2000年02月29日 第147回 通常国会 大蔵委員会 【101】 - 質問
越智前金融再生委員長の“手心”発言について、谷垣新大臣に質問
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
きょうは、谷垣新大臣が大蔵委員会に初めて御出席をされていますので、幾つか御質問をさせていただきたいと思います。
越智前大臣は、自分の発言について責任をとって辞任をされました。前大臣の辞任について、谷垣大臣はどのように受けとめておられるか。まず、この点についてお聞きをしたいと思います。
○谷垣金融再生委員会委員長 越智前委員長は、金融行政について大変明るい方で、私も、いろいろ越智前委員長から今まで教えていただいたことがあるわけでございますが、今の金融をめぐる情勢を十分御存じの方でございますから、私は、直接大蔵委員会等での越智委員長の答弁は伺っていないのでありますが、越智委員長の真意と違ったところで、今の金融行政に何か透明、公正に進めていくというのとはちょっと違うところがあるような印象を、誤解をもし与えたとすれば大変残念なことであった、そういうことで越智委員長はあのような決断をされたのであろう、こういうふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 真意と違ったところで発言をされ誤解を与えた、このようにおっしゃいましたが、問題は、そのような認識でよろしいのかどうかということでございまして、越智発言は、2月19日に栃木県塩原町のホテルで開かれた、自民党代議士の国政報告会の一環としてセットされた金融関係者への講演で行われたものでございます。一般的な講演会ではございません。特定の議員を支援するための集まりでそのような発言をされたわけでございます。
そこで、前大臣はこうおっしゃっているのですね。私の下に金融監督庁がある、こう言ったり、私のところには、全国の信用金庫と信用組合の一覧表をつくって、三カ月に一遍チェックしています、こう述べております。その上で、こちらに伺うので、もう一遍表を自分で見直してみてですねなどと言って、その地域の信金、信組の状況について述べています。これは、大臣の地位を利用して、いわば自分の知り得る情報を利用して、ある意味では参加者に対して自分の権限をひけらかすといいますか、別な言い方をすればおどしともとれるような、そういう発言をされたものでございます。
その上で、約800人いるんですけれども、これが一斉に信用組合に行きます、7月から3月までの間に全部検査します、300を。それは手配がつきました、こう述べました後で、検査の仕方できついとかあったら、どんどん直接仰せください、あるいは、ここにお集まりの皆さんは蓮実さんにどんどん言ってください、書類か何かで渡してもらったら、彼が私のところに来たら、最大限考慮しますから、それは。こう述べているわけですね。
前大臣は、これらの発言は不用意な発言だったと言っておるわけであります。これは、不用意という程度のものではないと思うのです。前大臣は、これで大変な国民的な批判を浴びていわば失脚したわけでありますが、同じ過ちを繰り返さないためにもはっきりさせておきたいのですけれども、このような行動、このような発言は、特定の議員、候補者のために大臣という地位を利用した利益誘導であり、露骨な集票活動だと私は思います。
谷垣大臣はそのように思われませんか。大臣自身は、越智発言のどこがどのようにまずかったか、どのようにこの点をお考えでしょうか。
○谷垣金融再生委員会委員長 私は越智委員長自身ではありませんので、越智さんの真意を十分に私が申し上げるというわけにもいきませんけれども、要するに、私も金融再生委員長になりまして改めて金融再生委員会それから金融監督庁、金融監督のそれぞれの検査の権限のあり方というものをもう一回勉強し直してみたわけでございます。
このことは既に官房長官が政府の統一見解としておっしゃっているところでございますけれども、条文上、法文上は検査は金融再生委員会の権限となっているわけでありますが、しかし、それは実際上金融監督庁に委任をしているという関係になって、ふだんは細かなことは言わぬという仕組みになっているわけですね。
それで、金融監督庁は御承知のように、これは官房長官のおっしゃったことの繰り返しになるわけでありますけれども、金融再生委員会の下にあるわけでありますから、それは金融再生委員会はやはり指揮監督権というものがあるわけであります。それを全然行使しない、こう言い切ってしまいますと、これは本来法で与えられている責任を放棄することにもなりかねないわけでありますけれども、あくまでもその場合、指揮監督をするとしても、私は今委員長といたしまして金融再生委員会を代表する者でありますけれども、その場合、金融監督庁を指揮監督するのはあくまで合議体としての金融再生委員会であって、政治家である私が個々にこうしろああしろと言って動くような仕組みにはでき上がっていないわけでございます。
そしてその背景に、これはこの数年、金融の行政の仕組みも逐次変化をしてきたわけでありますけれども、その根底に流れます一種の思想というのは、金融の行政のあり方というものをできるだけ公正なルールに基づいて透明にやっていこう、こういうことであったわけでございますから、政治的に圧力をかけて検査の実態が変わっていくというような仕組みにはそもそもなっていない、こういうふうに思っているわけであります。
でございますから、私はこのたびこういうふうに就任をいたしまして、先ほど申し上げたように、公正なルールに従って透明に進めていくという精神を繰り返し自分の念頭に思い起こして、きちっとした金融行政を推し進めていきたい、こういうふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 今、金融再生委員会が監督庁に対して指揮監督権を持っているということをお認めになった上で、合議体であると。しかし合議体ではあっても、その最高責任者は担当大臣であるということは明確でありまして、再生委員長でありますから。ですから、そういう意味で、指揮監督権限を持っている最高責任者が、あたかも個別に言ってくれば自分が何とかしてやるよといういわば利益誘導的、地位利用的発言をされた、そこに問題があったというふうに思うわけであります。
それ以外にも前大臣は、公的資金の注入に関してこうおっしゃっています。危なかったら早く言ってもらいたい、金を僕らが出せるのはあと2年しかないと言っています。蓮実代議士に対して、音頭をとって栃木県内の金融地図をつくってほしい、県の信用組合のをつくってほしい、こう言っているわけです。検査や金融再編についての権限が一体この代議士にあるのか、どのような意味で地元金融界の公的な代理人とこの代議士はなっているのか、全く説明がつかないと私は思います。
しかも越智前大臣は、そのための手段として資本注入というものを振りかざしまして、資本注入でどうにか手を打てますから、こういう発言をされているわけです。これは、地元代議士を通じて自分に言ってくれば、国民の税金、公的資金を自分の裁量で出せるかのような言い方であります。公的資金というのは大臣のポケットマネーではありません。
谷垣大臣は、この発言についてはどのような感想をお持ちですか。
○谷垣金融再生委員会委員長 資本注入をいたしますときの公的資金が大臣のポケットマネーでないなどということは当たり前のことでございまして、私は、そんな認識は毛頭持っておりません。
そしてそれに加えまして、これも申し上げるまでもないことでございますけれども、資本注入をいたしますときは、これは申請主義でございます。当事者が、自分のところの体力の強化あるいは地域において健全に金融の機能を果たしていくためにはそういうことが必要である、自己資本をもう少しふやしていくことが必要である、こういうふうに判断して初めて申請が出てきて、その出てきた申請を私どものところできちっと審査をしてやるということでございますから、無理やりやれというようなものでもないし、だれかがそういうことをやると、その音頭をとるという場合ももちろんないとは言えないと思いますが、金融再生委員会からやりなさいと言う立場ではありません。
ただ、あえて申し上げますと、我々金融再生委員会が法のもとに権限と責任を負っております。そして金融の、2年前の金融国会でこれは議員立法でつくっていただきました仕組みに従いまして、やはりできるだけ健全で、競争力があって、国際競争にも耐えて、地域地域の経済にも役立ち得るような、そういう金融秩序をつくっていかなければならない。そのために、私たちも全く中立であるわけではないのです。やはり与えられている資本注入という手段をできるだけ有効に使って、望ましい金融秩序をつくっていきたいという気持ちは当然私どもにもございます。
そういうような考えでございますけれども、あくまでこれは、私どものポケットマネーではなくて、厳正に審査をして使っていく、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 谷垣大臣は、あくまでも公平、公正にというふうにおっしゃいました。資本注入あるいは検査の問題について、これを利用して地位利用するとか、利益誘導するとか、そういうことは一切しない、公平な立場で対応するというふうに私はぜひやってもらいたいと思いますけれども、もう一度これを確約していただきたい。
○谷垣金融再生委員会委員長 私どもが所管しております法に従ってきちっとやりたい、このように覚悟を新たにしております。
○佐々木(憲)委員 私は、信金、信組の問題というのは地域経済にとって極めて重要な役割を果たしていると思っております。したがって、大銀行と同じような自己資本比率を当てはめて、その基準で輪切りにして切り捨ててしまう、こういうやり方には反対であります。そんなことをしますと、信金、信組はもうばたばたつぶれてしまう。やはり、国際的な分野で活動する大手の銀行と地域密着型の中小金融機関というのは、これは区別して扱うというのは当然のことだというふうに私は思います。
しかし、そのことと、それを利用して何か地位利用で利益誘導を図っていくということと、これは全く別問題でありまして、谷垣大臣に確認をしたいのですけれども、信金、信組が地域経済に果たしている役割、これをどのように考えておられるか、また都銀などと同じような考え方で一律に検査してもいいというふうに考えておられるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
○谷垣金融再生委員会委員長 今おっしゃった信金、信組というのは大変地域に密着して、地域の方々の経済活動や生活に密着したものであって、我が国の地域経済にとって重要な役割を果たしておるところが多いわけですね。それはおのずから都銀等の大銀行と違うではないかという御趣旨だと思います。
それで、今、これは実は政務次官に答えていただくべき分野なのですが、我々の金融検査マニュアルというのがございます。この金融検査マニュアルについて、別なものをつくれ、こういう御議論ももちろんないわけではないのですけれども、私どもはそれは必要はないと思っております。
そして、金融検査マニュアルの中に、やはり画一的な運用は、ちょっと私、着任したばかりで、金融検査マニュアルの用語を逐語的に覚えているわけではないのですが、画一的、硬直的に使ってはいかぬという趣旨の記述があったと思います。そういうところを使いまして、それぞれの金融機関の目的や地域経済に果たす役割を勘案しながらやっていただくということではないか、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 地域金融機関というのはその地域の中小企業、地域経済にとって非常に重要な役割を果たしております。したがいまして、大手と同じように一律に基準を当てはめてやっていくということになりますと、地域経済にとっても大変重大な事態を結果としてもたらしかねない。
その点について十分配慮をされることを最後に要望いたしまして、時間が参りましたので終わりたいと思います。