2000年02月25日 第147回 通常国会 大蔵委員会 【100】 - 質問
財政危機の現状認識、財政再建計画の策定要求について質問
議事録
○佐々木(憲)委員 越智大臣にお聞きをしたいと思っておるのですが、まだお見えにならないようですが、どうされましたのですか。
向かっていますか。すぐ来ますか。ちょっと待ちます。とめてください。
○金子委員長 ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕
○金子委員長 速記を起こして。
お待たせして恐縮であります。
一たん委員会を休憩させていただきます。
理事会を再開させていただきまして……(発言する者あり)委員会を休憩させていただきまして、理事会にて説明を金融監督庁からいただきます。
恐縮でありますけれども、休憩させていただきます。(発言する者あり)
理事会にて説明を聞いた後、委員の皆様方には御説明をさせていただきます。
休憩をさせていただきます。
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○金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 突然の金融再生委員長の辞任という状況がありまして、再生委員長に対する質問を準備しておりましたが、それはきょうは取りやめて、新大臣に対してまた改めて質問させていただきたいと思っております。
きょうは共産党の分として1時間質問をさせていただきますが、私と矢島議員二人で、その1時間の範囲内で質問をさせていただきます。
まず、現在の財政危機の問題について、宮澤大蔵大臣にお聞きをしたいと思いますが、財政状況というのは極めて深刻でございまして、2000年度末で国と地方の借金残高645兆円、GDP比で129%、これは大変な事態だと私は認識しております。
そこでお聞きしたいのですけれども、これまで日本の歴史の中で、これほどの莫大な借金を抱えた事例はかつてあったでしょうか。また、現時点で先進国の中でこのような債務残高を抱えている、GDPに対する比率にしても、これほどの高い比率で抱えている事例というのはあるでしょうか。まず、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○宮澤大蔵大臣 急なお尋ねでございまして、計数的に私も申し上げることができませんが、普通考えまして、まずこういう例は極めてまれであると思います。
第一次世界大戦の終わりごろのドイツは、これはまあそうであったと思われますけれども、こういう正常なときでない話をしましても仕方がありませんし、最近でいえば、先進国に入るかどうか、かつてのソ連はそれに近かったかもしれません。
それから、我が国自身も第二次世界大戦の終わりのころには、実はあのころにはGDPというようなものもございませんから何とも正確には申せませんけれども、あのときの赤字の額というのはちょっとなかなか――結局は、戦争が終わりましたときに、戦時補償打ち切りで、全部100%税をかけて打ち切ったようなことをいたしましたが、これはそうであったと思います。
しかし、これも平常時の例でございませんので、正常の経済においてこれだけのものをしょったというのは、私もどうも寡聞にしてよく存じません。ないのじゃないかというぐらいに思います。
○佐々木(憲)委員 おっしゃるとおりでありまして、この水準というのは、戦前と比較いたしますと、第二次世界大戦が終了する直前の1943年とほぼ同じではないかというふうに指摘をされておりまして、当時の国の債務残高は130・1%。これはGDP統計でございませんで、GNPの統計で計算をいたしますとそうなります。地方債の残高を入れますと、135・2%でございます。終戦の年、1945年には国の債務残高は200・4%、こういうふうになります。また、地方を加えますと205・5、こういう数字が出てまいります。
国際的に見まして、現時点ではイタリアの長期債務残高が115%、これは国、地方合わせてですから、特別会計の債務を加えた政府統計でいいますと、推計で132・9%となるそうであります。そういう点でいいますと、現在の日本の債務残高の大きさというのは、第二次世界大戦末期、あるいは国際的に見ましても、現在イタリアにほぼ匹敵をする。
そういう非常に深刻な事態になっているということでございまして、平時でこのようなことがあるというのは日本の歴史の中ではない、これはもう宮澤大蔵大臣のおっしゃるとおりでございます。
平成11年12月17日、昨年の12月に出されました財政制度審議会の平成12年度予算の編成に関する建議というのがございますけれども、そこではこのように指摘がされております。「先進諸国においては、かつては我が国と同様に財政赤字の問題を抱えている国が多かったが、近年では、財政赤字の拡大が中長期的に経済の阻害要因となるとの認識の下、財政再建に果断に取り組んできた結果、米国が」1998年に「財政黒字に転ずるなど、いずれも財政状況を顕著に改善させてきている。こうした中で、ひとり我が国の財政は、フロー面でもストック面でも極めて深刻な状況にある。」このように指摘をされております。これは大変重要な指摘であると私は思います。
財政赤字がこれだけ大きくなると、さまざまなマイナス要因が生まれてまいります。そういう点で、財政制度審議会が95年の12月に出した財政の基本問題に関する報告、これによりますと、こういう表現で危険性を指摘しております。「現状は、例えて言うならば、近い将来において破裂することが予想される大きな時限爆弾を抱えた状態であり、かつ、その時限爆弾を毎年大きくしていると言わなければならない。」こういうふうに指摘されていたわけであります。
そこで、当時と比べまして、現在の国債発行高あるいは債務残高、そのGDPに占める比率、これはもう95年当時と比べましても大変な事態でありまして、一つとして改善されたものはございません。95年の段階では債務残高のGDP比は88・9%でございました。ところが、今や130%にほぼ達しようとしているわけであります。ですから、この時限爆弾はまさに爆発寸前にあるのじゃないかというぐらいの事態でございます。
宮澤大蔵大臣にお聞きしますけれども、当時、つまり95年よりも事態というのは一層悪化しております。財政に関する財政制度審議会の時限爆弾になぞらえた危機認識というのは、現在一層深刻な事態だと思いますが、そういう認識を大臣自身はお持ちかどうか、これをお聞きしたいと思います。
○宮澤大蔵大臣 そういう認識を持っております。
先ほど、かつて歴史上というお話がございまして、我が国の第二次大戦の最後のころの状況についてもお触れになりましたし、私も申し上げましたが、ここで、これは弁解のつもりで申し上げるのではございませんけれども、当時の国債というのはいわば戦費のために発行されましたので、その使途というのは、極めて経済的には非生産的な使途に使われたばかりでございます。そうでない使途は大変小そうございました。それに比べますと、決してそれをもって安んじようというつもりで申し上げているのではございませんが、今の赤字というものは、かなりの部分が生産的な目的のために使われつつある。
もとより、これはちょっと語弊があるかもしれませんが、例えば社会保障といったようなことを仮に生産的という部分から除きましても、かなりの部分が生産的に使われておる、不況脱出のためにといったようなことでございますから、そういう意味では、今使われているものが将来に向かってプロダクティブであるとは私は思いますけれども、それにしても全体が大き過ぎる。
殊に、この不況脱出のために、平成10年でございますか、小渕内閣以来顕著にそうなっておりますことは、まことに、むだをしているとは思いませんし、これしか方法がないという感じはいたしますけれども、極めて危機的な状況にあることは御指摘のとおりだと思っています。
○佐々木(憲)委員 戦費調達のために国債がどんどん発行されたというあの戦争末期の異常な事態、それと同じほどの債務残高を抱えている。今大臣は、生産的ではなかったが現在は生産的だとおっしゃいましたが、私どもの見方で申し上げますと、現在の公共事業そのものが果たして生産的かどうかというのは、また後でこれは議論させていただきたいと思っております。
そこで、そのような危機的な認識を、大変深刻な認識をお持ちだということでありますが、ところが、小渕総理の御答弁をお伺いしておりますと、これまで財政再建については、景気が回復してから考える、あるいは取り組む、こういうふうにおっしゃっております。一昨日も総理は、クエスチョンタイムのときに、財政再建計画については今は申し上げられないという答弁でございました。つまり、財政再建計画は今はないのだと。これは、私は、現状についての危機感が非常に希薄ではないのか、大変責任感の感じられない御答弁だというふうに受け取りました。
宮澤大蔵大臣に、議論の前提としてお聞きしますけれども、景気が回復してからというわけですけれども、その場合の景気回復というのはどのような状況を言うのか、何を目安にして景気回復と判断されるのか、その点をお聞きしたいと思います。
○宮澤大蔵大臣 まず、小渕総理大臣が景気回復ということを第一に言っておられますのは、私は正しいことだと。総理大臣は、一番高い立場からはそう言われることが合っておると私が思いますのは、これはもう御承知のとおり、内閣成立後、大きな補正予算、大きな11年度予算、さらにこのたびこれだけのいわゆる景気刺激的予算案を組みましたのは、御承知のように、民需による経済発展というものがどうも十分でない、ここで手を引くわけにいきませんので、最後のつもりでこういうことをいたしました。
これは、確かにその結果債務は増大しますけれども、これをした方がよかったでしょうか、しない方がよかったでしょうかといえば、大方の方が、それはやはりやむを得なかったろう、もちろん佐々木委員のように、その中身が悪い、公共事業のようなものは間違っているよとおっしゃるにしても、ここはもう一つ景気刺激をしなければ日本経済が自律の成長の軌道に乗らないという、その認識までは、私は、多くの方が、先を心配しながらやむを得ないなという御判断だと思っています。
ですからそこは、小渕総理大臣がお迷いにならないというところで、判断が合っておると私自身は思っておりますが、さて、その次のお尋ねは、景気回復の、いつになって将来のことを考えるのかという、これは、本会議では、考えようにもやはりフレームがありませんと先々の経済の見通しが立たないのではないかということを申し上げたわけでございます。そのフレームのためには、2%でも何でもとにかく民間の経済活動、設備投資と消費でございますが、これが経済を動かしていくということにならないとこれは軌道にならないということも申し上げました。
それで、これは私は実はだれにも相談したこともありませんし、我が国でも経験がないことでございますけれども、考えてみますと、ここで財政再建というのは、財政だけの問題にはもうとてもとどまることはできないだろう。税制、地方財政、中央、地方の関係ということをもっと超えまして、21世紀の初頭における日本の経済社会というのはどういうものなのか、そういうところに入っていかないと、財政だけで再建のプログラムをつくることは、私は国民的に説得力がないし難しいのではないかという思いがしていまして、逃げるという気持ちでありませんし、大蔵省が責任を放棄するという意味でもございません。
そうでなくて、ここはどうしても数量的にプログラムをつくるとすれば、やはり計数的にマクロのモデルをつくってその中でいろいろな要素を決めていく、そういう方法しか国民に対して説得力のある計画はないのではないかとひそかに、だれにも相談しないのですが、ひそかに思っていまして、財政だけでちょこちょこっとやれるような状況ではございません。
全部を大きなマクロモデルの中で、仮に5年でしょうか10年でしょうか、そういう中で計算をしてつくり上げて、だから正確だということは実は申し上げられないのですが、少なくともそういうものでありませんと、計数を伴った計画としては説得力がないのではないかというふうにひそかに思っています。
そういう意味では、共産党を含めまして国民的な議論の中で、つまり、日本のあり方の問題になるように思いますので、あるいは日本と世界との関連のあり方になると思いますので、そういう議論がベースになりませんと、本当の、国民がわかったという計画はできないのではないかということをひそかに考えるにつきまして、それは経済が軌道に乗るということが確実になるころから、もう恐らく1年ぐらいの作業が必要であると思いますから、その辺から考え始めなければならないのではないか。
それは恐らく、ここで行政改革がございますので、何省の仕事になる、何庁の仕事になるということを超えまして、新しい行政改革後の政府が全部で取り組まなければならない、官民といった方がいいのかもしれません、そういうベースで考えざるを得ない。
財政だけが逃げて申し上げているのではなくて、そういうふうに考えませんと、恐らく佐々木委員が思っていらっしゃることは、いろいろやってみてもこれだけの大きな債務は返せるのかい、そういう計算は立たないだろうというふうにおっしゃるのだと思いますが、私も、もっと大きなベースで考えませんと、なかなかわかったという計画はできないのではないかというふうに思いますので、いつからというのは意外に早く、そういうモデルのようなものを官民でつくっていくという物の考え方は、比較的早く展開しなければならぬのではないか、これはもうだれにも相談いたしませんので、ひそかにそう思っております。
○佐々木(憲)委員 ひそかに思っておられることを、今表明されているわけですけれども。
私がお聞きしましたのは、景気回復ということを確認してから次のステップに進むとおっしゃったので、それではその景気回復というのはどのような状況なら景気回復と言えるのか、何を目安に判断されるのかということをお聞きしたわけでございます。
今、大変全般的に御答弁をいただきまして、その点については我々も財政再建全体の見通しについて近々政策的な発表もさせていただきたいと思いますし、また日本の21世紀を見据えた将来の社会全体の改革の方向というのも提起をしてまいりましたし、今後とも大いに議論をしていきたいとは思います。いずれにしましても、当面、今お聞きしておりますのは、景気回復というのはどういう状況をいうのか、これをお聞きしているわけです。
○宮澤大蔵大臣 仮に実質で2%の成長の軌道に乗るということが確実になった、乗り始めたといったようなことになりましたら、将来のいろいろなフレームワークが私はできるのではないかと。この2%というのは、これも私の勝手な言葉でございますが、少なくともそういうあたりではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、プラス成長になっても、1%程度ならまだそういう状況とは認識できない、2%程度のところまでいかなければ、次の財政再建といいますか、そういう方向には行けない、そういう認識だということになりますか。
○宮澤大蔵大臣 仮に消費のシェアが62、3%といたしまして、設備投資のシェアが、本当にいいときには20%近くあったわけでございますから、17、8%、両方合わせて80%になりますが、それだけが堅調になりましたら、少なくとも設備投資は1年で終わるということはないはずでございますから、それでサイクルがかけるだろうと。あとのことはシェアとしては実は大したことはないわけでございますから。
むろん財政が怠けるとかなんとかいうことは簡単なことではございませんけれども、輸出入も、これだけ貿易黒字が出ておりますから、ここで国際収支が危なくなるということは多分考えなくてもいいと思いますから、結局設備投資と個人消費ということになるかと思います。
○佐々木(憲)委員 一番大きな要因としては、GDPの6割を占める家計消費がプラスになると。今のように家計簿がマイナスの状況が続くということでは、なかなか景気回復というふうにはなっていかないわけであります。消費がプラスになり、同時にそこへ設備投資が加わってさらに前進して、長続きするような経済の自律的回復につながっていくという考え方だというふうに受けとめました。そしてまた、2%の水準が一つの目安になると。
そうなっていきますと、なかなか簡単には、そういう事態に到達するというのが難しいのではないかと思いますけれども、大臣はいつごろそうなるというふうに考えておられますか。
○宮澤大蔵大臣 わからないことを言えとおっしゃるような感じはしますけれども、少なくとも機械受注から見る限り、昨年の暮れぐらいから機械受注がプラスに転じておりますから、これが小1年、7、8カ月の先行指標だと考えますと、設備投資は秋過ぎにはプラスに転じるだろうと。それも製造業と非製造業、大小の区別はありますが、全体としてマクロには、秋ぐらいからは設備投資がプラスに転じるのではないか。突然大きくなりませんが、少なくともマイナスがプラスに転じるのは大きいですから。
そうしますと、それまでに消費というものが、やや賃金水準が安定してきて、企業の利益が多少でも出て、それを設備投資が後押しする、そういう動きになりますと、これはもうしばらくの間それで回転するのではないか、こう思います。
○佐々木(憲)委員 消費が回復するきっかけというのは、収入がふえるというのがまず第一条件ですよね。残念ながら、現在はリストラが非常に激しく進んでおりまして、歯どめがかかっておりません。こういう点で考えますと、家計消費がプラスになるという状況はそう簡単には展望できないような事態であります。
私たちは、特に大きな企業の責任でリストラに歯どめをかける、それから賃金の引き上げを行う、そして同時にまた、政府自身が個人消費を刺激する具体的な政策を実行する、将来安心して社会保障の展望が見えるような事態に持っていく、こういう状況がそろって初めて安心して消費が拡大していくのではないだろうか。ところが、なかなか現状ではそういう展望が描けない、それが非常に景気回復にとって大きな足かせになるのではないかというふうに私は感じております。
そうしますと、大臣がおっしゃるように、消費がふえ、設備投資がふえ、自律的回復の軌道に乗り、2%という展望というのはなかなか見えてこない。そうしますと、財政再建という方向もずっと先になってしまいまして、どうもますます先送りになるのではないか、そういう心配を持つわけであります。
しかも、その間に国債は、財政の中期展望を見ましても、これは単純計算といえばそれまでかもしれませんけれども、しかし、毎年毎年30兆円の新たな国債の発行を続けていくということになりますから、それが債務残高にさらにプラスになっていきます。地方債もふえます。そうなってきますと、財政にとっては、マイナス要因は非常に積み上がっていくけれども、どうも改善の兆しというのがなかなか見えない、あるいは、財政再建がどんどん先送りになって、その間にマイナス要因だけが積み上がっていくという危険性があるのではないか、私はそういう心配をしております。
それで、では少し角度を変えてお尋ねをいたしますけれども、景気が仮に回復をするとしますと、景気回復でどの程度の税収が入るか。総理はクエスチョンタイムで、経済成長があれば財政はよくなるというふうなことをおっしゃいましたけれども、宮澤大蔵大臣は、成長の軌道に乗った場合、どの程度の税収が入ってくるというふうに見込んでおられるのか、これをお聞きしたいと思います。
○宮澤大蔵大臣 今の家計消費が本当にそんなに早く回復するかしないかというところは、これは本当に今一番大事なポイントだと思いますので、あるいは佐々木委員のおっしゃることの方が結果としてそうなるかもしれない。私はそうではないと思いますけれども、これは実はなかなかわからないところで、これが今の一つの大きな分岐点だと思うのでございます。
こうやって常雇用がパートタイムになっている、けれども、だんだんそこへオーバータイムペイなんかが出てきている傾向もあります。なかなかしかし、それでも常雇用へ戻すということにはなりませんが、オーバータイムなんかが出てきているし、企業の期間利益はふえてきていますから、この賃金交渉が終わりました後、何か一つの落ちつきが出て、そして4―6月、ですから、あらわれるのは9月になるわけですが、そのときには家計簿のプラスが出るのではないか、そういう計算をしているわけで、そのころに設備投資が落ちついてくる、こういうふうに思うわけでございますけれども。それで、そうなりましたら、まず経済のプラスの成長の循環が生まれるのではないか。(佐々木(憲)委員「税収の見通しは」と呼ぶ)
それで、これはちょっといろいろ申し上げなきゃなりませんが、中長期的に見ればやはり1・1というのが経験値だと思いますけれども、ブームのときに3・幾つという数字がございましたし、そのときには税収にしまして前年対比たしか16%ございましたから、そういうときもある、こう申し上げた方が穏やかかもしれません。1・1でしたら、50兆の税収として、名目が2%で1・1では1兆何がしでございますから、全くどうも心細いような話ではあります。しかし、その年によってうまくいくところもある。
ただ、私は、先ほど申しましたような新しい財政あるいは新しい日本の経済社会を考えますときに、この委員会でもせんだってから御議論がありますが、今の税法のままでは、なかなかやはり50兆とかなんとかいう税収からそんなに飛躍することはきっと難しいのだろう。
と言いますと、すぐ消費税かというお話が出てきますが、必ずしもそうではなくて、所得課税そのものがかなり課税最低限が高いのでございますから、税率は低くてもいいからもう少し課税最低限の低いところから始められれば、これはかなり違ってくる。しかし、そのようなことは、全体のマクロで考えた日本経済というもののピクチャーを国民に見ていただいた上で、納得をしていただきませんとなりませんが、先のことはやはりそういうことも考えなければならないのではないかと思いますので。
今の制度でございますと、1・1というようなことは、ちょっとならしてみると、余りそれ以上の平均を高望みすることは難しいのじゃないかと思います。
○佐々木(憲)委員 租税弾性値が1・1の場合は1兆円程度の増収だと。最近の事例ですと、マイナスもありますし、プラスといってもそう高くはない。仮に弾性値を三としても3兆円程度でございます。
こうなりますと、今、利払いだけで10兆円を超えているわけでありまして、今はゼロ金利なので、それでも国債の利払いは少なくて済んでいるわけです。この10年間、大体10兆円強というところであります。平均そういう状況が続いております。これは、10年前に発行した国債の借換債の金利が大幅に低くなっておりますし、国債の利払いが、ここ数年、そういう意味でほとんどふえていないわけであります。
しかし、国債残高はどんどんふえているわけですね。景気が回復していきますと、必ず金利が現在の状況では済まないわけであります。景気回復とともに当然これは上がっていきますから、国債の支払いの金利は猛烈に増加しまして、国債費が急増する、こういうおそれがあると思いますけれども、大蔵大臣、そういうおそれはお感じになりませんか。
○宮澤大蔵大臣 加えまして、国債の消化という観点からも、個人にも買ってもらえるというような観点も含めまして、額面の低い、期間の10年でない、仮にもう少し短い期近の国債も出したりいたしますから、そういうものは借りかえが早く来るわけでございます。
おっしゃいますように、どうしても、金利がこんな状況では日本経済はどうにもなりませんので、民間の経済活動が盛んになれば、金利が上がってくれなければ困るわけでございますから、そういうところへもってきて借りかえの期間の早いものが発行されるということになり、今平均の借りかえ期間というのは5年とかなんとかいうことなんでございますけれども、それが4年とかなんとかへいきますと、金利が上がっている上に借りかえが多くなるということになりますから、どうしても佐々木委員のおっしゃるようなことは私は避けられないだろうと思っております。
○佐々木(憲)委員 金利が上がることは避けられない。そうなりますと、当然国債の支払い金利は急増する可能性が高まるわけであります。利付国債の平均金利が1%上がっただけでも、約4兆円負担がふえるわけであります。ですから、先ほどおっしゃいましたように、税収が1兆円、2兆円というふうに増加しましても、もう新たな金利負担で全部吹っ飛んでしまう、いきなりなくなってしまう。
ですから、景気回復というのは決して財政にとってプラスになるとは限らない。大臣も、2月9日の記者会見で、この不況から出たら何が起こるだろうか、いいことばかりとは限りませんよという御発言をなさっていますね。それはこのことを想定されているのじゃないかと思いますけれども。そればかりか、これは物価の上昇も当然伴いますから、歳出もそれに伴ってふえざるを得ない。
ですから、経済が回復しても、決して財政にとって明るい展望が見えるということにはならないのではないか、そういうふうにお思いになりませんか。
○宮澤大蔵大臣 ただ、今御審議中の予算に、4兆5千億円でございますか、御承知のように、国債整理基金にいわば国民の預金支払いのための金を入れておりますが、この仕事はもう大体おしまいでございますからこの金は落ちると思いますし、いろいろな意味での失業対策費もかなり落とせるものがあるだろう。
当面、景気が好転し始めれば落とせる部分がかなりあるという期待は持っておりますけれども、金利が上昇をするということは、これは避けられないし、それから、やはり、社会保障費についてのコンセンサスが生まれておりませんから、これがどうしても財政を圧迫するというそのぐらいのところが一番心配なことで、結局これは、だからどうということではありませんけれども、国債費と公債金収入が並んでしまうという状況は一遍はあるいはあるかもしれない。そのぐらいのことは考えておかないといかぬかなとは思っております。
○佐々木(憲)委員 ですから、景気回復をしてから財政の再建に踏み出す、あるいは財政再建計画をつくり始める、これでは遅過ぎるのではないか。つまり、今の時点、現段階でもうつくり始めないと。景気回復を始めますと負担の方も逆にふえるわけですから、しかもまた国債が積み増しされていくわけですから、先になればなるほど困難が増していくわけであります。今まさに財政再建の計画に着手する、これをしないと大変大きな禍根を残すことになるのではないか。
大臣、今すぐこういう計画を、先ほどマクロのいろいろな考え方もおっしゃいましたけれども、そういうものも含めまして、現段階で直ちに着手する、このことの必要性はお認めになりませんか。
○宮澤大蔵大臣 私も気のせいておる一人ではございますけれども、現実の問題として考えますと、まず税収等々の歳入はどうだろうと考えましても、今の税制を動かさない限りは、先ほどからお話しのように歳入の増というのはもう知れたものでございますし、それから、地方財政を考えない限りやはり全体の計画はできませんし、確かに早く考えたいのですけれども、どうも基礎になる数字が、つまり簡単に申しますと、先ほどから御指摘のように、2%のポジティブの軌道に本当にそんなに早く乗るのかいと御疑問があります。そう思っていらっしゃる方も少なからずいらっしゃるわけですから、そのときのはじいた税収というのは直ちにうそになるわけでございますので、少なくともそういう土台だけがわかってこないと計画の立てようがない。
私は、もっと大きな計画になると思いますが、税収と歳出だけを考えましても、経済がとにかくプラスの税収を生むということになりませんと、計画の立てようが難しいということを申し上げておるわけです。
○佐々木(憲)委員 なかなか、今すぐ取りかかるというふうな決意がどうも見えないわけでございまして、現在の危機的な状況に対する認識、先ほど深刻にお感じになっているというふうに言われましたけれども、どうも実際の行動はそのような深刻な事態に対応することになっていないのではないか。直ちにやはり私は財政再建計画に着手すべきだと。
その場合、税の空洞化というのも今起こっております。つまり、法人税をこの間ずっと下げてきまして、国際的にも大変低い水準になっております。あるいは、所得税の高額所得者に対する減税が大変大幅に行われたという事態もあります。ですから、そういう点も抜本的に見直す。あるいは、歳出面では、公共事業のあり方、この点についてもむだをばっさり削るというぐらいの大胆なことをやる。そして、全体として圧縮しながら、庶民のための生活密着型の福祉型公共事業という点に中身を振りかえていくとか、もっと大胆な、国民の立場に立った財政再建を私どもは期待したいと思いますが、期待できないのであれば、我々自身がこの計画を練り上げて近々発表していきたいというふうに思っておりますので、そのときはまた議論をさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○宮澤大蔵大臣 期待を申し上げております。