アドレス(URL)を変更していますのでブックマークされている方は変更してください。
<< ホームへ戻る

金融(銀行・保険・証券)

2005年03月16日 第162回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【289】 - 質問

中小企業・業者の立場に立ったRCCへ 佐々木議員が整理回収機構(RCC)社長に質問

 2005年3月16日財務金融委員会で、整理回収機構(RCC)の奥野義彦社長が参考人として招致され、質疑がおこなわれました。佐々木議員は、中小企業・業者の立場に立ったRCCのあり方について質問しました。
 佐々木議員は、債権の回収に当たって「契約の拘束性の追及」と「人間の尊厳の確保」が回収指針としてとられているようだが、どちらを優先するのか、と質問。
 これにたいして、奥野社長は「人間の尊厳の確保」を優先すると答えました。
 また、「企業再生の追求」を決めたが、33万件のうち306件(0.09%)しか再建の軌道にのっていないということも明らかになりました。

議事録

【参考人の意見開陳部分と佐々木憲昭議員の質問部分】
○奧野参考人(株式会社整理回収機構代表取締役社長) 株式会社整理回収機構社長の奧野でございます。
 それでは、早速でございますが、株式会社整理回収機構の業務の概要について御説明させていただきます。
 まず、組織につきましては、平成11年4月1日に住管機構と整理回収銀行とが合併いたしまして、株式会社整理回収機構、以下RCCと呼びます、となったものでございます。
 RCCは、預金保険機構の100%の子会社でありまして、その預金保険機構と協定を結び、その委託を受けて、破綻金融機関等から譲り受けた債権の回収等の業務を行っております。
 それでは、お手元の資料1ページの1をごらんください。
 役職員数は、平成17年1月現在、1,738人、支店等の数は、26カ店、分室9カ店の合計35カ店であり、資本金は2,120億円となっております。
 次に、資料1ページの2をごらんください。
 RCCが保有しております譲り受け資産は三つの勘定に分かれておりまして、第一は住専勘定であります。第二はRCB勘定で、破綻金融機関から買い取った不良債権の管理勘定であります。第三は金融再生法53条勘定で、健全金融機関等から買い取った不良債権の管理勘定であります。
 これら三勘定の合計で、平成16年12月末での買い取り価額は9兆6,531億円、回収額は7兆7,511億円、回収率は80.3%となっております。
 資料1ページの3をごらんください。
 このうち、金融再生法53条については、これまで177の金融機関から、債権元本ベースで3兆9,356億円の不良債権を買い取っております。
 次に、回収についての考え方につきまして御説明申し上げます。
 RCCでは、回収に当たって、効率的な回収に努め、国民負担の最小化を図ることを基本理念として、次の三つの指針を設け、その周知徹底を図っております。
 第一は契約の拘束性の追求であり、第二は人間の尊厳の確保であり、第三は企業再生の追求であります。
 もとより、債務者において誠実な対応をしている限り、話し合いによる回収が原則であることは言うまでもありません。RCCに引き継がれたときに約定どおりの返済を続けていた債務者に対しては、引き続き約定どおりの返済を続けていただきますし、延滞している債権であっても、債務者と誠意ある話し合いを行い、返済計画を提出していただき、極力合意の上で回収を進めるよう努めているところであります。
 なお、私が社長に就任しましてからは、職員に対し機会あるごとに、債務者との話し合いにおいては信義誠実を旨とし、案件ごとに徹底した付加価値創造的提案、助言をするべき、またその一方では、凜とした姿勢を堅持して当たることが重要である旨、絶えず注意してまいりました。
 資料2ページの4及び5をごらんください。
 保有債権の処分の多様化といたしまして、流動化及び証券化についても積極的に実施してきておりまして、一括売却による流動化につきましては、平成17年2月末で債権元本で1兆6,573億円、また証券化による保有債権の流動化は4,831億円になっております。
 次に、企業の再生について御説明させていただきます。
 RCCでは、従来から事業の存続が可能と見込まれる先については、回収極大化の延長線上で条件変更等の対応を行ってまいったわけでございますが、平成13年6月、政府による骨太の方針を受け、再生の可能性のある債務者については速やかな再生に努めるとの政策的要請にこたえるべく、平成13年11月、企業再生本部を設置し、より組織的、より積極的に企業再生に取り組むことといたしました。
 企業再生は、債務者が現に保有している資産価値を上回る回収をもたらし、しかも、そこで働く従業員の雇用を継続し、取引債権者を保護する等、付加価値創出が大変大きいものがあります。
 資料3ページの6をごらんいただきます。
 平成13年11月の企業再生本部発足以来、平成17年1月までの企業再生実績は306件で、これらの対象企業で働く従業員数は4万3千人を上回っており、売上高は1兆6573億円の規模に達しております。
 なお、その8割強を中小企業が占めております。地域別では、関西が112件、関東が99件と、関東及び関西が多くなっておりますが、最近ではその他の地域においてもとみに相応の実績を上げてきております。
 また、先般の金融改革プログラムにおきまして、中小企業の集中的な再生に向けたRCCの再生機能の見直しを行うこととされているところであり、中小企業等の再生に向けて、民間では対応困難な再生分野においてその機能を発揮してまいりたいと考えております。
 個人的なことを申して恐縮でございますが、私は、整理回収機構の社長に就任する前は、RCCの債務者側の代理人として、あるいはRCCが債権者である会社更生事件の管財人といたしまして、RCCとたびたびにわたりまして交渉をしてまいりました。RCCの職員はいずれも使命感に燃えて非常に手ごわい交渉相手でありましたが、ほとんどの案件については、理を尽くし交渉した結果、合意を得ることができました。その努力によりまして、RCCに多額の弁済を済ませましたし、一方、債務者は現在復活しておりまして、経済活動にいそしんでおります。その社会的貢献はかなり大きいものと、私自身自負しているところでございます。
 これらの経験からして、私は、債権者、債務者間の話し合いは、債権者は債務者と同じ目線で誠実に対応するとともに、債務者も自分に都合のよい主張に終始することなく、誠実の限りを尽くすことが何よりも重要であると考えております。
 債権回収は、その性格上、債務者や関係者の方々の不満や苦情を招きやすく、また職員の精神的負担が重いなどと、種々の困難を伴う業務でありますが、当社としましては、引き続きその使命の達成に全力を尽くすとともに、企業再生等に対する地域金融機関のニーズにも的確に対応してまいりたいと考えております。
 どうか、よろしく御指導、御支援のほどをお願い申し上げまして、私の報告とさせていただきます。
 どうもありがとうございます。



○金田委員長 次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、私は、銀行からRCCに移される側の債務者といいますか中小企業の立場から考えてみたい、お聞きをしたいと思います。
 銀行から債権を譲り受ける場合、その債務者は、いつRCCに移るのか、それからどのような価格で売られたのか、そういうことについては当人に知らされるのでしょうか、事前には知らされるのでしょうか、あるいは事後にもどの程度の内容が知らされるのでしょうか。その点をお聞きしたいと思います。
○奧野参考人(株式会社整理回収機構代表取締役社長) 事前に知らされて了解をとる場合もありますし、知らされない場合もある。知らされない場合は、債権譲渡の場合は、やはり事前に告知をする必要がありますから、債権譲渡をしましたということの告知を銀行からされるという形で知らされる、そういうのが実態だと思います。
○佐々木(憲)委員 事前に知らされる場合というのは、比率はどのくらいでしょうか。私は、ほとんど知らされていないんじゃないかと思います。それから、幾らであなたは売られたんですよなどということは知らされるんでしょうか。
○奧野参考人(株式会社整理回収機構代表取締役社長) 対抗要件の条件を具備するところの債権を譲渡しましたよということの通知は、これは100%なされるわけでございますが、その了解をとるような形で事前に話されるというようなことについての統計的な数字は、私、持ち合わせておりませんので、回答することはちょっとここではできませんのです。
○佐々木(憲)委員 事前の了解はないと思います。つまり、銀行の判断、それからRCCとの協議、その中で買い取るということなのであって、本人の意思でRCCに行きたいという中小企業はほとんど私は聞いたことがございません。
 次に、整理回収機構の経営理念のところの「回収指針」というのを見せていただきましたが、契約の拘束性の追求、人間の尊厳の確保、それから企業再生の追求ということで、まず企業再生の追求ですが、306件という再生実績ということをお示しになりました。しかし、買い取られた、譲り受けた債権の件数というのは膨大なものだと思うんですね。例えば、住専勘定の場合は約16万件、破綻金融機関の場合は15万件、それから健全銀行の場合も1万2千件で、これを合わせますと約33万件になる。そういう中のわずか306件というわけでありますから、0.09%ぐらいですか、本当に微々たるものでありまして、これは全体の、指針、方針の、三つ挙げていますけれども、再生という点に限りますと、まだまだこれはほとんど実績と言えるようなものでは私はないのではないかと。
 そこで問題は、それ以外の部分が一体どうなっているのかという点です。
 先ほど、条件変更で5,000件ぐらいあるとおっしゃいました。そうしますと、5,300件まだ企業としては生きていると。それ以外は一体企業としての存続というものがどうなっているのか。回収ですから、当然企業としては破綻するところが圧倒的だと思うんですが、いかがでしょうか。
○奧野参考人(株式会社整理回収機構代表取締役社長) お答えいたします。
 まず、私どもが譲り受ける債権というのは、破綻、要するに実質破綻と破綻懸念先という、そういう先の債権を譲り受けるわけでございます。それから、御指摘の数の中にはいわゆる自然人、住宅ローン等の自然人の数も含んでおりますので、必ずしもそのすべてが企業であるというふうにはなっておらないわけです。
 そういう意味で、私どもは、すべての案件についてどういうふうに処理をしていくかということは非常に丁寧に当たっておりまして、そして、再生可能なもの、あるいは条件変更等で事業が生き延びるものについては積極的に拾い出せという作業をさせている。その結果、そういう数字になっているわけでございまして、冷たい対応をしているという先生の御指摘は、私の現場の感覚からすると決して当たらないな、そう思っているのでございます。
○佐々木(憲)委員 それでは、回収をする場合の原理原則といいますか考え方ですけれども、契約の拘束性の追求というのと人間の尊厳の確保、この二つは、バランスということを言われますが、どちらに重点があるかという点を考えますと、これはやはり人間の尊厳の確保。つまり、その人が生活ができないような状況に追い込む、あるいは自殺に追い込むような過酷な回収というものはやってはならないと思うわけです。そういう意味で、人間の尊厳の確保というものが優先されるべきだと思いますけれども、社長はどういうお考えでしょうか。
○奧野参考人(株式会社整理回収機構代表取締役社長) まず、対象となる破綻先というのは、自然人と法人というふうに二つに区別いたしますと、自然人の場合は、幸福追求権の保障というのがあるわけでございますので、可能な限りその人の人間を尊重した回収の仕方をしなきゃいけないということに努めておりまして、どちらが優先するのかというふうに聞かれるのであれば、それは人間を尊重するということを私どもは優先して考えております。
 ただ、正常債権の弁済をしている、正常にこつこつ弁済している人がたくさんいるわけでございまして、その人を基本原則とすると、私どもは、誠実に対応してこない、資産も開示しない、そういった人に対してはやはり正義の鉄槌を食らわさなきゃいけないというところもあるわけでございます。もう少しわかってもらえないか、まじめな人と比較してあなたは不誠実です、生きたいのであれば、事業を存続させたいのであれば、なぜもう少し誠実に対応してくださらないんですかという、そういうことで実はいろいろなもめごとが起こってまいりますのです。
○佐々木(憲)委員 企業の場合、相手を見きわめるという今おっしゃったことは大事だと思いますけれども、問題は、経済状況が非常に今厳しい状況がありますので、本人が誠実ではありましても実際になかなか返済が計画どおりいかない、そういう場合には、当然、返済の条件を緩和するとか、つまり、その財産状況をよく把握をした上で相談に応じて誠実に対応するということが私は大変重要ではないかというふうに思います。
 それから、機能として一つ確認をしておきたいのは、返済の条件変更というのはあるとおっしゃいましたが、RCCには新規融資という機能はたしかなかったと思いますが、そういう場合、例えば事業の再建ということを考えた場合に、新しい融資というものは一体どういう手だてで行われるのか、その点を最後にお聞きをしておきたいと思います。
○奧野参考人(株式会社整理回収機構代表取締役社長) 破綻懸念先、実質破綻先を私どもは再生するわけでありますので、なかなかリファイナンスの機会にめぐり合わせられない、非常にそこのところ苦しむわけでございます。それが、最近、リレバン機能であるとか、中小企業再生支援協議会などと連絡をとりまして、私どもは、再生に必要な条件整備、インフラ整備をいたしまして、金融機関が安心してリファイナンスのできる条件を整えまして、そしてリファイナンスを受けるということにしているわけでございますが、最近、ようやく積極的にそういうリファイナンスを、応ずる企業がふえ始めまして、私どもは大変救いを与えられている、そういう思いは正直しております。
○佐々木(憲)委員 終わります。ありがとうございました。

Share (facebook)

このページの先頭にもどる