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金融(銀行・保険・証券) (証券取引所, 村上ファンド問題)

2005年04月26日 第162回 通常国会 財務金融委員会 【300】 - 質問

村上ファンドが大阪証券取引所の大株主に 「証券市場の監視体制がゆがめられる恐れ」佐々木議員指摘

 2005年4月26日、財務金融委員会で佐々木憲昭議員は、証券取引所の問題について質問しました。
 5年前に証券取引所の株式会社化を認める法改正が行われ、東京証券取引所も大阪証券取引所も株式会社となりました。
 しかし、一般の株式会社と違って株式会社化された証券取引所は、上場企業の内部情報にふれる機会が多く、上場をめざす企業の内部情報を上場前につかむことができるため、インサイダー取引の危険性が、常につきまとうことになります。
 また、大阪証券取引所は社外取締役として証券会社出身者が社外取締役に就任している事で、さまざまな問題が発生しています。
 たとえば、大阪証券取引所の「ヘラクレス市場」のホームページで公表しているレポートのなかに、「取締役総数は17名で、うち14名が社外取締役。取引所運営の意見を求めるため、市場参加者(証券会社)から8名を選任しているが、収益の大きな部分が参加者からの負担金であり、参加者は当所の株主でもあることから、料率の設定、配当金の承認などの点で利益相反が起こる可能性がある」との指摘があります。
 さらに、株式会社である証券取引所が株式市場に上場するということになれば、懸念されるのは、株式の買占めです。
 じっさい、大阪証券取引所が上場した結果、3月下旬に時間外取引で村上ファンドが株式を買い占め、10%超取得し、筆頭株主になった可能性も高いと言われています。
 しかも、それをもとに6月の株主総会で村上氏を社外取締役に迎える案を大証自身が提案するよう求めています。大証側は、これを拒否したといわれますが、これにたいして村上ファンド側が、対抗策を打ち出すのではないかという報道さえあります。
 村上ファンドは、大証の内部留保金の額についても問題にし株主還元を主張しています。
 これは、証券取引所の自主規制機関としての存立そのものを揺るがす事態です。
 証券取引法では、証券取引所について、投資者の保護、取引の公正を図りつつ有価証券の取引の場を提供するという公共的な機能が求められていることから、株式会社形態をとる取引所の過半数の議決権を取得、保有することを禁じ、20%超の主要株主についても不適格者を排除するために認可制となっています。
 また、一般の株式会社と同様に、3分の1超の議決権を保有すると重要事項についての拒否権が発生します。
 佐々木議員は、仮に3社の投資ファンドが連携して3分の1以上の株式を保有すれば保有制限にも触れずに経営に影響力を持ち、取引所の自主規制機関としての存立を揺るがすと、現在の法律ではこの危険性を回避できないと追及しました。
 これにたいし、伊藤達也金融担当大臣は「仮に必要性が生じた場合には、その見直しについても検討したい」と答弁しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 私は、証券取引所の問題についてお聞きをしたいと思います。
 5年前に証券取引所の株式会社化が認められる法改正が行われまして、東京証券取引所も大阪証券取引所も株式会社となりました。しかし、一般の株式会社と違いまして、株式会社化された証券取引所は、自主規制機関であるがゆえに、上場企業の内部情報に触れる機会が大変多い、あるいは上場を目指す企業の内部情報を上場前につかむことができる。証券取引所というのはそういう特殊な株式会社だと思いますけれども、伊藤大臣、いかがでしょうか。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、証券取引所というのは、投資者の保護や取引の公正を図りながら有価証券の取引の場を提供するという国民経済上極めて重要な役割を果たしているということから、まず、その組織について、公正性、中立性、信頼性が強く求められている。さらに、機能面につきましても、自主規制機関といたしまして、取引参加者に対して取引所の定める自主ルールなどの遵守を求めて、違反した取引参加者に対しては制裁措置を講じなければならないといったような法律上の規定がございます。こういったことから、通常の株式会社とは異なる性格を有しているというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 通常の株式会社と異なるわけだけれども、私が聞いたのは、内部情報をつかむ機会が大変多い、そういう株式会社だということを言っているわけであります。そういう意味では、インサイダー取引の危険性が常につきまとうものであります。
 株式会社化以降、例えば大阪証券取引所は、社外取締役として証券会社出身者が就任していますね。そうなると、さまざまな問題が発生するわけであります。例えば、大阪証券取引所のヘラクレス市場のホームページがあります、そのホームページを見ますと、こういうふうに書いてあるわけです。「取締役総数は17名でうち14名が社外取締役。取引所運営の意見を求めるため、市場参加者(証券会社)から8名を選任しているが、収益の大きな部分が参加者からの負担金であり、参加者は当所の株主でもあることから、料率の設定、配当金の承認などの点で利益相反が起こる可能性がある。」、こういうふうにヘラクレス市場のIPOレポートに書かれているわけであります。極めて率直な指摘だと思いますが、大臣、いかがですか。大臣、大臣に聞いているんだよ。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 従来より、各証券取引所におきましては、取引参加者としての証券会社の代表、さらには投資家、あるいは発行会社の代表、学者など、そういった方々から社外取締役等を選任してきております。これは、有価証券市場の運営に関して、取引参加者としての証券会社だけではなくて、市場利用者などの意見も反映させることを目的としているものと承知をしております。
 今の、各証券取引所におけます取締役などの役員の中にいわゆる証券会社出身の者がいるということでございますが、数は比較的限定されているというふうに考えております。したがいまして、証券会社側の意見だけで手数料が決定される状況にはないというふうには考えておりますが、おっしゃるように、利益相反という意味では非常に重要な視点だというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 大臣にお聞きしますけれども、証券会社出身者が社外取締役に就任するというのは、簡単に言いますと、参加手数料を決める側に払う側がついているということなんですよ。払う側が手数料を決めるということになるわけですね。そうなるんじゃありませんか、大臣。
○伊藤金融担当大臣 今局長が答弁をさせていただきましたように、有価証券市場の運営に関して、取引参加者としての証券会社だけでなく、市場利用者の意見も反映させることを目的として社外取締役の選任というものがなされているというふうに承知をいたしておりますので、各証券取引所における取締役等役員に占める証券会社出身の社外取締役の数というものは限定されたことになっておりますから、証券会社の意見のみによりその手数料が決定される状況にはないというふうに承知をいたしております。
○佐々木(憲)委員 このヘラクレス市場のホームページでは、取締役総数17名で、うち14名が社外取締役、証券会社から8名というふうに書かれているわけです。決して少なくはありません。
 株式会社になることが問題だけれども、それだけではなくて、株式市場に証券取引所自身が上場するという問題が出てくるわけですね。そうなりますと、これは一層複雑になるわけです。大体、証券取引所自身が自分の取引所に上場するわけですから、極めて奇妙な現象であります。
 まず懸念されますのは、そうなりますと、株式の買い占めのおそれが出てくる。実際に、大阪証券取引所が今上場されております、みずからの市場に上場しているわけです。その結果、今問題になっている村上ファンド、これが10%の株式を買い占めているわけです。筆頭株主になった可能性が高い。1月の時点では約6%だったわけですが、3月下旬に時間外取引で一気に取得したと言われております。しかも、それをもとに6月の株主総会で村上氏を社外取締役に迎える案を大証自身が提案するように求めている。大証側はこれを拒否したという報道があります。これに対して村上ファンド側が対抗策を今度は打ち出すんじゃないかという報道もある。村上ファンドは大証の内部留保金の額についても問題にし、株主還元を主張していると言われている。こうなってきますと、取引所自身が特定の投資会社に支配されてしまう、こういう危険性というものが出てくるわけであります。そうなりますと、自主規制機関としての性格が損なわれてしまうと私は思うんですね。
 こういう特定の投資会社による証券取引所の株の買い占め問題、こういう点について、伊藤大臣、どのようにお考えか、どのように見ているか、考えを聞かせていただきたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 今御紹介がありました事案については、個別の事案でありますのでコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、証券取引所については、株式会社化することによって意思決定の迅速化が図られるとともに、市場間競争においてシステム投資が極めて重要になってきている状況の中で、多様な方法による資金調達が可能となっているというメリットがございます。さらに、株式会社化した証券取引所が上場することになりますと、資金調達機会というものがさらに多様化いたしますので、株式会社のメリットがさらに拡大することになると考えられます。
 他方、証券取引所について、委員が御懸念の投資者の保護あるいは取引の公正を図りつつ有価証券の取引の場を提供するという公共的な機能が求められておりますので、こうしたことに対しましては、株式会社形態をとる証券取引所の過半数の議決権を取得、保有することを原則禁止するとともに、主要株主についても不適格者を排除するための認可制としているところでございまして、こうしたことにより証券取引所の業務の健全な運営は確保されているものと考えております。
○佐々木(憲)委員 例えば、3分の1以上の株式保有をいたしますと、さまざまな特典が出てまいりますね。例えば、その会社の意思決定を拒否するというような権限というのが生まれてくると思うんですが、そういうことに対して歯どめというものは一体どのように設定されているのか、お聞かせいただきたい。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 先ほど大臣からも若干一部御答弁をさせていただきましたけれども、証券取引所につきましては、投資家の保護あるいは取引の公正を図りながら有価証券の取引の場を提供するという公共的な機能があります。こういった観点から、主要株主、今先生30%とおっしゃいましたが、この規定では原則として20%以上の議決権を保有する者につきましては、いわば不適格者を排除するために認可制としております。
 私どもといたしましても、そういった認可の観点から、例えば、議決権の行使によって取引所の業務の健全かつ適切な運営を損なうおそれがないかどうか、あるいは取引所の公共性に関して十分な理解を有しているかどうか、十分な社会的信用を有する者であるかどうか、そういった観点等から審査を行うということになっております。
○佐々木(憲)委員 20%以上の議決権については認可制、これは法律に書いてあるとおりであります。
 しかし、問題は、証券取引所自身の方針を決定する、例えば手数料ですとかあるいは内部留保金をどうするとか、そういうものを決定する際に、一定の権限といいますか、それが行使できる率は3分の1以上だというふうに思いますが、それはそうですよね。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、今、商法上、いわゆる重要事項についての拒否権といいますが、そういうのは3分の1ということになっております。
○佐々木(憲)委員 20%以上の議決権を保有する場合には認可制だと。しかし、例えば15%あるいは16%、そういう保有については規制がないわけですね。例えば3つの会社が、12%、12%、10%、こういうふうに保有した、合わせて34%になる。これが一定の、同一の意思のもとに行動をする、例えばある経営方針に対して拒否権をそろって発動しようじゃないか、こうなりますと3分の1以上になりますね。そういう場合には拒否権というのが行使できるということになりますね。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 まず、先ほど私、原則として20%以上の議決権を保有する者ということを主要株主の規定について申し上げました。原則としてということでございますので、実は15%以上を持った場合には、財務及び営業の方針の決定に関して重要な影響を与えることが推測される事実がある場合には15%以上でも同じく認可制をとるということになっております。それが第一点でございます。
 それからもう一つは、今先生の御指摘の、共同してというか合意をしながら議決権を行使してしまう場合ということが考え得るわけでございますが、そういう場合には、共同で議決権を行使することを合意している者など特別な関係にある者が共同で株式を取得、保有している場合には、今の計算上、今先生の御指摘の30数%でございますが、足し算をするとそういうふうになるということになれば、いわば主要株主規制が同じくかかるということになりまして、合算して適用されるということでございます。
○佐々木(憲)委員 これは3社が特別な関係にある、親子の会社ですとかそういう関係にある場合は明確ですけれども、しかし、A、B、Cという会社がそれぞれ独立して全く違う意思決定のもとにある、そういう独立した3社が、それぞれ15%以下の株を保有して、連合して3分の1以上になる、そういう場合には規制ができないんじゃないですか。
 ですから、私は、時間がありませんので最後に大臣にお伺いしますけれども、こういうことを想定して5年前に法案を提案されて株式会社化というものを決められたのか。上場するということになりますと、今言ったようないろいろな問題が起こってくるわけですが、そういうことに対してどういう規制が必要なのか、一定のルールというものをやはり新たに今の段階で検討するということが必要だろうと思うんです。そうしないと、株式会社化された証券取引所が、非常にゆがんだ、不公正な市場に変わってしまう、そういう危険性さえあるというふうに思いますので、最後に大臣の見解を求めたいと思います。
○伊藤金融担当大臣 今までの法改正におきましても、株式会社形態をとる証券取引所について、公共的機能を維持するために必要な措置というものを講じてきたところであります。具体的には、市場の開設を免許に係らしめ、金融庁による監督が行われる、あるいは証券取引所の業務範囲を市場の開設及びこれに附帯する業務に限定をする、そして過半数の議決権を取得、保有することを原則禁止、さらに、先ほどお話をさせていただいたように、主要株主についても不適格者を排除するための認可制、こうした措置を講じてきているところであります。
 このように株式会社形態をとる証券取引所については、その公共的機能というものを維持する上で必要な措置というものは講じられているものと考えておりますが、今後、仮に必要性が生じた場合には、その見直しについても検討をしてまいりたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 何も対応策がないということになりますと、これは将来大変なことになると私は思いますので、自主規制機関としての性格をきちっと確保し、公平公正な市場のルールを確立するということが必要だという点を改めて再度申し上げまして、質問を終わります。

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