2000年04月18日 第147回 通常国会 大蔵委員会≪参考人質疑≫ 【107】 - 質問
全銀協会長・第一勧業銀行頭取、富士銀頭取に中小企業貸出問題等について質問
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
先ほどの上田議員の質問に若干補足をして質問させていただきたいと思います。予備的調査の報告書の件でありますが、先ほどの御答弁では、直近の数字だけではなくて、過去にさかのぼって出せるかどうか、それを検討して、その上で回答したいというふうにおっしゃいました。
大型フリーローンについての資金使途別販売件数だけではなくて、四番、五番、六番、七番、例えば、系列保証会社が代位弁済している件数と金額、それから月別の競売申し立て数、これは当然数字がなきゃおかしいわけでありますが、この点について、これも一緒に報告をしていただくということでよろしいですね、杉田参考人、山本参考人。
○杉田参考人(全国銀行協会会長)(株式会社第一勧業銀行頭取) お答えをいたします。
全体を含めまして、どの程度、どれが可能なのかについてもう一度検討したい、このように思っております。
○山本参考人(株式会社富士銀行頭取) 全項目について可能かどうか、再度調べさせていただきたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 ぜひ全体を、検討の上、最大限出していただきたいと思います。
次に、中小企業向け貸し出し計画の達成の問題についてお聞きをしたいと思います。
前回の参考人質疑の際に提出された15行の達成状況は、前半ではほぼ横ばいでありましたが、後半になって急増しておりまして、前期の伸びと下期の伸びとを比べますと、六倍から七倍平均して伸びております。とりわけ富士銀行は最も大きなマイナス、9月時点で1668億円のマイナスでした。それが、下期に急激に伸びておりまして、下期だけでの伸びた数字を言いますと、1兆2658億から1兆3158億と、本当に大変な伸びをしているわけです。なぜこのような達成を実現できたのか大変不思議に思うわけであります。
先ほども幾つか御説明がありましたが、どうも納得できないわけでありまして、具体的な手段、どういう手段でこのような高い伸びを達成できたのか、まず山本頭取にお伺いしたいと思います。
○山本参考人 私どもの中小企業向け貸し出しの増強について、どんなことをしたか御説明を申し上げたいと思います。
まず、平成11年度といいますのは、健全化計画の実質第1年度という位置づけをいたしまして、この年、良質貸出資産増強運動、とりわけ中小企業にウエートを置いた、そうした全行の増強運動をやっております。1年間を通じてやってきたところでございます。具体的に、この運動を支えるものとして、中小企業育成ファンド、それから貸出優遇特別ファンド、その他各種の具体的な商品の開発をし、そういうもので増加を図るということを施策としてやってまいりました。
もう一つは、チャネルを変えて、もっとお客様が使いやすいようにしようということで、ビジネス金融センターというものを本部につくりまして、中小企業融資の専門部隊が相談に乗りながら貸し出しをふやしていくという体制をつくってまいりました。下期に入りまして徐々にこれが貸し出し増加として結実してまいりました。最終的に、株式市場の回復が見られたというようなこと、さらに全体としての景況感が改善してきたというようなことから、中小企業の資金需要につきましても、業種ごとあるいは個別企業ごとに跛行性はあるものの、全体として徐々に盛り上がってきたというような背景があるというふうに認識しております。
ちなみに、中小企業育成ファンド、貸出金利優遇特別ファンド等々で、件数にして約1万件、金額にしまして4千億円の貸し出し増加を行っているところでございます。
○杉田参考人 お答えをいたします。
当行の例で申し上げますと、融資拡大のポイントというのは、顧客ニーズに応じました最適商品の提供をいかに迅速に行うかというふうに考えておりまして、主に中小企業をターゲットといたしまして諸施策を実施してまいりました。
まず、新商品開発に関しましてスタッフを拡充いたしまして、固定金利型商品の拡充でございますとか小口化をいたしまして、中小企業向け融資商品のラインナップを充実したわけでございます。具体的な商品で申し上げますと、昨年の8月の中ごろから、中小企業向けの固定金利貸し出し、それから固定金利に転換できる可能型ローンというものを始めました。また、11年の10月の下旬から、固定金利の予約型ローンというのも開発をいたしまして、取り扱いを開始いたしました。この新商品関係で、この3月までに1800件で約1350億円の実績を上げております。
二つ目に、営業店のサポートというのがございます。営業店をサポートいたしますために、本部内に専門スタッフ、これはビジネス・ソリューション班というふうに呼んでおりますが、これを昨年の6月に設置いたしました。ここでは、事業戦略や経営戦略等の各種のお客様のニーズを一元的に管理いたしまして、スピーディーな提案力、対応力を強化いたしました。設置して以来の相談の件数は約1700件に及びまして、その効果が下期にあらわれ始めましたということが言えると思いますが、具体的な金額、つまり貸し出し実行に結びついた案件としましては270件ほどございまして、金額で700億円弱、680億円程度となっております。
三つ目でございますが、今まで、新規の専任担当者が105名おりましたのですが、昨年の10月に新規の開拓特命専任スタッフを設置いたしまして、主な店に配属をいたしまして新規開拓に注力をしてまいりました。その効果もございまして、平成11年度全体の新規開拓の実績が年度で約2千億円となっておりまして、こうした、今るる申し上げました諸施策を懸命に実施したことが中小企業向けの貸し出しの増加に寄与したのではなかろうか、このように思っております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 今の説明は、一般方針をお聞きしたという感じでありまして、具体的な対応策がどうも、これだけの大きな内容につながっていった、そういう感じがつかめないわけであります。
それで、例えばこういうことは仕組みとしてあり得るのかどうかという点をお聞きしたいと思います。
まず一つは、皆さんの銀行のそれぞれの子会社がありますね。その子会社は当然中小企業扱いになると思うんですが、その子会社に対して融資をした、これは中小企業向け融資の拡大というふうにカウントされるんでしょうか。仕組みの上でお聞きしたいと思います。
○山本参考人 子会社の多くは中小企業に分類されております。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、第一勧銀ももちろん同じだと思います、子会社に大規模に貸し出すということが行われているのではないかということを私どもは情報としてつかんでおりますが、そういうやり方を3月末に、急増させる手段としてとったということはありませんか。
○杉田参考人 私どもの場合も、いわゆる日銀の分類で言う中小企業に相当する子会社がございます。そこに対する取引は、経常的な範囲、あるいは実需に基づく貸し出しという取引はございます。
○山本参考人 子会社貸し出しにつきまして、3月末を9月末比で見ますと、10億以上増加してるところが数社、マイナスになっているところが数社というような状況でございまして、特別大きく貸し出しをしたというようなことはございません。
○佐々木(憲)委員 10億以上の新たな貸し出しをされるということは、子会社の数が多ければそれだけ金額が膨れるわけであります。これは子会社との関係でいえば、親会社の銀行の方の意向が非常に強く反映されるわけでありまして、貸して一定期間経過したらまた引き揚げるということも可能なわけで、仕組みとしてそういうことが可能だということはわかりました。
二つ目に、中小企業に対しては、相手の経営状況、例えば赤字企業、こういう企業には貸し出しはそれほど急増していないと思います。これは、皆さん方が実際に経営上リスクの高いところには貸さない、これは変わっていないと思いますね。
そうしますと、どうしても優良企業に貸し出す。先ほどもお話の中で良質貸出資産増強運動というふうに言われましたね。もちろん優良な中小企業に必要な資金を貸し出すのは当然だと思いますが、中には、ともかく短期間でいいから借りてほしい、こういうことをやって短期的な貸し出しを3月の末に実行した、こういう事例は、先ほども質問ありましたが、全くありませんか。
○杉田参考人 お取引先の資金ニーズは、期間の長いものからごく短期間のものまでさまざまございまして、私どもといたしましては、こうしたさまざまな資金ニーズに対しまして、適切かつ迅速に対応するよう心がけておりまして、お取引先の意向を無視したり、あるいは無理に融資を行うということはない、このように認識しております。
以上でございます。
○山本参考人 ただいま御指摘のようなことはないと認識しております。
○佐々木(憲)委員 意向を無視したやり方はしない。相手の了解を得たら、それは相手の意向を尊重して融資をしたという形になりますからね。そういう意味で、これはかなり大規模にやられている可能性があると私は思います。本店、支店が貸出先のリストをつくって、それで3月末の実績を上げるために、ともかく相手側が要望していないのに頼み込んで貸し出しをふやしている、こういう実例を聞いております。今、完全には否定をされませんでしたね。
三つ目の問題では、中小企業に貸し出さなければならないので、例えば大企業に貸し出す場合に、まず最初にその大企業の子会社である中小企業に貸し出して、一定期間たったときに大企業に振りかえる、こういうやり方はやっておりませんか。
○杉田参考人 大企業の子会社、関係会社が直接資金調達を行うことは一般的でございます。そのような先に対しまして銀行が融資を行うことは、これまた一般的にあろうかと思います。
ただ、それはお取引先側の事情によるものでございまして、当行では、お取引先の意向を無視して無理に中小企業向け融資に振りかえたり、あるいは子会社経由で大企業に融資したりするようなことは行っていないというふうに認識しております。
以上でございます。
○山本参考人 従来から、私ども、大企業の関連子会社向けの貸し出しも存在しております。大事な取引先だというふうに考えております。
ただ、御指摘のようなことをやっているというふうには認識しておりませんで、一般の取引先同様、一件ごとに個別のニーズを厳正に審査した上で行っております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 表向きはそのような回答をされるだろうと思いますけれどもね。しかし、現実に具体的な相手側との関係ですから、相手側と交渉して、まず3月に子会社に貸し出して、4月には親会社の方につけかえるということをやっているという事実を私は知っておりますので、そういう点を具体的に資料を出していただかないと、私はなかなかお話だけでは了解できないわけであります。もちろん個別の企業名を出すということは無理だと思いますけれども、少なくとも、この半年間の各月ごとの実勢ベースの金額と残高ベースの金額、この二つをそれぞれ月ごとに提出をしていただきたい。これが一つ。
それから二つ目は、先ほど一番最初にお聞きをいたしました銀行の子会社向けに、この間、月ごとにどのように融資をふやしてきたか、その融資額、子会社向けのトータルで結構ですから、月ごとにそれを提出していただきたい。この二点、いかがでしょうか。それぞれ。
○杉田参考人 まず、月次に数字を出せということでございますが、実勢ベースについてはいろいろ議論なされているところでございますが、表面残高に、貸出金の償却でございますとかバルクセール、それからCCPCそれからRCCへの売却等の不良債権処理によりまして表面残高が減少した分、あるいはまた、それに加えまして債権流動化による表面残高が変動している分を調整したものでございまして、これは通常期末のみに行っておる作業でございます。これを月次に行いますのは、全体の調整額のうち、特に中小企業向けの貸し出しの調整額を仕分けるなどの困難を伴いまして、月次での提出につきましては御容赦をいただきたい、このように思っております。
関係子会社の、私どもの子会社の数字につきましては、実勢ベースで提出することは可能かというふうに思っております。
○金子委員長 佐々木君。
いや、今のと当然同じでしょう。(佐々木(憲)委員「それぞれ」と呼ぶ)協会長としてのあれですから同じでしょう。
○佐々木(憲)委員 では、今協会長としてお答えいただきましたので、二番目の、子会社への融資の実勢ベースでの提出を、15行について提出していただくということを先ほどの御答弁でお約束いただきましたので、ぜひ後ほど提出をしていただきたい。
以上で終わります。
○杉田参考人 子会社に対しましては、私が申し上げたのは、持ち帰りまして検討させていただきたい。実勢ベースでは私自身は可能かなというふうに思っておるところでございます。
○金子委員長 これは理事会でまた協議させていただきます。