2008年03月26日 第169回 通常国会 財務金融委員会 【447】 - 質問
IDA(国際開発協会)への第15次増資について質問
2008年3月26日、財務金融委員会が開かれ、佐々木憲昭議員は、IDA(国際開発協会)への第15次増資について質問しました。
佐々木議員は、IDAの融資について、「画一的な『構造調整』押しつけから脱却し、各国の自主的な計画に基づく融資に転換するのかが大きな焦点だ」と提起。額賀福志郎財務大臣は、「IDAが、『構造調整』融資から開発政策融資へ転換しつつある」との見解を示しました。
佐々木議員は、「貧困削減を目的とする以上、国益を優先させるのはいかがか」と述べ、「途上国の自主性を尊重し、貧困克服に真に役立つ援助を行ってこそ、結果として感謝され、日本国民の長期的な利益にかなう」と強調しました。
額賀大臣は、貧困国解消に税金を使うことが「日本人が尊敬され、日本が世界の中で存在感を示す上で国益になる」と答える一方、資源獲得に向け「各国と協調し生き残っていかなければならない」と述べました。
佐々木議員は、「増資額だけで発言力を持とうとするのではなく、貧困削減に対して本腰を入れて取り組む必要がある」と主張しました。
≪国際開発協会=IDA≫ 世界銀行グループの1機関で、1960年設立。最貧国に有利な条件で資金を提供する役割を果たすことを目的にしています。加盟国は166カ国(うち40カ国が拠出国)で、最貧国80カ国を支援しています。27日に衆院本会議で可決された「国際開発協会加盟措置法改正案」では、日本が、2008年7月からの3年間で約3600億円の範囲内で出資できることを盛り込みました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
まず大臣に、IDAの基本的性格を確認したいと思います。
IDAは世界銀行グループの一機関でありますが、最貧国に対して最も有利な条件で資金を提供する役割を果たしております。無利子で、返還期間が35年から40年という長期資金です。加盟国は166カ国で、そのうち40カ国が拠出国で、最貧国82カ国に対して、貧困削減に資する方向で貸し付けているということであります。
特に、2000年代に入ってから、最貧国に対する貧困削減戦略がつくられて、それに沿った資金提供を行うなど、最近は特に貧困削減というところに力点を移した支援をするようになっていると思いますが、このような理解でよろしいかどうか、大臣はどのようにお考えか、確認をしたいと思います。
○額賀財務大臣 概要それから基本的な考え方は、佐々木委員のおっしゃるとおりだというふうに思っております。
世銀は、特に1999年に、従来の開発援助支援が必ずしも途上国の自主性に基づくものではなくて、その結果、政策、制度改革も不徹底になってきたという嫌いがなかったわけじゃない。そこで、支援手法を大きく転換しつつあるということだと思っております。
例えば具体的には、途上国自身が自主的、主体的に貧困削減戦略を策定し、その上で援助機関はその戦略に沿って支援を行うことによって、途上国の自主性を尊重しながら方向性を明確にしていく、そういう形に変わりつつあるというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 そこで、過去にありました画一的な構造調整融資を、今説明がありましたように、各国の自主的な計画に基づく融資に転換していく、しかもその主軸を貧困削減へと切りかえる、これが基本的な流れだというふうに思います。以前にあったような、外部から画一的な構造調整を押しつける、そういう政策を進めるところから脱却できるかどうかということが一つの焦点だったと思います。
大臣は、以前の構造調整融資の限界とか問題点、これをどのように認識されていますでしょうか。
○額賀財務大臣 今先生がおっしゃるように、従来の構造調整融資については、世銀の進める改革の内容がともすれば途上国の個別の事情を捨象して画一的になりがちだという形で批判もあり、反省させられたところではなかったかと思います。
こうした批判を受けまして、途上国側の自主性をより尊重した形の融資手法に転換をしているということだと思っております。途上国が自主性を持って貧困削減戦略をつくり、それに基づいて支援を行うということであると思っております。
さらに2004年には、途上国の自主的な改革実行のペースに合わせて柔軟な支援を行うため、借入国が一定の改革を実行する都度形成される開発政策融資という手法がとられているものと思っております。
つまり、構造調整融資から開発政策融資への転換をしつつあるということだと思います。
○佐々木(憲)委員 最近、ヨーロッパにおけるNGOの活動を見ておりますと、このIDAの融資に関して、構造調整プログラムなどの条件がついているので、これを廃止せよということで署名を集めて要請をしていると伝えられておりますが、現在、特別の条件を外から押しつけるような融資というのは残っているのかどうか、この点を確認したいと思います。
○玉木政府参考人(財務省国際局長) 世界銀行が行います調整融資というのには、当然のことながら、経済の持っております仕組みあるいは政策についてのコンディショナリティーというものがついております。その点では、御指摘の構造調整融資と基本的に同じような手法をとっておりますわけですが、問題は、それが外部から押しつけであるか、それとも、途上国が幅広い国民に聞いた上で自主的、主体的に策定していくかという違いかと思います。
それから、IDAの支援戦略としては、現在、御指摘のありました貧困削減戦略、PRSPと呼んでおりますが、そのPRSPを策定した上で、途上国における貧困層を支援するのに効果的な支援戦略かどうか、幅広い視点から十分な吟味をいたしましてそれでコンディショナリティーを作成しているという意味では、外部からの押しつけという性格にはならないように十分配慮しているということでございます。
○佐々木(憲)委員 最近、特にイギリスがIDAへの増資を急増させております。出資額の順位を見ますと、2000年から2002年の12次増資でイギリスは5位でありました。13次になると4位になり、14次では2位となって、今回の15次ではトップになっているわけです。フランスとドイツの場合はほぼ横ばいでありますし、日本は、この間2位から3位という水準です。
累積出資額で見ると別の姿が見えますけれども、いずれにしましても、最近イギリスだけがこんなに増資額をふやしているその理由というのは一体どこにあるのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
○玉木政府参考人(財務省国際局長) 今回のIDA15次増資におきましては、多くの欧州諸国、イギリス、フランスは例外となりますが、イギリスだけではなく、例えばスペインのような国も大幅な出資の増額を行っております。
イギリスは、御指摘のとおり、出資額を今回約5割増加いたしまして、1960年のIDA創設以来、初めて米国を抜いて、出資シェア第一位、シェアが約14%になりました。
この背景としましては、まず一つは、イギリスの経済、財政状況が良好だということ、もう一つは、2015年のMDG、ミレニアム開発目標の達成に向けて、特に歴史的、経済的につながりの深いアフリカを中心とした貧困国における開発支援を強化せよ、貧困を減らしていくべきだという、イギリスの朝野の強い意向を反映したものだと考えております。
○佐々木(憲)委員 そこで、もう一つ数字を確認したいのですが、この日本のODA関係予算額は、10年前の1998年度と2008年度、それぞれ幾らになっているか、また、その中でIDAへの増資は10年前と比べて今はどうか、数字を示していただきたいと思います。
○玉木政府参考人(財務省国際局長) 一般会計のODA予算、これを当初予算ベースで申し上げますと、10年前の98年度は1兆473億円、2008年度は7002億円となります。
IDAに対する日本の出資額でございますが、10年前、98年を含みます3年間の増資期間中に対応する3年分の金額でございますが、11次増資として2304億円、同じく、2008年を含みます第15次増資では3627億円となっております。
○佐々木(憲)委員 大臣にお聞きしますけれども、今の数字を見ますと、ODAの場合はこの10年で3割減なんです。その中でIDAは6割増というふうになっているわけです。これは、二国間の援助を減らして多国間の援助をふやすということが、日本政府としてそういう戦略を選択しているのか、その理由というのは一体どういうところにあるのか、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○額賀財務大臣 これは、先ほど来申し上げておるように、IDAに対する各国の出資は、増資全体の目標額を決めた上で各国の出資シェアを議論していくという形になっていて具体的に決めていくわけでありますが、各国においては、それぞれの経済規模とか国民一人当たりの所得とか、それまでの出資の状況、あるいはそのときのその国の経済や財政事情、そういうことを勘案しながら決められてきたというふうに思っております。
我が国も、1960年代というのはきっと4、5%だと思いますが、90年代初頭は20%ぐらい、2割を超えたときもあったわけでございますが、今回の第15次の増資に当たっては、財政事情等も考えまして10%に引き下げた。しかし、円建てで見れば前回比で3割増となっている。これは、先ほど来お話があるように、TICADがあったりサミットが日本で開かれる、そういうことから、日本の姿勢をきちっと国際的にも示しておかなければならないという形でこういう出資割合になったということでございます。
私は、こういう世界的な枠組みのものと二国間の支援、援助というものは、うまく有機的に絡み合って我が国の国益にも資する、あるいは地域の安定にもつながる、そういう形で判断されていくことが望ましいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 先ほど来、国益という言葉が比較的たくさん使われておりまして議論されておりますが、私は、貧困削減ということを目的とする以上、余り国益国益ということをぎらぎらさせるのはいかがなものかというように思うわけです。相手国の自主性を尊重して、その国の貧困の克服に真に役立つ、そういう援助を行ってこそ、結果として感謝される、それが日本国民の長期的な利益にかなう、こういうものになるというふうに思うわけです。
大臣、この点をどのようにお考えでしょうか。
○額賀財務大臣 広い意味で言えば、そういう貧困国の解消に当たって、貴重な税金を使わせていただいて人類の生存のために貢献をしていくということも、日本人が尊敬をされ、日本国が世界の中で存在感を示す意味で国益につながっていくものと思っております。そういう意味での国益ということであります。
あるいはまた、資源のない日本の国でありますから、各国と協調していく中で生き残っていかなければならないという意味で、世界の国々の貧困と各国と協調しながら闘っていく、協力していくことも国益につながるものと思っております。
○佐々木(憲)委員 今回の増資は、2015年までに国際社会が貧困な地域をなくすために採択されたミレニアム開発目標、その達成にとって重要な期間に当たるわけであります。特に達成率が悪いアフリカへのさらなる援助の重要性が強調されており、前回の増資以上に大幅な増資が行われるということで、これ自体、私は前向きなものだと思っております。
ことしは、洞爺湖サミット、アフリカ開発会議の開催国ということで、日本の姿勢が問われるわけであります。今後、日本が貧困削減に対して本腰を入れて取り組むということが必要だと思いますけれども、最後に、この点についての大臣の基本的な考えをお聞かせいただきたい。
○額賀財務大臣 私どもは、今度の増資に当たりましても、IDAにおける発言権を維持し、アジアの貧困それからアフリカの貧困、そういうことを解消していくために貴重な税財源を使わせていただいたということでございます。それは、佐々木委員がおっしゃるとおり、貧困に対する、世界に対する我々のメッセージであるというふうに受け取ってもらえればよいのではないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 少し時間が残っておりますが、以上で終わります。