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税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券), 金権・腐敗政治, その他

2005年04月07日 第162回 通常国会 本会議 【292】 - 質問

会社法案 衆議院本会議で審議入り 佐々木議員が代表質問

 2005年4月7日本会議で、法制定以来の大幅改定となる会社法「改正」案の趣旨説明と質疑が行われ、日本共産党を代表して佐々木憲昭議員が質問しました。
 会社法案は、企業間合併の要件緩和や新たな会社類型の創設などを柱に、会社にかかわる法制を大幅に改定するものです。
 佐々木議員は、法案の内容について、4つの問題を指摘しました。
 第1に経営者の自由度拡大と社会的責任の問題、第2にグローバル化への対応の問題、第3に企業グループをめぐる問題、第4に大企業の租税回避の問題。
 さらに、企業のあり方を考えるさい、避けて通れないとして、政治献金の問題についても取り上げました。

議事録

○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、会社法改正案について質問します。(拍手)
 今、日本の企業に問われているのは、国民に衝撃を与えたさまざまな不祥事の発生原因を明らかにし、コンプライアンスを初め、企業の社会的責任を明確にする法整備であります。
 この一年、コクド、西武鉄道による商法違反、証券取引法違反事件、JFEの汚水排水事件、三菱地所、三菱マテリアルの土地汚染隠ぺい事件、三菱ふそうトラックによるたび重なるリコール隠し、カネボウの粉飾決算など、重大な企業犯罪が繰り返されております。
 このような行為が、時には国民の命を奪い、健康をむしばんでおります。それだけでなく、企業そのものの存立基盤を揺るがせ、日本経済再生の障害にさえなっているのであります。
 この事態を克服するため、今なすべきことは、企業経営の透明性と規律を高めること、国民や従業員による監視を強めることであり、そのことを通じて企業に社会的責任を果たさせることではないでしょうか。初めに、竹中経済財政政策担当大臣の答弁を求めます。
 提案された会社法案は、果たしてこれらの問題にこたえるものになっているのでしょうか。
 第一は、経営者の自由度拡大と社会的責任の問題です。
 今回の会社法改正では、これまで会社法制が課してきたさまざまな規制を大幅に緩和するとともに、利益配当決定の権限を株主総会から取締役会に移すなど、経営者の経営の自由度を大幅に拡大しています。また、これまで無過失責任とされていた取締役の責任を過失責任に後退させ、さらに、経営者の責任追及の手段とされていた株主代表訴訟のハードルを引き上げる改悪が行われています。
 これでは、企業犯罪が減るどころか、逆に増大するなどの弊害が起こってくるのではありませんか。法務大臣の答弁を求めます。
 第二は、グローバル化への対応です。
 求められているのは、集団訴訟やディスカバリー制度など、アメリカにおいて一般投資家が事後的に経営者の責任を追及するために有効に機能している制度であります。ところが、日本経団連など経営者団体の強い反対によって実現しなかったのであります。
 アメリカでは、エンロンやワールドコム事件を契機に、不十分ながら、不正を働いた経営者への罰則強化、監査法人への監視強化、情報公開の強化などを柱とした企業改革法を成立させています。
 ところが、日本では、大和銀行事件など株主代表訴訟による巨額の賠償判決を契機に、企業経営者の責任を問うどころか、経営者のなり手がいないなどとして、取締役の責任を引き下げる商法改悪を行いました。
 さらに、今回の会社法案によって、日本において経営者の行動を事後チェックする事実上唯一の手段として有効に機能してきた株主代表訴訟に厳しい要件を持ち込み、取締役の責任を軽減しようとしております。
 グローバル化のかけ声で、財界にとって都合のよいところだけを取り入れ、経営への牽制を減少させ、どうして企業犯罪を減らすことができるのでしょうか。せめて当面、アメリカ並みに経営者へのきちんとしたチェック体制を確立すべきではありませんか。法務大臣の答弁を求めます。
 第三は、企業グループをめぐる問題です。
 コクドと西武鉄道のように、親会社と子会社、持ち株会社とグループ企業の不透明な関係が明らかになるなど、企業グループの責任の所在が問われております。
 日本の企業法制は、一方で、グループ全体としての経営判断、連結会計、連結納税など経営におけるグループ支配を認めながら、他方で、企業責任については親会社と子会社は別とされています。そのため、例えば親会社によって子会社が破産させられても、子会社の債権者や労働者は親会社の責任を問うことはできないという理不尽な仕組みになっております。
 欧米では、子会社に問題があれば親会社の責任を問う会社結合法制が当然のルールとなっています。なぜ、今回の改正でこうした制度をとらなかったのでしょうか。法務大臣の答弁を求めます。
 第四は、大企業の租税回避の問題です。
 この間、ハンナン、武富士などが巨額の脱税で摘発され、コクドは法人税を一円も払わず、堤義明氏の膨大な所得隠しが指摘されています。こうした巨額脱税、租税回避がなぜ許されたのか。国民は、大企業の租税回避疑惑の真相究明と改善を求めております。
 法制上、行政上どこに問題があったのか、どう改善していくのか。谷垣財務大臣の答弁を求めます。
 今回の会社法改正によって、合同会社、LLCとか、有限責任事業組合、LLPといった新たな会社類型が創設されようとしております。
 このことについて、法制審議会部会長の江頭東大教授は、経済界としては税制上のパススルーさえできればいいのであって、必ずしも新しい会社類型が必要だったわけではない、規制が緩いということで、むしろ大企業が子会社をつくるのに使われるのではないかと指摘をしております。
 新しい会社類型が大企業の課税回避のために使われることになりはしませんか。財務大臣の答弁を求めます。
 企業のあり方を考える際、避けて通れないのは政治献金の問題であります。
 企業と株主の関係から見て、営利を目的とする企業の経営者が勝手に会社の財産を特定政党に献金すれば、それは本来、目的外の行為であって、株主の利益を侵害する背任行為となります。他方、企業が利益追求のために献金し、その見返りを求めれば、それはわいろそのものであります。
 このような企業献金を野放しにしてきたことが、特定の企業、業界と政治の腐敗、政官業癒着を生み出す原因の一つとなったのであります。
 しかも、国民との関係で見れば、選挙権を持たない企業が金の力によって政治を動かすことが、国民の参政権を著しく侵害することになるのは明らかであります。
 企業・団体献金の禁止が、日本社会の中で企業が健全に発展する上で不可欠の緊急課題であることを強く指摘しておきます。(拍手)
 最後に、竹中大臣に質問をいたします。
 一昨日の本会議で、あなたは、与野党合意の上で、私が出席する必要があるとの判断がなされたものについてはきちんと対応するが、総務委員会ではそのような合意がなされたとは、私は承知しておりませんと答弁をいたしました。
 しかし、5日の総務委員会では、竹中大臣の出席について与野党が合意し、タイムテーブルまで作成をされていたのであります。
 当日になって突如欠席することは、議会軽視も甚だしく、その上本会議で、事実と全く異なる答弁をし、本日また、情報収集が不足していたなどと開き直るに至っては、国会を二重三重に愚弄するものと言わなければならず、断じて容認できるものではありません。(拍手)
 竹中大臣に、本会議答弁の撤回と明確な謝罪を求めるとともに、どう責任をとるのか明らかにすることを求め、私の質問を終わります。(拍手)
○国務大臣(南野知惠子君) 佐々木憲昭議員にお答え申し上げます。
 まず、会社法案では、大幅な規制緩和により弊害が生ずるのではないかというお尋ねがございました。
 御指摘の利益配当決定権限についての改正は、利益配当の決定手法に関する株主側の選択肢を拡大するものでありますし、取締役の責任についての改正は、近代私法の原則である過失責任主義を採用することにより、その合理化を図るものでございます。
 さらに、株主代表訴訟についての改正は、株主全体の利益を図るという制度の本来の趣旨にのっとって制度の一層の実効化を図るものでございます。
 したがいまして、これらの改正により、弊害が生ずることはないものと考えております。
 次に、会社法制について、経営者への厳しい規律を設けるべきではないかとのお尋ねがございました。
 会社法案では、会社経営が健全に行われるようにするため、すべての株式会社において決算公告を義務づけることや、すべての大会社において取締役等の職務執行の適正を確保する体制の構築を義務づけることなどの改正を行っているところでございます。
 最後に、親会社が子会社に問題を生じさせた場合の親会社の責任に関するお尋ねがございました。
 親会社の違法な行為によって損害を受けた子会社の債権者や従業員は、民法や会社法案の規定により、親会社やその取締役に対して損害賠償を請求することができますので、会社法案では、その保護のための特別な制度は設けておりません。
○国務大臣(谷垣禎一君) 佐々木憲昭議員にお答えいたします。
 まず、大企業の租税回避といった問題についてお尋ねがありました。
 個別の事案に関してはお答えをいたしかねますが、法制面で申しますと、企業の租税回避問題等については、平成17年度の税制改正におきましても、組合損失を利用した租税回避行為への対応措置を講ずるなど、これまでも適切な対応を行ってきたところでございます。
 執行面では、企業の租税回避問題等に対しては、これは厳正な態度で臨んで、税務調査を通じて適正、公平な課税の実現に努めているところでございます。
 今後とも、制度、執行の両面で連携を図りながら、租税回避行為の防止と適正な課税の実現に努めてまいります。
 それから、新しい会社類型が大企業の課税回避のために使われることになるのではないかというお問いかけでございました。
 会社法案によって創設されます合同会社制度については、創業段階のベンチャー企業あるいは合弁会社その他、少人数により事業を行うための会社に適した新たな会社類型として、私法上の観点から創設されるものと承知しておりまして、その趣旨に沿った活用を期待しております。
 この合同会社の課税関係については、その法的位置づけや他の会社形態とのバランスなどを踏まえながら、御指摘のような租税回避に用いられることのないよう、適切な課税関係を構築していく必要があると考えております。
 また、そういう課税関係を踏まえまして、国税当局においても、適正、公平な執行に努めてまいりたいと考えております。
○国務大臣(竹中平蔵君) 佐々木議員にお答え申し上げます。
 企業の法令遵守経営についてのお尋ねがございました。
 健全な企業経営は、消費者を初めとする社会からの信頼と共感が基本であります。近年の企業不祥事の多発を背景として、事業者に対する消費者の信頼が揺らいでおります。このような事態を放置すれば、我が国の市場経済そのものへの不信にもつながりかねません。
 このため、昨年改正された消費者基本法では、事業活動に関して、事業者みずからが遵守すべき基準を作成することなどにより消費者の信頼を確保するよう努めることが、事業者の責務として新たに規定されたところでございます。
 また、労働者が事業者の犯罪行為や法令違反行為を通報しても、解雇等の不利益な取り扱いがなされないように保護するとともに、事業者の法令遵守を促すことを目的として、公益通報者保護法が制定されたところでございます。
 企業が法令遵守を徹底し、社会的責任を果たしていくことで、国民生活の安全、安心が確保されるよう、今後とも、これらの法律に基づく施策を着実に実施してまいる所存でございます。
 4月5日の本会議における私の答弁についてお尋ねがございました。
 国会運営に関する事柄については、与野党間で協議し、合意されたところに従って対応しているところであります。今回の総務委員会の件に関しましては、いろいろな経緯の中で、情報収集面で不十分な点があり、状況を正確に掌握しておりませんでした。大変御迷惑をおかけいたしました件について、まことに遺憾に存じます。今後、的確な情報伝達が行われるように努めてまいります。
 また、国会に対しまして、誠意を持って答弁に当たり、十分に説明責任を果たしてまいりたいと存じますので、御理解を賜りますようお願いを申し上げます。

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