2008年03月26日 第169回 通常国会 議院運営委員会≪聴聞会≫ 【446】 - 質問
議院運営委員会で人事官(人事院総裁)候補・谷公士氏へ質問
2008年3月26日、議員運営委員会で、人事官(人事院総裁)候補・谷公士(たにまさひと)氏から所信を聴取し、各党から質問がおこなわれました。佐々木憲昭議員も、日本共産党を代表して質問しました。
議事録
【佐々木議員の質問部分】
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
初めに、人事院の位置づけについての認識をお聞きしたいと思います。
憲法第28条が保障する労働基本権、すなわち団結権、団体交渉権、争議権は、本来、公務員にも保障されるべきものであります。しかし、現行の公務員制度では、公務員の地位の特殊性を理由に、それが制限されております。その代償措置として人事院を設け、身分、任免、服務、さらに賃金や労働時間など労働条件について、法律や規則で定めているわけであります。したがって、人事院は中央人事行政機関として司法機関的性格を持っており、中立でなければならないと思います。今後、中立公平を自覚し、それを踏まえて任に当たられるかどうか、あらかじめ確かめておきたいと思います。
最高裁の判例によりますと、公務員の争議行為の制限は憲法に違反していないということが言えるのは、人事院の機能が十分に発揮されていることを前提にしているわけであります。現実はどうか、具体的な事例でお聞きしたいと思います。
公務員の給与勧告で初めてマイナス勧告を行ったのは、2002年であります。その背景に何があったか。2002年5月に経済財政担当大臣が勧告制度は右肩上がりの時代の産物と批判をし、6月には骨太方針で決めた総人件費抑制を閣議決定し、さらに厚労大臣が賃下げ勧告を前提として年金給付の引き下げの検討を表明するという一連の政府の圧力がありました。人事院として、この動きに一言の批判もありませんでしたし、結果として、政府の意向に従って初めてのマイナス勧告を行ったわけであります。これは、中立公平な機関であるはずの人事院が政府の圧力に屈したものと言わざるを得ませんが、どのように受けとめておられますか。
さらに、谷さんが人事院総裁になってからでありますが、2006年の勧告では、給与の官民比較の事業規模を100人以上から50人以上に拡大するということを行いました。そして賃金の抑制を行ったわけであります。これも、2005年9月の閣議決定及び12月の閣議決定があり、2006年7月の閣議決定で100人以上を50人以上にすべきだ、そういうふうに決めたその意向に忠実に沿ったものでありました。これも政府の意向に従ったものと言わざるを得ません。今振り返ってどのように考えておられるか、お考えを聞きたいと思います。
最後に、政官業癒着の温床となっているのが天下りであります。天下りの先、さらに渡りというようなことも言われているわけでありまして、その天下りについて、本来、禁止するのが望ましいという認識がおありかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
以上です。
○谷参考人(人事官候補者(人事院総裁)) 一点目でございますけれども、先ほども申し上げましたが、人事院の役割は大きく二つ、公務の中立公正の確保と労働基本権制約の代償機能でございまして、その代償機能を十全に果たしていくということは、人事院の非常に大きな役割であると考えております。
それから、中立、公正、公平に人事行政の運営が行われるように人事院として必要な意見を述べ、必要な指導を行っていく、これは、これまでもそうしてきたと思いますし、これからもそうあるべきであると思っております。
それから、給与勧告の問題でございますけれども、いろいろ御指摘ございましたが、私の就任以前のものもありまして、その点については推測でしかございませんけれども、私が担当いたしましたときの事情を申し上げますと、給与は、公務員自身として比較すべきものがございませんので、市場原理で定まっておると考えられます民間の給与との均衡を考えまして勧告を行うという制度をとってきておるわけでございます。民間準拠の方式をとってきておるわけでございます。
この100人、50人の問題につきましては、昭和39年、これはきっかけとしては現業でございましたけれども、基本的には同じ考えということで、非現業についてもこの基準を採用いたしまして、以来40年、この基準で運用してまいりました。
しかし、最近になりまして、各方面からこれを見直すべきではないかという御意見が出てまいりました。国会においてもそういう御意見を賜りました。そういたしますと、現行のあり方については必ずしも国民の御理解をいただいているとは言えないのではないかということも考えられますので、専門家から技術的な検討を求め、それから各界有識者の御意見もいろいろ承りまして、そして、私どもが民間給与を比較します際の一番基本の原則であります同種同等のものを比較するというラスパイレスの方式、この方式の基本が守れるかどうか、それからまた、有効な調査ができるかどうかという観点から、50人であれば双方満足することができるということで、この変更に踏み切ったわけでございます。決して、御指摘がありましたような、政府の意向を受けて行ったわけではございません。
後半のものについては、私自身が関与いたしておりますので、自信を持ってお答えすることができるわけでございますけれども、人事院は、独立の機関と申しましても、自分だけの閉鎖的な考え方ですべてを仕切れるわけではございません。各方面の御意見に耳を傾け、中でも国民を代表されます国会での御議論、それから行政の責任をお持ちになる政府のお考え、このことをお聞きするのは当然でございますが、しかし、私どもはあくまでも民間準拠の原則のもとにその水準を考えておりますので、国の財政事情、懐事情でこの数値をどうするということは毛頭考えておりません。そのように取り組んできたつもりでございますので、私の就任前においても同様であったと私は信じております。
それから、天下りの問題でございますけれども、職員が退職後もその能力を生かして、第二の就職といいますか再就職をする、その権利は当然であろうと思います。
問題は、人事行政の一環として勧奨退職が行われ、その関係で再就職のあっせんが行われる、それが各府省の権限や予算を背景とするということになっているのではないか、そういう疑念が生じてまいりました。そういう意味で今回の制度改正が行われたわけでございまして、この問題は各省の人事運営のあり方にかかわる問題でございますので、そういったところを見直していくということが不可欠でございます。
と同時に、高齢者が社会での活動を継続するということがだんだん一般的な社会の動きとなってまいりました中で、公務員出身者もまた退職後それぞれの活動の場を求めるということは当然あってしかるべきだと思います。
ただ、公務員は、多年、公務という非常に特殊な職場で仕事をしてきたわけでございますので、直ちに民間の方々と同じような仕事ができる、そういうことができる方もいらっしゃいますけれども、すべての人がそうできるわけでもない。そういう意味では、公務員の退職後の生活についても含めて、全体としてどういう制度をつくっていくかということをやはり考えていく必要があるのではないかというふうに私は考えております。
以上でございます。