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金融(銀行・保険・証券) (銀行公的資金注入, 金融機関の破綻)

2000年03月29日 第147回 通常国会 大蔵委員会 【103】 - 質問

金融破綻処理への公的資金投入策の期限延長等について質問

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 預金保険法の改正案につきましてお聞きをしたいと思います。
 法案では、今の預金の全額保護措置を1年間延長して2002年3月末まで継続するということにしているようであります。問題は、破綻処理に公的資金を投入する枠組みまで同じ期間延長して、2002年3月末までそれを続けようとしていることであります。このことは、最終的には国民負担となる可能性が大のものでありまして、大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、なぜ預金の全額保護の延長に合わせて公的資金投入の枠組みまで延長をしなければならないのか、その点についてお答えを願いたいと思います。
○宮澤大蔵大臣 御存じのような理由で1年延期いたしましたから、したがって、何かありましたときには公的資金の投入も当然それだけ延びる、そうでありませんと、金融機関自身の負担によってしなければならないということになりますのでという、そういう考え方でございますが。
○佐々木(憲)委員 どうも余り説得的ではない御説明だと思うのですね。全額保護措置の延長をなぜ国民負担でやらなければならないのかという問いに対しては明確にお答えになっていないと思います。
 公的資金の投入についてこれまで政府はどう説明してきたかということで振り返りますと、96年に初めて信用組合の破綻に公的資金を使うことを決めたときに、西村銀行局長はこのように答えておられます。第一に金融機関が最大限の努力をすること、第二に日銀がつなぎ融資をすること、そしてどうしても財政負担をする場合には、「以上のようなことをしてもいかなる方法もまだ足りない、あるいはそれを放置しておいた場合に経済にはかり知れない影響を与えるというような場合に限って、かつ時限的な措置としてこのようなことをお願いをする」、このように96年5月28日の答弁でお答えになっております。
 98年に交付国債を積んで金融機関の破綻処理をする仕組みをつくったときに、当時の三塚大蔵大臣は、98年の1月8日の参議院大蔵委員会ですけれども、アジア通貨危機や山一証券と拓銀の破綻、ジャパン・プレミアムの急上昇などのもとで、「金融システムに対する信頼を一刻も早く回復させ、経済全体が危機に陥る事態を防ぐための時限的な緊急措置として」公的資金を活用できるようにした、このように述べておられます。
 つまり、公的資金の活用というのは、金融の極めて深刻な危機的状況に対処するために、時限的な、緊急的な措置だ、これがこれまでの一貫した政府の説明でありました。こういう理解でよろしいですね。
○宮澤大蔵大臣 従来そういう考えで進めてまいりまして、金融機関に対しましては、御承知のように保険料を、七倍と言われますが徴収してまいりまして、それは恐らく、今の業務利益等々から考えますと、もう限度であろうというふうに考えてまいっておりますが、そういうシステムでございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、公的資金投入、税金投入の仕組みを1年間延長するということは、金融システムが今でもあの当時と同じように極めて危機的な状況だ、このように判断されているということになりますね。
○宮澤大蔵大臣 必ずしもそうではないと考えておりまして、金融システムはかなり不安が解消しつつございますけれども、金融機関そのものは、何年間かのこういう状況の中で、かなり傷んでおりますことも事実でございますから、したがって、さらに特別の保険料を増徴するといったようなことについては限度に来ているという状況そのものには変わりがないと考えております。
 別に、ですから、そのゆえに金融システムのリスクが存在する、あるいはさらに悪くなったといったようなことを考えておるわけではございません。
○佐々木(憲)委員 先ほどの谷垣金融担当大臣は、金融危機の峠は完全に越したというようなことをおっしゃいましたし、今も大臣は、基本的には危機的な状況は克服したというような御答弁をされました。
 そうしますと、これまで政府は、金融の危機的な状況に対応して、緊急的、一時的な措置として公的資金を投入する、こういう説明をずっとされてきたわけですね。今は金融不安が起こるような危機的状況でもなくなった、そういうときにもかかわらず、つまり、前提が変わったにもかかわらず税金投入を続ける、こういうことになるわけですね。
 私は、これは非常に安易だと思うのですよ。銀行が負担能力に限界があるというふうにおっしゃいましたが、負担のできる条件は既につくられている、にもかかわらず負担をさせずに国民負担に全部振りかえてしまう、その発想の基本が私は問題だというふうに思うのです。
 当事者である銀行自身、このようにいろいろなインタビューでおっしゃっております。例えば興銀の西村頭取は日経のインタビューで、金融不安の再燃はないかと聞かれまして、ジャパン・プレミアムの解消あるいは昨年中の日経平均株価の37%増を挙げまして、「少なくとも大銀行に対する不安は消えた。」「信用組合の問題は部分的には大変かもしれないが、十分解決可能と思う。日本の金融不安が再燃するような問題ではない」、これは1月9日付の日経で述べておられます。
 政府はこれまで、例えば橋本首相は、96年5月21日衆議院本会議で、「金融機関の破綻処理は金融システム内の負担により賄われることが原則」だ、こうおっしゃっていました。しかし、金融危機だからやむを得ないんだ、今大変な危機だからやむを得ないんだ、つまり、金融システム内の負担、銀行業界の負担を超えて、そういう原則を超えて公的資金を投入しなければ大変だから、時限的、限定的にやるんだ、こういう説明でありました。
 ところが、現在では、当事者である銀行業界自身が、金融不安はもう既に消えた、こうおっしゃっておりますし、大蔵大臣も、金融危機は乗り越えた、このようにおっしゃっているわけであります。つまり、政府が今まで主張してきた公的資金投入の前提が変わっている、前提が崩れている。そうであるならば、なぜいつまでも税金投入を続けるのか。私は、公的資金の仕組みはこの際やめて、従来の政府答弁どおり、銀行業界の負担で預金者保護を図るという原則に立ち戻るべきじゃないか、そう思いますが、大臣はいかがでしょうか。
○宮澤大蔵大臣 御議論としては、なるほど、そういう考え方もあるなと思わないわけじゃありませんけれども、実際問題として、そういう大きな出来事が多分あることもなかろう、少しはあるかもしれませんけれども。そこでまた、1年のことですから、今度はもうここで、片っ方は政府は引きますと言わなくても、もう1年のところを政府もおりますと言っても別に大した、どこにも害があるわけではなし、皆さんそうですかということで、これでいいかなと実は思ってやっているわけなんですが。
 佐々木委員のおっしゃること、それは厳しく言えば、それでどこが悪いとおっしゃったらなかなか申し上げにくいのですが、まあ私どものやっていることもそう弊害もないのじゃございませんかな。
○佐々木(憲)委員 納得できない答弁でございまして、預金者保護は本来銀行業界の責任なんだと政府はずっとおっしゃってきたわけですね、これは原則であると。ところが、危機的状況は克服した。危機的状況を克服したにもかかわらず、銀行業界には新たな負担は一銭も求めておりません。負担は全部国民に、新たに負担を1年延長することによって求めております。これが問題だと言っているのですよ。ですから、私は、今、本来の姿に戻るべきだ、このことを強く申し上げておきたいと思います。
 この法案では、公的資金の使用期限を延長するだけではなくて、交付国債を6兆円増額することになっておりますね。新たに国民負担の提案がこういう形で具体的に行われているわけであります。なぜ交付国債の増額が必要になるのか。
 そこで、前提として大蔵省金融企画局長にお伺いしますけれども、これまで交付国債がどのように使用されてきたか、その使用の状況、それと今後の使用見込み、これを示していただきたいと思います。
○福田政府参考人(大蔵省金融企画局長) お答えいたします。
 7兆円の交付国債の使用状況でございますが、3月29日現在で、償還額累計で4兆7901億円でございます。
 若干内訳を申しますと、10年度に1兆1992億円使っておりまして、そのうちの大宗は拓銀の処理で、1兆387億円でございます。それから、11年度になりまして3兆5909億円使っておりますが、このうち長銀の処理に3兆2244億円を使用してございます。
 今後の交付国債の償還見通しでございますが、これにつきましては、今後の金融機関の破綻の発生状況あるいは破綻した金融機関の資産劣化の状況等が現時点において不確定でございますので、確たることは申し上げられないことを御理解賜りたいと存じます。
 ただ、ちなみに、現在既に破綻したということで公表されております金融機関の数は37金融機関でございます。
○佐々木(憲)委員 政府は、96年に信用組合に公的資金を注入するという仕組みをつくったときには、信組以外には入れないと言っておられました。例えば、当時の西村銀行局長はこう答弁されております。
  私どもは、金融機関が破綻した場合といえども、できる限りというか、原則として金融システムの中におきまして、金融機関の自助努力によりまして対応するというのが原則であろうかと思っております。したがいまして、通常の金融機関につきましては、預金保険制度というようなものを含みます金融システム内の負担によって対応すべきものであると考えておりますし、アメリカにおいても、SアンドL以外の金融機関の破綻処理については、金融システム内の処理ということで対処したところでございます。
  しかしながら、信用組合につきましては、なかなかそういうことだけでは対応し切れないのではないかということで特別の措置をお願いしておる、こういうことでございます。
 こう答弁されているのですね。
 こう答弁しておきながら、その後政府はどのようにしたかといいますと、98年になりますとこの立場を捨てまして、公的資金の対象を今度は銀行に広げた。交付国債7兆円を含む17兆円の公的資金枠をつくりました。そのとき政府はどう説明していたか。7兆円で十分だ、こう説明をされていました。当時の山口銀行局長は「7兆円が底をつくことはまずないというふうに思います。」「現実的な議論をさせていただきたいと思いますが、7兆円で十分な手当てができるというふうに思っております。」これは98年の2月13日の参議院財政・金融委員会での答弁であります。
 ところが、その後どうだったかといいますと、この7兆円が底をついてしまった。そして、足りなくなったから今度は6兆円増額したいというわけですね。こんなことをずっと繰り返してきているわけですよ。足らなくなれば、以前にどんな答弁をしようがそれを棚上げにして、国民にどんどん負担させる、これがこれまでの姿勢であって、非常に私は安易ではないかと思うのです。
 大蔵大臣にお聞きしますけれども、今回6兆円増額するというわけですけれども、また足りなくなったと言って国民負担の増額を求めてくることはないと、これは断言できますか。
○宮澤大蔵大臣 今、コスモ信用組合でございますか、あのころから振り返ってみまして、銀行局長がそういう答弁を申し上げていたということ、その程度の認識しか専門家は持っていなかったということでございますから、それはもう不明をおわびするしかありません。それ以外に申しようはない。事態はしかしコスモでとどまりませんで、北拓、拓殖銀行までいき、それにとどまらずに長期信用銀行まできた、こういう展開でございました。それを全く見抜けなかったことは大蔵省として本当におわびをしなければなりません。その間の答弁は、したがっておわびをして、御説明するしか方法がございません。
 そこで、もう一遍、今度6兆円のお話でございますけれども、今政府参考人が申し上げましたように、7兆円の交付国債をしていただきましたところで4兆7千億使っております、その4兆7千億円の中には長期信用銀行の3兆2千億円が入っておりますということでございますので、今残りました36ですか七ですかの金融機関、銀行が六つでございますが、みんな世間のわかっていることでございます、あとは信用金庫等々でございますから。7兆円の中で4兆7千億円長銀までで使っておりまして、あと、現にわかっている破綻機関がその程度でございますと、普通に考えまして、今度6兆円投入をお許しいただきますが、大きいものとしては多分日債銀ということでございましょうから、それらも、普通考えますと、債務超過額3兆円がらみのものと思いますので、そういうことを考えますと、ここで6兆円追加いたしまして、まず制度も終わりになってまいりますし、これで今の世の中から見まして足りないということはまず考えられないと私は思っております。
 西村君、山口君、私がその三度目のうそをつくかねと、多分そういうことには相ならぬと思っております。
○佐々木(憲)委員 これまでも公的資金投入の枠をつくるときに政府は、これで十分だということを言いながらどんどん拡大してきたわけでありまして、そのときには必ず、当初想定していなかった事態が起こったんだ、こういう説明をされるわけであります。
 この間、もう一つ問題は、公的資金投入の制度が、信組からどんどん広がって、非常に投入の対象が広がっているという問題があるのです。96年の場合には信組だったのですが、98年になりますと、特例業務勘定を預金保険機構につくりまして、一般金融機関も対象にした破綻処理の仕組みをつくりました。10兆円の政府保証に加えて7兆円の交付国債を使って公的資金の投入策が行われました。金融機能安定化緊急措置法によって資本増強、資本注入も合わせますと30兆円の銀行支援の枠組みがこの段階でつくられたわけです。さらに、98年10月、あの金融国会のときであります、60兆円の銀行支援策がつくられた。特別公的管理、金融管財人による管理、資本注入機能の拡大、こういうことが行われまして、持参金つきで長銀を売り渡すということまで可能になっていったわけであります。
 このようにして、公的資金投入の仕組みが延長されただけではなくて、その仕組みが非常に複雑怪奇に広がって、その広がりと同時に規模も拡大していった。その結果、国民負担がふえる一方であります。既に31兆の公的資金が資本注入も含めまして使われております。私たちの計算では、そのうち9兆円国民負担が確定している。大変な事態であります。
 ですから、私は大蔵大臣にぜひお聞きをしたいのですけれども、国民負担だけがどんどんこの間拡大していくというこの問題についての反省は全くないのか、銀行に対しては新たな負担は今後とも全く求めていかないのか、この点についての基本的な認識、基本的な考え方をお伺いしたいと思うのです。
○宮澤大蔵大臣 金融国会のことを言われました。あのときが一番世界の金融危機であったわけでございますけれけども、ちょうどあの年の9月でございますか、ワシントンにおりまして、日本の国会もいろいろ議論をしていらっしゃる、なかなか時間もかかる、長銀のこともいろいろ言われるというような中で、世界じゅうが我が国の動向に非常な注目を払った、そういう瞬間がございますけれども、まだ国会の御議論の方向は定かでない時期でありましたから、関係者は非常に、アメリカを初めとして不安に思っておりました。ただ、結果として、今おっしゃいますように60兆円というオーダーの金を日本の国会、日本の政府が用意したということを聞いたときには、さすがに連中が内心驚いたようでございます。
 それは、ちょっと裏から物を言うようでございますけれども、日本の国力というものが、それだけのことができるんだな、そういう受け取り方をしたようでございました。ですから、そういう意味で、世界の金融危機、金融不安というものを鎮静するのにあのときの国会の御審議、非常に実は役に立っておったということ、これは自慢になる話ではもとよりございませんけれども、そういうことがございました。
 それで、今ここまで来ましたので、いろいろお願いしたそれだけの金を全部使わなければならないか、あるいはそうでないか。公的資金の導入などは、いずれにしても返してもらうと考えている金でございますので、全体の総決算がいつになって幾らになるかということはわかりませんが、非常に大きな対応をさせていただいたということで、世界の不安も静まったということは事実でございます。
 さて、これを当の金融機関の諸君にどうやって将来対応してもらうかということ。導入したものはだんだんに返してもらう、これは当然のことだと思っております、資本部分でございますね。それからあと、今まだこうやってかなり高い保険料を取っておるということをいつまでどうするのかとか。実際問題としましては、金融機関の諸君は、こういう金融危機の中で、企業の合併、統合等をやり、しかも金融機関によっては経営者としての責任を問われる等々、いろいろなことで自分たちのこれについての責任を遂行しているという気持ちであろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、これはやはり非常に大きな出来事で、これをどういうふうに最終的に、いわば歴史になって処理されるかということは、まだなかなかわからないことであると思います。
 ただ、確かに政府も責任がございました。しかし、金融機関にも責任があったことは明らかだと思っています。
○佐々木(憲)委員 国民負担の拡大というのは、政府の行政の失敗の結果だというふうに私は考えております。政府は金融機関の不良債権の実態を従来明らかにしてきませんでしたし、その処理を先送りして傷口を広げてきた。
 長銀、日債銀の巨額の債務超過での破綻も、正確な不良債権の実態を覆い隠したままで資本注入をし延命してきた、そういう結果だと思うのです。長銀、日債銀は、飛ばしなどで不良債権の隠ぺいを図ってきた銀行であります。これを見逃してきた大蔵省の検査監督責任、一体その責任はどこにあったのか、この解明はいまだになされておりません。
 公的資金の拡大は、当初予想ができない事態が起こった結果だ、単にそういう言い逃れで済まされる問題ではないと思うのです。金融機関を検査監督してきた政府の責任を明らかにしていかなければ、これが足りないから次はまたというふうに、簡単にそれを認めるわけにはいきません。全くそういう理屈だけでは説得力を持たないと思います。
 時間が参りましたから、きょうはまだこれは入り口でございますので、さらに本論がありますから、きょうのところはこれで終わりたいと思います。

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