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税制(庶民増税・徴税) (消費税, 法人税, 大企業減税, 証券優遇税制)

2010年02月24日 第174回 通常国会 財務金融委員会 【553】 - 質問

証券優遇税制の是正 「問題意識は共通」と財務副大臣答弁

 2010年2月24日、財務金融委員会で国税関連法案について質疑が行われ、佐々木憲昭議員も質問しました。

 佐々木議員は、高額所得者の負担を重くする所得税の累進性が自民・公明政権により崩されたと指摘し、証券優遇税制をすぐに止めよと要求しました。
 政府資料をもとに、所得額が1億円を超えると税負担率が低下しているが、その要因の一つが証券優遇税制だと強調しました。
 峰崎直樹財務副大臣は、22日の記者会見で「(証券優遇税制の)税率を早く元に戻してほしいということは必要なのではないか」と述べていることも示し、「(税制大綱の期限である)来年12月以前に前倒しして引き上げるのか」とただしました。
 峰崎財務副大臣は「技術的には難しいが、できるだけ早く引き上げたいという問題意識は共通している」と述べました。

 佐々木議員は、大企業・大資産家減税がこの10年間で40兆円になる一方、小泉内閣以来の「構造改革」路線のもとで、税・社会保障・教育など、庶民負担が年に13兆円も増大してきたと指摘し、「いま大事なことは、所得再配分機能を強めて、大手企業や大資産家に過度に蓄積された富を、税制や社会保障などを通じて、低所得者へ適切に移転させることだ」と求めました。
 菅直人財務大臣は「大きな見方では一致している。だが、日本経済の発展を考えた議論も必要だ」と答弁したのに対し、佐々木議員は「日本経済はこれまで輸出拡大に依存してきた。しかしリーマンショック以来の輸出の冷え込みに中で、家計に光を当てた内需拡大策に抜本的に変えないと、将来の日本経済の成長はしっかりしたものにならない」と家計をあたためる必要性を強調しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 議題となりました法案は、政権交代後初めて提案された国税関連法案であります。民主党中心の新しい政権が税制をどのように変えようとしているのか、それを確認するために質問をさせていただきます。
 まず、初歩的なことですけれども、税金をどこからどう集めるか、これは政権の政治姿勢にかかわる中心問題でありまして、国の財政基盤を確立する上で大変重要な課題であります。そこで、菅大臣にお聞きをいたします。
 税金というのは本来、所得あるいは利益のあるところ、その中から一定部分を納めるというのが基本だと思うわけです。つまり、所得や利益のあるところに応分の負担を求める、これが基本だと思いますが、いかがでしょうか。
○菅財務大臣 所得があるところに負担を求める、利益があるところに負担を求める、さらに、場合によっては、その範疇に入るのかどうかわかりませんが、資産とかそれ以外の場面もあり得るのではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 相続税その他の場合も資産課税ということになりますが、そういう場合も、資産というものがあって、それを売却して納めたり物納で納めたり、不動産の場合はですね、そういういろいろなことがあると思います。
 しかし、所得とか利益の全くない方に幾ら税金を納めなさいと言っても、お金がないわけですから、当然生活費を切り詰めたり、あるいは中小企業の場合は、経営に非常に大きな負担をかけてしまって営業が困難になる、そういうことになりかねないと思うわけであります。
 こういう角度から消費税という問題を考えてみたいと思うわけです。
 消費税は、所得のある人もない人も、買い物をするたびに5%税率で負担をするものであります。ですから、負担率ということになりますと、所得の低い階層であればどうしても負担率が高くなってしまう、高額所得者になると負担率は逆に低くなる、こういう逆進性を持っていると思うんです。
 お配りした資料の一枚目を見ていただければわかりますが、一番下に税率が書いてありまして、左側が5%、これは現行であります。この5%のところを見ますと、年収が269万円以下、低所得者、この場合は、負担率は3・44%になります。平均して2・20%。しかし、高額所得者の場合は、年収例えば774万円以上の部分になりますと1・69%、こういう負担率になるわけです。これは家計調査年報の全世帯の統計をもとに試算をしたものであります。
 仮に、税率が引き上げられるという場合、どうなるか。倍の10%になったといたしますと、下の10%のところをずっと上の方に見ていただきますと、低所得者の場合の負担率は6・88%、高額所得者は3・38%。これは開きが非常に大きくなるわけであります。したがいまして、消費税というものは逆進性を持っており、貧富の格差が、これを上げることによって一層拡大する、こういう性格を持っていると思うんですが、菅大臣はどういう御認識でしょうか。
○菅財務大臣 お配りになったグラフは、この差が出るというのは消費性向の差が原因なんでしょうか。ちょっと今見ただけなので、そうなのかなと思いました。
 消費税については一般的に、所得が低いほど負担感が強いといういわゆる逆進性が指摘されておりますことはよく承知をしております。
 22年度の税制改正大綱においても、今後、社会保障制度の抜本改革の検討などとあわせて、これは他の税ももちろんですが、消費税のあり方も検討していく中で、こうした逆進性対策も含めて検討してまいりたいと思っております。
 このグラフの意味はちょっと、単純に今おっしゃったように理解できるのか、一般的には低所得者ほど消費性向が高いわけですから、逆に言うと、消費に対してかかるということでこういう形になっているのかなと。ですから、それは、率という言い方もありますが、消費性向の差ではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 簡単に言いますと、低所得者の場合は、日常の生活費、購入の場合に一定の金額が必要なわけですね、暮らしていく上で。それが、高額所得者になりますと、その部分は確かにふえますけれども、しかし、そんなにがばっと大きく、どんとふえるということはないわけでありまして、比率からいうと負担率というものは相対的に小さくなる。ですから、そういう意味で、逆進性ということは以前から指摘をされていましたし、今菅大臣もお認めになったことであります。
 やはり増税ということをやりますと、その格差というものはどんどん開いていきますから、これは格差拡大になるわけです。そういう点で、私たちは消費税の増税ということは反対であります。
 さてそこで、税は所得、利益のあるところから納めてもらうということが私は基本だと思っておりまして、そういう意味では、直接税中心という考えが基本原則でなければならないと思っております。
 次に、課税最低限の問題です。
 これは本会議でも少しお伺いしましたけれども、もともと所得控除、とりわけ人的控除という場合、納税者本人とその家族の最低限の生活を維持する、そういう費用、生活費、ここの部分には課税をしないという考え方、つまり生計費非課税という考え方が基本にあると思いますけれども、いかがでしょうか。
○菅財務大臣 所得税においてはこれまで、税負担面のみを勘案し、基礎控除や人的控除等の控除額を積み上げた結果を、その水準以下では課税されず、その水準を超えると課税が始まる水準として、いわゆる課税最低限としてきたことはもちろん御承知のとおりであります。
 お尋ねの、最低限の生活費というのをどのようにとらえるかについて若干の議論があると思いますが、今回の子ども手当など、基本的な方向として、所得控除から手当へとの考え方で見直しをしているところです。単に、課税が始まる水準で物を見るのか。手当がある場合には、逆に言えば、手当という形で収入があるわけですから、それをどのように勘案していくのかということもあると思います。
 それから、今言われました、最低限の生活費用というものを税の一つの基準にするという考え方について、過去の政権の税調の答申などをずっと見ておりますと、そういうものは一つの観点としては当然あるわけですけれども、一方では、公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要なども踏まえて、総合的に検討していく必要があるという指摘もありますし、そういうこともあわせて議論する必要があるのかなと思っております。
○佐々木(憲)委員 生活費に課税をすることは、生活が破壊されるといいますか、そういうことにつながりかねませんので、私は、生計費というものをしっかりベースとして押さえて、その部分には課税をしないという基本原則に基づいて政策を発想するということが大事だと思います。もちろん給付の問題はあると思いますが、しかし、税というものの基本的な考え方というのはそういうものでなければならぬというふうに思っております。
 控除から給付へということが民主党の基本政策になっていますが、この生計費非課税の部分を崩して給付を拡大する、それ以上拡大するからいいじゃないかという発想かもしれません、そういう考えなのか。それとも、生計費非課税という基本的な考え方は大筋変えずに、その基本の上で給付の問題を考える、こういうことなのか。そこを菅大臣に確認したいと思います。
○峰崎財務副大臣 先ほど菅大臣からお答えがあったとおりなんですが、ちょっと私は別の観点から佐々木委員にお話をしたいんです。
 それは、いわゆる所得控除と言われているものが積み重なっていくわけですね。基礎控除、配偶者控除あるいは扶養控除、それで課税最低限が決まっていくわけです。そうすると、いわゆる控除が、限界税率の高い方は非常にきくわけであります。すなわち、4割の限界税率であれば、38万掛ける0・4を掛けていただくと、それだけ実は恩典が高いわけであります。それはよくおわかりだと思います。
 つまり、そういうところを考えると、現行の課税ベースを見たときに、かつては税額控除からスタートして所得控除へ、こう来ていたわけです。世界的に見ても今大きな流れになっているのは、そういう所得控除方式から税額控除、さらには給付つき税額控除、そういう大きな流れがある中で、私たちはその第一歩をことしの税制改革から進めていった、こういうことでございますので、課税最低限というのは下がっていきますけれども、実はそのほかに税額控除が手当として入ってくる、これはしっかりと頭の中に置いていただきたいということを先ほど来菅大臣も強調されているところでございます。
○佐々木(憲)委員 私の考えでは、生計費非課税という原理原則というものは余り軽々に崩してはならないと思っておりまして、給付はさらにそれに上積みをする形で、つまり、その基本ベースのところの考え方というのはきちっとしていただきたいというふうに思っております。言われることはよくわかります、説明は。
 さて次に、所得や利益が大きければそれに応じて負担をしていただく、所得の少ない世帯に配分をする、いわゆる所得再分配機能というのがあると思います。自民党、公明党の政権のもとで、この所得再分配機能というのが非常に低下してきた。これは、前回菅大臣にも確認をしたところであります。
 配付した資料を見ていただきたいんですが、例えば、これは税調に出された資料ですが、申告納税者の所得税負担率であります。これを見ていただいておわかりのように、私も大変驚いたんですが、所得金額が1億円を超えると税負担は急速に低下をする形になっておりまして、1億円の所得者の負担率は26・5%でありますが、100億円を超えるとなぜか14・2%。これは、高額所得者になればなるほど税が少なくなる、こういう逆転現象が起こっておりまして、10億円の所得者の税が1200万円の所得者とほぼ同じだというのも、これはいかがなものかと思います。
 菅大臣に感想を聞きますが、このグラフを見てどういう感想をお持ちですか。
○菅財務大臣 私などは、固有名詞を出すとあれかもしれませんが、松下幸之助さんが大変たくさんの税率で払われていて、高い所得の方は、何か手数料だけを残してあとは全部税に持っていかれるような気持ちになると言われていました。
 大体、累進課税というのは上へ上へと上がっていくものだという認識がありますので、そういうことで考えますと、今の税制が、そういう時代からいうと大きく変わってきている。100億という人はなかなかいないかもしれませんが、それにしても、1億より多い人が下がるというのは、直観的にはどういうものかなと若干の疑問を感じます。
○佐々木(憲)委員 私なんかは、これは大変な疑問を感じるわけであります。
 このような高額所得者の負担軽減というのがもたらされた最大の要因の一つは、やはり証券優遇税制というようなものがあると思います。株式の譲渡益あるいは配当所得、この税率は、本来20%だったのが10%に軽減されております。これには所得制限がありませんから、億単位の減税を受ける、こういうことになっているわけですね。
 例えば、資料の三枚目、次のページを見ていただければわかりますけれども、本当に極端に、株式譲渡所得などは、株を持って運用して、高額の運用をしていればいるほど減税が入り込んでくるというような、これは配当も同じでございます。これは余りにも減税の大盤振る舞いではないのか。だから、政府の税制改正大綱でも、所得税の実効税率は累進性を喪失している状態となったと書いていると思うんですね。
 この点について最近峰崎副大臣が、報道によりますと、22日の記者会見で、株式譲渡益や配当に適用している10%の軽減税率についてできる限り早目に解消していく必要がある、このように述べたと伝えられております。
 今のこの制度は来年の12月まで適用されるということになっていますが、このできる限り早目にという意味は、それより前倒しする、そういう意味でおっしゃったんでしょうか。確認したいと思います。
○峰崎財務副大臣 佐々木委員、本当に問題意識は、私どもは、税制を議論するときは絶えずこの問題に振り返ってきたわけであります。
 実は、今年度の税制改正時にも、本来ならば早める必要があるという前提で議論したわけであります。ただ、今日の証券優遇税制というのは、こういう高額所得者の方々を対象にしているというよりは、どちらかというと、やはり大衆的にもっと株式市場を活性化させなきゃいけないという、かなりそういう政策的な判断が優先されてきた。
 日本版ISAも実はそういう形で、自公の政権時代はこれを5年間と言っていましたけれども、これは本当に、株式に個人株主が入るか入らないかをしっかりと私たちは点検しようということで、それを3年間というふうに絞ったわけであります。
 いずれにせよ、今の税制というのは、事実上来年の12月までということになっております。そこから翌年になると、自動的に20%に戻ってまいります。私は、そういう意味で、これを早めることができるかどうかというのは実は、本来ならばこれは日本版ISAが入るときと同時というふうになっていますので、なかなか難しいのかなというふうには思っています。
 ただ、今審議をしていただいていますけれども、これは来年の12月までの税制改正になっておりますので、それを早めるというのは技術的にはちょっと難しいのかなというふうに思っておりますが、問題意識といいますか、景気の動向あるいは株式市場の動向なども、私はやはり佐々木憲昭議員と同じように、14・何%まで下がっているというのは、これは要するに限りなく10まで行っちゃうんですよね。ですから、できる限り私たちは、まずは20%へ戻していくというのを先行させたいというふうに思っておりますので、その点の問題意識は非常に共通しているんじゃないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 大衆課税を軽減するというようなお話がありましたが、私がお配りした三枚目の表を見ていただければわかりますように、譲渡益の部分についていいますと、わずか全体で4・5%の方々に69・2%の所得が集まって、ここに減税がどんと行っているわけですから、減税だけで1606億円、全体の大部分の減税がごく一部の高額所得を得ている方々に集中している、7割が所得5千万円を超えるところに行っている。これはやはり、大衆減税なんだとちょっと言えないと思っております。
 今の説明によりますと、来年12月までというのを早めたい、技術的に早まるかどうかという話がありましたが、本来ならすぐやめなきゃならぬですよ、こういう減税は。だから、別にほかの税制との関連というのは考えておられるのかどうか知りませんが、これ自体も独立して、やはりこんな異常な状況は解消するということを、せっかく政権がかわったんですから、そのぐらいのことに踏み出すというのが当然だと思うんですが、どうでしょう。
○峰崎財務副大臣 先ほど指摘があった証券優遇税制による減税額試算ですが、私もこの数字は見ておりますけれども、実は、一番大きいのはIPO、すなわち株式を公開して企業が上場して、その株式を譲渡して、そしてそこで創業者利得を得る。それも10%。IPOはかつて、ベンチャーの場合は5%だったわけでありまして、そういう意味で、そこが10%になっていること自体も変えていかなきゃいけないと私は思っています。
 しかし、これももちろん20%になっていくわけですけれども、その際やはりもう一つ、IPOが、つまり企業がどんどん公開されていく、株式がベンチャー企業から公開されていく、そういうときの株主の皆さん方に創業者として利得が入っていくということは、これは、企業をつくって、そこへ非常に投資をして、この会社は本当にもうかるかもうからないか、わからないけれどもリスクをかけているわけですから、そこは私は、ある意味ではこれは金持ち優遇だというふうにだけは言えない。もちろん、10%がいいと言っているんじゃないですよ。そういう意味で、これは譲渡益が配当よりも圧倒的に多いと思います。そういった点は、しっかりまず見ておいていただきたいなというふうに思うわけであります。
 そういう意味では、すぐにでもという気持ちは、私も佐々木議員と問題意識は同じゅうしております。所得再配分機能を高めるためにも、まずそこをやろうというふうに思っておりますが、日本版ISAの問題を含めて、かなり証券市場は先取りして、この問題はもう既に設備投資をし始めているというふうに聞いていますので、この点やはりなかなか、さっきテクニカルの話をしたというのは、そことの連動をやや意識し、また株式市場が1万円を割るような昨年秋の状態でございましたので、そういったことも含めて、ある意味では考慮したというところでございます。
○佐々木(憲)委員 株価を上げるために減税というような話がありますけれども、減税、つまり税が重いから株価が下がっているわけじゃないんですよ。重くなれば下がるという話じゃなくて、これはやはり経済全体の活性化というものが基本であって、それを何か税の方に責任を持ってくるというのが間違っていると私は思います。それはそういうことであります。
 早くやるというわけですから、もう決断をする。菅大臣、いかがでしょうか。
○菅財務大臣 特に今、株の譲渡益、さらには配当というところに焦点を当てての議論ですけれども、確かに株式市場の活性化というのはいろいろな要素がありますが、少額の株を頻繁に取引している個人投資家もあるわけでありまして、そういう意味で、全部を一括で議論ができるのか、若干その性格は分けて考えなければいけないのか、いろいろと議論のあるところだと思います。
 特に、日本の株式市場、また外人の投資が若干一時よりはふえておりますけれども、そういう国際化の中での国際的な一つのバランスなどもどうなっているかをきちんと把握しなければならないと思っております。
 いずれにしても、今御指摘のような問題も含めて、税制調査会、いよいよ本格的に動かすことになっておりますので、専門家委員会の皆さんにも意見をいただきながら、やるべきことは迅速に進めていきたい、こう考えております。
○佐々木(憲)委員 もう一つは、所得税の最高税率の引き下げの問題です。
 この間、1982年に75%ぐらいだったのがどんどん下がって、70%、60%、50%、37%。これもかなりの税収減につながったと私は思います。それから、大きな会社に対して減税がかなり集中した。法人税率、表面税率は43%から30%。研究開発減税、連結納税制度、こういうものを利用した減税なども行われてまいりました。こういうもの全体を合わせますと、日本の大企業それから大資産家を中心とする減税というものが、旧来の自民・公明政権によってずっと続いてきたと思うんです。
 私は、これはもう余りにも行き過ぎていると思いますけれども、その結果どうなっているかというのを示したのが四枚目のグラフです。
 大企業、大資産家への減税が、法人税率引き下げ、連結納税、研究開発、IT減税、その他の企業減税、それから所得税ですけれども所得税率の引き下げ、証券優遇税制等々。所得税率というのは最高税率の引き下げであります。こういう形で、大企業、大資産家へ大盤振る舞いをやってきた。10年前と比べて大体7兆円以上の減税になっているんですね。不況の影響ですから、それも若干税収は落ち込んでいますけれども、数兆円の減税がいまだに行われている。
 10年前はそれなりにちゃんと払っていたわけですから、払っていてもやっていたわけですから。この10年間合わせますと累計で40兆円の減税があった、そういうことになると思うんです。大体こういう状況だということは間違いありませんね。
○峰崎財務副大臣 「大企業・大資産家への減税の推移」、こう書かれてありますが、いずれにせよ、法人と個人とを一緒にしていいかどうかは別にして、ちょっとデータ的に正確かどうかということの確信をしておりませんが、こういう項目がなされてきたということは間違いないというふうに私は思います。
○佐々木(憲)委員 さて、その一方、では庶民の側はどうか。負担は本当に軽減されてきたのかというと、私は、負担がどんどんふえてきたのが現状だと思うんです。
 次のページをあけていただきますと、特に小泉内閣以来、構造改革路線、この中身は一体何なんだと。あいまいな、何か改革をやるかのような言葉で、実際にやってきたのは、先ほど言った大企業、大資産家減税、優遇。さらに他方で、国民の側には負担増というものが押しつけられてきたんじゃないか。税、社会保障、教育などの分野で庶民負担が非常に大きく次々とふえてまいりました。その積もり積もった怒りが、昨年の総選挙で自民・公明政権にノーという審判を下したその原動力になったと私は思います。
 一覧表にしたのが今見ているものですが、この項目は大変多岐にわたっておりまして、医療、教育、年金、介護、失業給付、所得税、住民税、消費税の免税点引き下げ等々、ともかく、真綿で首を絞めるという言葉がありますけれども、大変な負担がじわじわと行われてきて、もう耐えがたいという事態になってきたんじゃないか。
 それをグラフであらわした次の六枚目ですが、年間約13兆円に上る負担増がこの10年以内の間に実行されてきた。これは本当に大変な負担であります。国民一人当たりにしますと10万円、四人家族40万ということになりましょうか、そういう負担増というものが大変な怒りを買ったわけであります。
 この一覧表は大体間違いないと思うんですけれども、政府参考人でいいですけれども、これで間違いありませんね。
○古谷政府参考人(財務省主税局長) それぞれ掲げられておられます項目についてはおおむねこういうことだろうかと思いますが、それをこういうふうに集計することが適切かどうかという点はあろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 集計しなければ個人の家計の負担というものがわからないんだから、だから集計しているんですよ。だれか、どこかが負担してくれれば集計する必要はありません。余分なことは言わなくてもいいんですよ。
 大企業には減税、庶民に増税、負担増、こういうことなんですね。だから、格差拡大の非常に大きな要因になったと私は思うわけです。
 資料の最後のページをあけていただきましても、これは消費税と法人三税の税収の推移ですけれども、法人税の場合は、景気の低迷という面もありますが、減税効果というのが非常に大きい。減収につながったわけであります。消費税の方は増税も行われました。この20年間、消費税収は213兆円、逆に法人の方は182兆円のマイナス、こういう形になっているわけです。これが全体として国民の負担感を増大させ、そして大企業の内部留保を拡大し、株主への配当はふえる、企業の経営者、特に大企業の経営者の所得はふえる、労働者の賃金は下がる、そういう状況を格差拡大と我々は言っているわけです。
 税制、つまり国の責任というのも大変大きいと思います。この所得再分配機能をいま一層強めるということで、この関係を逆転させるということが私は大変大事だと思います。これは民主党政権が掲げている生活第一、命が大事ということにもつながるものだと思うんですが、この機能の強化という点で菅大臣の見解を伺いたいと思います。
○菅財務大臣 大きな見方として、小泉・竹中路線といういわゆるマーケット至上主義の中で、いろいろな意味で行き過ぎた部分があり、それが税制においても、例えば所得税のかなりフラット化といったようなこともそういう大きな流れの中で出てきて、見直しを含めての議論が必要だということは、そういう部分では認識がかなり共通かもしれません。
 ただ、もう一つ大きな要素があって、それは日本がこの約20年間、成長というものが非常に停滞している、そういうことを考えたときに、行き過ぎた税制の部分もあるかもしれませんが、なぜ日本の成長がとまってきたのか、そういう部分では、一概に単なる配分の問題だけではなくて、場合によってはもっと財政が働かなければならない分野もあったのかもしれない。そういった意味でのバランスの問題と同時に、やはり日本が成長経済から落ちこぼれてデフレ経済の中に長くいるということも非常に、格差といいましょうか貧困層がふえてきた大きな背景にある。
 特に今日、御承知のように、法人税そのものの税収が極めて落ち込んでおりますので、もちろんこれは海外のいろいろな問題もありますけれども、そういうことを考えますと、一面は共通しておりますが、あわせて、そういった面も考えた議論が税制議論としては必要ではないか、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 日本経済の発展というものを考えた場合、最近非常に輸出依存型の成長と言われてまいりまして、自動車、電機などを中心に輸出を拡大するということに専ら依存した成長が続いてきたと思います。それがリーマン・ショック以来の海外の需要の冷え込み、輸出の低迷という中で、国内の需要というものは一体どこに依拠すべきなのかと。
 今まで顧みられなかった庶民の側の懐、庶民の家計というものに光を当てた内需拡大策というものを抜本的に考えないと、将来の日本経済の発展というものがしっかりしたものにならない。いつも外国の影響、海外の影響で日本の成長が停滞するということでは、これはよろしくないわけですから、そういう意味で、私は大きな筋として、今新しい政権が目指している方向というのは、社会保障やあるいは労働者の賃金、雇用条件の改善、こういうものによって家計を安定させ、そして、そこの力によって物が国内で売れるように、売れることによって企業全体として、大企業も含めて活性化する、そういう方向への転換のまさに今岐路に立っていると思うんです。政権の方向がしっかりそういう方向に向くのか向かないのか、これが今問われているというふうに私は思います。
 そういう点で、菅大臣がおっしゃったように、税制だけではもちろんありません。税制も私は一つの重要なかぎになると思っておりますが、全体の経済政策の転換というものがやはり求められているというふうに思っております。
 次に、国際的な動向ですが、アメリカ、イギリスなどでは、例えば所得税の最高税率、配当の税率の引き上げ、こういうものを決めて実行に移しております。イギリスは4月から実行されるというふうに聞いておりますが、諸外国のこういう最高税率の引き上げ、あるいは配当所得の税率の引き上げなど、どういう状況になっているか紹介をしていただきたいと思います。
○古谷政府参考人(財務省主税局長) お答えをいたします。
 アメリカにおきましては、御指摘のように、連邦所得税の最高税率を35から39・6に引き上げる提案が大統領の予算教書で行われております。さらに、配当に係る最高税率につきましても、15%から20%への引き上げが提案をされております。
 それからイギリスにおきましては、昨年12月に公表をされましたプレバジェットレポートにおきまして、所得税の最高税率を40%から50%に引き上げる、それから高所得者に対する基礎控除を減額するといった提案がなされております。
 ドイツ、フランスにおきましては、現時点において、所得税の税率の引き上げや配当課税強化の提案はなされていないというふうに承知をしてございます。
○佐々木(憲)委員 フランスではサルコジ大統領が、銀行員に2万7千ユーロ、約350万円超の賞与を払う場合に、超過分の50%相当額の特別税を銀行に課すと発表したというニュースは伝えられていると思います。
 いずれにしても、国際的な状況は、今までのような所得の高い層に減税をやるという発想から転換が起こっているわけです。日本もやはりそういう方向に向けて踏み出す、これは自然の流れということだと私は思っております。
 最後に、菅大臣にこの点で、国際的な動向を踏まえて、日本の今後の税制の基本的な方向、特に、今私が述べましたような高額所得者に対する適切な、これは何もむちゃくちゃなことをやれと言っているわけじゃないんです、前やっていた程度の、全部戻せとは言わない、半分ぐらい戻すぐらいでも大分違うんじゃないか、こういうことでありますので、そういう程度のことはすぐやるというぐらいのことは、もう実際にアメリカやヨーロッパではやっているわけですから、ぜひそういう方向に踏み出していただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。
○菅財務大臣 まさに、そういう議論を少し始めなければという意識で、3月はもうすぐですが、税調の本格議論をお願いし、きょうから専門家の委員会もスタートするということです。
 ただ、先ほど来申し上げているように、確かにおっしゃった部分でかなり共通の認識もありますけれども、例えば同じ福祉を考えるときにも、負担としてだれが負担するかということもありますが、その分野が成長分野であるという、特に介護とか医療とか例えば幼保の問題なんかは、その分野に供給があれば需要は潜在的にあるわけですから、そこにGDPが伸びていく分野が大きくある。ただ、そのときの負担を、今言われたようなやや行き過ぎたフラット化とか、そういうところだけで賄えるのか、もっと大きな税制の見直しが必要になるのか、そういったことも幅広く議論をしていきたい、こう考えております。
○佐々木(憲)委員 もちろん、税制だけですべてうまくいくわけではございません。しかし、税制というものの中にその政権の考え方、基本的なスタンスというものが非常によくあらわれるものですから、きょうはそこのところを中心にお聞きをいたしました。
 もちろん、予算全体でいいますと、予算全体の組み替えといいますか、私どもはそういう提案をしております。やはり使い道も、コンクリートから人という話ももちろんありますが、本当に国民の暮らし、家計、低所得者が安心して暮らせる、そういう社会を目指していくべきだというふうに我々は考えておりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
 以上で終わります。

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