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財政(予算・公共事業) (予算案)

2001年02月27日 第151回 通常国会 予算委員会≪公聴会≫ 【125】 - 質問

公聴会で鷲尾連合会長らに質問

【公述人の後述部分と佐々木憲昭議員の質疑部分】
○野呂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 平成13年度総予算についての公聴会を続行いたします。
 この際、公述人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ御出席を賜りまして、本当にありがとうございました。平成13年度総予算について貴重な御意見を賜り、参考にいたしたいと思います。どうか忌憚のないお考えを御披瀝くださるように心からお願い申し上げます。
 御意見を承る順序といたしましては、まず鷲尾公述人、次に菊池公述人、次に木村公述人、次に大田公述人の順序で、お一人20分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、鷲尾公述人にお願いいたします。
○鷲尾公述人(日本労働組合総連合会会長) 御紹介賜りました連合の鷲尾でございます。平成13年度の予算審議につきまして、私のささやかな考え方を申し述べたいと思います。
 まず最初に、予算審議のあり方についてでございますが、1960年代以降、予算の政府原案が修正されましたのはわずか四回でございまして、しかも、そのうち三回は内閣みずからの修正によって再提案されたという部分でございます。
 私は、基本的に、今の政策決定あるいは予算決定の運営上、行政主導から政治主導へという基本的な考え方は大賛成でございます。その場合には、三権分立という立場から、国会の審議の中で予算が成立するというのが基本ではないかというふうに思います。
 したがいまして、もちろん、現在の流れからいいますと、政府におかれましては、政府原案の検討に長時間かけておるので、これが絶対のものであるというふうに御説明されるのは無理からぬことであろうと思いますけれども、基本的に予算自身は国会が決めるべきであるという原則に立って、議論の上修正を図るべきであれば大胆に修正を図るというのが基本ではないか、こんなふうに思っているところでございまして、今年度云々ということもございますけれども、予算審議のあり方について抜本的に検討していただくことを強く要請をするところでございます。
 そして、本年度の予算の問題についてでありますが、ちまたに財政構造改革か景気回復かという二者択一の議論がございます。私は、財政構造改革も進めながら景気対策をすることは可能であるというふうに考えているところでございます。政府の予算案を子細に点検することによって、財政構造改革を進めながら景気対策をすることはできるというふうに思っているところでございます。
 今日の経済が、長期不況から脱却しないまま一進一退を続けているという現状も一方では事実でございますし、それに何らかの手を打たなきゃいけない。さらには、一方では660兆円にわたるような財政赤字を続けているというようなことについては、できるだけ早く解消していかなくちゃいけないという二つの大きな課題があるというのが現実の問題ではないかと思います。
 その中で、まず私は、今の景気低迷の最も大きな理由は消費にあるというふうに考えております。もちろん、景気というのは、御案内のとおり、需給ギャップが大幅に存在することによって起こるわけでありますが、これまで政府支出を行うことによって需要を創出しようという努力を続けておられた。このこと自体は基本的には間違っている政策だというふうに思うわけではありませんけれども、将来のことを考えた場合に、本当にこのまま垂れ流しで政府支出をふやしていいのかどうかというものについては疑念があるわけでございます。何よりもまず、国民生活を安定させることによって消費を回復させるということが重要ではないかというふうに考えているところでございます。
 今年度の政府予算案が、私が申し上げるまでもなく、一般会計につきましては前年当初予算比2・7%の減でありますし、一般歳出でいいますと1・2%増ということで、3年連続の大型予算になっているわけであります。
 しかしながら、私ども、この間、史上最悪の雇用失業状況や先行き不安を解消するための積極対策がこの中に盛り込まれているかどうかということについては疑問を感じざるを得ないわけでありまして、基本的な問題を先送りにした予算案であるというふうに言わざるを得ないと思います。
 御承知のとおり、2000年度に入りまして、大企業製造業の設備投資の回復などから緩やかな景気回復が起こっているというふうに思うわけでありますが、一方、公共投資の減少や米国経済の減速などの懸念材料が加わっているわけでありまして、現在の景気回復の足取りはなお不透明であるというふうに判断せざるを得ないと思います。とりわけ、今申し上げましたように、個人消費が低調を脱していないわけでありまして、このこと自体は、企業収益の回復自体が家計所得に反映していないことに加えまして、戦後最悪の雇用失業状況のもとで、雇用不安や生活不安、さらには政治に対する不信というものが加わりまして、明るい展望を国民自体が見出せないというところに大きな要因があるんじゃないかと思います。
 私は、雇用対策こそが景気対策であるということを強調したいと思います。雇用の状況は、御案内のように本当に深刻でありまして、総務省が1月31日に発表しました2000年の平均完全失業率は4・7%でありまして、戦後最悪でありました99年と同水準でありました。完全失業者数は320万人というところに到達しているわけでありまして、この320万人という数字は大変大きいものがございます。とりわけ、非自発的失業者が100万人を超えているというような状況でございまして、100万人の首切り者が存在するということについて私たちは重く受けとめなければいけない、こういうふうに考えているところでございます。こうした雇用不安があるからこそ消費が拡大しないという事実を、我々は重く受けとめるべきじゃないかと思います。
 現在、春闘と呼びならされている労使交渉が展開されているわけでありますが、経営者側も、私たちの賃上げ要求に対しまして、雇用を守ることが消費を拡大することになるということを強調しているわけであります。これを一方的に受けとめますと賃上げがなくなってしまうということで、我々は反論しているわけでありまして、雇用も賃上げもというふうに言っているんですが、経営者も雇用確保こそが景気回復には役に立つということを強調しているところでございまして、ぜひとも今年度予算においても、さらに充実した雇用対策を強化していただきたいと思います。
 二点目に、問題は、社会保障の不安がますます募っているというところでございます。
 今回の予算案でも、社会保障費は非常に大きな伸びということになっておりますが、年金につきましては、昨年の国会で、給付水準のカットや支給開始年齢の引き上げなどの改悪が行われたわけでありまして、今後の少子高齢化の老後生活を支えられるかどうかという不安が国民の中に蔓延しているということでございます。
 私も若い人と会話をしますと、これは俗論なんですけれども、私たちが年金を掛けてももうもらえないんではないか、減らされることがあってももらえないことはないよ、年齢の引き上げというか引き下げといいますか、開始年齢が遅くなることがあるけれども、もらえないことはないんだよというふうに言いますけれども、信じていないというのが若い人の現実でございまして、こうした不安感を払拭するということが何よりも大切なんではないかと思います。
 もう一つは、今年度本格的な検討が加えられるというふうに言われております医療制度の問題についても、抜本改革を先送りしているということになっております。
 この実情は惨たんたるものでございまして、健康保険組合の赤字による解散というものが続いているわけであります。赤字組合というのは2000年度の予算ベースでは1467組合でございまして、健康保険組合の83・1%に当たる赤字組合が存在する。このまま抜本改革を進めない限り、いずれ医療保険制度はパンクするということは明らかでございます。また、政府管掌健保の財政状況についても、2000年度の予算については2077億円の赤字ということが予想されているわけでありまして、こうした抜本改革を先送りすればするほど赤字が膨らむということになってしまっておりますので、こうした面について、今回の予算案でも十分考えていただかなきゃいけない、こういうふうに考えるところでございます。
 三点目については、金融システムの問題でございますが、公的資金の注入による金融機関の資本増強やここ数年の低金利政策にもかかわらず、不良債権の実質処理は進んでいないわけでありまして、この問題が景気の行方に大きく影響しているということも事実ではないかというふうに思います。
 また、最近の物価下落でございます。これも、先ほど御紹介いたしました春闘では、経営側から、物価が下がっているんだから賃上げは必要ないんじゃないかという発言もあるわけでありますが、私どもは、消費者物価が下がるということは、基本的には悪いことでないと思いますが、デフレスパイラルをまたさらに助長する危険性があるということでございます。過当競争による物価下落あるいは外国からの輸入攻勢による物価下落によって日本の企業は存続ができなくなる、そうするとまた雇用には悪い影響が起こる、悪い影響が起これば消費拡大に水を差すというような部分がございまして、必ずしも消費拡大、景気回復に役に立たない物価下落があるということについても認識をしていかなきゃいけないというふうに思います。先行き不安からくる消費の引き締めによる要素もありまして、何よりもまず、雇用の改善と先行き不安の解消が抜本的に行われない限り個人消費は盛り上がらない、こういうふうに考えるところでございます。
 私どもは、今回の予算案について、幾つかの要求を掲げております。
 まず、生活関連分野を中心に、国、地方自治体の主導による140万人以上の雇用をつくり出すことが基本的な政策に織り込まれるべきではないかと思っています。失業者40万人規模の離職者職業訓練の実施と新規学卒未就業者2万人に対する職業訓練委託事業を実現するというようなことが織り込まれなければいけないというふうに考えています。
 政府予算案の雇用対策費については、前年当初予算比は13%増でありますけれども、何よりもこの対策は、失業者の増加に伴い、セーフティーネットを張るということで雇用保険国庫負担金を積み増しただけにすぎず、政府が責任を持って雇用創出をするというような積極的な予算になっていないというところが問題ではないかというふうに思います。
 私たちが試算したところでは、50歳で失業した、いわゆるリストラされた年収680万円の労働者、四人家族、三人扶養でありますと、年間297万円の失業コストが予算から出ていく、雇用保険その他から出ていくということになりますので、失業者が一人ふえるたびに、今の標準世帯でいいますと、年間約300万円弱の政府支出がふえるという計算になります。したがって、積極的な雇用創出をすることが予算の削減にもつながる、こういうふうに考えるわけでございます。
 二番目に、先ほど申し上げましたように、将来、先行き不安の問題でございますが、社会保障基盤を確立するために、基礎年金の国庫負担率の二分の一への引き上げを引き続き私たちは要求しているわけでございます。
 この点については、最近、段階的に二分の一にするという案も出されたようでございますけれども、ぜひこれは二分の一への引き上げについて積極的に進めていただきたい、このように考えておるところであります。また、先ほども申し上げましたように、診療報酬体系の改革や現行の老人保健制度にかわる新しい高齢者医療制度の創設など、医療制度の改革を抜本的に進めていただくことが大事であります。
 政府予算案の中には、少子高齢化対策として、児童手当の支給対象者の拡大や、保育サービスや介護サービスの若干の増加が見られるわけでありますが、私たちが要求したものとはほど遠いというものが見られるわけでありまして、積極的に進めていただきたいと思います。
 さらに、現在、仕事と家庭の両立支援法に現行の育児・介護休業法を改正するように運動を進めているところでございますが、男女がともに育児、介護ができる社会を実現するということ、そのことが基本的に少子高齢化対策になるんではないかというふうに考えておりますし、派遣労働者あるいはパートタイマーなどのすべての労働者に対しまして育児・介護休業制度を適用させるということが必要でありますし、保育所の拡充や労働時間の短縮などを求めていきたいというふうに考えています。
 公共事業でございますが、昨年と同水準の9兆4千億円の公共事業費を計上しているわけでありますが、公共事業にめり張りをつけるということで、日本新生プランということで、公共4千億、非公共3千億円の四分野に対しまして7千億円分について予算がつけられているわけであります。重点化を強調されているわけでありますけれども、中身を拝見いたしますと、もともとの根っこの予算まで含めて考えますと、従来型の土木工事を踏襲したものにすぎないというふうに考えざるを得ないわけでありまして、土木工事等の経済への波及効果が非常に衰えてきているというような実情から考えますと、こうしたものについては、いわば組み合わせといいますか、配分の変更というものを大胆に行うということが必要なんではないかというふうに強く感じているところでございます。
 この点についても、お手元にもパンフレットをお配りしておりますが、私どもの考え方についてはそれをお読み取りいただきたい、こういうふうに考えているところでございます。
 次に、今申し上げました土木工事中心の公共事業でありますが、財政出動を中心とした政府の景気対策については、せっかくお金をかけているにもかかわらず景気対策としての効果が薄いということを言わざるを得ないわけでありまして、いわば、先ほどから申し上げましたように、基本的な国民生活の安定ということによって消費を拡大することが基本的な景気対策であらねばならない、このように考えているところでございます。
 財政構造改革はもちろん早急に着手する必要がありますが、財政構造改革というのは、単なる歳出の削減や収入の増を伴う財政収支の問題ではなく、こうしたことによって逆に景気が悪化するという部分もございますから、財政構造改革と景気回復を両立させるというためには、単に歳出を一律カットする、あるいは歳入をはかるために税金を上げるというようなことについては避けるべきではないか、私はこのように考えているところでございます。
 こうした問題を打開するために、2001年度の政府予算案については、先ほどから繰り返しておりますが、勤労国民の雇用と生活の不安を解消する対策を中心とした政府予算へ組み替えることを求めるわけでございます。
 現在、2001年度の政府予算案の四野党の共同組み替え要求案がございますが、連合としては、特に雇用対策や介護保険の基盤拡充、公共事業の組み替えなどについても意見を申し入れたところでございまして、四野党共同組み替え要求を重く受けとめ、我々の切なる思いをお酌み取りいただき、2001年度政府予算に反映してもらいたいというふうに思います。
 最後になりましたが、政治への国民の信頼を取り戻すことが非常に重要であります。
 KSD汚職の問題については、ものつくり大学の私物化、施政方針演説変更疑惑、アイム・ジャパン疑惑を初め、その全容を解明することが、特に政治家の関与を明らかにするということが重要ではないかと思います。
 私自身は、ものつくり大学そのものがおとしめられたということについて非常に懸念を感じているところでありまして、今後、日本が物づくりを大切にするということは重要でありますけれども、こうしたものについて徹底的に解明をしていただきたいというふうに考えます。
 機密費問題については、松尾元室長個人の犯罪にとどめることなく、こうした問題を生んだ外務省の機構や機密費のあり方にメスを入れ、透明性と必要なチェック体制を確保することを強力に求めるわけであります。
 国民は、単なる特定の政治家の政治倫理の問題や官僚の使い込み問題とは見ていないわけでありまして、こうしたものを生んだ構造的なうみが噴き出したものと見ているわけでございまして、こうした構造腐敗を徹底解明し、政治のゆがみを正すことが喫緊の課題であるというふうに考えているところであります。
 以上、非常に雑駁でありますけれども、私の公述を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
○野呂田委員長 ありがとうございました。
 次に、菊池公述人にお願いいたします。
○菊池公述人(文京女子大学経営学部教授) 御紹介いただきました菊池でございます。
 きょうは、私の意見をここで申させていただく機会を与えていただきまして、大変光栄に思っております。私は大学の教員でございますから、中立の立場で、財政金融の理論とかそういう面から私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 お手元に資料がございますので、その資料を御参照ください。時間の制約がございますので、私の意見をまとめておきました。それから、数字を説明させていただきますので、途中からパネルを使わせていただきます。
 私の主な公述内容でございますが、まず、平成13年度予算に対する私の所見を四点に集約して申し上げます。次いで、第一点の日本の財政状況と財政再建について時間を割いて所見を申し上げ、最後に、デフレ経済からの脱却戦略、そういうことについて私見を述べさせていただきます。
 まず第一に、私は、平成13年度の予算案に賛成であり、1日も早く成立させていただきたいと思います。しかし、なぜこの予算案を6年ぶりの緊縮予算にしなければならなかったのか、私は大変理解に苦しむわけでございます。
 日本の財政は、総債務、つまり借り入れだけで把握しますと、GDP、国内総生産比率で見て主要国の中で最悪でございます。しかし、総債務から金融資産を控除いたしました純債務という観点からGDP比率を見ますと欧米平均並みでございまして、決して悪くはございません。しかも、日本国は資産超過で、債務超過ではございません。しかも、対外的には債権国でありますから、私は決して財政が危機的であるとは思いません。十分まだ支出余力があるのではないかと考えております。
 したがって、日本の財政事情を適正に把握しておれば、平成13年度予算は積極財政にすべきではなかったのかと考えます。
 第二番目には、株式市場の活性化と金融システムの安定化のためには、銀行が本体で所有しております株式、これを銀行から切り離しまして、株価の下落が金融不安に直接影響を及ぼさないような、そういうシステムを早急に検討すべきであると考えます。
 銀行が収益対策や株式の持ち合い解消のために株式を市場で売却いたしますと、株価が下がります。株価が下がりますと銀行の自己資本が減額いたしまして、ここにはBIS規制というルールがございますので、自己資本が減額した分に相当して、実は1兆減額いたしますと、8%自己資本を維持する銀行でございますと12・5兆貸し出しを落とさなきゃいかぬということになります。したがって、貸し渋り、信用収縮を招きます。こうなりますと実体経済が一層低迷いたしまして株価がさらに下がる、こういう悪循環が続くわけです。
 現在進んでおりますこの悪循環を断つためには、銀行本体の株式残高を凍結いたしまして別の組織へ移管することだと思います。こうした措置をとれば、株式市場が活性化いたしますし、10年以上も継続する資産デフレを解消する道が開けるのではないかと考えます。この方針を本年3月末までにお決めいただき、銀行の株式保有の弊害に決着をつけていただきたいと思います。
 どういう形がいいかといいますと、現在主要国でとられているシステムとしては、アメリカ型が望ましいのじゃないか。つまり、金融持ち株会社のもとでの銀行子会社、証券子会社、そういう場合には、証券子会社は株式を保有してもよろしい、やってもよろしい、しかし銀行本体は株式は一切持つことは禁止します、それから、あるいは銀行の子会社として証券会社を持ち、その子会社である証券会社は株式を扱ってもよろしい、これが現在、99年11月に成立いたしました最新のアメリカの銀行システムでございます。
 それから第三番目には、本年3月末に失効いたします金融機能早期健全化緊急措置法を少なくとも5年間延長していただきたいと思います。
 これは金融システムのセーフティーネットでありまして、この法律の失効が近づいていることが、株価の低迷と金融不安、信用不安の根本的な原因ではないかと思います。この法律は議員立法で成立しておりますので、議員の先生方の御発議をお願いしたいと思います。
 この法律のひな形となりましたアメリカの33年緊急銀行法は無期限でございまして、実に1954年まで21年間、セーフティーネットとして続いたわけです。
 それから第四番目には、現在日本で特に重要なことは、マクロ的見地から財政と金融の一元的政策を進めることだと思います。
 現在の日本は、政府が財政支出をふやして必死にデフレ解消に努めているにもかかわらず、金融政策は、デフレ解消どころか引き締め政策をとっていると考えられます。こうした矛盾を解決いたしますには、雇用と経済成長促進法といった法律を制定して、政府が金融と財政の一元的政策を進められるようにするべきではないかと考えます。
 アメリカでは、完全雇用と均衡成長法、フル・エンプロイメント・アンド・バランスド・グロース・アクト、これはハンフリー・ホーキンズ法といって、先生方御存じのとおりと思いますが、こういう法律がございまして、中央銀行は、インフレを抑制しつつも、金利操作と通貨量の増加によって最大限完全雇用と経済成長をもたらすように金融政策を遂行することが義務づけられております。この法律によりまして、連邦準備制度の理事長、中央銀行の総裁である、今ですとグリーンスパン総裁は、年二回、2月と7月に議会で証言いたしまして、政府、議会の意見を十分取り入れて財政と金融の一元的な運営が行われているわけです。日本も、こういった法律を参考にして成案すべきではないかと考えます。
 それでは次に、一番最初に申し上げました日本の財政事情と長期ビジョンというところについて私見を申し上げます。
 私の現状認識といたしましては、デフレ型の金融政策と緊縮予算案が株安、景気失速懸念の原因ではないかと考えております。現在、日本国民の多くは、日本経済の将来に対して不安感を抱いております。この根底には、長期にわたる経済の低迷と過度の悲観論があると思います。
 98年7月に就任されました小渕前総理は、財政再建策を凍結され、公的資金の注入によって金融危機を乗り切り、積極財政をとって恐慌的不況の克服に全力を尽くされました。特に、99年秋の補正予算では真水9兆円の支出ということをお決めになり、これが日本経済を大きくマイナス成長からプラス成長に引き上げる原因であったと考えます。平成12年度予算も積極型で、これで日本経済は成長路線に乗るかと期待されました。
 ところが、昨年の夏ごろから、一部の識者が総債務だけで日本の財政をとらえ、日本の財政事情は危機的であって、破綻寸前であるかのように誇張され、マスコミもその論調を強めたために、やむなく昨年秋の補正予算は真水で4兆円の増加にとどまりました。これで、99年秋の補正予算に比べて5兆円の減額となります。
 また、平成13年度の現在御審議いただいております予算案では、6年ぶりの緊縮、減額予算でございまして、金額では前年に比べて2・7兆円の減額ということになっておると思います。ですから、平成13年の予算支出は前年比で8兆円の減額となり、景気抑制型、むしろデフレ型予算というのが実態ではないかと考えます。株価が一段と低迷し、金融不安が再燃し、景気失速が伝えられる大きな原因はここにあるのではないかと考えております。
 加えて金融政策は、昨年8月のゼロ金利解除によりまして金利の引き上げと量的な引き締めがとられております。このまま何ら手を打たないで放置するとしますと、平成13年度には経済がマイナス成長に陥るのではないかと私は実は懸念いたしております。本年4月以降の景気動向を十分注視されまして、景気が失速しそうになった場合には早目に補正予算を御検討いただくのがよろしいのではないかと考えます。真水で例えば10兆円支出するといたしましても、平成13年度の前年比支出増加額はわずか2兆円にすぎません。
 二番目といたしまして、私は、日本の財政は決して危機的ではない、純債務で財政事情を適正に把握すべきであると申し上げました。
 そこで、この純債務というのは具体的に言ってどのような形になっておってどうなのか、御存じと思いますが、ここでパネルを使いまして御説明をさせていただきます。純債務で日本の財政事情を説明してきたというケースは今まで余りないのではないかと思いますので、御説明申し上げます。資料といたしましては、右上の三ページをごらんください。
 まず、手順といたしまして、皆様十分御存じと思いますが、日本の資金循環というのはどうなっているかということでございます。
 家計、企業、それから政府、海外、こういうふうに考えますと、まず、ここに書きました数字でございますが、上に書きました数字は、99年度、平成11年度の実数でございます。昨年12月に出ました経済企画庁の国民経済計算、そこからとっております。括弧内は1年前の数字でございます。
 そういたしますと、金融資産、家計部門には1408兆ございます。そのうち、家計が使っておりますのが384兆ありますから、家計部門の余剰が1024兆、それから下に金融機関で別勘定で計上しているものがありますので、実際の余剰は1062兆でございまして、これは1年前に比べますと100兆ふえております。大体ここのところ個人金融資産というのは100兆ぐらいずつふえているんですね。
 それがどう回っているか。企業部門の不足に749兆、それから政府部門の不足では純債務として228兆あります。実は、政府部門には総債務618兆の負債がございます。しかし、金融資産として390兆持っておりますから、この部分を引きますと228兆が純債務でございます。それから、残りは海外の債権として85兆、こういうふうに回っております。
 ですから、これは極めて健全に処理されておりますから、安定的な資金調達で推移しております。
 次に、その右側の日本政府の貸借対照表でございます。
 これはどういうふうになっているのだろうかということで、特に昨年の10月に大蔵省から、日本国は債務超過であるというような数字が出ましたので、かなり注目を浴びました。しかし、私が計算いたしますと、決して債務超過ではございません。
 どこかといいますと、まず金融資産、この数字も平成11年度、99年度の実数でございます。括弧内は1年前でございます。合計しまして資産が877兆ございます。金融資産が390兆、固定資産が332兆、土地が155兆、金融資産は全体の45%、固定資産は38%、土地は17%です。これは、ある程度時価評価しておりますけれども、含みもございます。
 一方、負債はどうか。国民経済計算によりますと618兆ございます。これは先ほどの負債に合うわけですね。一方、正味資産というのがこの差額で259兆ございます。ですから、ここで見る限りは日本は資産超過国です。
 しかし、昨年10月の大蔵省の発表によりますと、負債のところに公的年金と公務員の賞与・退職給与引当金、こういうものを計上しまして、その部分は正味資産を上回る、したがって債務超過である、これが三通りあるというふうに言われております。
 しかし、ここで私が思いますことは、公務員の方々のこういった賞与とか退職給与の引当金というもの、これは税収によってカバーされているわけでございまして、将来にわたっても税金に対する徴収権というものは政府にあるわけです。一方、国民年金でございますが、これも賦課方式をとっておりますし、将来にわたっても保険料の徴収権というものは政府にあります。そういった将来の徴収権というのは資産と考えるべきではないかと思います。
 それを考えますと、この負債というのは、ある意味ではやや疑問を感じます。私自身は、ここに負債として計上するのはいかがなものかと考えております。ですから、いたずらに日本国は政府も負債だというようなことをやや誇張し過ぎるのは、国民をかえってミスリードすることにならないだろうかと私は考えます。
 ついこの前、タクシーに乗りまして運転手さんと話していましたら、国もいよいよ債務超過なんですね、一体この国はどうなるんですかとおっしゃいましたから、ちょうどこれを僕は計算した直後だったんですが、いや、こうこうこうでそんなことないんですよと言ったら、そうですか、だけれどもみんなそう思っていませんよ、こう言っておりました。ですから、いたずらに国民に不安感を醸し出すような考え方はいかがなものかと私は疑問を感じております。
 では、次に参ります。ペーパーは四ページに行ってください。
 ここでは、日本の総債務と純債務というものを95年から分析してみました。そういたしまして、2001年度、今の予算案もここに入れてみました。そういたしますと、四ページの左の上のような表になります。特に99年というところに丸をつけてございますから、99年で見てみたいと思います。この表は、左が、一番上がGDP、それから総債務、三番目が総債務のGDP比率、それから金融資産、それから純債務、つまり総債務から金融資産を引いたものが純債務ですね。それから一番下はその純債務のGDP比率、こういうふうに表をつくってみました。
 そういたしますと、99年、実数といたしましては、総債務のGDP比率は120・3%、しかし純債務のGDP比率は44・3%、この差額、実に76%ポイントもあります。ここに実は日本の特徴がございます。ほかの国は大体15%ぐらいなんです。この後御説明いたします。
 そこで、それではなぜ純債務という考えの中に入れる金融資産の内訳というのが余り表に出てこないんだろうかというふうに考えられると思います。これを見ていきますと、それでは、金融資産の内訳はどうかというと、その下の表、左の表の下でございます。図表四、この数字、左が合計でございます。それから右へ行きまして、内訳の最初のところが社会保障基金、その右が外貨準備、貸出金と出資金、いわゆる政府の貸出金とか債権でございますね。
 問題は、社会保障基金というものでございます。これは、御存じのとおり、年金と国民健康保険の残高でございます。これを96年からずっと2001年まで見ますと、実は、ほとんど残高としてはもちろん黒字といいますか、かなりの金額がございますし、年々10兆円近く増加しているんですね。
 確かに、現在、健康保険の問題とか国民年金というのは、年齢構成とか将来に向かって問題になっております。ですから、十分今から手を打たなければならないことは確かです。しかし、現時点ではこれは黒字なんです。これが黒字なんだということを知っている国民はどのぐらいいらっしゃるんでしょうか。私も実はこれをやってみて初めて、こんなに黒字なんだなということがわかりました。
 ですから、ここで私が申し上げたいことは、こういった社会保障基金も黒字である。それから、日本は債権国ですし、対外的に外貨準備もあります。既に3600億ドル、40兆を超す外貨準備、史上最高のがあるはずでございます。ですから、そういうものはきちっと国民に正しく伝える。しかし、特に社会保険機構は年齢構成とかいろいろな角度でこれから難しくなるからひとつ協力してもらいたいという前向きのプレゼンテーションをすれば、国民もよくわかるんじゃないか。何か現在では、あれも悪い、これも悪い、日本は沈没するんじゃないかというようなイメージ、まあ、マスコミなんかはそういうのが好きですから、特にこちらにあおられている、これは非常に問題だと私は思いますけれども、いずれにしても、純債務で見ることによってこの辺のことは正確、的確に把握できるのではないかと私は思います。
 それでは、その次の五ページへ行ってください。そこで、日本の財政事情をアメリカ、イギリス、ドイツ、この三国とちょっと比べてみます。そうすると、非常におもしろい数字が出てまいります。
 五ページの左の下をごらんください。まず第一、日本の総債務と純債務のGDP比率、これを国際比較してみましたのがその左の下でございます。ちょうど真ん中の図表六は、総債務の残高の対GDP比率。これで見てみますと、99年、一番右の方ですね、確かに日本は120・4、ドイツが62・6、イギリスが54・0、アメリカは59・3、アメリカは特によくなってきていますね。一方、これを純債務で見てみますとその下のような形になっていまして、日本はどうなっていますか、44・3、ドイツが47・1。ドイツが実は一番悪いんです。それから、アメリカはよくなって44・0、イギリスが39・7、こういうふうになっております。ですから、純債務で見ますと日本の財政はそんなに危機的ではないと私は思います。
 それから同時に、前回の財政構造改革というのが行われましたのが、96年に決まって97年度でございました。そのときに一体純債務はどのぐらいだったのかと見てみますと、その下の表の真ん中のところに21・3とございますね。実に純債務のGDP比率は21・3%だったんです。ですから、ほかの国に比べて半分ですね。これは健全財政ではなかったか。
 ですから、当時、97年の3月だったと思いますが、アメリカのゴア副大統領が日本に来られまして、もっと金融資産があるじゃないかというようなことをおっしゃったようで、新聞で読んだことがありますけれども、このことではなかったのか。そういうことはこれで裏づけられます。
 それでは、日本の財政というのはどういう構造なのか、実は非常に特異な構造があるわけでございます。
 まず、一番上の表をごらんください。上の表は、主要国の経済、財政事情というものを項目別に整理してみました。一番上が経常収支、それでプラスが経常収支のプラス、つまり輸出の方が輸入より多い、それから三角は輸入の方が多い、マイナスでございます。それから、二番目が国内投資と貯蓄、Iが投資でSが貯蓄でございます。だから、IとSで不等式になっておりますが、Iの方が多いということは貯蓄よりも投資の方が多い。それから三番目、財政収支、これは三角がマイナスでプラスが黒字でございます。四番目、対外債務国か債権国か。三角は対外的に債務国です。プラスになっていますのは債権国です。これは日本だけです。それから、五番目が総債務のGDP比率、六番目が純債務のGDP比率、これは先ほどの数字を全部書いてあります。
 そうしますとどういうことが言えるかといいますと、まずアメリカの場合は、これは債務国でございます。しかし、経常収支はずっと輸入の方が多い。国内も貯蓄率がマイナスのような国ですから、投資の方がずっと多いです。それから、下の方を見ますと、総債務と純債務の比率は、総債務が59・3、純債務のGDP比率が44・0ですから、15・3。こういう15・3%ポイント、つまりこの数字が両方の見方のギャップでございます。
 それからドイツは、経常収支は全部プラスでございます。しかし、その下の投資と貯蓄を見てみますと、この国は投資の方が多いんですね。これは、統合の結果が影響していると思います。それから、財政は赤字でございます。それから、総債務と純債務を見てみますと、総債務が62・6、純債務が47・1ですから、この差額は15・5ということになります。
 イギリスはどうか。イギリスは、97年以外は経常収支は赤字です。それから国内はどうかといいますと、この国は98年までは貯蓄の方が多かったのですね。そこで実は財政赤字をやったのです。それで、積極的な財政をやりました結果、99年には内需が喚起されて、同時に財政も黒字になった。この両方の先ほどのポイントは14・3。ですから、ほかの国は大体14、5%ポイントの差しかありません。
 一方、日本はどうか。これは非常に特異な性格を持っておりまして、国際収支は全部プラスでございます。それから国内はというと、貯蓄の方がはるかに多い。これがずっと続いております。財政は赤字です。対外的には債権国です。両者の比率は実に76%、非常に大きいわけですね。
 ここから見ますと、非常に日本の特徴がはっきりしてまいります。どういうふうにはっきりしてくるかといいますと、右下の日本の特徴を見ていただきたい。
 三番目には、97年度の財政を出した時点では、先ほど申し上げました。
 四番目の、財政構造の点から見て均衡財政ということはあり得ない国だ。それは、右の一番上に財政理論ということをちょっと書きましたけれども、通常、経常収支が赤字の場合には国内は投資の方がふえる、経常収支が黒字でございますと貯蓄の方が多い。それから、ドーマーの定理ということで、債務コストよりも経済成長率が高ければ債務は自然と消えていく。当たり前のようなことですが、こういうようなことが言えます。ですから、日本について言えることは、こういうような財政構造から見ますと、下の方の四番目、財政構造の点から見て均衡財政というのは日本に当てはまりません。
 五番目には、常に輸出超過国で、今後ともこの動向が期待され、国内は貯蓄が投資を上回るので、ほかの国以上に政府が公共投資で資金を民間へ還元する政策が必要である。
 それから六番目には、国民負担率は主要国の中で最低です。これはその左上の下のところに書いてあります。日本はGDPの比率で1・3から1・4、アメリカが2%、欧州が3%という形になるわけです。
 こういう面から、私は、日本はそう危機的ではないということでございます。
 最後に、時間が超過して恐縮ですが、日本の財政再建についての基本的な考え方といたしましては、まず、構造改革ということと財政再建を切り離してきちっと考えるべきであろうと思います。
 財政構造改革というのは、税収の増加対策、それから効率の低い支出は削減するということで現在既に実施中ですし、これをもっと強めるべきだ。それから、財政再建というのは、やはり景気が回復して3%以上の成長が持続できるようになって、しかもそれが軌道に乗ってから行うのが望ましい。今まで経験的に見まして、ほかの国でも、景気下降期で財政再建改革で成功した例はございません。
 二番目は、社会資本の充実が必要な国でございますから、政府が公共投資を継続しなければならない国です。ですから、400兆円ぐらいの国債残高は常にあっていいのではないか。これはよい財政赤字であって、次の世代に引き継いでもいいのではないかと思います。
 それから三番目には、社会保障基金は現在黒字です。将来にわたっての問題は既に検討中であり、過度の心配は無用である。この辺は国民にもこういう事態をしっかりと説明すべきではないか。景気を回復して増加した所得の中から徐々に負担率を上げる、こういう考えが望ましいのではないかと思います。
 最後に、デフレ経済からどう脱却するかということですが、現在の日本は、総力を結集してデフレ経済からの脱却を考え、実行すべきであると考えます。政府は、明確なビジョンを示し、国民の不安感を解消していただきたいと思っています。
 目標は、やはりGDPの3%以上の成長。財政支出はまだ十分可能で余地がございます。金融政策を早急に成長型に変え、銀行の不良債権と株式保有の抜本的解決を並行して進め、また、物価下落を食いとめるためには、セーフガードの発動、円安誘導などを実行してもよいと思います。こういうものを総合して継続して実施することが必要ではないかと私は思います。政府の予算にそういった面での具体化をぜひお願い申し上げたいと思います。
 どうも失礼いたしました。(拍手)
○野呂田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、木村公述人にお願いいたします。
○木村公述人(KPMGフィナンシャル株式会社代表取締役社長) ただいま御指名を受けましたKPMGフィナンシャルの木村でございます。私は、金融専門のコンサルティングをしている立場から、事実に即しましてお話をさせていただければと思っております。
 先生方のお手元に、「日本経済と金融の行方」という横長の資料を配付しておりますけれども、その資料に沿いまして、私なりに今の経済と金融の状況を分析させていただきたいと思うわけでございます。
 まず一ページ目を開いていただきまして、「公表不良債権の推移」というグラフがございます。
 これは、先ほどG7でも指摘されましたように、海外の目は相当厳しゅうございまして、日本の金融システムの問題はかなりまだ重いのではないかと思われておるところでございます。事実、公表されておるだけの不良債権を見ましても、金額がなかなか減らないということでございますし、その下の折れ線グラフを見ていただきますと、貸出金に占める不良債権の比率が年とともに上昇をしておる。残念ながら、バブル崩壊と言われて10年後に至って不良債権比率が上がっておるということは悲劇と言わざるを得ないわけでございます。
 事実、アメリカが非常に苦しかった1980年代後半から90年にかけまして、アメリカにおきましても銀行危機というのは起こっておりましたけれども、このとき、6%以上から10%の不良債権比率というのは相当危険であるというふうにみなされておったことを考え合わせれば、現状の日本の金融の実態が軽々に楽観視できるものではないということは明らかなように思われるわけでございます。
 それでは、海外はどのように見ておるのかということを次のページで改めて確認させていただきますと、彼らが必ず議論をするのは金融とGDPの関係でございます。すなわち、金融と経済規模の関係でございます。
 実際、ついこの間、S&P、スタンダード・プアーズという格付会社が日本の国債を格下げしたときもこの理屈を使っておりましたけれども、日本の不良債権のGDPに占める比率は相当高いということを言わざるを得ないわけでございます。6%内外という数字、これは海外から見ますと相当厳しい局面にあるというふうに思っておりますし、彼らの見方は、これは公表しただけではないか、まだ未公表の残高があるのではないかというふうな見方をする向きも少なからずありますので、日本の不良債権の問題、このインパクトは非常に重いと考えておるわけでございます。
 といいますのも、アメリカの最悪期、あのシティバンクがつぶれる、バンク・オブ・アメリカがつぶれると言われたときの公表不良債権がGDPに占める比率は実は3%にすぎませんでした。日本の昭和恐慌におけるときも2・5%から3%にすぎなかった、こういう研究が出ております。今は、不良債権、いろいろと定義がございますけれども、一番狭い定義、リスク管理債権の定義で見ても日本のGDPの6%近くあるというのは、昭和恐慌あるいはアメリカの最悪期の二倍のインパクトがあるというふうに見られてもいたし方ない面があるわけでございます。
 その結果として、なかなか銀行が立ち直ってこないということで、日本は低金利政策を続けてまいりました。それは三ページ目、次のページを見ていただきますと、先生方よく御存じのとおりでございますが、これは、プライムレートということで最優遇の貸出金利をとっておりますけれども、あのバブルを起こしたということで相当批判された低金利政策、短期で3%ちょっと上、それから長期で5%から6%、これをたかだか2年間続けただけでバブルは起こったわけでございます。
 では、足元がどのような金利体系にあるかといえば、皆様方よく御存じのとおり、短期については1%を切る水準が5年間続き、長期については2%内外の水準がこれまた5年間続いておる。その低金利の結果、銀行の収益は支えられておりまして、右上に業務純益、銀行の通常の取引から得られる収益ということで見ますと、実は、バブル期で相当銀行がもうかっておった1988年当時よりも相当長い期間、銀行は高収益を続けておるわけでございます。それで何とかこの不良債権のインパクトをしのいできた、こういうふうな状況があったわけでございます。
 しからば、経済はどうかといいますと、その次のページを見ていただきますと、当然、低金利ということでございますので、お金はじゃぶじゃぶ出てくる。実際、じゃぶじゃぶと出てきておるわけでございます。これは、M2プラスCDという一般的なマネーをはかるときに使われる指標を実体経済、GDPで割った数字でございますが、バブル期、確かにお金は多うございまして、実体経済の110%ございました。しかし、足元を見ていただきますと、このバブル期を超えてお金が余っている。20%増し、30%増しのお金は現にマーケットにあるということでございます。
 その下のアメリカの指標と比較していただきますとこの違いがはっきりとわかると思いますけれども、アメリカではIT革命が進んでおり、当然、マネーが必要となる局面も少なくなっていくということで、実は実体経済に対するお金の割合は減っておりますし、少なくとも横ばい圏内ということが言えるわけでございます。そういう意味で、昨年起こった日本のネットバブルとアメリカのナスダックに象徴されるネットバブルは明らかに質が違い、日本の場合は相当金融のバブルであったということを言わざるを得ないわけでございます。
 そして、次のページを見ていただきますと、そういう意味でお金は余っているのになぜ景気がよくなってこないのか、こういうお話になるわけでございます。
 これは、皆様方よく御存じのように、銀行の貸し出しがふえない、この一点に尽きるわけでございまして、既に3年間余り、日本の銀行は前年比マイナスの貸し出しをしておるわけでございます。それでは、お金はどこに行っておるかといいますと、その下のグラフを見ていただければ明らかなとおり、ゼロ金利をスタートしてから日本の銀行のポートフォリオは国債ばかりということで、国債をどんどん買っておる、こういう形になっておるわけでございます。
 その結果何がわかるかといえば、次のページでございまして、日本銀行から銀行に散っているお金のことをベースマネーと申します。そして、銀行から民間に行っているお金のことをマネーサプライというわけでございますが、このマネーサプライをベースマネーで割ったもの、これを信用乗数と申します。銀行が元気であれば、本当に機能していれば、この水準というのはどんどん膨らんでいく。通常でいえば12倍とか11倍という数字になるわけでございますが、お手元の資料で見ていただければおわかりのとおり、ここもと銀行の信用乗数は減る一方だ。すなわち、銀行は銀行としての機能を果たしておらないという問題があるわけでございます。事実、その下のキャッシュとGDPの比較、お金と本当の経済規模の比較を見ていただきますと、あのバブル期、ジュラルミンで現ナマを買ってそれで土地を売買していたときよりも、実はGDPで見ますと日本のマーケットにお金はあふれておる、そういう数字が出てきておるわけでございます。
 次のページに行きまして、しかしながら、デフレというものは続いておるというふうな状況でございます。相当やはり厳しい。これだけのじゃぶじゃぶのお金をもってしてもなかなか解決がつかない。銀行も相当支えられておるはずでございますけれども、マーケットの見方は厳しゅうございます。皆さんも覚えていらっしゃる97年の11月、山一証券がつぶれ、そして北海道拓殖銀行がつぶれた、そして預金者が取りつけを起こした、あのときの株価水準よりも今日本の銀行の株価は低いということでございます。この現実を直視せざるを得ないと思われるわけでございます。
 以上のような状況を簡単にまとめたのが、次のページでございます。
 日本は今、大きな不良債権と過剰な、じゃぶじゃぶのお金によってバランスをしておると考えるのが正当であると私は考えております。不良債権があるものですからデフレ懸念が払拭できません。デフレ懸念が払拭できませんから財政赤字を垂れ流さざるを得ない。あるいは、不良債権がありますので銀行への公的資金を入れざるを得ない。本当であれば、国債がたくさん出て国債の値崩れが起こってもおかしくないところなんでございますけれども、お金が余りにも大量に供給されているがゆえに、しかも銀行が、本来の機能である貸し出しをふやすということではなくて、国債を買うことによってその機能を代替していることによって、国債を買う人がたくさんいらっしゃる、そこで微妙に均衡しておるというのが日本の危うい現実であるということでございます。
 また、本当であれば、これだけじゃぶじゃぶにお金が出ますと、バブルというのは起こり得ます。実際、東京の表参道は既に路線価の三倍、あるいはここの近く、山王の近くの土地でいいますと、NTTドコモさんが入られただけで相当周りの地価が上がる、そういう、点のバブルは実際起こっておるわけでございます。そういう意味で、お金は余っている、しかし、デフレ懸念が不良債権によって増殖されているがためにバブルにはなかなかなりにくい、これもありがたい均衡が続いておるわけでございます。
 そういう意味で、問題は、この均衡が果たしてどこまで続くか、こういうところにポイントが来るわけでございます。普通の国であれば、これだけのじゃぶじゃぶの過剰流動性、定期預金をしても1%もいかない悲しい金融の現実に遭いますと、対外投資、ドル預金あるいはユーロに向かっていくわけでございまして、円安傾向になるわけでございますが、日本の場合は円高信仰がまだまだなお強く、一方的な円安にはまだなっておらない、こういう状況にあるわけでございます。
 では、この状況は本当に続いていく、そういうふうに考えていいのかというところを次に申し上げたいと思います。
 九ページを開いていただきますと、右の上に書いてございますように、公定歩合あるいは無担保コールということで政策金利を見ていただきますと、いまだに低金利であるということは否定できない現実であるわけでございます。低金利で喜ぶ人間がいれば、当然悲しむ人間もいるわけでございまして、今、その代表選手が生保ということでございます。ここでは、代表する大手生保十社、この利ざやの損失というのは年間で約1・5兆と言われておりますけれども、片や銀行の経常利益は十行で1・5兆ということでございますので、ほぼ同じ金額が生保から銀行に所得移転をされておるというのが日本の実態でございます。
 問題は、このような状況を本当に続けていって、生保のみならず、日本の年金財政、これが本当にもつのだろうかということは真剣に考えなければいけないわけでございまして、先ほど申し上げたバランス論で言うならば、これまで日本は綱渡りをするピエロだというふうに私はよく言っておりますけれども、不良債権と過剰流動性で何とかバランスをしてきた。そのうちに財政赤字という荷物までふえた。それをお金をふやして何とかバランスしてきたんですけれども、足元に生保あるいは年金の逆ざや問題というのが襲いかかってきておる。このままいきますとバランスを崩すかもしれませんし、綱さえ切れてしまうかもしれない、そういうふうに私は考えるわけでございます。
 そして、次のページを見ていただきますと、国債の発行高が徐々にふえておるということは皆様方よく御存じのとおりでございますけれども、中でも最近、マーケット関係者が注目をしておりますのは、アイルランドという国がございます。イギリスの西にある、ギネスビールで有名な国でございますけれども、この国が日本の低金利に目をつけまして、今円建て外債を出していらっしゃいます。円の通貨で調達をして円で金利を支払う。どこの国におきましても、ホームグラウンドで戦う、そういうチームは一番強いわけでございます。日本の国債は日本でこそ一番強い、これは当たり前であります。しかしながら、最近悲しい事件が起こっております。それは、たかだかアイルランドの円建て外債に日本の国債の金利が負けておる、日本の金利の方が高い。これは国辱と言わざるを得ないと私は考えます。
 そういう意味で、確かに国内的には平静を保っているように見える国債マーケットではございますけれども、海外の目はより厳しくなってきておる、このことはぜひ委員会の先生方にはわかっていただきたいと思うわけでございます。
 さらに、次のページを開いていただきまして、このようなことを申し上げますと必ず資金循環の話が出てくるわけでございまして、家計は確かに35兆円という大幅な資金余剰にございます。そして、一般事業法人も30兆近い資金余剰にある。全く需要がないんだ、お金を借りる人がいないんだ、だからこれはもう政府で吸収するしかないんじゃないか、こういうふうなお話がよくされるわけでございますけれども、本当に一般事業法人の需資がないのであれば新規の貸し出しのレートは当然下がっているはずでありますし、本当にないというのであればゼロになるはずでございます。
 しかしながら、現実は違っております。右側に新規貸出約定平均金利、三カ月の移動平均のものを載せておりますけれども、昨年の4月あるいは2月ぐらいを底といたしまして実は上昇に転じておるということが現実問題としてあるわけでございます。これをどのように考えるかということが解決されませんと、単に、需資がないから財政で吸収していいんだ、こういう議論にはなり得ないわけであります。
 また、次のページを開いていただきますと、確かに日本の国民はお金持ちでございます。1388兆、これだけの金融資産を持っていらっしゃる。負債は385兆。差し引き1千兆の資産を持っているわけでございます。公的債務は国と地方を合わせて666兆ですから、差し引きしても338兆。だから大丈夫なんだ、こういうふうな話になっておるわけでございますが、これは非常に失礼な議論だと私は考えるわけでございます。
 なぜならば、この純資産は国民のものであって、日本政府のものではないからであります。これをもし日本政府のものだとするならば、日本政府は自分の自由に消費税を上げ、勝手に国民の資産を収奪することができると言っているのと同じだからでございます。
 したがいまして、説明をするのであれば、右側のとおり、消費税は2001年度、10兆、10年間で101兆、それを税率33%まで上げてようやくこの666兆が払え、それは国民一人一人の家計の資産を66%取ることなんですよ、この事実を言わなければならないわけでございます。
 最後に、私から一言だけお願いとして申し上げたいわけでございますけれども、日本の経済は残念ながら相当厳しい状況にあるということは言わざるを得ないと思います。例えて言えば、水道管の中にごみが詰まっておる、そのごみを取り除くことなしに日本の経済が円滑に動くことはあり得ません。ぜひ、ごみである不良債権をきっちりと処理し、そのためには財政というカンフル剤、金融という輸血というものは必要だという局面もあると思いますが、この不良債権問題を処理することなく日本の本格的な景気回復がないということをお願い申し上げて、私の公述とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○野呂田委員長 ありがとうございました。
 次に、大田公述人にお願いいたします。
○大田公述人(政策研究大学院大学助教授) 大田でございます。来年度の予算案と現在の課題につきまして意見を申し上げます。
 まず、来年度の予算案の規模ですけれども、当初予算比でおおむね今年度予算を踏襲したことは私は妥当だと思います。これで3年連続してほぼ30兆円の歳入欠損が続きますけれども、まだ歳出規模縮小に踏み切る状態にはありません。ただ、その量的規模は維持しましても、中身を変えることは十分に可能なわけです。予算の質という面では、来年度予算には評価できる点と批判したい点とがございます。
 まず、評価できる点ですけれども、幾つか将来につながる改革に着手がなされております。
 まず第一に、公共事業の事後的な見直しが始まったということです。それから二番目に、地方自治体に赤字地方債を発行させるということで自治体の財政状況がわかりやすくなった、この措置がとられたことです。それから三番目に、経営状態の悪い特殊法人に無利子融資を行うということで負債の膨張を食いとめる試みが始まったという、この三点があります。
 問題は、この着手がなされたというにすぎないことです。日本新生特別枠も、歳出総額の0・8%にとどまっています。今、その歳出の分野で改革を要する大きい分野は三つあります。一般会計のベースでいいますと、社会保障、公共事業、地方財政、この三つが主に改革を必要とする分野ですけれども、いずれも本格的な改革にはほど遠い状態にあります。
 歳出構造の改革というのは口で言うほど簡単ではありませんで、大変難しい課題ではありますけれども、もう本格的な見直しを始める時期を迎えております。この10年の間に世界と日本に起こった経済構造の変化に現在の歳出構造は対応しておりません。第一に、IT革命が急速に進行しているということ、第二に、国際的な競争構造が変化して、特にアジアと水平的な競争関係に入ったということ、それから第三に、国内的には高齢化がいよいよ本格化してきたという、この経済構造の変化に歳出はどう対応していくのか、これに対応する骨太の議論が今求められております。歳出構造と歳入の構造を政治の力で変えていくという骨太の議論が今求められています。
 ここで確認しておきたいんですけれども、財政改革に取りかかるということは、すぐに歳出規模を縮小するということではありません。まずシナリオを提示するということです。このシナリオづくりもそう短期ではできませんので、まずシナリオを提示する。最近のS&Pの日本国債格下げも、足元の問題というよりも、将来のシナリオが提示されていないというところを、提示を督促しているというふうに思われます。
 したがいまして、今の日本経済にとって重要なことは、短期的に予算を組み替えることではなくて、構造的な問題の議論に早く着手して展望を示し、参議院選挙で国民の判断を仰ぐことだと考えます。参議院選挙の後はしばらく選挙がありませんので、これを逃しますと国民の判断を問う機会がございません。
 その歳出改革のシナリオをつくるに当たりまして、ぜひとも議論しておかねばならないポイントを三点申し上げます。
 まず第一点は、地方財政における国の役割を最小限にとどめるということです。
 地方財政の改革なくして国の財政の改革もありません。地方財政の改革では、特に地方交付税の抜本的な見直しが不可欠です。地方財政を強く、健全にするためには、各自治体の長がみずから住民に増税を要求して住民の評価に直接さらされる、住民の側も費用との関連で行政サービスを考えるという仕組みをつくることが必要です。そのためには、国を通して財源の均衡化を図っているというこの地方交付税制度の抜本見直しが不可欠です。
 先ほど、一般会計の歳出分野で改革が必要なのは公共事業、社会保障、地方財政、この三つを挙げましたけれども、このうち公共事業と地方財政は密接に関係しております。これまで、公共事業が、地方の財政調整であったり地方経済の活性化という目的のために必要性を度外視して使われているという面がございます。もちろん、地域間の財政力格差を放置していいとは全く申しません。申しませんけれども、やはり、国のやるべき役割は最低限の保障、ナショナルミニマムにとどめるべきです。
 地方が財政に責任を持つ状態にするには、まず第一に、現在の地方交付税を廃止して、ナショナルミニマムを確保するための新しい財政調整制度をつくること、第二に、国税から地方税に税源を移譲すること、それから三番目に、地方自治体に大幅な課税自主権を与えること、この三点セットです。この三点セットのいずれも欠くことはできないわけで、この三点セットの改革が必要です。地方交付税の見直しは政治的な抵抗は大変強いんですけれども、これをこのままにしておいては合併も進みませんし、財政の健全化もそれから経済の活性化も進みません。今の地方交付税とセットの地方分権はあり得ないということを強調しておきます。
 それから、二番目の重要ポイントですけれども、将来に持続可能な社会保障制度にするということです。
 人口構成が一定ですと、高齢者に手厚い制度をつくれば、だれしもいずれは年をとりますので、各世代とも同じ給付を受けるわけですけれども、日本のように人口構成がアンバランスで急速に高齢化が進む国では、高齢者に手厚い制度をつくりますと、それは将来の現役世代の負担増を意味します。したがいまして、世代間の公平性ということを重視して制度をつくる必要があります。社会保障制度は国家が国民に対して行う長い約束です。ここで若者の不信を生むという制度は決してよくありません。
 それから、ポイントの三番目ですが、税制の全体像を示すということです。
 これからの高齢化社会の税制をどういう中核的な制度で担っていくのか。消費税であるとすれば将来の税率は何%になっていくのか、もし所得税にするとすれば税率構造をどうしていくのか、この具体的な数字を入れての将来像を示す時期が来ております。
 今申し上げましたような歳出構造の改革というのは、単に財政収支を改善させるためだけのものではありません。最大の目的は、今の日本が持っている資源を最大限に生かすための枠組みをつくるということです。資源といいますのは人材であり、資金であり、それから技術力、そういったものです。
 先ほど申し上げました地方交付税の改革も、単に地方の財政問題を改善するということではなくて、目的は、地域がみずから持っている資源を最大限に生かして地域間で競争しながら地域の魅力をつくっていく、ここに目的があります。そのためには、国の配分に安易に依存するのではなくて、それぞれの地域が背水の陣で経済戦略を立てるということが必要で、ここに目的があります。
 それから税の改革も、これまでは、一言で言いますと取りやすいところから取る税という性格がありましたけれども、これからは、企業や個人の意欲を喚起する、そして能力を存分に活用するという観点から見直される必要があります。
 社会保障制度の改革にしましても、日本が初めて直面する人口が減少する社会、この人口が減少する社会の中でいかに豊かな生活の質を実現していくのかということを模索する過程の問題の一つが社会保障制度です。日本が人口が減少する中で質の高い生活を維持するすぐれた経済社会のシステムをつくり得るならば、これは後に続くアジアですとか欧米のモデルになるはずで、私は、この問題は21世紀の日本が行う国際貢献の一つだと思っております。
 以上申し上げましたような構造的な問題への本格的な取り組みが始まれば、私ども国民は、ようやく私どもの不安の根源にある問題に政府が取り組み始めたと理解して、政府への信任が高まります。これは、景気にもいい影響を与えるはずと思います。今後の財政シナリオを、政府のみならず、すべての政党が包括的に、そして数字を伴った具体的な案として御提示いただいて、選挙で国民の判断にゆだねてくださることを期待いたします。そして、再来年度の予算編成に着手するまでに大きな方向を決めていく必要があると思います。
 ありがとうございました。(拍手)



○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 公述人の皆さん、どうも御苦労さまでございます。時間が短いので、お二人にお伺いをいたします。まず木村公述人、引き続き鷲尾公述人にお伺いをしたいと思います。
 先ほど、木村公述人は、不良債権の処理ということを大変強調されておられまして、ごみである不良債権をきっちり処理しなければならない、こうおっしゃいました。ただ、私は、この不良債権ということを見る場合、その内容についてもう少し立ち入って検討する必要があるのではないかというふうに思っております。
 先ほど配付をいただきましたこの「公表不良債権の推移」を見ますと、97年から急増しているということになっております。これは、不良債権というのは、もともとバブル時代に投機的な活動をした結果生まれた、そういう要素と、さらにその後、長期的な不況に陥り、特に97年以後の消費不況、この中で需要が低迷し、中小企業が大変な事態になり、そこに貸し込んでいる銀行の貸し出しの回収が非常におくれていく、そういう面のいわばバブル崩壊型不良債権と不況型不良債権、単純に言いますとそういうふうに言えるのではないかと思うわけであります。
 そうしますと、これをごみとして直ちに処理するというふうになりますと、私は、中小企業にとってはかなりきつい状況が生まれるのではないか。この点はやはり区別をして、性格をよく見た上で対応するということが大事だと思いますけれども、その点はどのようにお考えでしょうか。
○木村公述人 確かに先生のおっしゃられるとおり、不況型、バブル型、きっちりと分けることができれば、それは非常に好ましい政策の制定はできるかと私は思いますけれども、残念ながら、人間の力でそこまで完璧に区別をすることは難しゅうございます。
 例えば特別保証、これにつきましては、確かに数少ない優良な中小企業は救われたと思いますが、ブローカーに20%、30%を払って資金を調達した中小企業がもともと優良かと問われると、国民の一人としては大きく疑問に感じざるを得ません。
 しかしながら、不良債権を本当に処理するという過程におきましては、先生の御指摘のとおり、たまたま経営者が悪いだけで残念ながら失業という非常につらい局面に置かれる労働者がたくさん出ることも、状況としては実態があると私は考えておりますので、それに対しては、例えば新しく雇用する企業に対して賃金の2年分の半額を持ってあげるとか、そういう構造改革をするような形で有意義に財政資金を使っていただきたい、決して馬を買うためではなくというふうに申し上げたいと思います。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
 鷲尾公述人にお伺いをいたします。
 雇用対策が景気対策ということで、雇用の問題が大変私も重要だというふうに思っております。
 そこで、ちょうど2年ほど前、一昨年5月に社会経済生産性本部が、サービス残業を大幅に削減し、ゼロにする、これは法律違反ですからゼロにして当然だと思いますが、その場合の雇用創出効果というのは90万人、それから残業を削減しますと、所定外労働時間をゼロにして、その分雇用を拡大すると、170万人の雇用拡大効果があるというふうな試算を発表されました。
 その試算の前提になっているデータ、これは連合がかなり詳しく調査をされたというふうにお聞きをしておりますけれども、連合が98年の雇用対策方針の中で、この時間外労働削減による雇用創出、これの取り組みを強化するという提起をされました。私もこの点は大変共感を覚えておりまして、私どもの政策でも、これは大変重要な課題であるというふうに考えております。
 そこで、先ほどお示しをいただいた140万人雇用創出という中には、公的分野での創出の試算はされていますけれども、サービス残業の規制、長時間労働の規制、このことによってこれ以外に雇用創出効果もあると思うんですけれども、現時点でこの点はどのようにお考えになり、またどのように試算をされておられるか、この点をお伺いしたいと思います。
○鷲尾公述人 この点については、ことしの春季生活闘争、春闘の方針でも同様なことを掲げておりまして、雇用確保のためには、大前提として、まず何よりもサービス残業をゼロにするということではないかと思います。そして、社会経済生産性本部の計算も、それなりに私どもも一緒にやっておりますので、そうした数字が、今お示ししました数字以前に雇用創出ができるものだ、こういうように考えています。
 残業の問題でありますが、これは痛しかゆしの問題がございまして、従来、日本の労使の間では雇用調整機能に使っていたんですね。ですから、不況でもって首切りをする前に残業を減らす、こういうことになっているわけです。
 ところが、現実問題として、今日、緩やかに企業業績が回復して残業時間はふえる動向にあります。これはやはり問題外でありまして、労働組合としても、やはりしっかりとした方針を打ち立てて、その部分でまず雇用を確保するということをした上で、かつ、ミスマッチが多いわけですから、これは新たな分野で雇用創出をする、そうした職業訓練を行うということが必要ではないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 財政の役割について、引き続きお伺いをしたいと思います。
 現在の不況の最大の特徴といいますか、あるいはまた、今は景気回復過程にあるとも言われていますが、回復しているのは、設備投資と大手の企業の利益が回復しておりますが、しかし、家計消費の方は冷えている。その面を大企業による雇用拡大ということによって支えるという面があると思いますが、同時に財政の役割、これが非常に重要だと思っております。
 そういう意味で、財政の中での家計消費拡大効果といいますか、このことが大変重要だと思いますけれども、どうも私が感じるには、この数年間、先ほど、鷲尾公述人が、国民負担の方がどんどんふえてきて、その結果、消費を抑える大変重要なマイナス要因になっているというふうにおっしゃいました。私もそのとおりだと思うんです。
 そこで、財政の構造を消費拡大型に変える、その場合の基本的な考え方、それからどこに重点を置けば家計消費の拡大につながっていくか、この点をお伺いしたいと思います。
○鷲尾公述人 これは、私、先ほど申し上げましたとおり、財政の規模自体をいたずらに拡張するということ自体は、現在の財政構造から許されないというふうに思います。
 私は、先ほど申し上げましたように、個々の項目をしっかりと、今先生御指摘のような形で、雇用創出に向かう、あるいは家計消費の拡大に向かうような予算支出をするというふうに検討した結果として、そのトータルが減るのであればなおよろしいというふうに考えるべきじゃないかと思います。
 その上に立って考えますと、私どもは予算組み替えが必要だというふうに思っておりますが、先ほどから申し上げておりますような、雇用創出対策に対して予算を支出する、あるいは職業能力開発等について支出を増額する、あるいは男女両立支援法についての拡充をするというようなところに予算をふやすということが必要ではないかと思います。
 したがって、生活関連の予算は増加させなければいけない。しかしながら、今まで一向に効果をあらわしていないというふうに思われる土木型の公共事業については大胆に削減する必要がある。また、その雇用創出効果やあるいは家計支出拡大効果を評価するシステムというものをつくってチェックをするということが必要ではないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

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