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税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券), 金権・腐敗政治, 景気回復 (法人税, 保険会社の不払い, 閣僚等の疑惑)

2010年09月08日 第176回 臨時国会 財務金融委員会≪閉会中審査≫ 【579】 - 質問

円高問題 生活をささえる政策に転換せよ

 2010年9月8日、佐々木憲昭議員は、政府・日本銀行の円高問題への対応をただしました。

 佐々木議員は、「円高対応」と称して大企業が下請け単価を切り下げ、非正規雇用の人減らしを行うと、内需がいっそう冷え込むと述べ、「それに歯止めをかけることが大事だ」と強調しました。
 野田佳彦財務大臣は「ご指摘の通り」と述べましたので、具体的な対策を迫りました。
 そのうえで、現状のままで日銀の金融緩和が効果を上げることができるのかと提起しました。
 日本の大企業が、売り上げも設備投資も低迷しているのに、内部留保だけは252・4兆円(昨年度)に伸ばしている現状を示しました。
 佐々木議員は、「消費を伸ばさなければ、いくら金融緩和で資金を出しても、日銀と銀行の中で滞留して、その先にすすまないという現状がある。GDP(国内総生産)の6割を占める家計を活性化しないと資金は流れない」と指摘しました。
 日本銀行の白川方明総裁は、「私どもも(大企業の)経営者から『手元資金は潤沢だが、問題は使う場所がないことだ』という話をしょっちゅう聞いている」と認めました。
 佐々木議員は、同様に法人税の減税も、内部留保や役員報酬、株主配当に回るだけであり、経済活性化にはつながらないと強調。「国民の生活をどう支え、下から需要を生み出すかという観点が大事だ」と強調しました。

 また、佐々木議員は、9月4日に報道された第一生命の保険金不払い問題について、自見庄三郎金融担当大臣に企業・団体献金の認識についても質問しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず配付した資料を見ていただきたいんですが、9月4日に、第一生命保険が、過去の保険金などの不払いが新たに見つかった、こういう報道であります。2007年当時は約7万件、189億円の不払いがあった。これは確認をされていた数字です。その後、最近再調査をされて、新たな不払いが見つかった。
 自見大臣にお聞きしますけれども、何件、幾らの金額が新たに発見されたのでしょうか。
○自見金融担当大臣 佐々木先生も御案内のとおり、保険会社の支払い漏れについては、平成20年でございますが、2年ほど前でございますが、生命保険会社10社に対して業務改善命令を出しまして、これを踏まえて、現在各社で業務改善を、現在でも進めておるところでございまして、その中で、所要の調査を実施し、必要に応じて、2008年の7月からでございますから、期間がございますから、順次個別に追加の請求案内を行っているところでございます。
 個々の保険会社の対応については、コメントすることは差し控えさせていただきたいと思っておりますが、御指摘の保険会社を含む各社は、この平成20年7月の業務改善命令以降でございますが、今でも継続的に調査を行っておりまして、順次追加的な支払いを行ってきており、その事実が報道されたのだというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、各保険会社に対し、過去の顧客からの請求漏れについてもさらに調査を実施し、個々の追加請求案内を迅速かつ適切に実施するように指導を行っているところであり、他の保険会社ですね、十社に対しましたからあと九社でございますけれども、他の保険会社についても同様の取り組みが行われているものというふうに承知をいたしております。
○佐々木(憲)委員 数字を言われないんですけれども、これはおかしいんですよね。2007年9月末時点では、各社の社内調査、当時あの不払い問題は大問題になりまして、社内調査をやった数字が金融庁によって公表されているわけです。ここに一覧表もありますけれども。
 こういうことは当然やるべきものであって、何か新たに発見されたものを隠す必要はないんじゃないですか。今調査をされているというのであれば、一定段階でその数字は公表する、過去もやってきたわけですから、当然それをやるべきだと思いますけれども、大臣の見解を聞きたいと思います。
○自見金融担当大臣 今御答弁申しましたように、継続的に追加的な支払いを行っているところでございまして、集計は個々にはしていないところでございます。
○佐々木(憲)委員 これは余りにもおかしな答弁で、各社がそれぞれやっているんだから、何件あるのか、幾らになるのか、不払いはわからないと。こんなことで、金融庁として監督ができるんですか。
 これは非常に重大な問題で、新聞報道、きょうお配りした資料にもありますが、「第一生命の不払いをめぐっては昨年以降、複数の職員が「幹部が不払いを隠している。さらに数万件の不払いが存在する可能性がある」と金融庁に内部告発していた。」こういうふうに報道していますね。
 数万件というのは大きいですよ、それは何百件とか何十件という話じゃないんですから。数字を出すのは当然じゃないんですか。何で隠すんですか。
○自見金融担当大臣 答弁申し上げますけれども、公益通報があったということは事実でございますが、今、業務改善命令を出して継続的に順次そのことを、業務改善命令に従って継続的に調査を行っていただいているものでございますから、当然、業務改善命令が終了いたした時点ではきちっと発表するということにいたしております。
○佐々木(憲)委員 この問題をめぐりましては、2007年当時、政界工作が行われたという疑いがありまして、私も前回の当委員会で指摘をいたしました。不払い問題が余り大きくならないように議員に働きかけた。それから、この財務金融委員会の質疑時間についても、短くせよ、参考人の数を減らせ、こういう形で政界工作を行って、実際にそれが強行された。我々としては極めて重大だと思っておりまして、それに反対をしておりましたが、特定の生保にこの疑惑がかからないように、突出しないように平準化させるとか、そういう疑いもあるわけです。
 したがって、これは徹底した調査が必要だと私は思います。当然、この不払いの金額、件数、各社について、当委員会に数字を報告すべきだと思いますので、委員長、理事会で協議をしていただきたいと思います。
○海江田委員長 ただいまお申し越しの件につきましては、理事会で協議いたします。
○佐々木(憲)委員 自見大臣にお聞きしますが、大臣は、銀行あるいは生命保険会社、損保保険会社、こういうところから政治献金を受け取ったりパーティー券を購入してもらったことはございますか。
○自見金融担当大臣 私の政治活動に関しましては、広く浅く多くの方々から、適法に、法に従って浄財をいただいておりまして、金融担当大臣をする前の話でございますが、過去の私のパーティーにおいては、保険会社を含め、若干のパーティー券を買っていただいているということを私の事務局から報告をいただいております。
○佐々木(憲)委員 これは具体的な数字を報告していただきたいと思います。
 野田大臣の場合は、前回、私も同じことをお聞きしたんです。そのときは、平成19年に一回政治資金パーティーをやった、銀行からは2万円、損保の会社からは4万円と、非常に、金額としては少ないと思いますけれども、誠実に数字を出していただきました。自見大臣もそのようにされていただきたいと思います。
○自見金融担当大臣 佐々木先生御存じのように、政治活動の自由というのがございまして、当然、国民はいろいろな各種の選挙に立候補する自由もございますが、同時に、各種個人も、いろいろな企業、団体も、今の法律では、自分の政治的な参加をするといいますか、応援する自由がございます。
 今、先生は具体的に明らかにせいということでございますが、私はそこまで、20万以上はたしか公表だと思いますが、それを超えた部分はございませんけれども、私も大体、保険会社については数万円程度でございますが、具体的に今手元に持っておりませんので、大変強い御意思があれば当然委員会の理事会に諮って、当然ですが、きちっと報告をさせていただければありがたいなというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 何かちょっと歯切れが悪いですね。数万円というのであれば別に隠すことも何もないと思いますから。
 問題は、銀行、保険の所管をする大臣なんですから、疑惑が持たれないようにすべて公表して明らかにする、これは当たり前だと思いますよ。そうしなければ、強い姿勢でしっかりとしたルールに基づく監督というのはできないと思うんです。
 そういう意味で、先ほどの歯切れの悪い答弁というのはそういうところにも原因があったのかなと思わざるを得なくなってきますからね。だから、その辺はちゃんとしなさいよ。私はそう思います。
 次に、話題をかえまして、日銀総裁にお聞きします。
 円高が短期間に急速に進んだ理由についてはこの委員会でも説明をいただきましたが、日本経済への影響についてどのように判断されているか、まずお聞きをします。
○白川参考人(日本銀行総裁) 円高の影響についての御質問でございますけれども、一言、円高の背景について御説明申し上げます。
 日々さまざまな要因を反映して変動しておりますけれども、最近の円高は、世界経済の先行きをめぐる不確実性の高まりから、グローバルな投資家のリスク回避姿勢が強まっている。そうした中で、相対的な安全通貨、安全資産として、円、スイス・フラン等が買われているというふうに思います。
 この急速な円高の影響でございますけれども、円高は言うまでもなく、輸出企業を中心として、輸出あるいは収益に影響を与えてまいります。そのことがまたマインドにも影響を与えていくということで、当面、私どもは、景気の下振れリスクを構成する一つの大きな要因だというふうに認識しております。
 私どもとしては、こうした円高、まあ円高だけではございませんけれども、その背景にあります世界経済の不確実性、なかんずく米国経済の不確実性、それから、そのもとで生じている円高、株安等々の影響も含めて、しっかりと点検していきたいと思っています。
○佐々木(憲)委員 野田大臣にお伺いしますけれども、急激な円高になりますと、それに対応するということで、製造業を中心に大手企業が下請に対して単価をたたく、あるいは、非正規雇用に対しては、いきなり人減らしをする、リストラを行う、こういう形で、労働者と中小企業に非常に大きな影響が出るわけです。
 そういうことに対してしっかり歯どめをかけないと、まさに内需そのものが急速に冷えてしまう、最終的な家計消費というものが冷えるということにつながりますので、それに歯どめをかけるということがやはり政治的行政の上でも大事なことだと思いますけれども、どのようにお考えでしょうか。
○野田財務大臣 佐々木委員の御指摘のとおりだというふうに思っていまして、円高の進行と長期化というのは、もちろん、輸出関連産業は輸出が減少し企業収益が悪化する。そのことにかかわる中小企業、特に下請の企業には大きな影響が出てくると思いますし、雇用の問題にも深刻な影響が出てくると思っております。
 そういう危機感を持ちながら経済対策の基本方針をまとめましたけれども、為替の問題にも対応するべく、こうした雇用の問題、中小企業の問題を視野に入れた対策をしっかり講じていかなければいけないというふうに思っています。
○佐々木(憲)委員 問題は、具体的にどうするかということなんですよね。これはやはり、特に大きな力の強いところが、そういう合理化、リストラということを、これを契機にやりますと、影響が社会的に非常に大きく広がりますので、やはりそこに歯どめをかけるということが大事だと思うんです。具体的な方策は何をやりますか。
○野田財務大臣 これは、具体的な方策を10日に閣議決定することに至って、今、最後の詰めのところをやっているところでございますが、国内の立地促進であるとか、やはり空洞化につながらないような措置をどうするかということと、それから、やはり雇用の問題に焦点を当てて対策を講じていくということで、財源はもう経済予備費を活用するということになっていますが、今それは最終的な詰めの段階でございます。
○佐々木(憲)委員 下請単価を切り下げるとか、労働者に対していきなり雇用不安を招くようなことをやる、それに対して具体的な歯どめがないといけないと僕は思うんです。一般的な財政による雇用創出のような、ばくっとした話では、今の急激な円高に対応する企業行動に対して対応できないというふうに思うので、そこはしっかりやっていただきたいと思っているところでございます。
 さて、では次に、白川総裁に、円が何で今こんなに買われるのか、相対的に、日本の経済あるいは金融資産の安全性ということに対して、日本は良好な状況にあるので、経済不安のある欧米から資金が流れてくる、こういうふうにおっしゃいましたが、日本経済の中でやはり一番大きな不安要因というのは、先進国の中で財政赤字がGDP比で世界最大である。これは、菅総理に言わせると、ギリシャのようになったら大変だ、こういうふうな話もされているわけです。
 にもかかわらず円が買われていくということは、この財政状況というのはそれほど悪いものとは評価されていないのではないか、まだ余力があるのではないか、相対的なことですけれども、こういう評価を受けているというふうに見ていいのかどうか。
 これは、総裁の立場からどうかというのはあるとしても、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
○白川参考人(日本銀行総裁) 大変に難しい、しかし非常に重要な問題だというふうに常々考えております。
 世界経済の不確実性が増すときになぜ日本の円が安全資産として買われるのかということについては、いろいろな議論がございます。
 私自身が海外の当局者と、あるいは投資家と話して感じますことは、これは本当の危機のときに何が起こるのか、一国で何が起こるのかということを想像してみますとわかりますけれども、危機はすべて資金繰りからやってきます。金融機関もそうですし、一国も、これは資金繰りでございます。リーマン・ショックもそうでしたし、それからギリシャも、これは資金繰りであります。円については中央銀行がございますけれども、外貨については、日本銀行がドルを直ちに供給することは、これは原則としてできないわけであります。
 日本の対外債権の構造を見てみますと、経常収支の黒字の累積を背景に、これは対外的に債権の方が債務を上回る純債権国でございます。今、この純債権の金額は対GDP比で50%でございます。そういう意味で、危機のときに一番問題になる外貨の資金繰りという意味では、日本は先進国の中では最も強固な国であります。この強固な国であるということは、不確実性が増すときに円高という形であらわれてくることにもなります。
 それでは、財政バランスが非常に悪いときに、なぜ強固だというふうに見られるのかということでございます。
 今、国債金利を見てみますと、日本の国債金利は御案内のとおり1%前後でございまして、低位かつ安定的といいますか、足元はまたさらに低下してきたということでございますけれども、このマーケットの動きから見てみますと、これはマーケットの動きからの結果論といいますか類推でございますけれども、今のところ、我が国の財政状況が市場の大きな不安定要因として強く認識される状況には、そういう投資行動にはなっていないということであります。
 では、それはなぜなのかということでございますけれども、これは、財政バランスが日本は非常に悪いわけですけれども、にもかかわらず、日本の当局それから国民は最終的にはこの財政バランスの問題にきちっと対応していくという認識があるということだと思います。
 もう一つは、日本の中央銀行である日本銀行が、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現という目標をぶらしていない、しっかりその目標を目指して政策を行っているという信認だというふうに思っております。
 逆に言いますと、この二つが当局としては非常に大事だというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 対応ですけれども、この日銀の金融緩和というものが効果を上げることができるのかということなんです。
 お配りした資料をちょっと見ていただきたいんですけれども、大企業の内部留保の推移をグラフにし、また関連資料をもう1枚、3枚目のところにつけてありますけれども、この間、利益剰余金、資本剰余金というのは非常にふえてきているわけですね。引当金を入れるかどうかという議論はあるけれども、仮に入れても、このふえ方は大変なものでありまして、09年度で252兆4千億円であります。このリーマン・ショック以降の非常に経済的には厳しい状況の中で、これだけ大企業の内部にため込んだ利益はふえ続けているわけであります。
 3枚目の表を見ますと、有形固定資産、設備投資の部分でありますが、これは非常に低迷しているわけです。それから、右の方にありますが売上高、これは横ばいであります。つまり、経済危機の中で消費がふえない、売り上げが伸びない、したがって設備投資がふえない、むしろマイナスである、この数年間。
 こういう中で、投資その他の資産というものが急激にふえているわけです。この投資の中には、株式もありますし債券もあります。そういう金融資産が急速にふえてきている、また内部留保がふえ続けている。これが大きな会社の実態、平均的な実態であります。
 そういうときに、総量的な金融の緩和をやっても、確かにだぶだぶと資金は出ていくとして、どこに滞留しているかといえば、銀行に滞留する、日銀と銀行の中に滞留している。その先に進まない。進まないのは、銀行の貸し出し姿勢にも問題はもちろんあると思います。同時に、その先の最終的な需要、家計を中心とする、GDPの6割を占めるその部分が活性化しないものですから、当然、消費が伸びない。たまりにたまっている。これをどのようにして、先にその資金が流れるようにするかというのが、経済全体のマクロ的な政策判断として大事なことだと思うんですね。
 この緩和というのは金融面での措置ですけれども、これが経済全体に効果を上げるかどうかというのは、その末端の部分の政策との関連が大変大事な問題だ。したがって、金融だけでは限界があると私も思います。
 その点については、どのようにお考えでしょうか。
○白川参考人(日本銀行総裁) まず金融政策の話、それから金融政策以外の話ということでお答えをしたいと思います。
 日本銀行は、先ほど来申し上げますとおり、強力な金融緩和を行っております。これは企業の資金調達コストを低下させるとともに、先行きの資金調達に対する安心感を高めるということで、これは企業活動をしっかり下支えしているというふうに思います。
 それから、金融機関の貸し出し態度、あるいは企業の資金繰りも、これはもちろん厳しい先も残っておりますけれども、しかし、全体として見ますと、かなり改善をしてきたということでございます。
 先生御指摘のとおり、特に大企業については、手元資金は今は非常に潤沢でございます。これは各種の統計でももちろん確認できますし、私どもが企業の経営者と会いますと、手元に資金は潤沢にあります、問題はこの資金を使う場所がなかなかないんですということを、金融機関の経営者からも企業経営者からも、これはしょっちゅうお聞きします。
 実は、この現象は日本だけではなくて、アメリカも今全く同じことが起きていまして、アメリカの企業、特に大企業のキャッシュフローは非常に潤沢でございます。
 なぜこれが実物投資に向かっていかないのかということでの御質問でございます。
 私はこれは、少し中長期的な話とそれから短期の話とありますけれども、中長期的なことからいきますと、これは日本経済について言いますと、やはり成長力が低下をしてきているということだと思います。そういうもとで、将来に対してなかなか自信が持てないということだと思います。この点については、政府の方でもさまざまな取り組みをなされているわけですけれども、成長基盤を強化していくということが大事だと思っています。
 それから、もう少し短期的な面でいきますと、これは今申し上げた大きな話とは別に、やはり先々について不透明感があるということでございますから、その不透明感をできるだけ取り除くことは、これは大事でございます。日本銀行の金融政策だけで解決するとは思いませんけれども、しかし、金融政策の面からすると、この不確実性を取り除くということが、少しでも企業家がいろいろな活動に取り組むことを後押しすることになるというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 野田大臣にお聞きします。
 このような大企業の実態、つまり内部に利益をどんどこため込んで潤沢に資金がある。日銀が緩和しても、そんなにその資金の投資先がふえるわけじゃありません。したがって、この投資先をどうふやすかということを考える場合には、先ほど私が申し上げましたような、経済の最終的な需要の部分に対してどういうふうに手を打つかというのが非常に大事なことだと思うんです。雇用の問題にしても社会保障の問題にしても、基本はそこにあるというふうに思うんですね。
 同時に、企業に対して、例えば法人税の減税の議論があります。法人税の減税をしても、企業のそのような状況を考えると、それは一体どうなるのかといえば、同じようなことになるわけでありまして、例えば、内部留保にたまってしまうとか、あるいは、カルロス・ゴーンのような社長にぼんと報酬が配られるとか、株主の配当をやるとか、そういうところに消えるといいますか流れていくわけであって、本当に経済を活性化する方向に行かないというのが問題なので、法人税の問題はそういう角度からも扱うということが私は必要だと思う。だから、今減税をやる必要はないと私は思っております。
 そこで、この法人税の問題に少し具体的に入ります。
 日本の法人税は高い高いと言いますけれども、表面的な実効税率だけであればそういうふうに見えないことはない。しかし、政策減税がさまざま行われております。研究開発減税その他ですね。そのために、実際の大企業を中心とする税負担はそんなに重くはない。
 例えば、日本経団連の税制問題の担当者であります経済基盤本部長が、日本の法人税は見かけほどは高くない、表面税率は高いが、いろいろ政策減税あるいは減価償却から考えれば実はそんなに高くない、今でも断言できますが、特に製造業であれば欧米並みであります、実際の財界の中心で税制を担当している方がこのようにおっしゃっているわけなんです。
 我々が試算したところによりましても、40%といいますが、実質的には30%台、30%の前半、こういう結果が出ているところであります。その点を、さらに今度は社会保障の負担との兼ね合いまで入れますと、国際的に見て日本は決して高いものではないというふうに思うわけです。
 それで、数字を確認しますけれども、対GDP比で法人所得課税の税収と社会保険料の事業主負担の合計で、日本はドイツ、フランス、スウェーデンと比較して高いのかどうか。
 それから、業種的にいって、自動車産業、エレクトロニクス産業、情報サービス産業、この三つの産業で、国税、地方税、社会保険料を合わせた負担は、ドイツやフランスと比べて日本は高いのかどうか。この数字を確認したいと思います。
○野田財務大臣 数字にかかわるお話なので、これはちょっと正確に申し上げたいと思います。
 まず前段の、法人所得課税の税収と社会保険料の事業主負担の合計対GDP比ということでございますが、日本は9・5%。
 それで、フランスは14%、スウェーデンは13・5%ということで、フランス、スウェーデンは日本より高い。
 ドイツは8・5%、イギリス7・1%、アメリカ6・4%。ドイツ、イギリス、アメリカについては日本より低いということが数字では出てまいります。
 それから、自動車産業、エレクトロニクス製造業、情報サービス産業、この三つの産業についてのお尋ねでございますけれども、若干古いんですが、平成18年に財務省が行った委託調査によりますと、自動車製造業、エレクトロニクス製造業、情報サービス産業について、我が国の法人所得課税と社会保険料を合わせた法人負担は、ドイツ、フランスと比べて低い水準であることが示されたというふうに承知をしています。
 委託調査は、前提条件の置き方によっていろいろ負担は変わるんですが、平成18年の試算結果ではそういう結果が出ております。
○佐々木(憲)委員 したがって、日本の法人税が高い高いというふうに言いますけれども、これは事実を正確に見て言わなければならないというふうに思いますし、法人税をどんと下げれば何か景気がぱっとよくなるような、そんな関係にはないというのは先ほど言ったとおりであって、大事なことは、国民の生活をどのようにして支え、そこから、下から需要を生み出していくか、その観点が大事なことだという点が、私がきょう申し上げたかったことでございます。
 以上で終わります。

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