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金融(銀行・保険・証券) (銀行の収益性, 金融消費者保護)

2005年10月18日 第163回 特別国会 財務金融委員会 【329】 - 質問

銀行法案「さらに金融被害が広がる可能性がある」佐々木議員指摘

 2005年10月18日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は銀行法改正案について質問しました。
 この改正案は、これまで代理店として認められなかった一般事業会社、証券会社、保険会社が、銀行代理店業務を営むことができるようにしようというものです。
 端的に言えば、スーパーやコンビニなど身近なところで代理店を広げ、多様な金融商品を売ることが可能になります。
 銀行は、「コスト圧縮」のため、この10年間で、支店を3,334店舗減らしてきました。そのため、銀行のネットワークが細っています。代理店を広げて儲けをあげたくても、現在は、100%子会社でなければ代理店として認められません。
 要件を緩和して代理店を増やし多角的な商品を売って利益をあげようというのが、今回の法案目的といえます。
 問題は、消費者にとって、問題を発生させる可能性があることです。
 国民生活センターに寄せられた苦情相談件数は、2002年に13,663件、2004年に16,051件となっています。
 銀行の窓口で、金融商品の販売が緩和されてから、販売実績は伸びていますが、その一方で、投資信託や個人年金保険でもトラブルが急増しています。
 佐々木議員は、銀行の側が、消費者側が求めてもいないのに強引な勧誘をしたり、元本割れのリスクを説明しなかったり、知識のない高齢者に複雑でハイリスクの金融商品を押しつけるといった実態を紹介。
 「契約・解約」に関する相談がほとんどで、年代別に見ると60歳代以上が75.3%、70歳以上が49.0%で、高齢者の被害が圧倒的に多くなっています。
 佐々木議員は、今度の法改正で消費者を保護する「従来以上の新しい水準の規制措置は、盛り込まれているのか」と質問。
 これにたいして、金融庁総務企画局長は「これまでの銀行規制と同様」は答弁。トラブルが今よりも減らせる保障がないことが明らかになりました。
 日本には、金融消費者保護法がありません。投資サービス保護法も検討しているいわれていますが、いつになるかわかりません。
 佐々木議員は、「規制緩和だけが一方的に進んで、消費者保護はなおざりになる、こういう非常にバランスを欠いた今回の法案改正というのは、到底賛成できない」と主張して質問を終わりました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず初めに、数字を確認したいと思います。銀行は、この10年で支店をどれだけ減らしましたか。減らした理由は何でしょうか。
○佐藤 政府参考人(金融庁監督局長) 我が国の銀行の店舗の数でございますが、10年前の平成7年3月末で1万7,157店ございましたのが、本年、平成17年3月末に1万3,823店舗というふうになっておりまして、この10年間で3,334店舗、率にいたしまして19.4%の減少ということになっております。
 店舗が減少した要因でございますけれども、店舗の設置、廃止等は、各金融機関において、一方で利用者利便の観点あるいはその経営戦略上の位置づけ等を勘案して、おのおのの経営判断に基づいて行われるものでございますので、理由についても一概には申し上げられないというふうに思いますけれども、例えば一つには、合併等の経営再編に伴いまして、隣接する店舗を統廃合するといった例であるとか、あるいは、地域の顧客ニーズに即しましてATMだけの無人設備に転換するといった例があろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 3,334店舗、かなり大幅な店舗が減っているわけであります。簡単に言いますと、今まであった銀行の支店が目の前からなくなるところが結構生まれている。理由は、効率化ですとかあるいはコストの圧縮、こういうことが言われているわけです。単純に言いますと、銀行のネットワークとしては先細りになっている。
 そこで、代理店というものの考え方が出てくるわけであります。ところが、現在は100%子会社でなければ代理店として認められない。その要件を緩和して代理店をふやし、多角的な商品を売って、そこで利益を上げる。これが目的の一つだと私は思いますが、大臣、いかがですか。
○伊藤 金融担当大臣 今回の改正の意義につきましては、もう何度も御説明をさせていただいておりますように、銀行代理店の担い手というものを拡大する、そして販売チャネルというものを多様化することによって利用者利便の向上、そして同時に、銀行の柔軟かつ効率的な店舗展開を可能にすることによって効率的な銀行経営に資するものになる、そうした意味で重要な制度改正であると考えております。
○佐々木(憲)委員 簡単に言えば、利益を上げたいというのが銀行の要請だろうと思うんです。
 この改正案では、これまで認められておりませんでした一般事業会社が代理店として認められる、証券会社や保険会社も代理店を営むことができる。簡単に言いますと、スーパーですとかコンビニ、身近なところで代理店を広げて多様な金融商品を売る、こういうことが可能になるわけですね。
 確かに、銀行側の論理としては、効率的でかつ利益の上がる体制づくりだということかもしれませんけれども、消費者の側、国民の側にとっては一体どうか。私は、さまざまな問題が発生する可能性があるのではないかと。
 そこで、金融被害という観点から現状をお聞きしたいんですけれども、例えば、国民生活センターに寄せられた金融関連の苦情相談、これは、2002年あるいは2004年の数字、どうなっているでしょうか。
○堀田 政府参考人(内閣府大臣官房審議官) お答えいたします。
 国民生活センターでは、各地の消費生活センターを結ぶPIO―NETを運営しております。その消費生活相談情報の合計でございますけれども、生命保険それから損害保険それから預貯金、証券等に対する苦情を合計いたしました数字は、2002年度が1万3,663件でございます。それから2004年度が1万6,051件となっております。
○佐々木(憲)委員 銀行の窓口で金融商品の販売が緩和されて以来、販売実績は伸びておりますけれども、その一方で、投資信託あるいは個人年金保険でトラブルが急増しております。銀行窓口販売についての国民生活センターへの相談件数というのも、これは急増しているわけであります。
 例えば、こういう事例があります。これは相談として寄せられたものですけれども、10年物の定期預金を希望して銀行を訪れた。ところが、定期預金より有利ですよと勧められたのが変額個人年金保険であった。そこで契約をしました。元本保証ですかと質問したところ、年金原資保証ですと言われた。それで元本保証と思った。しかし、後日、引受保険会社から送られてきた郵便物を見たところ、10年後に一括して受け取った場合、元本を下回ることがあることに気づいた。それで解約を申し出た。解約控除料がかからない期間に解約をしたけれども、解約返戻金は元本を割っていた、こういう60代の男性の相談事があります。
 あるいは、本人確認を新たな方法で行うことになったため通帳と印鑑を持参して出向いてくださいと銀行から連絡があった。銀行に着くと、同行の他支店で契約した外貨預金の有効活用の話をされた。元本保証で相続対策にも有利ですよと説明され、外貨預金を解約し、勧められた金融商品を契約し、その場で全額を支払った。説明の際に通された部屋は暗く、書類の字も小さいためよくわからず、銀行員の指示どおりに契約書に記入した。パンフレットや重要事項説明書は契約後に渡された。その際、個人情報の利用に関する同意もしたが、その意味はよく理解できなかった。これは七十歳の女性の話なんですね。帰宅後、契約した商品は外貨建ての定額個人年金保険であり、リスクの高い商品とわかった。銀行にはすぐクーリングオフを伝えたけれども、できないと言われた。やむなく解約することにしたが、当初支払った1千200万円のうち数十万円の損失が出た。これは70代の女性の相談なんですね。
 ほかにもたくさんこういう事例はありますが、時間の関係上省略します。
 これらの特徴は、銀行の説明が元本割れのリスクを十分説明していなかった、あるいは、消費者が求めていないのに、いや、こちらの方が有利ですよと強引に勧誘をした、あるいは、知識がない高齢者に複雑でハイリスクの商品を販売する、こういう形でトラブルになっているのが非常に多いんです。今の銀行でも、今まさにこういう事態が発生しているわけですね。契約解約に関する相談がほとんどでありまして、年代別に見ますと、60歳代以上75.3%、70歳以上が49%。ですから、圧倒的にこれはお年寄りの被害が多いわけであります。銀行代理店をふやすとこのようなトラブルがふえるのではないか。
 そこで、確認したいのは、従来の規制、つまり消費者保護の水準を超える新しい水準というのが今度盛り込まれているのか、それとも、従来の水準で代理店にそれを守るように、こういうことなのか、その点、確認をしたいと思います。
○三國谷 政府参考人(金融庁総務企画局長) 今回の枠組みでございますが、今回の改正におきまして、顧客保護に万全を尽くす観点から、銀行代理業者に対しまして、顧客への対応については、基本的には銀行と同様の義務を課すこととしております。
 なお、銀行代理業者につきましては、一般事業者との兼営が認められるため、兼業による弊害が生じますことを防止する観点から、分別保管義務、情実融資の禁止などの規制を設けているところでございます。
○佐々木(憲)委員 つまり、現在の銀行と同様の水準の規制を適用するというわけであります。つまり、現在でもこれだけの被害が生まれているわけです。その水準は何か新しく強化されるというものではない、適用範囲を広げたというわけであります。
 それでは、大臣にお聞きいたしますけれども、今回のこの改正案で、金融をめぐるトラブルというものは今より減らせる、こういう約束はできますか。
○伊藤 金融担当大臣 今回の制度改正において、代理店と利用者のトラブルの発生というものを防止していく、あるいは契約者保護上の必要な手当てをさせていただいて制度設計をさせていただいているところでございます。
 代理店におきましても、やはり、今委員が御指摘をされました一番重要なポイントというのは、顧客へ正確かつ十分な情報提供をしていくということでございますので、今回の制度設計においても、説明義務あるいは虚偽の説明等の禁止ということをしております。
 私どもとしても、検査監督を通じて、こうした措置の実効性が担保できるように適切な対応を講じていきたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 現在も、銀行そのものの窓口でもこういう被害というものが発生しているわけです。これが代理店に広がるわけですから、銀行ではない他業者が銀行の代理店をやるというわけですから、これは被害の可能性が広がる、そう見なければならない。
 日本には金融消費者保護法という制度はありません。まだできていないんです。投資サービス保護法も、これはいつになるかわからないわけです。こういう規制法を提案しないまま今のような代理店の規制緩和をどんどん広げていく、こういうことになると、金融被害が続出するという可能性もある。私は、一方だけが規制緩和が進んで、そして消費者保護はなおざりになる、こういう非常にバランスを欠いた今回の法案改正というのは、やはり到底賛成できないというふうに思っております。
 次に、法人向け融資についてお聞きします。
 銀行代理業者となった一般事業者、これは直接の貸出業務はできない。しかし、金融庁の説明資料によりますと、こういうふうになっているわけですね。目きき、将来性のある企業の発掘、その他経営支援業務、こういうものができるというわけですね。つまり、優良な中小企業かどうかを判断する、あるいは銀行にその業者を紹介する、あるいは企業の経営を支援する、こういうことは間接的に貸出業務にかかわる、直接ではないけれども間接的な業務になる、そういうことができるということですね。
○三國谷 政府参考人(金融庁総務企画局長) 制度の立てつけでございますけれども、代理のみならず媒介も許可の対象となっているところでございます。
○佐々木(憲)委員 融資にかかわる間接的な業務はできるというわけであります。
 それを利用した不正取引の危険性というのは大変大きいと私は思うんですよ。例えば、大手スーパーが銀行の代理業者となった、その場合、納入業者に対してこういう優越的地位を乱用した不正取引というのが発生する可能性はあると私は思うんです。つまり、間接的な、融資のそういう役割を担うわけですから、それを利用する危険性というものはあると言わざるを得ないと私は思います。その点をどれだけ規制できるのか、私は非常に心もとないというふうに思います。
 次に、個人に対する融資の点について伺います。
 例えば、住宅販売会社が銀行代理業者となって、住宅の販売と住宅ローンをセットで販売する、こういうことが可能になる。あるいは、不動産会社が不動産への投資、この不動産は値上がりしますよ、私は銀行代理業者ですから、ローンを組みますからどうぞ買いませんか、こういう売り込みもできる、こういうことは可能になるということですね。
○三國谷 政府参考人(金融庁総務企画局長) 先ほども申し上げましたとおり、制度は、代理のみならず媒介も許可制の対象としているということでございます。
 それから、個別の融資につきましても、抱き合わせ販売等は禁止しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 この抱き合わせ販売というのは、今言ったものは抱き合わせ販売に入るんですか、入らないんですか。
○三國谷 政府参考人(金融庁総務企画局長) 御指摘の、不動産業者がそういった事業の販売と融資をセットにするような場合であれば、抱き合わせ販売と思います。
○佐々木(憲)委員 これは規制されるわけですね。こういうことはしてはならないということなんですか。
○三國谷 政府参考人(金融庁総務企画局長) 二点ございます。
 参入段階でも規制がございますし、行為規制としても抱き合わせ販売等の規制が行われているということでございます。
○佐々木(憲)委員 個人に対するさまざまな提案融資というもので、従来、バブル時代にも大変な金融被害が出てきたわけであります。本当にそういう被害が防げるのかどうか。私が事前に説明をお聞きしたときは、これはやれるんですよという説明だったんです。どうなんですか。
○三國谷 政府参考人(金融庁総務企画局長) もう一回、繰り返しになるかもしれませんが。いずれにいたしましても、そういった融資をする立場が、自分の力、これは圧力を利用してセット販売をする、こういったものは抱き合わせ販売として禁止されることになるわけでございます。
 そういったものを現実の事象としてどうとらえるかは、銀行本体の指導監督あるいは行政当局の検査監督によって対応していくことになろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 何となく心もとない答弁ですけれども、これは全面禁止にはどうもならないという形ですね。圧力を、つまり優越的地位を使ってそういうものをしてはならない、しかし、提案をして相手がオーケーですよという対等販売といいますかそういうことは可能になる、こういうことなんですか。
○三國谷 政府参考人(金融庁総務企画局長) 抱き合わせ販売の禁止でございますが、顧客に対しまして、銀行代理店が他業の取引をすることを条件として貸し付けの媒介を行うこと、これは禁止されます。
○佐々木(憲)委員 ということは、私が先ほど説明をしましたような、住宅を販売する場合に住宅ローンとセットで販売する、ワンセットで販売するということは、これは禁止なんですか可能なんですか、どちらですか。
○三國谷 政府参考人(金融庁総務企画局長) 正確に申し上げますと、例えば、銀行代理店たるカーディーラーと車を購入する顧客の関係では、顧客は当該カーディーラーからの借り入れが必須ではなく、必ずしも貸し付けの権限を背景にカーディーラーが顧客に対して優越的な地位にあるとは言いがたいことから、自動車ローンと車をセットで契約すること自体が抱き合わせ販売に該当するとは考えておりませんが、そういった融資を条件としてやるような場合には抱き合わせ販売になろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 今の説明は、その抱き合わせ販売の解釈の仕方が非常にあいまいであるということなんですね。
 結局、抱き合わせ販売というのは、優越的な地位を利用して、セットでなければ販売しませんよとこれを押しつける、こういうのが抱き合わせ販売であって、そうでない場合、これは、今言ったように自動車の販売の場合もあり得る、そういうことのケースもあり得るという話なんですから。
 そうすると、今までこういうことでいろいろな被害が生まれてきているわけですよ。その被害というものが、今度の代理店業務を認めることによってさらに広がる可能性がある、そういう点を私は強く指摘をしておきたいと思います。
 時間が参りましたので終わります。

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