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金融(銀行・保険・証券), 雇用・労働 (中小企業融資)

2000年04月14日 第147回 通常国会 大蔵委員会 【106】 - 質問

中小企業貸出増のカラクリ、信金等の再編・雇用問題について質問

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 信金、信組の問題に入る前に、公的資金を注入された15行の中小企業向け貸し出し問題についてお聞きをしたいと思います。
 計画が実勢ベースで大幅に超過達成されたという数字が報告をされました。そこで、資料をぜひ見ていただきたいのですけれども、昨年の9月末の時点では達成までにほど遠い状況でありました。そればかりか、3月の実績よりも下回った銀行が六行ありました。資料によりますと、日本興業銀行、富士銀行、大和銀行、東海銀行、三井信託、三菱信託、この六行でございます。
 ところが、ことしの3月末にはそれがすべて超過達成をされているわけであります。合計をいたしますと、15行で、全体として162%から177%の達成率。どうしてこのようなことが可能なのか。どう考えても腑に落ちないところがございます。
 実勢ベースというのは、不良債権を処理した数字が含まれているということでございます。しかし、不良債権を大量に処理したとしても、現実に貸し出しを相当ふやさなければ、実勢ベースで残高はふえないわけであります。
 実際に貸し出しを大幅にふやしたかどうか、これは確認できますか。
○谷垣金融再生委員会委員長 私どもが把握している数字は、先般、全銀協の会長が当委員会で参考人としてお出になって、見込み値といいますか暫定値を発表されたと思いますが、現在のところはその数字を把握しているのみでございまして、その数字の精査をしていくというような作業はこれからでございます。
○佐々木(憲)委員 どうも貸し出しが急増したという実感がないわけでありまして、中小企業の6割が赤字だという状況は変わりません。黒字企業が急増したという事実もございません。景気がよくなって資金需要が何倍もふえたという状況もありません。
 実際に、4月4日の参考人質疑の際に、全銀協の杉田参考人はこう答えております。「もちろん、実感といたしまして、全体的に資金需要が大いに盛り上がってきているというようなことまでは行っていないかと思います」、こう答えておられるわけですね。
 大体、借り手の中小企業、中小業者に直接話をお聞きしましても、貸し渋りが著しく改善したという話は一切ございません。それなのにこれほど貸し出しの残高が急増しているというのは、何か理由があるはずであります。
 年度末にどんなやり方でふやしたのか。これを具体的にわかるように説明していただきたい。
○谷垣金融再生委員会委員長 先ほどと同じ御答弁になりますけれども、先般、見込み値といいますか暫定値として発表されたものにつきまして、今後、決算作業を経て確定する計数につきましては、それぞれの銀行で取りまとめられ次第、早期健全化法の第五条四項でございますが、これに基づいて、確定計数とあわせて、これまでの中小企業向け貸し出しの取り組み状況などを記載した履行状況の報告を速やかに求めていく、それでこれを公表するということにしております。その際、各行から下半期の中小企業向け貸し出しの増加要因等について説明がなされるものというふうに承知しております。
 ですから、そういうことでこれから報告内容を精査していきたい、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 やはり大事なのは、実態を正確に把握するということだと思います。説明を聞いて、説明がありました、その説明はこうですよというだけでは、それは銀行が言っていることをただ繰り返しているだけの話でございます。実態がどうなのか、どのようなことがやられているのか、ここを正確に把握するということが非常に大事だと思います。
 私は、公的資金を受けました銀行の関係者に伺いました。そうしますと、ことしの2月から3月にかけましてとんでもないやり方をして水増しをしている、こういう事実を私は把握いたしました。
 どういうやり方をしているかといいますと、一つは、銀行が、銀行の子会社はたくさんありますね、自分の子会社、関連会社に対して何十億円という単位で貸し出す。駆け込み的に2月3月に子会社に対して貸し出す。その子会社は中小企業扱いになるわけです。ですから、ノンバンクなどの自分の子会社に貸せば貸すほど中小企業向け実績が上がっていく、計画の達成に効果がある、こういうことになる。これが一つであります。
 二つ目に、関係の深い優良な中小企業、まあ優良な貸出先ですね、この中小企業に対して、何も必要がないのに一時的に期末残高を積み増しするというやり方をしている。本店や支店で積み増しを頼み込む中小企業のリストをつくりまして、そして個々に頼み込んで短期的に融資の積み増しを行うという方法をとっている。これは上田議員も一部紹介されました。そういう方法をやっている。
 それだけじゃないのです。
 三つ目に、大手の企業、大企業に貸し付ける前に、その大企業の子会社に対して一時的に貸している形にして、そして一定期間後、親会社に振りかえる。
 私が聞いただけでも、これだけの手口がとられている。
 4月4日の参考人質疑の際に、全銀協会長の杉田参考人は、各行が「知恵を絞りまして、工夫を凝らして取り組んでいる」というふうに答えているのですね。知恵を絞り工夫を凝らすというのはこんなやり方を言うのか。しかも、部分的に行われているんじゃないのですよ。かなり大規模に行われているという事実がございます。
 これが事実とすると極めて重大であります。再生委員会、監督庁は、こういうやり方を具体的に調査をして把握すべきだと思います。そういう意思はありますか。
○谷垣金融再生委員会委員長 先ほどから御答弁申し上げておりますが、今後報告を求めまして数字を精査していく、それから、どうして貸出量がふえたかというようなことも聞き取りをしていくわけでございますけれども、その際、今委員が御指摘になったような点も念頭に置きまして作業を進めたい、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 やり方で私が非常に問題だと思っておりますのは、3月30日とか3月31日にそれを実行しているということなんですよ。いわば駆け込み的に残高を膨らませる。かなりの部分がこういう方法で積み増しが行われているということであります。
 しかも、貸出期間が極めて短い。例えば、3月31日に貸し出した形にする。それを返してもらうのが4日後、あるいは4月7日、一週間後。こういうふうにして短期的に回収する。つまり、名目的に期末残高をふやす、そういう手口であります。
 短期でもこれは利子が必要でありますから、相手の負担になるじゃないか。そのことについても、利子負担が軽減されるように、例えば金利の低い普通預金に入れておくというような手口を使っている。
 私は、こういうやり方は絶対に許せないと思いますよ。つじつま合わせで、ともかく数字だけ超過達成したらそれでいい、これでごまかせると思っているところに重大な問題がある。直接確かめれば、このことは直ちに判明することであります。
 ある銀行の役員は、ことしの初めに、中小企業向けの貸出計画の達成は難しい、こういうふうに発言をしておりました。ところが、実際には超過達成をしております。また、ほかの銀行は、2月時点でも計画は達成していない、こう言っておりました。ところが、3月末には超過達成であります。ある銀行の頭取は、ことしは選挙の年だ、中小企業向け貸し出しは必ず達成する目標だと。選挙があるからと、まさに政治的な思惑で形だけ計画を達成したかのように見せかけている。
 これは、銀行が説明をしたことをただまとめてそれを報告すればいいという問題ではございません。具体的に出した数字、銀行の説明、それだけではなくて、その裏で何が実際に行われているかということの実態調査が必要であります。その実態を正確に調査をしなければ、本当に中小企業に資金が回っているかどうかはわからない。超過達成は表向きだけで、実際には貸し渋りは進んでいる、そういうことだってあるわけであります。
 ですから、これは説明を聞いて報告しますということではなくて、積極的に実態を調査して、その実態、事実関係をぜひ報告していただきたい。いかがですか。
○谷垣金融再生委員会委員長 今いろいろ佐々木委員の御見解を承りました。
 ただ、先般公表された中小企業向け貸し出しの計数というのは、国会での御議論も踏まえまして、全銀協として、あえて3月期の計数を見込み値といいますか、そういうもので報告したものと承知しておりますので、これの精査は、先ほどから申しておりますように、これからでございます。
 我々も、これが今の委員の御表現、3月31日の直前に貸して、終わった後すぐ取り立てるものなのかどうか、瞬間風速を高めたというようなことなのかどうか、そこらもよく精査をしなければいけないなと思っておりますが、いずれにいたしましても、今まだ見込み値で出てきておりまして、私どもも確信を持ってお答えするだけの材料がございませんので、これから作業したい、こう思っております。
○佐々木(憲)委員 私は、そういう形で具体的に実態をぜひ調査して報告していただきたいと思います。
 しかし、私は、直接銀行の頭取にどんなやり方をしたかということをどうしても聞きたいと思うのですよ。監督庁の調査の報告ももちろん私は求めたいと思いますが、同時に、例えば先ほど申し上げました、昨年9月ではマイナスだった、それが大幅に超過達成しているこの六行、日本興業、富士、大和、東海、三井信託、三菱信託、この頭取を当委員会の参考人として招致して、直接私は説明を求めたいと思います。具体的な事実を確かめたい。
 委員長にお願いをいたしますけれども、この点を理事会で検討していただきたい。
○金子委員長 改めてちょっと銀行の名前を言ってください。
○佐々木(憲)委員 日本興業、富士、大和、東海、三井信託、三菱信託です。
○金子委員長 15行、頭取を呼ぶという協議事項になっておりますので、理事会で引き続き継続事項とさせていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 はい。
 では次に、信金、信組の問題についてお聞きをしたいと思います。
 これらの協同組織金融機関というのは、会員、組合員の相互扶助の精神で、いわば銀行がなかなか相手にしてくれない、そういう対象をカバーするというのが目的だと思います。そういう地域密着の金融機関だと思います。いわば地域の多数者から預金を集めまして、地域の中小企業に貸し出し、そして地域の支持のもとで活動するという金融機関でありますが、実際にはこれらの金融機関が目の前からどんどん消えていくという事態が進行しております。
 例えば、信用金庫について言いますと、この10年間に合併、再編などで60以上の信金が消滅をいたしました。昨年は五行の合併、11月末には大阪の不動信金の事業譲渡、ことし3月には岡山県で三つの金庫、東京で五つの金庫が合併をいたしました。大蔵省の資料によりますと、3月末には信金の数は386金庫となっております。
 それから、信用組合について言いますと、この10年で百以上の組合がなくなっております。300以上の店舗が消滅しております。400以上あった信用組合は現在291にすぎません。今、信用組合のない県は、沖縄県、鳥取県、徳島県、これに奈良県が加わりまして全体で四県であります。静岡県、和歌山県、愛媛県の三県では、10年前には県内に五つから三つぐらいは信用組合がありました。しかし、それがどんどん消えていきまして、現在はたった一つであります。
 そこでお聞きをいたしたいと思いますが、今後この預金保険法の改正案が通りますと、地域密着型のこのような協同組織型の金融機関の合併、再編というのが進むというふうに言われておりますけれども、地域経済にとって必要な金融機関が整理統合されていく、あるいは支店がなくなっていく、店舗がなくなっていく、こういうことが出てくると、地域の中小企業にとって必要な資金供給を行う金融機関が消えていくということになりはしないか。中小企業に対する資金の流れが断ち切られるということにならないか。この点についてどう対応するつもりか、お聞かせをいただきたいと思います。
○村井金融再生政務次官 協同組織金融機関、佐々木委員御指摘のとおり大変重要な役割を果たしているわけでございまして、そういう意味では、これが減ってきている、確かに一つの問題点だということは私も同感でございます。
 ただ一方で、この減り方でございますが、協同組織金融機関を取り巻く環境が非常に変化しましたために、例えば合併、統合というような形で行われておるようなケースが非常に多いわけでございますね。その結果、こういう合併等によりまして、一般論でございますけれども、ある程度規模が大きくなる、シェアが拡大できるということによりまして、経営基盤あるいは競争力が強化できる。それから、本部機能の統合ですとか金融に非常に重要なシステム投資の軽減、こういったことがよい効果という意味ではあるわけでございます。それによりまして経営が効率化される。そしてその経営の効率化によりまして、貸出金利の引き下げも可能になる、あるいは収益力が向上する、自己資本が増大する。それによりまして貸し出し余力も拡大する。
 そういうことで、あながちに貸し付けを受ける中小企業にとって不利なことばかりではない、かえってこれによりまして地域の中小企業がよりよい金融を受けることができる、そういう効果も私はあるのだろうと思っております。
○佐々木(憲)委員 体力がつくという面もあると言われましたけれども、同時に、目の前にある金融機関あるいは支店、店舗がなくなるということになりますと、これは不便な形が広がるわけでありまして、その逆の面もきちっと見た形で、中小企業に必要な資金が提供されるような、サービスが向上するようなそういう方向をぜひ目指さなければならないと思います。そのためには、画一的な形で自己資本比率だけで見たり、あるいは債務者を赤字という外形だけで機械的に判断するとか、そういうことのないようにぜひしていただきたいと思うのです。
 次に、雇用問題についてお聞きをしたいと思います。
 合併、統合とおっしゃいましたが、その際には、その金融機関で働いておられる従業員の方の雇用問題というのが必ず出てくるわけであります。
 そこで、合併、再編が雇用不安を広げるというようなことがあってはならないわけで、預金保険機構の松田理事長にお聞きをしたいのですけれども、具体的に、破綻した国民銀行の場合、現在、もとの頭取、副頭取が特別背任に問われておりますけれども、破綻処理のために公的資金が投入される、これ自体、私は大変なことだと思っておりますが、八千代銀行が経営の受け皿となっているようですけれども、お聞きをしたいのはこの雇用問題でありまして、どのように対処をされておられるのか、説明をしていただきたいと思います。
○松田参考人(預金保険機構理事長) お答えをいたします。
 国民銀行につきましては、当機構と松島、田知本、三人のものが金融整理管財人に選任されておりまして、12年3月7日に八千代銀行との間で営業譲渡をするという契約を締結したところでございます。
 その間、営業譲渡契約を結ぶに当たりまして、八千代銀行にもいろいろお願いもいたしまして、現在、国民銀行で約600人の従業員がいるわけでございますけれども、そのうち、320人を下回らない人数を再雇用するということで契約を結びまして、現在具体的な採用選考が進められているという段階でございます。
 ただ、八千代銀行に再雇用されない従業員の方、職員の方もおられることでございますので、厳しい情勢下ではございますけれども、これらの職員の処遇につきましては、銀行内に雇用対策室を設置するなど、取引先とか株主とか、その他一般事業主を含めまして広く働きかけをいたしまして、再雇用の機会拡大に資するように配慮し努力をしているというところでございます。
○佐々木(憲)委員 雇用対策室などをつくって努力をされているということでありますが、国民銀行の親会社だった国際興業に対しても具体的に働きかけをされているのでしょうか。
○松田参考人 株主であります国際興業に対しましても、金融整理管財人みずからが出向きまして、いろいろお願いをいたしております。
○佐々木(憲)委員 谷垣再生委員長にお聞きしますけれども、破綻処理などの際にやはり雇用不安を招かないようにするというのも大変重要な課題だと思います。この点について、どのようにお考えか。雇用不安を招かないような対応を今後ともやっていくということが私は大変大切だと思いますけれども、どのようにお考えでしょうか。
○谷垣金融再生委員会委員長 ある意味で大変お答えしづらい御質問なんですが、全く法の建前でまいりますと、合併、事業譲渡などにより消滅する金融機関の職員の再雇用問題については、金融当局としては関与する法的な根拠というようなものはないわけなんでございますね。だから、その再雇用問題については、当事者間において協議が行われ、決定されるという仕組みになっている。
 しかしながら、先ほど申しましたように、公的管理下にある金融機関においていろいろ議論が行われていますときに、先ほど預保の松田理事長の方からもお話がございましたように、金融整理管財人がつくってまいります、金融再生法13条に基づいて当委員会に報告される調査報告書におきましては、営業譲渡等に当たっては従業員の雇用確保にも配慮するという基本方針が掲げられるのが普通でございます。
 私どもとしては、こういう金融整理管財人の努力も見守っていきたい、こういう立場でございます。
○佐々木(憲)委員 国民銀行だけではなくて、これからは幸福銀行ですとか、東京相和、なみはや銀行、新潟中央銀行など処理を控えているというのがございます。ですから、今後ともこのような方向で従業員の再雇用に万全の体制をとっていただきたいというふうに私は思います。
 信組が、都道府県の管轄から監督庁の管轄に移りました。これらの地域密着型の金融機関についても、やはり同じように雇用安定に努めるということが必要だと思います。
 昨年の11月に破綻処理されました大阪の不動信金、この場合は九つの受け皿金融機関がありましたけれども、職員の引き受けを一切拒否したという事例もありました。172名の労働者が全員解雇されるという極めて深刻な状況が起こったわけであります。こういう場合も、やはり最初から再雇用に努める、そういう姿勢で対応するということが必要だと私は思うのですね。そういう点で、初めの段階からそのような再雇用の方向を示していくということが大変重要だと思います。
 そういう点で、これから信金、信組を初めとして、地域金融機関の合併、再編ということが言われております。その際に、私は、その合併、再編自体がどうかという問題ももちろんありますが、仮に破綻をした場合に、今後の雇用不安を起こさないようにきちっと対応していきたいということを、ぜひ最後に決意を、再確認という意味で大臣にお願いしたいと思います。
○谷垣金融再生委員会委員長 通常、存続する金融機関が消滅金融機関の職員の再雇用について協議するに当たりましては、事業譲り受け後の業務運営の円滑な遂行ということも視野に入れた上で、今おっしゃった雇用の問題等も決定しているというふうに承知しているわけなんですが、当局として、合併等を認可するに際しましては、存続金融機関がその業務を的確、公正かつ効率的に遂行できるかどうかを審査しなければならないわけでありますけれども、この場合、必ずしも職員数をもってのみ効率的な業務が遂行できるかというふうに審査するものではないということを申し上げたいと思います。
○佐々木(憲)委員 雇用問題は、その金融機関に働く労働者だけじゃなくて、地域の雇用不安につながるわけですから、その点はきちっと配慮の上対応していただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

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