2000年10月23日 第150回 臨時国会 倫理選挙特別委員会 【115】 - 質問
参院選比例に非拘束名簿方式導入法案の提出者にKSD問題について質問
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
言うまでもなく、選挙制度というのは国民の参政権の基本であります。ところが、参議院で非拘束名簿式をこの国会に突然提出されまして、参議院では与党のみで強行した、極めて異常な事態であります。しかも、直ちに衆議院で通せというような強引なやり方に、私は厳しく抗議をしたいと思います。
非拘束名簿式を導入するきっかけとなりましたのは、久世問題であります。久世氏は党員2万人という比例代表名簿登載基準をクリアするために、2万人以上の党員とその党費を調達するために、大手マンション業者大京に1億円を出させた。それに見合う党員名簿3万3333人分を霊友会に出させていたわけであります。この党員数は、1億円を当時の自民党の年間の党費3千円で単純に割っただけであります。文字どおりこれは幽霊党員ですね。これで議席を買ったという大問題であります。本人もこのことを事実上認めているわけです。変えなければならないのは、選挙制度ではなくて自民党のこういう金権体質ではありませんか。
ところが、これにはほおかむりをして選挙制度の改悪をやろうとしている。これは断じて許せない。しかも、久世事件をもっと大規模にしたKSD問題が出てきたわけであります。これは、参議院で法案強行の陣頭指揮をとった自民党村上正邦参議院会長が深くかかわっている。私は、選挙制度の法案を審議する前提として、KSD問題の徹底究明こそやらなければならないと思うわけであります。
お聞きをしますけれども、このKSDの会員名簿で何万人もの党員名簿をつくって数億円を超える党費を立てかえていたという疑いがあるわけでありますが、提案者の皆さんは、特に自民党の発議者に聞きたい、自民党のこういう事態について、この問題の調査、これをやっていますか。
○片山参議院議員 委員は突如出したと言われました。突如でないことの説明を、るるほかの質問者の方にお答えしましたので、あなたも時間が少ないでしょうからもう繰り返しません。
それから、与党のみでというのも何度も申し上げました。野党も国会審議に加わってほしい、国会以外の政党間の話し合いもやろうではないか、それを全部拒否されたのでございまして、一方的な言い方はそれは慎んでいただきたい、こう思います。
それで、今KSDの問題を出されましたが、これは一部の報道がありますが、我々が知るところでは、捜査中ということもありますし、我々の提案と我々提案者に何の関係もありません。答える立場にありません。
○佐々木(憲)委員 とんでもない話だ。突如出してきて与党だけで審議したというのは事実ではありませんか。2月の合意に反して、一度もあなた方は非拘束なんか提案したことはない、そういう状態で久世問題が出てきて、突如持ち出してきた。そういうルール破りをやったのは与党の方であります。野党はそれに抗議をした。これが事実であります。しかも、関係ないと。何が関係ないのですか。名簿順位の、名簿のランクにかかわる重大問題だ。しかも、あなたはそう言うなら、豊明議連に片山さん、入っているのではありませんか。
○片山参議院議員 いやいやそれは、あなたがどういうデータであれしたか知りませんが、私は入っていないと思います。
○佐々木(憲)委員 でたらめ言うな。豊政連の「ザ豊政連」、これは機関誌でありますが、この中に、豊明議連の方々、はっきりと片山虎之助と書いてあるではありませんか。須藤良太郎さん、保坂三蔵さん、入っていませんか。
○須藤(良)参議院議員 入っておりません。
○保坂参議院議員 入会しております。
○佐々木(憲)委員 保坂三蔵さんは正直であります。片山さんと須藤さんも入っていながら入っていないと言っている。ここに証拠があります。名簿が入っているのです。まだそれでも入っていないと言うのですか。どうなんですか。
○須藤(良)参議院議員 私は、ちょっと記憶がなかったものですからそう答えたわけでございます。
○佐々木(憲)委員 事実はどうなんですか、事実は。
○片山参議院議員 私も全く知りません。うちの事務所かだれかがあれしたのかもしれません。調べてみましょう。私は全くそのあれはありません。
○佐々木(憲)委員 大体、入っていないと断定をするわけだから……(片山参議院議員「知らないからと言ったのです」と呼ぶ)知らないなら知らないと言ったらいいじゃないですか。全然違うじゃないですか。
明確な答弁をしてください。知らないのですか、入っていないのですか、入っているのですか。
○須藤(良)参議院議員 入っていないと思っていましたけれども、知らないうちにそういうことになっているのなら、それは入っているということだと思います。
○佐々木(憲)委員 片山さんは。
○片山参議院議員 今お答えしたでしょう、調べてみますということで。
本来の議論をやってくださいよ。(佐々木(憲)委員「今、本来の議論をやっているのだ、本来の議論をやっているのですよ」と呼ぶ)
○自見委員長 佐々木君、必ず委員長が指名をしてから発言するようにしてください。
○佐々木(憲)委員 わかりました。
つまり、この選挙制度の問題を議論する前提として、名簿のランクをどうするかという大問題についての疑惑がある。その疑惑について解明をする。これは政治姿勢、選挙制度に重大な関連があります。
私たちはこの間、全国のKSD豊明会の多くの会員から話を聞いてまいりました。支部長、ブロック長、班長を含めまして全国的に調査をして、約100数十人に直接当たって話を聞きました。重大な問題がその中で浮かび上がっております。
首都圏のあるKSD豊明会幹部の話でありますが、98年の村上さんの選挙のとき、名簿登録の上に行くため党員のサインをした、しかし党費は払わなくていいよと言われた。要するに、入党のサインはしたけれども党費は払わなかった。党費は立てかえられているということであります。
また、ある北関東の中小業者はこう言っているのですね。自民党の選挙関係の文書は何度か送られてきている、小渕さんの総裁選のときには投票用紙が送られてきた、今になって考えてみるとKSDの名簿で送られてきたのかもしれない、私自身は自民党に入った覚えはないし、もちろん党費など払っていない、こういう証言が出ております。
つまり、ここには二つの問題があります。一つは、党員として入ったという自覚はあるけれども、その場合、党費を払っていない。二つ目に、本人も知らない間に党員にされているという方であります。いずれにしても、これは党費を払っていないのですから、極めて重大な問題であります。
公明党の魚住さんにお聞きしますけれども、あなたはこういう問題を重大だと思いませんか。
○魚住(裕)参議院議員 KSDの事件自体は現在捜査中でございまして、提案者としてはコメントできる立場ではないわけでございますが、各党内における名簿決定順位におきましては、各党の、どうすれば活力が出るのかというような観点からなされているものと思っておりまして、今の事実関係につきましては私としては承知をしていない状況でございます。
○佐々木(憲)委員 では、承知をしていないというのなら、その手口を今示しましょう。
ここに資料があります。「村上正邦先生を支援する署名のお願い」という資料があります。これは、豊明会中小企業政治連盟つまり豊政連、さらに村上正邦後援会、この二つの連名であります。この連名の文書を出しまして、つまり豊政連と村上正邦後援会というのは一体であります。
もう一つは、十名の署名を書き込むことができる、こういう紙があります。「私たちは村上正邦先生を支援します」。この中に十名の氏名、年齢、住所、電話番号、こういうものを書くことができるようになっておりまして、ここにKSD会員の名前が書き込まれるようになっているのです。
もう一つの資料を見ますと、「ご協力頂きましたこのご署名は、自由民主党内における参議院比例代表区候補の順位を決めるための資料となります。」つまり、こういう名簿をつくって、これが自民党の比例代表選挙の順位を決めるために使われるのだ。
これは、ただ会員を集めたり後援会を集めたりというものではないのです。これは、ここの中に、私は証言をいろいろと得ていますけれども、KSD豊明会の会員の名前、年齢、住所、電話番号を転記するようになっているわけです。印鑑は押さなかったという人もいますけれども、別に筆跡を変えろとも言われなかった。こういうことで、この第一段階、ここにどんどんKSDの会員名簿から転記をする、さらにこの名簿を使って今度は自民党の入党届に名前や住所を再び書き込む、こういうことをやっているということであります。
私どもに千葉のKSD職員からの内部告発がありました。大変驚くべき状況であります。前回の参議院選挙、つまり2年前ですね。このときに、KSDの本部から指令が来るのです、千葉支局で1万人の自民党員をつくれ、こういう指示が来た、指示は古関氏から来る、職員はこれを必死でやらされる、こう言うのですね。通常の業務の中でこういう作業をやるというのですよ。自民党の署名運動という名称をつけて仕事としてやる。
さらに重大なのは、こういう証言があるのです。KSD会員の名簿、自民党後援会の名簿、それとどこかの学校の卒業者名簿を勝手に使い、職員が三文判を数百個買いに走ってそろえてくる、それをどんどん書いて本部に送っている、職員の間ではこんな仕事っておかしいねという声があるが仕方なくやっているんだと。まさに幽霊党員をつくっているのじゃありませんか。本人が知らない間につくられている。目的は比例代表の名簿順位を上げるためだ。極めて重大であります。
この点を直ちに調査すべきではありませんか。いかがですか。
○片山参議院議員 何度も既に他の提案者が申し上げましたように、現在捜査中の事案であり、我々提案者として答える立場にはありません。
○佐々木(憲)委員 捜査中といったって、あなた方、自分の党内の話じゃないですか。これだけ重大な問題、各マスコミでも取り上げ、国民の疑惑の対象になる、そういう問題について自分の党内のことを調査もできない、解明もできない。一体どういう党ですか、それは。おかしいじゃありませんか。
私はこんな重大な問題は放置できないと思うのです。
委員長に提案したい。村上正邦自民党参議院議員会長、古関忠男財団法人ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団前理事長、KSD豊明会前会長の証人喚問を当委員会に要求したい。理事会で検討していただきたい。いかがですか。
○自見委員長 佐々木君にお答えいたします。
後刻理事会で検討いたします。
○佐々木(憲)委員 重大な問題はそれだけじゃないんです。政治資金収支報告書に基づいて、我々が、自民党東京都豊明支部の党費と党員数、これを調べてみました。
これによりますと、95年には党員6万520人、96年には党員ゼロ、97年は7万4106人、98年は9万959人、大量の党員集めを行っております。政治資金収支報告書に書かれている党費だけでも、4年間合計しますと2億2256万円になります。これは、自民党東京都豊明支部に入っている、記載されている党費であります。
そこで、片山議員にお聞きをしたいんですが、当時の自民党の党費は年間幾らですか。
○片山参議院議員 4千円だと聞いております。
○佐々木(憲)委員 そのとおりですね。久世氏のときは3千円だったのが、千円上がって年間4千円になっていたわけであります。党員は3年間合わせて22万5585人になります。したがって、計算しますと、自民党全体に9億円以上の金が入ったことになる。先ほど紹介した豊明支部に入ったのは2億2千万円程度でありますから、あとは自民党本部などに流れたことになるわけであります。
この中で問題なのは、幽霊党員の分が豊明会によって立てかえられていたという疑いがあることであります。
報道によりますと、党費がKSD豊明会から流れたこと、同会では使途不明金として処理したというふうに報道されております。そのルートは、KSDが豊明会に補助金の名目で出す、これは年間20億から30億であります。豊明会は自民党豊明支部にこれを献金する、自民党豊明支部は豊政連にこれを献金する、こういうルートになっているわけですね。
KSDから豊明会に流れるのは、我々労働省から資料をいただきましたが、11年間で266億円であります。KSD豊明会、ここから自民党東京都豊明支部に流れるのは、今把握できるだけで、4年間で2億1740万円であります。この自民党の豊明支部というのは、豊明会から献金を受けたらそれを直ちに豊政連に流していくトンネル機関なんです。だから、豊明会から豊政連にいわば受け渡しをするだけなんですね。
その日のうちに豊政連に寄附されている部分、これは17回ありまして、この間、1億3400万円がトンネルを通じて豊政連に流れております。翌日に豊政連に流れたのは五回あって、3100万円であります。そのほかは六回で、4800万円。つまり、豊明会から自民党豊明支部を通じて直ちに流れていく、こういう関係なんですね。
○自見委員長 佐々木憲昭君に申し上げますが、きょうは公職選挙法の一部を改正する法律案でございますから、ほかの党の質問を見ましても、いろいろな法律についての質問があるわけでございますから、いろいろそういったことに関心をお持ちということでございますが、ひとつできるだけ議題に沿って進めていただきたいというふうに私は思っております。(佐々木(憲)委員「これは法改正の前提として私は聞いているんです、選挙制度そのものの問題を聞いているわけです」と呼ぶ)私は、委員長の良識でございますので、委員長の良識でそういうふうにお願いをしておきます。
○佐々木(憲)委員 ですから、こういういわば献金の脱法ルートをつくって、KSDから豊政連、自民党に流れる、こういうルートができているということでありますから、これは自民党にとっては極めて重大な問題ですよ。直ちに献金を返上すべきではありませんか、どうですか。
○片山参議院議員 何度も申し上げておりますが、我々は、きょうは公職選挙法の一部改正案の提案者として参っておりまして、今委員の言われることにお答えする立場にはありません。
○佐々木(憲)委員 でたらめ言うんじゃないよ。今の問題は、まさに法案を質疑する前提なんですよ。今までの自民党のいわば内部の問題で重大な疑惑がある、それが名簿の順位を決めていた、久世問題があった、この久世問題を今度は法律の改正にすりかえた、だからその問題を、久世問題よりもっと大事な問題が出てきたから、私は指摘しているんですよ。
問題は、この9億円というのがどこから流れてきたかということです。KSDは、中小企業の経営者を対象に、掛け捨ての共済保険を扱っております。会員は約100万人であります。掛金は月2千円、年間2万4千円です。年に240億から250億程度の資金を集めております。中小企業の経営者に支払われる共済金の支払いというのは、大体60億から80億なんですね。年に240億も集めていて、中小企業の経営者に支払われる共済金の支払いは60億程度。ところが、KSDは、豊明会に補助金の名目で20億から30億流している。その規模は、中小企業に支払われる金額のほぼ4割、莫大な金額であります。その一部が、自民党豊明支部を通じて豊政連に流れている。
私は労働省に確認しましたが、11年間で266億円が補助金として豊明会にKSDから支出されております。つまり、中小企業の大切な資金を、まさに自民党が食い物にしていたということになるじゃありませんか。自民党の村上正邦氏の比例代表名簿順位がKSDの名簿の流用と共済金による党費立てかえによって買い取られたものであることは明らかである、そういう疑いは極めて濃厚です。このKSD疑惑や久世問題を棚上げにして、これが今までの拘束名簿式の問題だからというようなことで選挙制度を変える、非拘束名簿式を導入する、これは逆じゃありませんか。
大事なのは、このようなことを徹底的に究明するということですよ。この究明をやるということが法案質疑の前提であります。だから私は、こういう点について直ちに調査を行うべきだと思いますし、証人喚問もやるべきだというふうに思うわけであります。こういう問題を、何か関係ない、あるいは今司直の手が入っているからとかそういうことで逃げ回って真相を解明しない、結局自民党の自分の党内の腐敗をただしもしないで、しかも国民に対して全く理解のできないような非拘束名簿式を出してきて、さあこれをやればすべてが解決するかのようなすりかえをやる、私は、これは全く国民に対する冒涜だと思いますよ。KSD問題の徹底究明、これこそ私は当委員会のなすべきまず最初の課題であるという点を指摘して、もう時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。