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その他 (関税・EPA(経済連携協定)・TPP)

2000年03月14日 第147回 通常国会 大蔵委員会 【102】 - 質問

通関手続における簡易申告制度導入の問題点について質問

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 関税定率法等の一部改正に関連して、簡易申告制度の導入問題に絞って質問をしたいと思います。
 提案されている内容は、年24回以上継続的に輸入されている特定の貨物については、一定の要件を満たせば、引き取り申告と納税申告を分離し、納税申告の前に貨物の引き取りができるようにしようというものであります。
 そこで、初めに大蔵大臣に基本的な考えについてお聞きをしたいのですけれども、大蔵省関税局がつくりました資料に、貨物に着目して審査、検査を行うというふうに書かれております。つまり、貨物そのものに着目しなければ、申告と違うものが入ってきたり、あるいは社会悪貨物が入ってきたり、そういうものを防ぐことはできないということで、これは当たり前のことだと思うのですけれども、大蔵大臣、貨物に着目するというのは非常に大事なことだと思いますが、基本的にそのようにお考えでしょうか。大臣にまずお聞きをしたいと思います。
○大野(功)大蔵政務次官 後から大臣に御答弁していただきたいと思いますが、まず事実関係を申し上げたいと思います。
 現行の関税法というのは昭和29年にでき上がりまして、その当時は賦課課税制度でございました。賦課課税制度でありますから、輸入貨物に着目することは当然のことでございます。したがいまして、だれが輸入したかというよりも品物に着目していわば悉皆調査をやっていた、こういうことでございます。
 その後、昭和41年に申告納税制度になりました。したがいまして、申告を重んずる、そのかわり、時代の流れに応じまして、ハイリスクのものとローリスクのものは分けていこう、いわば人間という要素が入ってきておる次第でございます。さらに、場合によっては、仕出し国、仕出し港という考え方も入ってくるのかもしれません。そのような総合的な判断のもとにハイリスク、ローリスクという考え方をいたしております。
 したがいまして、物を輸入するわけでございますが、考え方は変わってきておりますということを申し上げたいと思います。
○佐々木(憲)委員 物を輸入するというところに着目をする、しかし考え方は変わってきている、こういうことで、大蔵大臣も大体基本的に同じ認識ですよね。
○宮澤大蔵大臣 今政務次官が言われましたとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 これまでの我が国の税関手続というのは、輸入申告、すなわち引き取り申告でありますが、これと納税申告を同時に行うということをやってまいりましたから、いわば一段階方式であります。これに対して、貨物の引き取り申告と納税申告を分離した方式は二段階方式であります。提案されている簡易申告制度というのは、この二段階方式というふうに理解してよろしいですね。
○大野(功)大蔵政務次官 そのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 昨年の6月15日に、税関手続に関する関税率審議会企画部会懇談会座長とりまとめ、こういうものが出されておりまして、この中にその特徴を次のように説明をしております。一段階方式というのは、関税の債権の確保を図ったり、関税率の決定の際に貨物を見て判断できることや、水際においてすべての手続が完了できるというメリットがある、このように書いているわけであります。一段階方式のメリットというのはこういうことだと。
 それでは、二段階方式の場合のメリットというのは、当然、迅速な引き取りということになると思うのですね。それでは、二段階方式のデメリット、これはどのように規定されていますでしょうか。
○渡辺政府参考人(大蔵省関税局長) お答えを申し上げます。
 若干先生のおっしゃったことと重複するかもしれませんが、整理をさせていただきますのでお許しをいただきたいと思います。
 まず、従来の輸入申告と納税申告を同時に行う一段階方式では、まず輸入者にとりましては、一回の申告ですべての手続が完了するというメリットがありますとともに、納税申告に必要な書類や情報がそろわないと貨物の引き取りができないというデメリットがございます。
 これに対しまして、引き取り申告を行って貨物を引き取った後に納税申告を行うという二段階方式では、輸入者にとりましては引き取り申告と納税申告という二回の手続が必要になるということはございますが、納税申告に必要な書類や情報がそろわない場合であっても貨物の引き取りが可能となるため、貨物の迅速な引き取りに資するというメリットがございます。ジャスト・イン・タイムで生産を行っている時代でございますので、迅速かつコンスタントな貨物の引き取りが可能になれば在庫も減らせるというメリットもあり、既にEU、アメリカ等で二段階の方式を導入しているところでございます。
 以上が輸入者についてのメリット、デメリットでございます。
 次に、税関にいてのメリット、デメリットを申し上げますと、一段階方式では、関税等の納付または確定した税額に対する担保等の徴求の後輸入許可をするため、関税等の債権確保が容易であるというメリットがございます。また、関税率決定の際に実際に貨物を見て判断できるというメリットがございます。しかし、迅速性の要請あるいは税関手続の国際的調和という要請にこたえられないというデメリットがございます。
 二段階方式では、迅速性あるいは税関手続の国際的調和という要請にはこたえられますものの、関税債権の確保の容易さあるいは納税申告時に貨物の確認が難しいという問題点が残ります。
 この二段階方式のメリットを生かしながら関税債権の確保や納税申告時に貨物の確認が難しいという問題点を解消いたしますために、継続的に輸入を行っており、かつ、コンプライアンス、法令遵守のよい人に限る、対象となる貨物を指定する、担保を徴求する、事後調査を行う、さらには審査、検査の権限は留保するということにしてこの二段階方式の問題点を解消し、各国とも二段階方式を導入しているわけでございまして、我が国も同様にこの簡易申告制度を導入しようとしているものでございます。
○佐々木(憲)委員 一段階方式は、関税の債権の確保を容易にする、あるいは水際で手続が完了し貨物を見て判断できる、こういうメリットがある。しかし、二段階方式になりますと、申告に関連をして二回の申告が必要になるという煩雑さが生まれる、それから、税関は納税申告時に貨物の確認ができない、適正な納税申告の確保あるいは不適正な申告への対処が問題となる、これは座長とりまとめでも書かれているとおりであります。
 したがって、簡易申告制度が導入されますと、いわば一段階方式から二段階方式に移行するわけであります。そうしますと、一段階方式のメリットは失われる、二段階方式のデメリットが逆に発生する、このようになるわけでありますが、そういうことですね。
○渡辺政府参考人 ただいま御提案しております簡易申告制度は、二段階方式の一種でございますが、ここにおきましては、すべての輸入者が利用できるというわけではなくて、あらかじめいずれかの税関長の承認を受けている輸入者が、継続的に輸入しているものとして指定を受けた貨物について、法令遵守の確保を要件に利用することができるものとすることによりまして、御指摘のような問題点に対処しようとしているわけでございます。
 すなわち、まず、輸入者の承認に際しましては、過去、社会悪物品の密輸などを行い、関税法上の処分を受けた者などについては承認を行わないこととして、簡易申告制度からあらかじめ排除するということにしております。次に、そのような承認を受けた輸入者が仮に不正を行った場合につきましても、引き取り申告時における審査、検査でチェックされることになります。
 すなわち、審査、検査に区別があるわけではございませんが、概念的に、いわゆる社会悪物品に関するものと納税に関するものとに分けて考えますと、社会悪物品に関する検査は従来どおり行う、それから、納税のための審査、検査は基本的に省略することとしておりますが、必要な審査、検査を行う権限は当然のことながら留保しておりまして、例えば関税逋脱の疑いがある場合などには、厳正に審査することとしております。したがって、このような審査、検査を通じて、不正な申告をチェックすることが可能でございます。
 さらに、我が国では、この前に指定物品の指定というものを非常に厳正にやろう、HS番号の九けたできちっと指定しようということで、そこを極めて厳しくし、そのことによって二段階方式のデメリットが出ないようにするということで、むしろ、私どもの考え方としては、二段階方式のメリットを生かしながら、そのデメリットをむしろなくして二段階方式のメリットを大いに生かそう、そういうことがこの簡易申告制度の考え方だというふうに御理解をいただきたいと存じます。
○佐々木(憲)委員 今いろいろと説明をされましたが、この座長とりまとめで言われている第一段階のメリット、これは第二段階に移行することによって失われていくわけであります。あらかじめ承認の前提条件としていろいろな基準を設けるとおっしゃいましたが、果たしてそれでこのデメリットがクリアできるかどうか、ここが問題になるわけですね。
 それで、要件として、分類で九けた、年に24回以上の継続的に輸入されている貨物であること、あるいは輸入業者に法令違反がないことなど一定の条件を満たせばよいということでありますが、このような要件を満たすものというのは、全体の申告件数のうちのどの程度の比率に現在なっているのでしょうか。
○渡辺政府参考人 簡易申告制度を御利用いただくための税関長の承認を得るために幾つかの要件がございます。その中のまず一番目として、簡易申告を行おうとする貨物について、継続的に輸入されている貨物の指定を受けることというのがございます。(佐々木(憲)委員「パーセントだけでいいです」と呼ぶ)これにつきましては、関税分類番号で九けたごとに見て、年間24件以上、過去1年間の実績のある輸入ということのみをとらえまして、最大限、簡易申告の対象となる輸入申告件数割合を推計いたしますと、全輸入申告件数に対しまして約53%ございます。ただし、そのほかに、関税法その他国税に関する法律に違反して通告処分以上の処罰を受けていないこと、あるいは滞納がないこと、あるいは加算税が課されていないことといった要件を満たす必要がございます。
 また、本制度を利用するかどうかは輸入者の選択によりますので、全輸入申告のうちどの程度が簡易申告になるのかは、現段階で確たる予測はできないということを申し添えさせていただきます。
○佐々木(憲)委員 数字を聞いたのであります。いろいろな説明はわかっておりますので、それは言わなくても結構です、時間がありませんので。
 53%という比率というのは大変大きな比率でありまして、もちろん選択制ですから全体がそのように移行するとは限らないけれども、しかし、それだけデメリットの面も発生する可能性が大きいということであります。
 大蔵省によりますと、これは関税手続の国際的調和の流れに沿うものだと言っております。果たしてそうか。
 昨年の8月から9月にかけてドイツ、イギリス、フランスに大蔵省の調査団が派遣され、これらの国の簡易申告制度に関する報告書が出されております。簡単な報告書が私のところにもありますけれども、例えば、この中に「制度を利用できる者」として、「頻繁に輸入申告を行っていること」というふうに書かれております。中身がよくわかりませんので、具体的にお聞きをしたい。この「頻繁に」というのは、どのような頻度をいうのか。年何回以上申告がある場合「頻繁に」とされているのか。ドイツ、イギリス、フランスそれぞれについて、説明は要りません、数字だけ言ってください。
○渡辺政府参考人 私どもの調査した限りにおきましては、英、独、仏各国とも、簡易申告制度の承認のために必要な申告の頻度につきまして、統一的、具体的な基準は有していない模様でございまして、具体的な判断は、承認を行う各税関にゆだねられているというふうに承知をいたしております。
○佐々木(憲)委員 その税関にゆだねられている基準、ドイツの場合は例えばどうなっておりますか。
○渡辺政府参考人 EU各国は、EC関税法施行規則というものにのっとって行っておるわけでございますが、このEC関税法施行規則そのものに、原則として貨物の引き取りの申告をまれにしか行わない者に対しては簡易申告の承認を与えないということしか記載しておりませんで……(佐々木(憲)委員「ドイツは」と呼ぶ)ドイツにおきましても、したがって、具体的な規定がございません。したがって、各税関の判断ということになっているというふうに私どもは承知をいたしております。
○佐々木(憲)委員 各税関の判断の、その判断の中身を聞いているのですよ。調査に行ったのでしょう、ドイツに。
 私が調べたところ、ドイツでは、一カ月に最低十回、したがって年に120回以上、それで承認された後、一カ月に一回も申告しないときには取り消しになる、そういうことを聞いておりますが、そうじゃありませんか。
○渡辺政府参考人 私どもが聞いておりますのは、幾つかの税関に行って聞いてみますと、どうもそれぞれに答えが違っているようでございまして、先生がおっしゃっているような1月十件というお答えのところもございましたが、もっと少ない件数で認めているというところもございましたものですから、それぞれの税関の判断に任せられるというふうに御説明を申し上げているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 つまり、ドイツでは独自の基準があって、それぞれの税関が判断をしてやっている。しかも、今私が申し上げましたように、一カ月十回以上、年に最低120回以上と、回数としては大変厳しいわけであります。
 今回提案されております簡易申告制度、これは、基準は年に24回でありますから、圧倒的にドイツの方がハードルが高いわけです。ですから、そこで数字が言えなかったのだろうと思います。
 では、ほかの国でもどうかということでありますが、例えばイギリスでは、国境での引き取りは必ず書面で行うというふうにあなた方の報告書にも書かれていますね。あるいは、インボイスの提出が義務づけられている。ですから、国際的調和だとか欧米並みと言いますけれども、それぞれ違うわけですよ。ですから、何か世界の流れに日本を合わせるのだと言いますが、そうではないのですね、実態は。その点を明確にしておきたいと思います。
 やはり、問題は、貨物に着目した審査、検査がしっかり行われるかどうか。書類がどんなに立派に整っていても、違う物資が入ってきたら、税関としての機能は果たせないということになるわけですね。
 そこで、実態をお聞きしますけれども、この数年間の輸入許可件数に占める検査件数とその比率を出していただきたい。
○渡辺政府参考人 輸入許可件数に占める現物検査の比率というお尋ねでございます。
 昨年も先生からお尋ねがございましてお答えを申し上げまして、繰り返しになりまして恐縮でございますが、御説明をさせていただきます。
 税関では、必ずしも十分でない人数で大量の物件を処理いたしますために、的確にリスクを見きわめ、効果的、重点的な事務運営を行うことによって、全体として適正な通関と迅速な通関の双方を求めていくという考えに基づいて貨物の通関処理を行っております。
 具体的には、通関手続の電算化に当たりましても、必要な各種情報を蓄積した通関情報総合判定システム、CISを活用することによりまして、適正な申告が行われていない可能性が高い貨物、いわゆるハイリスク貨物と、可能性が低い貨物、ローリスク貨物に選別をして、こうした可能性が低い貨物については検査を極力省略し迅速通関を図る一方で、こうした可能性が高い貨物については重点的に検査を行うことにより、チェック機能の重点化、集中化を行っているところでございます。(佐々木(憲)委員「数字」と呼ぶ)
 このため、全申告貨物に対する平均的な検査率を申し上げました場合に、検査対象者が、ハイリスクと認定されているか、あるいはローリスクと判定されているかを御自身で判断できることとなり、税関現場での検査の実施にさまざまな面で支障が生ずるおそれがございますことから従来から公表していないものでございまして、現場のこともお考えをいただき、申し上げることができないことを御理解願いたいと存じます。
○佐々木(憲)委員 全然、数字も出せない、実態が明らかにならない。昨年も私はこの問題を聞いたのですけれども、いろいろな理屈をつけて数字を出さない。つまり、どのぐらいの輸入があり、その中で検査を実際どのぐらいやっているかという実態、その数字さえ出せないというのは、私は極めて問題だと思う。情報公開に反する。
 昨年の質問でふえているのか減っているのかと私は聞きました。それに対しては「検査水準は、残念ながら下がってきております。」こういう答弁をされていますね。簡易制度の導入によって当然省略されていくわけですから、全体の審査、検査率は一層下がることになるのじゃありませんか。
 限定してお聞きしますが、税目的の検査率は、これを導入したら下がっていくということになりますね。
○渡辺政府参考人 検査自身がどういう目的であるかということは、概念的には分かれますけれども、実際の検査を二つに分けるということは実際にはできないことだと思ってはおります。
 ただ、税関では、的確にリスクを見きわめ、効果的、重点的な事務運営を行うことによって、全体として適正な通関、迅速な通関の双方を求めていくという考えに基づいて貨物の通関処理を行っております。
 御提案申し上げております簡易申告制度は、法令遵守の確保を条件に、あらかじめ税関長の承認を受けた輸入者の貨物、つまり、よりリスクの低い貨物につきましては輸入申告時の納税のための審査、検査を基本的に省略し、よりリスクの高い貨物の検査を重点的に行うことによって適正な通関を一層確保しようとするものでございまして、本制度の導入によって全体の検査率を低下させようという意図はございません。
○佐々木(憲)委員 意図はなくたって、基本的に省略するわけですから、税に関する検査率は下がるのは当たり前じゃないですか。今までも下がってきているのですよ。それがさらに省略されることによって、実物の、貨物そのものの検査率は下がっていく、そんなの当たり前じゃないですか。上がる理由は明確に示されませんでしたね。
 実際、この実地調査、これは事後調査ですけれども、その中で、非違のあった輸入者数と比率を見ますと、全体の輸入者の1割を調査しただけで、非違のあった者が約6割にも達している。申告漏れ課税価格も831億に達しております。
 98年12月号の貿易実務ダイジエストによりますと、関税局の職員が解説をしておりますが、その原因として、貿易取引の形態が著しく複雑になっている、あるいは取引規模が拡大している、こういうことが挙げられております。また、依然として不適正な納税申告の解明のため多くの問題が残されている、こういうことが書かれております。
 ですから、このような状況で安易に簡易申告制度を導入してよいかどうか、これが今問われているわけであります。
 そこで、具体的にお聞きしますけれども、簡易申告制度の利用を認められた輸入者がその後不正な輸入をした場合、例えば税の面でいえば、似たような物品で関税率が違うものを混入させた、それで検査を受けないで輸入する、こういう不正を行った場合、特別情報がない限り、それをどのようにして防止するのか。そのすべはあるのかどうか。これをお聞きしたいと思います。
○渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
 簡易申告制度におきましては、輸入者の承認に際して、過去に社会悪物品の密輸などを行って関税法上の処分を受けた者などについては承認を行わないこととし、簡易申告制度からあらかじめ排除することにしております。
 そのような承認を受けた輸入者が仮に不正を行った場合につきまして、引き取り申告時における審査、検査でチェックをされることになります。
 すなわち、審査、検査に今区別があるわけではございませんが、概念的にいわゆる社会悪物品に対するものと納税に関するものに分けて考えますと、まず、社会悪物品に関する検査は、先ほどから御答弁申し上げておりますが、従来どおりに行うこととしております。
 次に、納税のための審査、検査は、基本的に省略することとしておりますが、必要な審査、検査を行う権限は当然のことながら留保をしておりまして、例えば指定されたものと違うものを紛れ込ませているという疑いが濃厚のような場合には、当然のことながらそれは検査をさせていただきます。また、検査をさせていただいた上で、それについては、不正があれば処分をし承認を取り消すということになろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 質問に対して正面から答えてないのですね。
 簡易申告制度というのは、税関では、引き取り申告を行うと、これはすぐ許可が出て、貨物はノーチェックで通るのですよ、省略するわけですから。全く現物を見ないわけですね、省略するわけですから。このような不正を防止できる保証、これは今お聞きしても、権限があるとか、そういう不正がある場合はチェックするとか言っていますけれども、制度そのものは、チェックをする制度をやめてしまうわけですから。
 ですから、社会悪の場合も、事前に垂れ込みがあったり警察からの情報があったときは、それは中を検査するでしょう。情報があれば中を見るのは当たり前です、それをやらなければ職務怠慢ということになるので。問題は、情報がない場合。そういう場合は見ないということになるのじゃありませんか。いかがですか。
○渡辺政府参考人 検査はどういう場合に行うかということで、先生の方の御理解では、情報がある場合だけ行うのだということのようでございますが、そういうことではございません。
 情報がある場合にもちろん検査は行いますが、情報がなくても、税関職員が、この物件は指定されたものの通関ということになっているけれども、ほかのものが紛れ込んでいそうだとか、あるいは社会悪物品が紛れそうだとか、そういうおかしいなと思われるときは検査をさせていただきますということを申し上げているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 昨年の11月の関税率審議会の議事録が公開されております。それによりますと、情報がない場合はどうするのかと畠山委員に聞かれまして、筑紫審議官は、情報がないときは見ないということになりますと答えているじゃありませんか。
 また、6月15日の税関手続に関する関税率審議会企画部会懇談会の議事録によりますと、筑紫審議官は次のように説明しております。「貨物が港もしくは空港に着きまして、それを引き取る。その際に、税関当局の方で何らかの情報がある場合、これはおかしいぞという情報がある場合には検査をいたします。ということでありまして、そういうものがない場合には、そのまま到着したら通過してもらうと、こういうことでございます。」と述べている。
 こういう説明をしているのじゃありませんか。この説明自体は事実でしょう。
○渡辺政府参考人 昨年11月9日に関税審議会の総会をいたしまして、筑紫審議官がそういう旨を申し上げました。その旨は、私どもの公開しておりますものに載っておりますが、その後をちょっとお読みいただきますと、実は私がその後補足をいたしておりまして、「ちょっとこの点の補足をさせていただきたいと思います」ということで、「やはり税関の職員が現場で見て、こういう品目で来ているけれども、これは明らかにおかしいというときは、社会悪の問題がなくても、それは検査をさせていただきます。当然です。」「基本的にはやらないというのは、当然におかしいと思うものまで検査放棄はいたしませんが、普通はやりませんと、こういうことを言っているわけでございます。」ということで、情報がなくてもやりますということを、その後補足で訂正をさせていただいております。
○佐々木(憲)委員 今の説明でも、おかしいというものは検査をする、そうでない場合は、仕組み上それは見ないということだという説明をしているだけであって、何らの訂正の発言ではございません。筑紫審議官のこの説明というのは極めて明確でありまして、情報があれば見るが、ない場合は見ない。水際で社会悪を防ぐことができないということになるじゃありませんか。法の改正ではなくて、これは改悪であります。
 私どもは、こういうものは絶対に認めるわけにはいかない。そして、職員の抜本的な強化、増員を図って、水際できちっとした検査が行われるような体制、審査が行われる体制をつくっていただきたい、このことを最後に申し上げまして、質問を終わります。

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