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景気回復

2008年01月11日 第168回 臨時国会 財務金融委員会≪日銀報告質疑≫ 【427】 - 質問

企業は利益配分で家計部門への配慮が必要と日銀総裁が答弁

 2008年1月11日、佐々木憲昭議員は財務金融委員会で日本銀行の福井俊彦総裁に「日銀報告」について質問しました。

 佐々木議員は、日本経済には、大企業と中小企業とのあいだの格差、大企業の利益がバブルを超える高い水準なのに、労働者の賃金は低迷という2つのネックがあると指摘し、これが今後の経済発展に重要だと強調し、日銀総裁としての認識をただしました。
 日銀の福井総裁は「企業の経営者は、次の需要が見えてくるためにも、家計部門への利益の配分がどうあるべきか、マクロの視点から十分認識を強めていただく必要がある」とのべ、企業は家計部門への配慮が必要だとのべました。

 また、福井総裁は「家計部門の弱さが、日本経済の今後の景気の軌道に対してウイークポイントにならないかどうかという点は、十分に丹念に点検していきたい」と答えました。
 さらに佐々木議員は、「過去10年間で企業所得は13.4兆円増だが、雇用者報酬はマイナス11.3兆円だ」と指摘し、大企業の利益を国民に還元する必要性について問いました。
 福井総裁は、企業と労働者の意思決定を通して賃金が決まるので、日銀が政策的に介在するのは難しいとしながらも、「生産所得・支出の好循環のメカニズムを今後とも維持しなければならない。企業が投資として使う所得と、賃金というかたちで家計部門に還元される所得の配分がいびつな場合、好循環のメカニズムにどこか欠点が出てくる」とのべました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 景気の現状と展望に関連をしてお聞きしたいと思います。
 まず、生活意識に関するアンケート調査、日銀が行っておりますけれども、その内容を確認したいのです。景況感について、昨年3月、6月、9月、それぞれ統計がありますが、1年前と比べてよくなったというのと悪くなった、それぞれの数字をお答えいただきたいと思います。
○稲葉参考人(日本銀行理事) 1年前と比べて今の景気はどう変わりましたかという問いに対する回答でございます。よくなったというふうに回答してきたパーセンテージでございますが、平成19年3月11.1%、6月11.6%、9月6.7%でございます。悪くなったとお答えになったパーセンテージでございますが、平成19年3月23.2%、6月23.6%、9月34.1%でございます。
○佐々木(憲)委員 この数字を国民の実感から見ますと、急速に景気が後退局面に入ってきている。これは実感でありますが、そういう感じがいたします。
 そこで、これまで日本の景気を牽引してきたのは主として輸出と言われておりますが、主な輸出先であるアメリカ経済に失速のおそれが強まっております。サブプライムローンの問題をきっかけにいたしまして、米国経済の下振れリスク、先ほどもお話がありました。また、世界経済についての不確実性が高まっている、こういうふうに先ほどの説明でもありました。
 今後の景気の見通しというのは、私は非常に厳しい状況が出てくるのではないかと思っておりますが、特に日本の場合、輸出の見通し、これは大変大事だと思いますが、どのように見通しておられるか、この点についてお聞きをしたいと思います。
○福井参考人(日本銀行総裁) 米国経済との関連で日本の景気がどうなるだろうかというふうな点に的を絞ったお尋ねかというふうに思います。
 まず、アメリカでは、景気の減速感がこのところ幾分強まりつつあるということだと思います。特に住宅投資が大幅な減少を続けていまして、底入れのめどがまだ十分見えてこないという状況になっています。
 それから、金融の面でも、やはり金融市場の不安定な状態が続いている中で米国の銀行の与信基準が、住宅向けだけではなくて、商業用不動産、一般企業、消費者向けにも若干タイト化してきているという状況でありますので、米国経済の先行きについては、本当に慎重に見きわめていかなきゃいけないというふうに思います。
 ただ、米国におきましても、個人消費や設備投資はさすがに減速はしつつあるんですけれども、緩やかな増加基調ということそのものは維持しておりまして、2スピードエコノミーと言うと少し言い過ぎになるんですけれども、そうした表現が若干当てはまるような現象はなお続いているというふうなことでございます。
 したがいまして、米国景気全体としては、目先、低成長が見込まれますけれども、その後、安定成長に向けて軟着陸していく可能性は引き続き高いのではないかというふうに見ております。このような場合は、その後も世界経済は地域的な広がりを持ちながら拡大を続ける、こういうふうに考えられますので、日本経済も、こうした条件が満たされる限り、緩やかな拡大を先行き続けていける可能性が高いというふうに思います。
 しかし、繰り返し申し上げますけれども、ダウンサイドリスクが高まりつつあるというのは、委員御指摘のとおりでございます。アメリカの住宅市場の調整あるいは金融資本市場の変動の影響というのは、予想以上のものとなるリスクというのはやはり明確にあります。そのときには、それが本当に顕現化すれば、資産効果や信用収縮、マインドの悪化などを通じて、今、2スピードエコノミーと言いましたけれども、個人消費や設備投資が結局は下振れる、米国景気が一段と減速する可能性も考えられます。
 その場合には、その程度によって世界経済の中の他地域の成長にも悪影響が及んで、世界経済全体として下振れ現象が現実化すれば、日本の経済も、今おっしゃった輸出、あるいは企業収益、金融市況の変化などを通じて悪い影響を受けるリスクがある、こういうふうに思っています。
 したがいまして、私どもは、そうしたダウンサイドリスクにつきましても十分視野に入れながら今後適切な判断を行っていきたい、こういうふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 アメリカ経済を中心とする世界経済の下振れ要因といろいろおっしゃいました。そういう中で、日本の輸出依存のこういう景気の回復という状況が壁にぶつかる、そういうことになりますと、やはり、日本経済の自律的発展ということからいいますと、内需というものが非常に大きな重要な要素になると思うわけです。
 その場合、私、日本経済の今後の展望の上で二つのネックがあると思っております。
 一つは、大企業と中小企業の間の格差というのが非常に拡大をしてきた。日銀の短観を見ても、大企業の利益は空前の好景気でありますけれども、中小企業の景況感はなかなか水面上に浮かび上がらないという状況が続いている。
 それから二つ目の問題は、大企業の利益は確かにバブル時代を超えるような高水準ですけれども、労働者の賃金の方は低迷が続いている。
 こういうこの二つのネックをどのように克服していくか、これが今後の日本経済の発展にとって非常に重要であると思っておりますけれども、総裁の御認識を伺いたいと思います。
○福井参考人 私どもも、今回の日本経済の回復局面の特徴、あるいは問題意識を持つべき特徴という点では、委員が御指摘のとおり、二つの点を意識しております。
 グローバル化の進展のもとでの景気の回復ということでありますので、世界経済との接点の濃淡によって企業業績にばらつきが見られる、大企業と中小企業との間の景況感の差というのは明確に出ているというふうに思います。直近のところは、建築基準法の影響というものが少しその上乗せ要因になっているという点も心配いたしております。
 それから、企業部門に比べ、家計部門の改善テンポが緩慢な状況が続いているという点ももう一つの特徴でございます。特に賃金について、これは、団塊世代の退職やパート比率の上昇という要因もありますけれども、全体としてやや弱目の動きとなっています。
 国際競争に打ちかっていくためにやはりどうしても、コスト、固定費抑制というふうな姿勢が強い企業、そして働く側にあっても、過去の苦しい経験から雇用機会の確保ということにウエートがあってそういう現象が出てきていると思いますけれども、これが、今のところは雇用者数の増加、結果として雇用者所得の増加という形で個人消費を下支える格好になっていると思いますけれども、今後さまざまなダウンサイドリスクが顕現化した場合に、この家計部門の弱さというのが日本経済の今後の景気の軌道に対して本当の意味でウイークポイントにならないかどうかという点は、十分丹念に点検していかなきゃならないというふうに思っています。
○佐々木(憲)委員 国民経済計算を見ましても、例えば過去10年間の推移を見ますと、企業の所得、例えば民間法人企業の利益ですけれども、これが一番落ち込んだのが98、9年なんですね。その後、上昇局面に入ってきている。
 それに対して雇用者報酬、この統計を見ますと、企業の利益は伸びているまさにその中で、雇用者報酬だけがどんどん下がっていっているわけです。一番底が2004年でありまして、その後若干上がっていますけれども、しかし、この10年間全体を通じて見ますと、例えば企業所得は14.3兆円増になっているわけですが、雇用者報酬はマイナスの11.3兆円なんです。ですから、雇用者報酬の方は下がり続けて、最近少し底を打った形にはなっていますけれども、とてもとても前の水準にまでは到達していない。
 こういう状況を考えますと、これは、明らかに大企業の利益が還元されていないばかりか、家計をいわば犠牲にしながら企業の利益だけがふえている、簡単に言うとそういうことになっていると思うわけです。
 そこで問題は、企業の、とりわけ大手企業ですけれども、この利益をどう還元するのか、これがやはり政策課題でもありますし、また、企業の側の企業運営といいますか、近々春闘もありますけれども、この今の局面でそういう企業利益をどう国民に還元するか、このところが大変大事だと思います。
 家計の問題というのは今後の大変重要なかぎになるとおっしゃいましたが、総裁はこの点をどのようにお考えでしょうか。
○福井参考人 雇用者への所得配分、なかんずく賃金ということになりますと、これは、企業と働く者との間のさまざまな経済主体の意思決定を介在して決まってくるということでありますので、なかなかここに政策的な介在の余地というものは、難しい問題があるということは委員御承知のとおりだと思います。
 ただ、そうは申しましても、御指摘のとおり大切なことは、この企業部門あるいは家計部門が全体として日本経済をうまく支えていくということであります。どちらか片寄せして日本経済の円滑な運転をしていけるということではないということでございます。
 先ほどから私、たびたび、生産、所得、支出の好循環のメカニズムを今後とも維持しなければならないことを強調させていただいておりますけれども、生産、所得、支出という場合に、その所得が、企業がみずから投資等で使う所得と、賃金という形で家計部門に還元され、家計が消費として使っていく所得と、ここの配分がやはり余りいびつがある場合には好循環のメカニズムにどこか欠点が出てくるということでございますので、経済の円滑な循環メカニズムを維持するために非常に重要だ。
 企業の経営者におかれても、次の企業活動に、みずからにとっても次の需要が見えてくるという姿にするためには、家計部門への利益の配分というのはどうあるべきかというのをマクロの視点から十分認識を強めていただくという必要は、やはり私はあるんじゃないかなというふうに思っております。
 日銀といたしましては、賃金など家計部門の動向について、今申し上げましたように、景気全体のメカニズムを判断する上で重要な要素として引き続きしっかりと点検してまいりたいと思っています。
○佐々木(憲)委員 法人企業統計を見ましても、今、総裁がおっしゃいましたように、配分がいびつになっているかどうかという点ですけれども、この5年間、2001年から2006年までの間、資本金10億円以上の大企業の経常利益は2倍になっております。また、配当金は四倍になっております。役員給与は約2倍です。しかし、従業員給与というところを見ますと、これはマイナスなんですね。ですからこれは、やはりゆがみは拡大していると言わざるを得ません。
 したがって、私は、今後の国民の暮らしと影響あるいは日本経済全体の展望ということを考えますと、ここをどう是正するかということが大変重要だと思っております。
 政府の政策としても、これは当然国民負担の軽減、増税とか負担増というのはもうこの辺で転換しなきゃならぬというふうに思いますし、また、企業の行動としても、総裁がおっしゃいましたように、家計部門に対する配慮というものをどのように行うのか、こういうことが大変重要だというふうに思います。
 時間が参りましたので以上で終わります。ありがとうございました。

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