2011年02月25日 第177回 通常国会 財務金融委員会 【591】 - 質問
G20報告について質問
2011年2月25日、財務金融委員会では2月18〜19日にフランス・パリで開かれた20か国財務大臣・中央銀行総裁会議について、財務大臣から報告を受け質疑を行いました。
予算委員会で、来年度予算案の採決日程を予算委員長と与党が強行したことに抗議して、自民党と公明党が欠席しましたが、日本共産党の佐々木憲昭議員は出席して抗議しつつ質問しました。
佐々木議員は、最近の一次産品の急騰が引き起こされた背景には、リーマンショック後の金融緩和によって投機資金が増加したことがあり、これに対してどのように規制するかが課題だと指摘しました。
そのうえで、議長国フランスのサルコジ大統領やNGOが提起している金融取引税について検討すべきではないかと聞きました。
日本銀行の白川総裁は「為替取引への課税は、投機的な資本の移動を抑制し、国際金融市場の安定を図ろうという提案だと認識している。しかし、市場の流動性や効率性を低下させる可能性があることや、世界各国が足並みをそろえて課税するのは難しいという問題があることなどを検討する必要がある」と述べました。
また、野田財務大臣も「真摯(しんし)な検討を行うべきだが、グローバルな執行が困難なことなどを踏まえる必要がある」と述べました。
佐々木議員は、虚業が実業を圧迫し、各国庶民の生活を破壊することを防ぐためにも、その導入が不可欠だと主張しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
質疑に入る前に、一言申し上げておきたいと思います。
私が今ここに立っておりますのは、民主党の議会運営に賛成をして出ているわけではございません。
きょうの予算委員会の理事会で、2月28日の採決日程を、与野党の合意が得られないまま、中井委員長が職権で強行をいたしました。予算委員会では、まだ、集中審議とか一般質疑その他、充実した審議をしなければなりません。それにもかかわらず、それを打ち切って採決日程を強行したということは、決して我々は許すわけにはまいりません。
しかも、この職権強行を受けて、きょうの1時半、議院運営委員会の理事会が開かれまして、この中で野党がこぞって、28日の本会議立てについては反対である、こういう抗議をしたわけですが、その中で、月曜日の本会議立てを職権で強行する、こういうことまで行われたわけでありまして、これは二重、三重に許せない暴挙であると我々は考えております。
これで一体どういう展望があるのか、全く与党の側からの今後の展望というものが示されてもおりません。それなのに強行する、これは一体何を考えているのか、極めて不明でございます。
予算委員会の現場では、与党側は、予算の衆議院通過までに、小沢元民主党代表の国会での証人喚問等について、その実現に最大限努力する、こういう約束をされていたにもかかわらず、これ自体も全く、きょうの与野党の国対委員長会談でもゼロ回答である。そういう中で強行する、こういうことはあってはならないというふうに思っております。
きょうのこの財務金融委員会について言いますと、G20の報告を受けて質疑を行うということでございます。この点については、野党側から、こういうものをやるべきだという要求をしておりました。そして、その上で、与野党で合意をして日程を決めていたわけでありまして、そういう意味で、私はここに立って質疑をしようとしているわけでございます。
まず最初に、この点を明確に述べておきたいと思います。
具体的に質疑の内容に入りたいと思います。
G20の報告、先ほど、野田財務大臣から簡潔にお話がありました。
まず最初に、金融機関の規制問題についてであります。
2008年9月、アメリカのリーマン・ブラザーズの破綻、これを契機として、全体として、一斉に金融の緩和、FRBを初めとしてそういうものが行われまして、投機的な資金が相当膨らんだのではないかと我々は思いますけれども、現在の金融危機の原因というものをどのようにごらんになっているか、日銀総裁、野田大臣、それぞれお答えをいただきたいと思います。
○白川参考人(日本銀行総裁) お答えいたします。
今回の金融危機は、リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけにしまして、金融市場における信認が崩壊し、企業や家計における不安心理が高まった結果、世界の金融経済活動が短期間に急激かつ大幅に縮小したことが直接の原因であります。
しかし、先生お尋ねの今回の危機のそのさらに根本原因、この本質は何かということでございますけれども、この点につきましては、2000年代半ば以降、世界的に実体経済、金融の両面でさまざまな不均衡が蓄積したことが、より重要な原因であるというふうに思っております。
具体的に申し上げますと、当時の高成長、低インフレ、低金利という良好な経済環境のもとで、さまざまな経済主体のリスク認識が甘くなり、経済金融活動にさまざまな行き過ぎが生じました。この結果、資産価格が大幅に上昇するとともに、いわゆるレバレッジが拡大し、また、そうした行き過ぎを抑制するような規制、監督の枠組みも不十分でありました。
現在、世界の監督当局、中央銀行は、こうした危機の再発を防ぐ観点から、さまざまな規制、監督体制の見直しを行っています。また、金融政策の運営という面でも、先ほど申し上げましたような金融面でのさまざまな不均衡を含めたリスクの要因を幅広く点検することの重要性が意識されるようになっております。
日本銀行としても、こうしたことをしっかり認識して、政策対応を図っていきたいと思っています。
○自見金融担当大臣 佐々木議員からの御質問でございます。
今、白川総裁が的確な御答弁をされたわけでございますけれども、私といたしましては、重複するところもあるわけでございますけれども、世界的な金融危機の原因については、金融のグローバリゼーションや規制緩和の流れの中で、金融機関による不十分なリスク管理、市場参加者による不十分なリスク評価、その結果としての過度の不健全なリスクテーク、それから、複雑で不透明な金融商品と、結果としての過度のレバレッジ、それから、今、日銀総裁も言われましたように、金融規制、監督においても、金融の技術革新が進む中で、金融市場のリスクを十分に評価、対処できていなかった面があったこと等が原因と考えております。
こうした認識を踏まえまして、金融危機の再発防止、金融システムの強化に向けて、国際的な金融規制改革について、一昨年、G20首脳会議等の場で具体的な方向性が示され、その実施に向けた作業が着実に進んでいるというところでございます。
○佐々木(憲)委員 現在の投機的な資金の動きに対して、一定のルール、一定の規制というものが必要だと私は思っておりますが、今回のG20では、ヘッジファンドなど投機に対する規制、金融規制の強化というものがどのように検討されたのか、それから、国際的取り組みについてどのような検討が行われたのか、御紹介をいただきたいと思います。
○野田財務大臣 佐々木委員にお答えをいたします。
金融危機の発生以来、金融規制改革は、G20の主要議題の一つでございました。昨年のソウル・サミットに至るまで、国際的に活動する銀行の新たな自己資本、流動性、いわゆるバーゼル3への合意など、G20において幅広い合意がなされてきたところであります。
これまで、そういう検討をして、大体、合意がいろいろ出てきました。これ以降は、それぞれの各国の取り組みをいわゆる進捗管理をしていくということが大事になってくるのではないかなというふうに思います。
お尋ねの本年のパリにおけるG20のプロセスにおいては、システム上重要な金融機関について、すなわち、いわゆるSIFIsについての規制、監督の強化、それから、銀行業務の外で金融仲介を行うようなシャドーバンキングへの規制強化などについて、引き続き検討を行っていくということになりました。
これらの検討課題についても、G20として着実な成果を出していくことが重要であると考えています。
○佐々木(憲)委員 今回の声明を読ませていただきましたけれども、これはなかなか素人にはわかりにくい。言葉が非常に難しい。
例えばこういうことが書かれておりまして、我々は、シャドーバンキング及びシャドーバンキングと規制された銀行システムとの相互関係に伴うリスク、とりわけ裁定行為のリスクに実効的に対処するため、FSBが2011年半ばまでに策定することになっているシャドーバンキングの規制及び監督に関する提言に期待すると。
片仮名と漢字が大変多いものですから、頭にすっと入らない。要するにどういうことですか。
○自見金融担当大臣 今、野田財務大臣からもお話がございましたように、昨年の11月、ソウル・サミットの合意を受けて、今、佐々木議員も申されましたシャドーバンキングに関して、本年半ばまでに提言を策定すべく、その定義や、規制、監督及び監視のあり方について、今お話が出ました金融安定理事会、FSB等において議論されているところでございます。
我が国といたしましても、シャドーバンキングへの対応等を含む国際的な金融規制改革については、中長期的に金融システムの健全性の向上に資するものとなる一方、各国の金融システムの実情の違いがございますから、その違いを十分に踏まえたバランスのとれたものであることが必要であるというふうに思っています。また、実体経済への影響に十分配慮していくことが極めて重要であるというふうに考えております。
シャドーバンキングへの対応を含む金融危機の再発防止あるいは金融システムの強化に向けて、FSB等の場において、引き続き、こうした我が国の立場を主張しつつ、国際的に協調して取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 日銀総裁にお伺いしますが、このシャドーバンキングというものは、影の銀行、つまり、本来の銀行とまた違う部門といいますか、分野で金融活動を行うものだと思いますが、これは一体どんなもので、どのぐらいの規模のものが今世界じゅうにあるのか、教えていただきたいと思います。
○白川参考人(日本銀行総裁) お尋ねのシャドーバンキングのいわば定義でございますけれども、率直に言いまして、G20を初めとしてさまざまなフォーラムでの議論の場で、シャドーバンキングの定義それ自体が実は各人各様でございます。ただ、通常用いられています意味は、特に銀行がそうですけれどもそれなりにしっかりとした規制が行われている金融機関以外の主体が金融的な活動を行い、それが非常に大きくなってくる場合、これをシャドーバンキングと呼んでおります。
今回のグローバル金融危機では、例えば、ヘッジファンドあるいは投資銀行の活動の一部もシャドーバンキングというふうに言われるケースが多かったように思います。銀行に対して規制を強化しますと、相対的に規制のかからない主体が金融活動を行うということになります。
この規模でありますけれども、先ほど申し上げましたように、シャドーバンキングの定義自体が人によって違いますもので、正確にこれは幾らありますというふうには言えません。
ただ、各国の金融の仲介の中で、例えば銀行の割合がどれぐらい占めているのかというのを考えた場合、日本は圧倒的に銀行中心のシステムでありますのに対し、アメリカの場合は銀行のウエートが2割とか3割でございます。もちろん、残りすべてがシャドーバンキングではございませんけれども、その中で、ある範囲が多分問題になってくる本当のシャドーバンキングでしょうけれども、一応、そういうふうなレベル感でございます。
○佐々木(憲)委員 そうなりますと、世界の投機的な資金の流れをある程度規制するということになりますと、このシャドーバンキングに対してどういう対応をするのかというのは、大変重要な位置づけになるだろうというふうに思うんです。
この規制と監督について、日本政府としてはどのような主張をG20でされたのか、あるいは国内での取り組みはどのように行おうとしておられるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
○自見金融担当大臣 お答えをいたします。
今、白川総裁の御答弁の中にもございましたけれども、シャドーバンキングに関する定義すら実は今議論中だという話がありました。何がシャドーバンキングかということもまだ一概には申し上げられない状態でございますが、G20、FSB、証券監督者国際機構、IOSCO等において、これまでも、銀行システムの外における金融仲介に関する問題として、例えば、格付会社それからヘッジファンドの規制、監督のあり方等が議論されてきたところでございます。
我が国といたしましても、こうした国際的な論議を踏まえて、格付会社あるいはヘッジファンドに関する取り組み強化等を行ったところでございます。格付会社には、先生御存じのように登録制を導入いたしましたし、ヘッジファンドも登録制ということにさせていただいたわけでございまして、シャドーバンキングへの対応を含む金融危機の再発防止、金融システムの強化に向けて、引き続きG20、こういうことは御存じのように国際協調が非常に大事でございますから、そういったことにおける議論に積極的に参画しつつ、国際的な協調にも取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 この間、先進国で実施されてきたかなり大きな金融緩和、それから、それによって世界的に流動性が拡大をする中で、アメリカで追加的な金融緩和が実施される。こういう中で、全体として流動性が非常に拡大する中で、新興国、途上国に対して大量の資金流入が発生する、こういうふうに言われております。それが新興国のインフレーションの拡大につながったり、あるいは食料、資源の価格高騰、こういうものにつながっているというふうに思われます。
この日米を初めとする欧米諸国の金融緩和というものが、現在の一次産品の価格の高騰につながっている、そういう認識がどの程度おありなのか、この点を日銀総裁と財務大臣に確認したいと思います。
○白川参考人(日本銀行総裁) お答えいたします。
新興国のインフレ全般の話、それから商品市況高騰の話、両方密接に絡んでおりますけれども、一応、二つを分けて御説明したいと思います。
まず、新興国では、御指摘のとおりインフレ圧力の高い状況が続いております。これは基本的には、新興国経済が、旺盛な国内需要を背景に、生産と所得と支出の自律的な好循環メカニズムが作用しておるというもとで高い成長を続けていること、これがまず基本的な背景だというふうに思います。
加えまして、新興国において、全体に金融緩和の修正がややおくれぎみである、あるいは為替レート制度を固定的に運営しているということも、国内のインフレ圧力をなかなか抑え込めない一つの要因になっている。
先生御指摘の先進国の金融緩和の要因でございますけれども、新興国の高い成長を背景にしまして、先進国から資金が流入している、これも一つの要因になっているというふうに考えます。
商品市況でございますけれども、これも、新興国の高い成長がまず基本的な要因でございます。何よりも新興国は非常にエネルギー効率が低い、あるいは食料品の支出ウエートが高いということで、新興国中心の成長は商品市況を上げやすい、これは需要面から上げやすいということでございます。加えて、天候要因あるいは自然災害等の要因、いわゆる供給不安の要因もきいております。先進国の金融緩和の継続も、今申し上げた需要面、供給面の要因による上昇をいわば加速する、そういう要因の一つになっているように思います。
どの程度、先進国の金融緩和が新興国のインフレあるいは商品市況上昇の要因になっているか、その辺の認識いかんということでございますけれども、基本はこれは実需だというふうに思います。ただ、金融緩和の要因ということ、これも作用していることも事実だろうと思います。その際には、先進国の金融緩和も一つのファクターでありますけれども、一方で、資金を受け入れます新興国、この新興国は、最終的には、為替レートの調整あるいは自国の金利を調整するという手段も持っていることも事実であります。
いずれにせよ、先進国も新興国も、みずからのとっている政策が世界全体にどのような影響を与えるのか、それがまた翻って自国にどういうふうに戻ってくるのか、その辺をしっかり考えた運営が必要だというふうに思っております。
○野田財務大臣 各国の金融政策については、日本銀行も含めてそれぞれの国の中央銀行が、その時々の市場動向であるとか経済動向を踏まえて判断を行っているものと承知をしています。
なお、新興国においては、旺盛な内需や資本流入を受けた高い成長が続く中、インフレ傾向にあると承知をしていますが、これは白川総裁の御発言とも重複をするかもしれませんけれども、一次産品の価格上昇の背景としては、中東情勢のほか、新興国による実需の増加、天候不順、一次産品の金融商品化の影響など、さまざまな要因が指摘をされているところでございます。
いずれにせよ、一次産品変動については、今回のG20、このパリの会議がまさにキックオフの議論でございまして、さまざまな意見交換がありました。それを踏まえて、国際機関と協働しつつ、価格変動の要因や、消費国、生産国双方への影響について検討を深めることとされまして、そういう点については合意いたしまして、実際、こうした点についての分析を深めるための事務レベルのスタディーグループを設置し、そのグループの座長には日本銀行の中曽理事がつくというようなことが決まったということでございます。
○佐々木(憲)委員 この声明を見ますと、「我々は、この変動が食糧安全保障に与える影響に留意しつつ、途上国の農業セクターへの長期的な投資の必要性を改めて表明した。」こういうことが書かれております。
これは、食料安全保障、各国の食料主権といいますか、その重要性を確認したものというふうに思いますけれども、そのようにとらえてよろしいかどうか確認をしたいと思います。
○野田財務大臣 一次産品の過度な変動、いろいろな影響が出るというふうに思いますけれども、特に食料という意味に限っては、食料安保の議論も必要になってくると思います。それについては、G20の中のいわゆる農水大臣プロセスの中でこれから議論することになると思います。
それから、いわゆる低所得国への配慮、これも大事になってくるだろうと思いますが、これは外務相プロセスでの議論になると思います。
一次産品の高騰の問題、いろいろなことをあらゆる観点からやっていかなければなりませんが、それぞれのレベルでG20の中で議論をしていくということになります。
○佐々木(憲)委員 途上国では、小麦、米など主食となる農産品の価格が高騰して、食料不安、栄養不足などの深刻な事態が生まれております。みずからの国が自立するという場合の基礎的な課題として、食料の自国生産の確保というものを優先する、これが食料安全保障には必要なものだと考えております。
このG20において、日本政府は、食料安全保障について、食料主権の問題についてどのような態度をとったのか、この点を確認したいと思います。
○野田財務大臣 今回は、一次産品の取引価格の高騰、変動の要因分析をまずしていこうじゃないかと。先ほど、日銀総裁も私もいろいろなその要因の話をさせていただきました。そのためのスタディーグループをつくる。まずは、これはやはりインフレ懸念をみんな持っているわけですから、だから、むしろ金融政策に携わってきている中央銀行の皆さんが集まって、さっき中曽理事のお名前も申し上げましたが、まずその要因分析をしていこうというのが今回のキックオフの最大の合意でございます。
それを踏まえて、食料安保の話も含めて、それはまさにさっき御説明したとおり、農相レベルでの議論、これは6月に予定をされています。そういう議論になっていくと思いますし、低所得国、貧困国に対する対応、これは外務大臣プロセスになっていく。そういう役割分担をしながら、これから議論が深まっていくということでございます。
○佐々木(憲)委員 世界の飢餓の問題を考えましても、食料の問題というのは非常に重要な課題でありまして、各国の食料についての安全保障、各国の食料主権というものは非常に私は大事だと思っておりまして、これは先進国、途上国問わずしっかりと踏まえて対応しなきゃならない、そういうことだというふうに思っております。
それから次に、貧困や開発問題に取り組む非政府組織、NGOのオックスファムというところから、G20の開催に合わせて、金融取引税の導入、これを各国・地域の代表に求める文書を発表いたしました。この内容を見ますと、金融取引税は時代の要請です、最大で年間4千億ドルを調達することが可能だ、こういうふうに書いています。
具体的には、株式、為替、債権、デリバティブなどの金融取引に対して、平均して0・05%の課税を行うことを求めている。経済危機の影響で保健、教育、農業予算の削減を余儀なくされている国々へ支援を行うことが、これによって可能となるんだ、こういう提案であります。
私どもも基本的にはこれに賛成でありますが、投機資金の動きを規制するための一つの有効な手段だと思いますけれども、これについて、日銀総裁、それから財務大臣のそれぞれの認識、この評価をお聞きしたいと思います。
○白川参考人(日本銀行総裁) オックスファムからの書簡につきましては、これはG20へ送付され、ことしのG20プロセスにおいて金融取引税導入に向けた議論を進展させる要請がありましたけれども、今回のG20では、これ自体についての深い議論はございませんでした。
オックスファムの提案につきましては、これは、金融取引税を導入し、この税収入をもって貧困国への支援に活用するものというふうに認識しております。支援への活用という点については、私の、中央銀行という立場からコメントすることが適当ではありませんので、専ら金融取引税の導入という点についてお答えしたいと思います。
金融取引税の導入、特に為替取引に対する課税につきましては、これにより、短期的な取引を繰り返す投機的な資本の移動を抑制し、国際金融市場の安定を図ろうとする提案であるというふうに認識をしております。
ただ、もっとも、この提案を実施していく場合には、これは前から言われていることではございますけれども、取引への課税が市場の流動性あるいは効率性を低下させる可能性があることや、あるいは、タックスヘイブンも含めて世界各国がすべて足並みをそろえて課税することが難しいという実効性の問題、こうした問題を検討していく必要があるというふうに考えております。
○野田財務大臣 佐々木委員の御指摘のとおり、G20の開催に合わせてオックスファムからの書簡が送付されました。そして、ことしのG20プロセスにおいて金融取引税導入に向けた議論を進展させるような要請があったところでございます。
加えて、2月19日、いわゆる本格的な第一セッションのフレームワークの議論をする前に、サルコジ大統領によるレセプションがございました。そのレセプションの席上で、サルコジ大統領も、この金融取引税についてその実現に向けての決意は述べられました。
ただ、それが、金融取引税自体がG20の議論の俎上にのったかというと、まだそうではございません。レセプションで大統領はごあいさつされましたけれども、今回のG20ではその議論はしていません。
その評価についてでありますけれども、我が国の場合、平成23年度税制改正大綱において、通貨取引税等の国際連帯税について真摯に検討を行う、今こういう段階ということでございます。
こうした検討に当たっては、特に通貨取引税については、グローバルな執行が困難であることに加え、大量性、多様性、足の速さといった金融取引の特徴を踏まえることが必要ではないかというふうに考えています。
○佐々木(憲)委員 もう時間が参りましたので終わりますけれども、この金融取引税の問題は、ぜひ真剣に検討していただきたいと思います。
実効性、効率性、いろいろ問題があるということは言われておりますけれども、しかしそれは、そういう理由でこれを野放しにするという一方の流れもありますので、やはり今、国際的なこれだけの投機資金の大量の移動というもの、それから各国の国民生活にかかわる食料等の高騰、こういうことを考えますと、何らかのこういうルールというものを持ち込まないと、これはますます、いわば虚業が実業を破壊する、あるいは生活を破壊するということにもなりかねませんので、ぜひその点はしっかり検討していただきたいというふうに思います。
以上で終わります。