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税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業), 金融(銀行・保険・証券), 景気回復, 雇用・労働, 医療・介護・年金 (消費税, 非正規雇用, 予算案)

2009年01月06日 第171回 通常国会 本会議 【482】 - 質問

財政演説について麻生総理に質問

 2009年1月6日、衆議院本会議で政府の財政演説に対する各党の代表質問が行われ、本格的な論戦がスタートしました。
 日本共産党からは、佐々木憲昭議員が質問に立ち、国民の暮らしを支える緊急対策の実現を迫るとともに、日本経済を再建の軌道に乗せる抜本的改革の方向を提起しました。

 佐々木議員は、労働者の大量解雇について「相次ぐ労働法制の規制緩和でもたらされた政治災害だ」と指摘。「政府の責任で、仕事と住まいの確保、生活保護の弾力的な運用に正面から取り組むべきだ」と求めました。
 さらに、大企業が膨大な内部留保を持っている事実をあげ、「首相は、大企業に対し、正面から、非正規労働者の『首切り』の中止・撤回を求める決意があるか」と迫りました。
 麻生総理は「雇用と住まいの確保は最優先課題だ」との認識を示したものの、「首切り」を前提とした失業対策を示すことに終始。大企業に対しては「最大限の努力を行うよう要請してきた」と述べるだけでした。

 佐々木議員は、麻生内閣が「定額給付金」をばらまいた後、消費税増税するつもりでいることについて、「ますます消費を冷やすことになる」と批判。
 緊急にやるべきことは、食料品にかかる消費税を非課税にすることだと主張しました。
 麻生総理は「(社会保障の財源として)重要な役割を果たす」と消費税増税を推進する姿勢を示し、「消費税減税は適当でない」と国民の願いに背を向けました。
 佐々木議員は「日本経済を再生するためには、危機を招いた根本原因にメスを入れ、取り除くことだ」と指摘しました。
 ──(1)労働者派遣法の抜本改正 (2)「外需依存から家計中心の内需主導」の経済への体質転換 (3)日本の金融・証券市場で投機を規制し市場に公正・公平なルールを取り戻すことを求めました。
 麻生総理は「内需主導の持続的成長が可能になるよう経済の体質転換を進めていくことが重要だ」と述べましたが、具体的内容では、従来の「経済対策」の説明に終始しました。

議事録

○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、財政演説について麻生総理に質問します。(拍手)
 アメリカ発の世界金融危機に端を発した昨年来の急速な景気の落ち込みは、日本経済に深刻な衝撃をもたらし、大量の失業と倒産を発生させ、国民の中にかつてない不安を広げています。

 まず、緊急課題に絞ってお聞きします。
 第一は、雇用と中小企業対策です。
 突然の解雇で仕事と住まいを失った労働者に、生活と住居を保障し、再就職を支援することは、緊急課題であります。市民・労働団体の尽力でつくられた年越し派遣村は、労働者の命を守る上で大きな役割を果たしました。関係者の皆さんに、心から敬意を表します。
 そもそも、今日横行している大量解雇は、相次ぐ労働法制の規制緩和によって引き起こされた政治災害であります。したがって、これらの方々の生活と住まいの保障は政府の責任で行われるべきものであります。
 厚労省は、1月2日になって、ようやく講堂を開放し、都内の施設を一時的に確保しました。ところが、それは12日までの期限つきであります。その後はどうせよというのでしょうか。地方はもっと深刻であります。政府の責任で、仕事と住まいの確保、生活保護の弾力的な活用に正面から取り組むべきではありませんか。
 厚労省の調査でも、ことし3月までに非正規労働者が、少なくとも8万5千人が解雇されるとしています。さらに、派遣労働者の多くが契約切れとなる2009年問題が現実化すれば、首切りの波が大きく膨れ上がることは確実であります。
 日本の大手企業は、減益だ、赤字だと言っていますが、あすにでもつぶれるような状況ではありません。これまでの莫大な黒字は一体どこに行ったんでしょうか。大手企業のほとんどが、株主に巨額の配当を続け、膨大な内部留保を持っているではありませんか。
 総理は、大手企業に対して、正面から、非正規労働者の首切りを中止、撤回するよう求めるべきであります。その決意があるかどうか、伺いたい。
 下請中小企業も、親企業から突然、発注を打ち切られたり、単価引き下げを強要されるなど、深刻な事態を招いています。不当な下請いじめを許さず、銀行の貸し渋り、貸しはがしを規制しなければなりません。

 第二は、国民負担と社会保障の問題です。
 第二次補正予算案は、生活対策のためと言われますが、その中心は定額給付金であります。公金を使った選挙買収ではないかと多くの国民から厳しい批判を浴びているのは当然です。麻生総理は、この批判をどう受けとめているのでしょうか。
 小泉内閣以来、国民負担増は46項目に及び、年12兆7千億円もふえました。国民一人当たり10万円も負担がふえたのであります。ほんの一瞬、1万2千円か2万円の給付金をばらまいても、3年後に消費税増税を押しつけるというのでは、ますます消費を冷やすことになります。
 今、緊急にやるべきことは、消費税の減税、とりわけ食料品の非課税であります。
 後期高齢者医療制度は、1年を経過しましたが、受診抑制が広がり、保険料を払えず保険証を取り上げられるなど、深刻な矛盾が噴出しています。この制度は直ちに廃止すべきであります。
 また、実質的に破綻した社会保障費年2200億円の削減方針を撤回し、社会保障の充実に転換すべきであります。

 総理、今日の深刻な経済危機を打開し、日本経済を再生するためには何が必要でしょうか。危機を招いた根本原因にメスを入れ、それを取り除くことであります。

 一つは、大企業による非正規切りを許している労働法制の問題です。
 労働者派遣法は、1999年の改悪以前に戻し、登録型派遣は原則禁止、受け入れ先企業が違法行為を行ったときは正社員化を義務づけるなど、抜本改正を行うべきであります。

 二つ目は、アメリカ頼みの経済構造にメスを入れることであります。
 この間、ほんの一握りの輸出大企業が空前のもうけを上げた反面、中小企業は疲弊し、労働者の賃金は引き下げられ、非正規雇用への置きかえが進みました。その上、庶民増税と社会保障切り捨てが追い打ちをかけました。これが、家計を直撃して内需を冷え込ませ、大企業はますます輸出に傾斜するという構造をつくってしまったのであります。
 今求められているのは、外需依存から家計中心の内需主導に日本経済の体質を抜本的に転換することではありませんか。

 三つ目は、日本の金融・証券市場の規制緩和の問題です。
 今や、東京証券取引所の株式売買の6、7割をアメリカ中心の外国人投資家が占め、そのほぼ半分以上はヘッジファンドだと言われています。
 株の売買で利益を稼ぐことだけを目的とした投機的行動が幅をきかせるようになり、これが金融危機のもとで株価の大暴落を引き起こし、日本経済に甚大な打撃を与えたのであります。今必要なのは、投機を規制し、市場に公正公平なルールを取り戻すことであります。
 これら三つの問題に取り組む改革を実行してこそ、日本経済を再建の軌道に乗せることができるのであります。この点を指摘し、質問を終わります。(拍手)

○内閣総理大臣(麻生太郎君) 佐々木議員の質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、雇用と住まいの確保についてのお尋ねがあっておりました。
 雇用と住まいの確保につきましては、雇用情勢が厳しい状況にある中で、最も優先して取り組むべき課題であると私も認識をいたしております。
 特に、解雇や雇いどめにより仕事や住居を失った方々に対しては、緊急対応として、雇用促進住宅での受け入れや住宅・生活資金の貸し付けなどを既に実施しておりますのは、御存じのとおりであります。
 また、生活保護の実施につきましては、個別の状況に応じ、迅速かつ適切に対応してまいりたいと考えております。

 非正規労働者の解雇についてお尋ねがありました。
 雇用は生活の糧でありまして、その安定を確保することは極めて重要な課題と考えております。
 このため、私自身、経済界に対して、雇用や生活の安定に向けて最大限の努力を行うよう要請してきたところでもあります。
 また、派遣先が派遣契約を解除する際には、関連企業での就業をあっせんするなどにより就業機会の確保を行うよう指導を行ってまいります。
 あわせて、今回の雇用対策では、派遣先が派遣労働者を雇い入れた場合の助成措置を創設するほか、雇用保険制度の非正規労働者への適用基準を緩和することといたしております。

 下請中小企業対策及び銀行の貸し渋り・貸しはがし対策についてのお尋ねもありました。
 世界が100年に一度と言われる不況に入りつつある中、こうした厳しい影響が、相対的に弱い立場にあります下請業者に偏ることがあってはならないと考えております。
 このような観点から、昨年の秋から全国で弁護士無料相談を開始するなど、下請事業者対策を強化しております。また、下請代金法に基づく書面調査数をふやすなど、違法行為の取り締まりをより厳格にもいたしているところです。
 さらに、貸し渋り、貸しはがしにつきましては、借り手対策としての緊急保証制度の開始や、貸し手対策としての金融機能強化法の改正など、さまざまな措置を講じておりますのは御存じのとおりです。金融機関に対しては、繰り返し、中小企業に対する円滑な資金供給の要請を行ってまいります。
 今後とも、中小企業に対する金融の円滑化に向けてしっかり取り組んでいかねばならないと思っております。

 次に、定額給付金への批判についてのお尋ねがありました。
 定額給付金は、景気後退下での生活者の不安にきめ細かく対処するため、家計への緊急支援でもあり、あわせて、家計に広く給付することにより消費をふやす経済効果もあり、生活者に対する重要な施策の一つと考えております。
 よって、選挙買収などという批判は全く当たらないと考えております。

 消費税につきましてお尋ねがありました。
 社会保障制度を将来にわたり持続可能で安心できるものとすることは、国民の不安を払拭するために極めて重要であり、消費税は重要な役割を果たすものと認識をいたしております。
 こうした中で、消費税の減税などを行うことは適当でないと考えております。
 厳しい経済金融情勢のもと、私は、国民生活を守るため、事業規模75兆円の大胆な対策を打つことにより、まずは景気回復に最優先で取り組みたいと考えております。

 長寿医療制度についてのお尋ねもありました。
 長寿医療制度におきましては、医療費の自己負担を現役世代より低い1割負担とし、低所得者の保険料の軽減も行うなど、高齢者が心配なく医療を受けられる仕組みとなっております。
 しかしながら、制度の説明不足もあったことに加え、年金からの保険料の支払いを原則としたいわゆる年金天引きのことなど、高齢者の方々の心情にそぐわない点が多くあったと考えております。
 しかし、この制度をなくせば問題が解決できるものではありません。制度を廃止するのではなく、高齢者に納得していただけるよう改めることが必要だと考えており、幅広い議論を速やかに進めてまいりたいと考えております。

 社会保障費についてのお尋ねがありました。
 平成21年度予算においては、概算要求基準に基づき、一定の財源を確保した上で、2200億円に足らざる部分について後発医薬品の使用促進を行うこととしたところでもあります。
 今後とも、少子高齢化の進行に伴い、社会保障費の増大は確実であります。安定財源の確保と並行して、社会保障の機能強化を図るとともに、コスト削減、給付の重点化などの効率化は進めていかねばならないと考えております。

 労働者派遣法についてのお尋ねもありました。
 現在、登録型派遣は280万人もの方々に利用されております。これを禁止することはかえって労働者の不利益になるため、平成11年度の原則自由化以前に戻すことは適切ではないと考えております。
 他方、政府としても、労働者の保護を強化する観点から、見直しが必要と考えており、日雇い派遣を原則禁止するとともに、違法派遣を受け入れた派遣先に対し、その労働者の雇用を促す制度を創設することなどを内容とする改正案を提出したところであります。

 次に、内需主導型経済への転換についてのお尋ねがありました。
 現下の世界的な金融経済変動に対応していくためには、御指摘のような内需主導の持続的成長が可能となるよう、経済の体質転換を進めていくことは極めて重要であります。
 こうした観点から、生活対策及び生活防衛のための緊急対策などにより、3年以内の景気回復を最優先で図っていかねばならないと考えております。さらに、日本の底力を最大限に発揮させる成長戦略を具体化し、推進していきたいと考えております。

 最後に、金融・証券市場の規制のあり方についてのお尋ねがありました。
 基本的には、自由な市場原理に基づく競争と資本フローが、いわゆるキャッシュフローが今後とも成長の基礎であり続けると考えております。ただし、今般の金融市場における世界的な混乱ということを踏まえれば、金融市場における一定の規律は必要だと考えております。
 先般、ワシントンで行われました金融・世界経済に関する首脳会合におきましても、金融規制・監督の国際協調の必要について私からも提言をし、意見の一致を見たところでもあります。
 引き続き、市場の公正性、透明性の確保など、国民が安心して投資できるような環境の整備に努めてまいりたいと考えております。(拍手)

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