと非常に景気回復が進み、かつ、逆に円高によって急激に景気が冷え込むという構造になってきてしまっています。これはいたし方ない状況ですね。
 ですから、そういう意味でいうと、私自身は、とにかく円高を抑制する、そのためには量的緩和を、輸出を拡大するしかないというふうに考えています。
○市川参考人(クレディ・スイス証券株式会社チーフ・マーケット・ストラテジスト) 資金がだぶついておるという話でありまして、これは非常に不幸な状況ではないかと思うんです。ただ、例えば銀行が本当にだぶつかせたくて資金をだぶつかせているかというと、私は、そういうわけではなくて、やはり民間の事業として貸し出せる対象として資金需要がまさにない、その状況が極めて銀行にとってもつらいところではないかと思うんですね。ですから、結果的に国債を買っている。
 国債を買っていることが銀行にとって幸せかといえば、これは確かに足元を見れば、先ほどごらんいただきましたように、貸し出しをしても利ざやが0・6%しかないような状況ですから、ここだけを見れば極めて合理的な行動だと思うんです。
 ただ、これは10年債というものを買えば、将来的にもし何かをきっかけとして国債市況が急落をするようなことがあれば、当然莫大な損失を計上するリスクを負わなければいけないわけでありますから、そういう意味においては、銀行としても本来はもう少しリスクを分散させて貸し出しを伸ばしていきたい、もっともっと伸ばしていきたい、そういうことだと思うんです。ただ、やはり貸出先ができるような、つまり国内において設備投資が起きるような環境を整えてあげないと、なかなかこの問題というのは解決をしていかないのではないかというふうに思います。
 これは全く企業も同じことでありまして、当然、内部留保としてキャッシュを積んでおけば、お金は何も生みませんから、株主からは、何でこんなにお金を持っているんだということを怒られている状況であります。
 そういう意味においては、やはりデフレ脱却に向けて、国内に投資をしても十分に見合うような環境を、これは企業の努力というのもありますし、政策的な対応をしていただくことによって整えることが、この滞留しているお金を動かす最大の近道ではないかというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 それから次は、財政問題であります。特に公債の問題です。
 日本の財政は、借金依存というのが非常に比率が高い。今回、公債特例という法案がなかなか成立をしない、その原因は別としまして、そういう客観状況にある。そうなりますと、今のところは、予算の歳出面では、予算が国会で通りましたから、そのとおりこれは行われておりますけれども、しかし、歳入のうちの約4割が欠けているわけであります。そのまま今進んでいるわけですね。
 そこで、渡辺参考人と鈴木参考人にお聞きしますけれども、このままいくと、一体いつごろ、どのような事態が発生するのか。先ほど市川参考人は、金利はそんなに上がることはない、変動は余りないんだとおっしゃいましたが、どういう事態が発生するのか。このままずっといって3月までいくということはあり得ないと思うんですね。そのあたりを専門家としてどのように見ているか、お聞かせいただきたいと思います。
○渡辺参考人(一橋大学国際・公共政策大学院教授) 私は余りその点は専門家ではありませんので、ちょっと自信があるお答えはできないのでございますが、私は、いろいろ年度内のやりくりというのがある程度できる面はあるにせよ、基本的には、歳入の4割を予算の上で依存しております特例公債がもし発行できなければ、その分については支出できなくなりますので、大変なことになると思います。
 したがいまして、この特例公債法案の話というのは、基本的には、政治的な状況でこういうことになっているんだろうと思いますが、いつかは通さざるを得ない、そういうことでしょう。
 そのタイミングがいつまでかどうかというような話は非常に技術的なことになりますので、それが例えば8月になるか、9月になるか、10月になるのかということにつきましては、ちょっと私、詳細は申し上げる能力はございませんけれども、基本的には、やはりいつかの時点で通すしかない法案なのだろう、そうでないと支出がその分できなくなるんだろうというのが全体的な姿だと思います。済みません。
○鈴木参考人(株式会社大和総研金融・公共コンサルティング部副部長) 非常に大ざっぱな見方ではあるんですけれども、さっき、大体1400兆円の個人金融資産があるというふうにありました。それで、国と地方の借入金が1千兆円なり800兆円なりあるわけですけれども、実はこれに企業の債務を足すと1200兆円ぐらいになりまして、それが90年代後半から大体バランスしているような状態です。
 ただ、それはどこが変わっているかというと、国と地方のパブリック部門の債務と企業の債務が、そのシェアがだんだん国の方が大きくなっているというのが現状です。だから、その二つを合わせたところの総合債務というのは、実は余り変わっていない、横ばいであると。そういったところでまだ確かに余裕はある。
 ただし、健康に影響を及ぼすレベルではないんですけれども、これから出てくるのは、社会保障費が確かにあると思います。そうしたところが出てくると、その1400兆円の天井を超えてしまうんじゃないかというところがあと何年かと言われているような議論があると思うんですね。
 今までは、例えれば、借金は借金ではあったんですけれども、機能的には何か安定株主のような、物言わぬ国民の安定株主のような機能を発揮していたので何事も起こらなかったけれども、天井を超えたときに、海外の資産家が日本の株とか国債を持つようになって、そしてそういうグローバルスタンダードにその金利というのがさらされるんじゃないかということが、一つ言われている懸念です。
 ただし、それが何年後かといいますと、私は、一方ではそういった仮説というのは立てられるんですけれども、そうはならないというふうに考えています。これはいろいろ私が書いているところではあるんですけれども、その前に、さっきのレベニュー債とかPFIのような、そういった対策をすることがいろいろあると考えているからです。
 例えば、資金需要がない、確かにないんですけれども、国と地方の債務が今までふえてきたというところは、要するに、公共部門には資金需要があったということですよね。そうしたところに民間の個人金融資産が行くようにすればいいわけですから、その割合をそっちの方に行くようにすればいいんですから、例えば、昔は、高度成長期は、地方の工場とかそういったものに資金が流れていた、それが今は、地方の病院とか下水道、上水道というふうに流れている。要するに流れる先が変わっただけの話なので、PFIとかレベニュー債とかで民間がそういったところに投資をするというような仕組みをつくれば、そういったところというのはある程度解決するのではないかと私は考えているところでございます。
 そのためにも、やはり、今日というのは、民間にもうかるところがなくなった、一見もうからないというか、公共性の高いところには資金需要があるわけですから、そこのところを、ちゃんとリスクを政府部門と企業部門が適切に分担してみんなでやっていく仕組み、そういったものをつくるというのが問題解決になるのではないかと考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございます。
 私は、内需、中でもその中心であります家計部門をどのように引き上げていくかというのが一番のかぎだと思っておりまして、例えば、大手の企業の場合は、雇用についてもっと安定した雇用の責任を持つとか、あるいは賃金の引き上げを行う、そういう余力は十分ありますし、それから、国の方も、社会保障などについては安心のできる時代をつくっていく、こういうことが最終的な家計消費を拡大して、内需を拡大し、かつ、それに対して、今度は連動して、企業の側も設備投資意欲がわいてくる。
 そういう循環をつくっていかないと、幾らじゃぶじゃぶ緩和しても、もちろん為替の問題というのはあるかもしれませんが、しかし、内需全体の好循環に転換していくというのは非常に難しいんじゃないか。そこにこの行き詰まりがあるのではないかというふうに思っております。それは私自身の個人的な意見でありますが。
 次に、渡辺参考人にお聞きをいたしますけれども、税・社会保障一体改革の問題ですが、これは6月末に成案というのが出されました。
 税は消費税であります。これを、2010年代半ばまでに段階的に引き上げて10%にする。つまり、これから5%引き上げる。
 そして、社会保障の方は、実は、政府のこの成案の内容を詳しく見ますと、制度的な維持の部分、それから制度強化の部分、それから消費税の増加に伴って支出がふえる部分、三つありまして、その中の制度強化という部分の一部が社会保障の拡充になっているわけです。つまり、消費税の分でいいますと1%の分なんですね。
 以前、政府の説明は、これは民主党政権もその前の政権もそうですけれども、増税分を社会保障に全部充てれば、社会保障というのは低所得者の方に厚く行くわけだから、消費税の逆進性はその分緩和されるんだ、こういう説明がありました。確かに、全額行くとそうなると私も思います。
 しかし、今回はその1%が、これはストレートに行く部分について、回っていく。こうなりますと、これは、逆に消費税の増税の逆進性の方が非常に拡大しまして、それを緩和する部分が非常に少なくなってしまって、全体として、相対でいうと逆進性の強化になるんじゃないか、そういうふうに私は思っております。
 この点についての先生の御認識を伺いたいと思います。
○渡辺参考人 御質問ありがとうございます。
 消費税の使い道、今回五ポイント上げるという話の文脈ではそういう説明がされているんでしょうが、何か、社会保障の拡充部分のみが、低所得者というか、比較的所得の低い方への分配であって、それ以降は、制度的に増加する部分は違うんだということでは必ずしもないと思うんです。
 現行の社会保障制度が、もちろん完璧なものでも何でもない、いろいろ問題があると思うんですが、やはり社会保障全体といたしまして、それは累進的と申しますか、より所得の低い層により多く分配されていることは間違いないわけでございまして、それが新しい施策であろうと既存のものの自然増みたいなものであろうと、消費税の中からファイナンスされるという意味では、全体としてやはり累進的な分配になると考えてよろしいのではないかと思います。
 つまり、消費税自体は、それぞれの人々の消費水準に応じて比例的に徴収されるわけでございますし、それに対して社会保障の方は、より所得の低い部分に多く分配される仕組みになっておりますから、それが先ほどの5%の内訳という問題とは別に、大きく見て逆進的ということではないのではないかなと私は考えております。
○佐々木(憲)委員 ほかの部分で社会保障がさらに拡充されるというのであれば、そういう方向も考えられるとは思いますが、現実にはなかなか、小泉内閣時代には物すごい負担がふえたんです。社会保障は毎年2200億円カットされるというふうな、それはもうほとんど回復されないまま続いておりまして、ですから、その上に消費税の増税がどんと来て、改善部分は余りないということでは、これはなかなかそういうふうにはならないので、もうちょっとこれは根本的に考え直す必要があると私どもは思っているところでございます。
 そこで、渡辺先生の論文を読ませていただきました。「税研」の昨年11月号ですか、ここで消費税の逆進性等について分析をされておりまして、ある一定時期に関して見ると逆進性は成立する、多期間にわたった指標を考えると逆進性は緩和される、こういうふうな指摘をされているわけです。
 その中で、貯蓄はどういう位置づけになっているのか。この点も、これは最終的にすべて消費されるというようなことを前提に試算をされているんじゃないかと思いますけれども、この内容について、なぜ逆進性が、いわば生涯所得といいますか、そういう角度で見ると緩和されるのか、説明をしていただきたいと思います。
○渡辺参考人 論文を読んでいただいて、大変ありがとうございます。
 伝統的に消費税の逆進性と言われるものはどういうものかと申しますと、消費税自体は消費に対して比例的なものなのでございますが、所得に対して見ますと、傾向といたしましては、高所得者ほど消費の割合が低い、貯蓄の割合が高いということで、その限りにおいて負担率を見ますと低所得者の方が大きくなってしまう、そういう意味で逆進的と言われるわけでございます。
 それは、一期、1年に限りましては確かにそういう傾向は否定できないと思うのでございますが、考えてみますと、人々がなぜ貯蓄するかということは、それは将来消費するからであろう、そのために今貯蓄して将来消費するからであろうと。
 したがいまして、生涯の消費を見ますと、もちろん相続等の問題はございますけれども、大きく見ますと、生涯の所得とそれほど大きな乖離はそれぞれの階層に対してないのではないか。あるいは相続しましても、子供が消費するときには消費税を払うと言ってもよろしいのでございますけれども。
 そういう意味で、長期にわたって見ますと、必ずしも消費税の逆進性ということは成り立たなくて、ほぼ比例的と言ってもよいのではないかというのが、非常に一般的なレベルでの整理でございます。
○佐々木(憲)委員 最終的に貯蓄が消費にすべて回るということであればそうなると。
 しかし、現実を考えますと、高額所得者の場合には、株を買い、金融資産を持ち、しかし、亡くなるときには全部使うかというと、それはまた財産として残るわけであります。消費にすべて回るという前提であればそういう計算も成り立つかもしれませんけれども、どうも私の実感としては、現実にはそうはなっていないというふうに思いますので、生涯所得ということを考えても、それは多少のフラット化はあるかもしれませんけれども、必ずしも逆進性そのものがなくなるということはないというふうに思っております。これはそれぞれ御意見ですので、承っておきたいと思います。
 最後に、鈴木参考人に。
 レベニュー債のお話をされました。これは、お話を伺いますと、いわば公共的な事業体などを念頭に置いておられるんじゃないかと思うんですが、その場合には収益によってその返済というようなこともおっしゃっておりました。
 しかし、確かにそういう部分にはそれは当てはまる可能性もあるかと思いますが、自治体というのは、地方公共団体というのは、税収によって、あるいは国からの交付金、これはもとは税収ですね、そういうものによって歳入というものは賄われ、歳出は公共的な性格のものが歳出となっているわけであります。しかもその目的は、福祉の増進というのが目的でありまして、収益を上げるというのが目的ではないんですね。したがって、公益企業のようなものとはまた性格が違うだろうと思うんです。
 そういう場合に、このレベニュー債というのは一体、これを採用した場合にどういうふうなプラスになるのか、それから、被災した自治体のことを念頭に置きますと、これはなかなか大変な事態もありますので、その辺はどのような位置づけで我々は考えたらいいのか、教えていただきたいと思います。
○鈴木参考人 御質問、どうもありがとうございます。
 確かに、レベニュー債というのは事業体を念頭に置いておるものでございまして、地方公共団体というのは、それそのものがレベニュー債になるわけではございません。
 ただ、地方公共団体の中でも、例えば、いろいろ事業をやっておりまして、公立病院、これも事業体ですけれども、あと体育館とか多目的ホールとか、いわゆる箱物がいろいろあると思うんですね。そういった箱物を切り出して、さっきの楽天の例ではないですけれども、収益性があるものに関してはその収益から払っていくということを、レベニュー債をやることによって地方公共団体本体の財政負担が軽くなるというメリットがございます。
 ここで恐らく疑問に思われるのは、地元の体育館とかホールとかというのに地方の方に採算性がそもそもないんじゃないか、レベニュー債が成り立つのかというところがあると思うんですね。
 これはこういうことが考えられると思うんです。例えば、私の実家、石巻には、コンサートホールとかそういうのはなかなか建てることはできません。お客がいないから、多分、採算性をやったとしても、採算は合わないと思います。でも、市民の総意で、財政状況の範囲内であって、欲しいということであれば、これは民間を呼んでつくってもらうということになるんですけれども、そこで採算が合わないときに、補助金を出すというふうになると思うんですね、サービス購入料みたいな補助金を出すことになる。
 ただ、ポイントは、その補助金というのが、全部出すんじゃなくて、地方のハンディキャップ分だけ出してもらうというところがレベニュー債のポイントです。そういうふうにすることによって、地方の方はリスクが限定されますし、民間企業の方も、地方の方でそういうホールとかコンサートホールをやるということに対する自由な競争が働くわけです。例えれば、ゴルフでいうところのハンディキャップみたいなもので、そのハンディキャップをもらうことによって、都会に建てるものと同じような施設も地方に建てることができる。レベニュー債というところはそういったメリットがあると思います。
 ただ、そんなことをしていると、確かに、これから人口が減少していくとか需要量が少ないところにそういうものを建て過ぎてしまいますと、それはもうそのハンディキャップを払うだけで地方公共団体本体がおなかいっぱいになってしまいますので、要するに、地方公共団体本体の税収、補助金を出す能力の範囲内で、そういったところをどこに払うかというところを、先ほど見える化というところで言いましたキャッシュフロー計算書のようなところで広く住民に意見を諮る。場合によっては住民投票というのもあるでしょうけれども、そういったところによって、意見を諮ることによって財政規律を保つという仕組みがあろうかと思います。
 震災復興の方からいいますと、そういったところでインフラとかいろいろ建てるんですけれども、それによって、見える化したキャッシュフロー計算書を見て、ああ、こんなに住民負担がふえるんだったならば、もしかしたら、ホールとかそういったものはもうこれから要らないよという結論になるかもしれません。
 そうしたところで、復興に当たってそういうレベニュー債とかPFIをつくることによって、住民が自分の懐の範囲内で、まず何が必要なのか、下水が最初に必要だ、ホールの方は後回しだ、そういったところで優先順位がつけられて、入るをはかりて出るを制するという財政の言葉がありますけれども、そうした行政経営が行われるというところが、復興において無駄遣いをしないで、適切な、真に必要な、理解の得られるお金の使い道ができるというところが、復興に関しては最大のメリットであると思われます。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 長時間にわたりまして、四人の参考人の皆さん、ありがとうございました。
 以上で終わります。

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